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続×3.雪豹くんとにぎやかな家族
4-34.意地の張り合い
普段一緒に過ごしている中で、ブレスラウから威圧的な力を感じたことはない。竜族の多くが放っているそれを、ブレスラウは日頃は抑えているのだろうか。
そう思うと、ブレスラウに我慢を強いている気がして、少し落ち込む。「そこまで気を遣わなくても」と言えないのは、竜族への理解が多少なりとも深まったからだ。
「まだ幼いから感じにくいだけだ。あの子が我慢しているわけじゃない」
アークに肩を抱き寄せられて、スノウは目を見張った。内心に秘めた思いを、あっさりと見抜かれてしまったらしい。
慰めであったとしても、今のスノウにとってはホッと胸を撫で下ろせる言葉だった。
「……本当に? 無理はしてない?」
「ああ。だが、成長しても、スノウにはあまり感じられないかもしれないな」
「どうして?」
ブレスラウが成長することで威圧感を強めるならば、少しずつ慣れようと決意した途端に、アークの言葉が前提を覆した。
きょとんとしながらアークを見上げると、微笑みが向けられる。
「ブレスラウは竜族の中でも特異なほど優しいからな。特にスノウやルミシャンスに向ける情が強い。雪豹族の血を引いているからかもしれない。だから、ブレスラウの強さにスノウたちが怯えることにはならないだろう」
その言葉の意味が正直よく分からなかった。
スノウが小さく首を傾げると、アークも不思議そうに目を瞬かせる。
「……優しいと、強さを感じないの?」
「竜族が放つ気が強いのは、自尊心と他を平伏させようとする意志の表れだ。そして、ブレスラウがスノウやルミシャンスを平伏させようなんて考えるわけがない」
ようやく納得できた。つまり竜族は普段から強い気を放って、他者を圧倒しているけれど、好意ある相手にはそうではないということだろう。
「そっか。それなら安心だね。ルミシャンスがブレスラウを怖がることになっちゃったら、二人ともにとって可哀想だもん」
ブレスラウがルミシャンスを可愛がっているのは一目瞭然だ。そして、それと同じように、ルミシャンスもブレスラウを慕っているのだ。
スノウ自身はブレスラウの強さを感じてみたいとは思うけれど、好意ゆえに感じられないと聞かされれば、不満も湧かない。ブレスラウに好かれていることの方が大事だから。
「——あ、でも、そういう部分で、他の竜族にナメられちゃったりしない?」
ふと気づいたことに不安がこみ上げる。
竜族にとっては強さは最も大切なこと。それを示す手段が、威圧的な雰囲気ならば、ブレスラウの情のある態度は竜族として適していないのではないか。
「問題ない」
アークがブレスラウの方に視線を向けながら答えた。
その眼差しは僅かに柔らかい。アークなりにブレスラウを可愛がっているのが伝わってきて、スノウは話題とは関係なくにこにこと微笑んでしまった。
「そうなの? それは、アークがブレスラウの強さを感じ取れてるのと同じ理由?」
竜族同士なら分かるものがあるのかな、と思いながらスノウが問いかけると、アークは少し眉を寄せた。
「……そうだな。ある意味、ブレスラウが俺に対してあまり情を持っていないという証左になるが」
その不満そうな声音に、スノウは目を丸くした。すぐに吹き出すように笑ってしまったけれど。
アークはあまり気にしていないように見えたけれど、ブレスラウからの当たりが強いことに気づいてはいたらしい。
スノウはそれを、竜族同士だから普通のことなのだろうと考えていた。でも、アークが気にしているなら、ブレスラウを諌めるのも必要かもしれない。
どの程度で言うかは非常に迷うけれど。ブレスラウの個性を潰したくはないのだ。
「んー……でも、あれで、ブレスラウはアークのこと好きだと思うよ? 僕とルミシャンスへの対応が、特別甘いだけで」
とりあえずフォローを入れてみる。実際スノウのこの言葉は嘘ではないのだ。
ブレスラウのアークへの態度には、分かりにくいけれどちゃんと親子としての情があるように感じられる。
「——アークに対しては『反抗期の子ども』みたいな感じじゃないかなー。たぶん、大人になったらもっと柔らかくなると思う」
スノウはそう確信していた。
反抗期にはまだ早いと思うけれど、本で読んだそれと、ブレスラウのアクへの態度がそっくりなのだ。
ブレスラウが大人になるにつれて、色んな考え方を知って落ち着けば、自ずとアークへの理解も深まる。そうしたら、きっと親子としての情を素直に示してくれるようになると思う。
「そうか?」
極めて疑わしい、と言いたげに眉を顰めるアークを見て、スノウは溢れそうになる笑いを噛み殺した。
親としての悩みを抱えて惑うアークが見慣れなくて、なんとなく愉快だ。いずれスノウも同じ悩みを抱えるかもしれないと思うと、揶揄うことなんてできないけれど。
「うん。……でも、まぁ、もう少しアークに優しくしてって言っておくね」
「……別に、そこまで気にしてない」
ふいっと視線が逸らされる。ブレスラウの態度に少し傷ついていることを悟られたくないようだ。
アークのそんな意地っ張りなところがブレスラウとそっくりだと思って、スノウは『可愛いなぁ』と思いながら微笑んでしまった。
そう思うと、ブレスラウに我慢を強いている気がして、少し落ち込む。「そこまで気を遣わなくても」と言えないのは、竜族への理解が多少なりとも深まったからだ。
「まだ幼いから感じにくいだけだ。あの子が我慢しているわけじゃない」
アークに肩を抱き寄せられて、スノウは目を見張った。内心に秘めた思いを、あっさりと見抜かれてしまったらしい。
慰めであったとしても、今のスノウにとってはホッと胸を撫で下ろせる言葉だった。
「……本当に? 無理はしてない?」
「ああ。だが、成長しても、スノウにはあまり感じられないかもしれないな」
「どうして?」
ブレスラウが成長することで威圧感を強めるならば、少しずつ慣れようと決意した途端に、アークの言葉が前提を覆した。
きょとんとしながらアークを見上げると、微笑みが向けられる。
「ブレスラウは竜族の中でも特異なほど優しいからな。特にスノウやルミシャンスに向ける情が強い。雪豹族の血を引いているからかもしれない。だから、ブレスラウの強さにスノウたちが怯えることにはならないだろう」
その言葉の意味が正直よく分からなかった。
スノウが小さく首を傾げると、アークも不思議そうに目を瞬かせる。
「……優しいと、強さを感じないの?」
「竜族が放つ気が強いのは、自尊心と他を平伏させようとする意志の表れだ。そして、ブレスラウがスノウやルミシャンスを平伏させようなんて考えるわけがない」
ようやく納得できた。つまり竜族は普段から強い気を放って、他者を圧倒しているけれど、好意ある相手にはそうではないということだろう。
「そっか。それなら安心だね。ルミシャンスがブレスラウを怖がることになっちゃったら、二人ともにとって可哀想だもん」
ブレスラウがルミシャンスを可愛がっているのは一目瞭然だ。そして、それと同じように、ルミシャンスもブレスラウを慕っているのだ。
スノウ自身はブレスラウの強さを感じてみたいとは思うけれど、好意ゆえに感じられないと聞かされれば、不満も湧かない。ブレスラウに好かれていることの方が大事だから。
「——あ、でも、そういう部分で、他の竜族にナメられちゃったりしない?」
ふと気づいたことに不安がこみ上げる。
竜族にとっては強さは最も大切なこと。それを示す手段が、威圧的な雰囲気ならば、ブレスラウの情のある態度は竜族として適していないのではないか。
「問題ない」
アークがブレスラウの方に視線を向けながら答えた。
その眼差しは僅かに柔らかい。アークなりにブレスラウを可愛がっているのが伝わってきて、スノウは話題とは関係なくにこにこと微笑んでしまった。
「そうなの? それは、アークがブレスラウの強さを感じ取れてるのと同じ理由?」
竜族同士なら分かるものがあるのかな、と思いながらスノウが問いかけると、アークは少し眉を寄せた。
「……そうだな。ある意味、ブレスラウが俺に対してあまり情を持っていないという証左になるが」
その不満そうな声音に、スノウは目を丸くした。すぐに吹き出すように笑ってしまったけれど。
アークはあまり気にしていないように見えたけれど、ブレスラウからの当たりが強いことに気づいてはいたらしい。
スノウはそれを、竜族同士だから普通のことなのだろうと考えていた。でも、アークが気にしているなら、ブレスラウを諌めるのも必要かもしれない。
どの程度で言うかは非常に迷うけれど。ブレスラウの個性を潰したくはないのだ。
「んー……でも、あれで、ブレスラウはアークのこと好きだと思うよ? 僕とルミシャンスへの対応が、特別甘いだけで」
とりあえずフォローを入れてみる。実際スノウのこの言葉は嘘ではないのだ。
ブレスラウのアークへの態度には、分かりにくいけれどちゃんと親子としての情があるように感じられる。
「——アークに対しては『反抗期の子ども』みたいな感じじゃないかなー。たぶん、大人になったらもっと柔らかくなると思う」
スノウはそう確信していた。
反抗期にはまだ早いと思うけれど、本で読んだそれと、ブレスラウのアクへの態度がそっくりなのだ。
ブレスラウが大人になるにつれて、色んな考え方を知って落ち着けば、自ずとアークへの理解も深まる。そうしたら、きっと親子としての情を素直に示してくれるようになると思う。
「そうか?」
極めて疑わしい、と言いたげに眉を顰めるアークを見て、スノウは溢れそうになる笑いを噛み殺した。
親としての悩みを抱えて惑うアークが見慣れなくて、なんとなく愉快だ。いずれスノウも同じ悩みを抱えるかもしれないと思うと、揶揄うことなんてできないけれど。
「うん。……でも、まぁ、もう少しアークに優しくしてって言っておくね」
「……別に、そこまで気にしてない」
ふいっと視線が逸らされる。ブレスラウの態度に少し傷ついていることを悟られたくないようだ。
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