雪豹くんは魔王さまに溺愛される

asagi

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続×3.雪豹くんとにぎやかな家族

4-12.愛しい家族

 アークとスノウの子どもの誕生は、魔王城ならず魔族世界全土を賑わわせた。誰もが次期魔王への期待を抱いているのだろう。

 とはいえ、生まれて一ヶ月も経っていないのだから、子どもたち二人に周囲から注がれるのは愛情ばかりだ。
 特にルミシャンスに対しては、誰もが頬を緩めてしまっている。

「にぃ、にぅ、にー」
「はいはい、なんですか。スライム体で遊びます?」

 目が開いたルミシャンスは、好奇心旺盛に動き回ったかと思えば、一瞬後にはストンと眠りに落ちるような子だ。

 遊びの最中に床で寝落ちているのだから、最近のスノウたちは床をよく見て歩くようになった。踏んづけでもしたら、双方ともに悲鳴をあげてしまうだろう。

 今はルイスが小さなスライム体を丸めてボールを作り、ルミシャンスの前で転がして遊んでくれていた。
 じっと目で追っては飛びかかろうとするルミシャンスの熱意に反し、脚力が足りていないのか、一向に捕まえられないでいるのが可愛らしい。

 スノウはお茶を飲みながらその頑張りを眺め、頬を緩めた。

 ルミシャンスはとにかく愛嬌がある。「愛せるか分からない」なんて言っていたアークが、「なるほど。これが番以外への庇護欲か」と呟くくらいに。

「ブレスラウは遊ばないの?」

 スノウの傍で寝転んでいたブレスラウに声を掛ける。

 ここで撫でたり抱き上げたりしないのが大切だ。ブレスラウはスノウに触れられたいときは自分から寄ってくる。
 一ヶ月の内になんとなく距離感が掴めてきた。

「ぐるる……」

 考えるように鳴いたブレスラウが、のそりと身体を起こした。次の瞬間にはバサバサと翼を動かせて、ルミシャンスの傍に下り立つ。

「にっ」
「ぐるる」

 身を低くしたブレスラウは、目の前を動くスライムボールに向けて勢いよく飛びかかった。ルミシャンスとは比べものにならない速さだ。

 呆気なく捕まえたスライムボールを口に咥え、ルミシャンスを振り返る。ルミシャンスの夕陽色の瞳がキラキラしていた。

「にぃーっ!」
「ぐる」

 ブレスラウは『ほら、やってみろ』と言うように、スライムボールをルイスの手に戻し、遊びの再開を指示した。
 ルイスは二人のやり取りの可愛らしさに悶えた様子を見せながら、手を動かす。

 スノウも緩む口元を手で押さえながら、じっと二人を見守った。

 ブレスラウが兄らしい態度でルミシャンスの面倒を見ることに、一番驚いているのはアークだ。竜族としてはありえないらしい。アークは「卵として一緒に生まれたことが影響しているのだろうか」と首を傾げていた。

 スノウにとっては、どんな理由であろうと、兄妹仲がよければ万事良しなので、にこにこと眺めるばかりである。

 親の役割が奪われている気がして、微妙な気持ちになることもなくはないけれど。

「に、に、……にぃ!」

 ルイスが動かすスライムボールにルミシャンスが飛びかかる。——ように見えて、その場でジャンプしただけなのを目撃してしまい、スノウは「ブフッ!」と堪えきれない笑い声をあげてしまった。

(僕の子が可愛すぎてつらい……)

 幸せな悩みに、今日もスノウの顔は緩んでどうしようもなかった。

「……ぐるる」

 呆れたように天井を見上げたブレスラウが、きょとんとしているルミシャンスの身体を尻尾で押す。

 その動きに合わせて、ルイスがさりげなくスライムボールを近づけると、ルミシャンスは再びジャンプした。——先ほどと同じように、その場で。

 けれど、タイミングを読んだブレスラウに押されて前に進み、見事スライムボールを手に入れられた。

「にぃ!」

 スライムボールをはむっと咥え、誇らしげに胸を張るルミシャンス。その頭をブレスラウが翼で撫でる。

「ぐるる」

 自分が助力したことなんて一切言わずに『よくできた』と褒めるブレスラウは誰がどう見たって、妹大好きなお兄ちゃんだった。

 アークが「竜族の長い歴史の中で、初めて確認されたタイプの突然変異」と真剣な表情で呟いていたのを思い出して、スノウは再び堪えきれない笑い声をこぼした。

 そんな風に子どもたちをおっかなびっくり観察しているアークの姿も含めて、スノウにとって愛しい家族の光景である。

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