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続×3.雪豹くんとにぎやかな家族
4-7.君の名前
二つの雪豹族の言葉と、二つの竜族の言葉が出揃って、後は組み合わせて決定するだけだ。そのはずなのだけれど、スノウはうんうん、と唸りながら頭を悩ませた。
ひびが広がっている卵を指先で撫でながら、眠ったままの卵も反対の手で撫でる。くぅくぅ、と寝ているような気配が伝わってきて、思わずくすっと笑ってしまった。
(ねぇ、ブレスラウ。君の妹は寝てばっかりだね)
つい頭の中で囁きかけると、小さなカリカリ音が、少し呆れたように響いた気がした。それがさらに面白くて、にこにこと笑ってしまう。
スノウやアークには少し冷めた感じのブレスラウだけれど、妹には甘い兄になる予感がした。
「えっと、『ルミシャンス』『ルミトゥーナ』『プティシャンス』『プティトゥーナ』……どれも綺麗な響きな気がする」
「そうだな。魔王の娘、王女に相応しい優雅さがあるんじゃないか」
アークにそう言われて、スノウは「王女……」と呟いた。その事実に今さらながら気づいたのだ。
基本的に魔王は世襲ではないとされている。でも、強い竜族からは強い子が生まれる可能性が高いらしく、親から子に代が引き継がれることは少なくない。
だから、アークとスノウの子は王子や王女と呼ばれて貴ばれるだろうというのは、ルイスから聞いていた。
スノウ自身は雄ということもあり、番様と呼ばれることが多く、あまり魔王の番という立場を気にしたことがない。でも、子どもたちはスノウ以上に、立場を気にする必要があるのだろう。
そう考えると、ブレスラウもただのブレスより高貴さがある名前に思える。アークはそのことも考えて、名前を考えたのだろうか。
「……アークの名前って、何か意味があるの?」
「俺か? 竜族の里では、アークの『アー』は『貴い』で『ク』は『強き者』という意味だな。生まれた時から、俺は魔王になるのが決まっているほどの強さをみせていたから、らしい。さすがにその当時のことは覚えていないが」
ブレスラウに比べたら単純な名前だと思っていたら、竜族らしい意味がこれでもかと詰められていた。今さら知る事実である。
名前の響きの高貴さより、意味が重視されているのだと、スノウは純粋に『すごいなぁ』と思った。
「そっか。……王女なら、優雅さがあって、綺麗で、それでいて呼びやすいのがいいかな」
「呼びやすい?」
その必要があるのか、と言いたげに首を傾げるアークに、スノウは「うん」と頷いた。
「だって、王女様って呼ばれるよりも、やっぱりたくさんの人に名前を呼んでほしいもん。僕たちが愛されるようにって思ってつける大切な名前だよ? 好きな人たちみんなに呼んでもらえたら、この子もきっと嬉しい」
ゆっくりと卵を撫でる。
名前は一つの存在証明だと思う。そして、呼ばれることで、愛を示すとも思うのだ。スノウがアークに名前を呼ばれて、そう感じるように。
「……そうか。確かにそうだな。名前を呼ばれるのは嬉しいことだ」
アークが微笑み、少しねだるように見つめてくるので、スノウはふふっと微笑んだ。格好いいのに、時々可愛らしい番である。
「アーク、大好き」
「……スノウ、俺も愛してる」
ぱちりと目を瞬かせたアークが、すぐに蕩けるような眼差しでスノウに囁き返してきた。想いを籠めた名前の呼びかけは、思っていた以上にアークの心に届いたらしい。
なんだか今さら改めて名前を呼び合うというのは気恥ずかしいようにも思えたけれど、やはり幸せだ。スノウはアークと微笑み合って、暫くの間するべきことを忘れてしまった。
「……お二人とも、お子様のお名前はどうなさるのですか?」
ルイスに少し呆れたように言われて、スノウは「あっ……」と声を漏らして目を逸らした。
アークは肩をすくめるだけで、あまり反省した素振りは見せない。実際にまったく気にしていないのだろう。
「えっと……一番呼びやすいのはどれかな?」
気を取り直して真剣に考える。
「そうだな……『プティシャンス』と『プティトゥーナ』は可愛い響きだが、少し呼びにくいかもしれないな」
アークに言われて、その名前を舌にのせてみたら、確かに発音が少し言いにくい気がした。『プティ』と略して呼ぶのは可愛くていいと思っていたけれど。
「それじゃあ、『ルミシャンス』か『ルミトゥーナ』だね。んー……」
二つの名前を何度か繰り返してみる。
どちらも綺麗な響きで、呼びやすさは変わらない気がした。『ルミシャンス』の方が美しくて、『ルミトゥーナ』は可憐さがあるだろうか。
どちらも良くてなかなか決めきれない。寝ている卵を優しく撫でながら『君はどっちがいい』と尋ねてみた。
「『ルミシャンス』……っ、あ、こっち?」
何度目かにそう呟いた時、卵が眠りから覚めた気配があった。大きくあくびしているような感じがして、微笑ましい。
「なんだ、その子は自分で決めたのか?」
「そうみたい。ルミシャンス、いい名前だよね?」
卵に語りかけたら、『そーなのー?』と惚けたような返事が聞こえた気がする。でも、喜んでいるようにも思えるから、これでいいはずだ。
そもそもどの候補の名前にも、スノウとアークの愛が詰まっているのだから。
「——ルミシャンス、君に会えるのを待ってるよ」
ちゅ、とキスを贈ったら、くすぐったそうに笑う気配があって、スノウもにこにこと微笑んだ。
ひびが広がっている卵を指先で撫でながら、眠ったままの卵も反対の手で撫でる。くぅくぅ、と寝ているような気配が伝わってきて、思わずくすっと笑ってしまった。
(ねぇ、ブレスラウ。君の妹は寝てばっかりだね)
つい頭の中で囁きかけると、小さなカリカリ音が、少し呆れたように響いた気がした。それがさらに面白くて、にこにこと笑ってしまう。
スノウやアークには少し冷めた感じのブレスラウだけれど、妹には甘い兄になる予感がした。
「えっと、『ルミシャンス』『ルミトゥーナ』『プティシャンス』『プティトゥーナ』……どれも綺麗な響きな気がする」
「そうだな。魔王の娘、王女に相応しい優雅さがあるんじゃないか」
アークにそう言われて、スノウは「王女……」と呟いた。その事実に今さらながら気づいたのだ。
基本的に魔王は世襲ではないとされている。でも、強い竜族からは強い子が生まれる可能性が高いらしく、親から子に代が引き継がれることは少なくない。
だから、アークとスノウの子は王子や王女と呼ばれて貴ばれるだろうというのは、ルイスから聞いていた。
スノウ自身は雄ということもあり、番様と呼ばれることが多く、あまり魔王の番という立場を気にしたことがない。でも、子どもたちはスノウ以上に、立場を気にする必要があるのだろう。
そう考えると、ブレスラウもただのブレスより高貴さがある名前に思える。アークはそのことも考えて、名前を考えたのだろうか。
「……アークの名前って、何か意味があるの?」
「俺か? 竜族の里では、アークの『アー』は『貴い』で『ク』は『強き者』という意味だな。生まれた時から、俺は魔王になるのが決まっているほどの強さをみせていたから、らしい。さすがにその当時のことは覚えていないが」
ブレスラウに比べたら単純な名前だと思っていたら、竜族らしい意味がこれでもかと詰められていた。今さら知る事実である。
名前の響きの高貴さより、意味が重視されているのだと、スノウは純粋に『すごいなぁ』と思った。
「そっか。……王女なら、優雅さがあって、綺麗で、それでいて呼びやすいのがいいかな」
「呼びやすい?」
その必要があるのか、と言いたげに首を傾げるアークに、スノウは「うん」と頷いた。
「だって、王女様って呼ばれるよりも、やっぱりたくさんの人に名前を呼んでほしいもん。僕たちが愛されるようにって思ってつける大切な名前だよ? 好きな人たちみんなに呼んでもらえたら、この子もきっと嬉しい」
ゆっくりと卵を撫でる。
名前は一つの存在証明だと思う。そして、呼ばれることで、愛を示すとも思うのだ。スノウがアークに名前を呼ばれて、そう感じるように。
「……そうか。確かにそうだな。名前を呼ばれるのは嬉しいことだ」
アークが微笑み、少しねだるように見つめてくるので、スノウはふふっと微笑んだ。格好いいのに、時々可愛らしい番である。
「アーク、大好き」
「……スノウ、俺も愛してる」
ぱちりと目を瞬かせたアークが、すぐに蕩けるような眼差しでスノウに囁き返してきた。想いを籠めた名前の呼びかけは、思っていた以上にアークの心に届いたらしい。
なんだか今さら改めて名前を呼び合うというのは気恥ずかしいようにも思えたけれど、やはり幸せだ。スノウはアークと微笑み合って、暫くの間するべきことを忘れてしまった。
「……お二人とも、お子様のお名前はどうなさるのですか?」
ルイスに少し呆れたように言われて、スノウは「あっ……」と声を漏らして目を逸らした。
アークは肩をすくめるだけで、あまり反省した素振りは見せない。実際にまったく気にしていないのだろう。
「えっと……一番呼びやすいのはどれかな?」
気を取り直して真剣に考える。
「そうだな……『プティシャンス』と『プティトゥーナ』は可愛い響きだが、少し呼びにくいかもしれないな」
アークに言われて、その名前を舌にのせてみたら、確かに発音が少し言いにくい気がした。『プティ』と略して呼ぶのは可愛くていいと思っていたけれど。
「それじゃあ、『ルミシャンス』か『ルミトゥーナ』だね。んー……」
二つの名前を何度か繰り返してみる。
どちらも綺麗な響きで、呼びやすさは変わらない気がした。『ルミシャンス』の方が美しくて、『ルミトゥーナ』は可憐さがあるだろうか。
どちらも良くてなかなか決めきれない。寝ている卵を優しく撫でながら『君はどっちがいい』と尋ねてみた。
「『ルミシャンス』……っ、あ、こっち?」
何度目かにそう呟いた時、卵が眠りから覚めた気配があった。大きくあくびしているような感じがして、微笑ましい。
「なんだ、その子は自分で決めたのか?」
「そうみたい。ルミシャンス、いい名前だよね?」
卵に語りかけたら、『そーなのー?』と惚けたような返事が聞こえた気がする。でも、喜んでいるようにも思えるから、これでいいはずだ。
そもそもどの候補の名前にも、スノウとアークの愛が詰まっているのだから。
「——ルミシャンス、君に会えるのを待ってるよ」
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