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続×3.雪豹くんとにぎやかな家族
4-46.親としての抗議
中途半端なところで切り上げることになった街散策。
目的も何も達成していないけれど、ブレスラウはまったく気にしていないようだ。スノウもルミシャンスも結構不満なのだけれど。
——というわけで。
「アーク、どういうことか、説明してもらうよ!」
スノウは子どもたちを連れて執務室に乗り込み、アークに詰め寄った。
アークは珍しく気圧され、気まずそうに目を逸らしている。明らかに、スノウに咎められる心当たりがありそうな様子だ。
「騒ぎに巻き込まれちゃったせいで、ルミシャンスは怯えちゃうし、街散策はほとんどできなかったし、疲れちゃったんだから」
うつらうつらとしているルミシャンスをルイスに預け、アークの頬に両手を添える。ぐいっと引き寄せたら、窺うような目で見つめられた。
「……怒っているか?」
「そう見えるなら、そうかもしれないね」
「……悪かった」
スノウの感情を察してもらえてなによりだ。スノウ自身、分かりやすいようにむくれて見せているのだけれど。
子どもたちの前で大人気ないなんて、今更の話である。ルミシャンスは寝ているし、ブレスラウは気にしない様子だから。
「謝罪よりも説明! アークのことだから、命に危険はないって判断だったんだろうけど。ルイスだって無傷だし」
ルミシャンスを抱いて揺らしているルイスを横目で確認する。
ルイスは保護されて帰ってきた途端、「ご心配おかけしましたー」と緊張感がない笑みを浮かべて謝ってきた。
スノウが思わず「攫われてたんだよね?」と聞いてしまうくらい呑気な雰囲気だったのだ。
ルイス曰く、「魔法アイテムで転移させられたのは驚きましたが、すぐ脱出できましたので」ということらしい。
転移先は鉄格子のある牢屋のようになっていて、魔力の放出が封じられた空間だったそうだ。
でも、ルイスは即座にスライム型に戻って、鉄格子の間を抜け出てきた。内在魔力の操作が封じられていなかったからできたことである。
帰ってきて説明した後、ルイスは「魔族なんて人型をとっていても、本質は様々なのに、お馬鹿なやり方でしたね」と余裕な表情で笑っていた。
実際、ルイスを連れてきてくれた警邏隊も「これまでも全員自力で脱出しています。ことごとく運がない連中のようですね」と呆れた雰囲気だった。
「——もし攫われたのがルミシャンスやブレスラウだったら、逃げられなかったかもしれなかった……」
ルイスの説明を思い出しながら、その状況に子どもたちを当てはめて、スノウは恐ろしくなる。
愛する子どもたちが攫われるだけでも怖いのに、危害を加えられるなんて考えたくもない。
「いや、ルミシャンスはともかく、ブレスラウは逃げるどころか、周囲一帯を破壊するだろう」
「うん。そうしたかった」
アークに続いてブレスラウに言い切られて、スノウも『確かにそうかも……?』と思ったので否定できなかった。
「で、でも、狙われたのはたぶん、ルミシャンスの方だよ!?」
「ルミシャンスにはスノウがついているだろう? もしくはルイスが。スノウが一緒なら、守護の腕輪で共に守られるからそもそも攫われることはない。ルイスが一緒なら、どうとでも逃げられる」
アークが冷静な口調で言う。
その声を聞いていると、怒っているスノウの方がおかしい気がしてきた。
「むぅ……そうなんだろうけど……」
納得できない思いが抑えきれない。
頬を膨らませていると、アークに優しく撫でられた。申し訳なさそうに微笑まれて、刺々しい気分が丸くなってしまう。
「スノウが心配する気持ちは親として当然なのだろう。悲しませて悪かった」
「……どうしてそんなことをしたの?」
アークが自分から進んでこんなことをするとは思えない。
じっと真剣な目を向けたら、アークの眉間にシワが寄った。逸らされた眼差しが、遠くの誰かを睨むように険しさを孕んでいる。
「竜族たちからの要請だ」
「え、どういうこと……?」
予想外な返事に、スノウは目を丸くする。
アークは苦々しげな表情でため息をついた後、「ひとまず座って話をしよう」とスノウを抱き寄せた。
その仕草が癒やしを求めるような甘える仕草だったので、スノウは抵抗せずに受け入れる。
座る場所がアークの膝の上なのはどうかと思うけれど。
ブレスラウの目が少し気になってしまった。
目的も何も達成していないけれど、ブレスラウはまったく気にしていないようだ。スノウもルミシャンスも結構不満なのだけれど。
——というわけで。
「アーク、どういうことか、説明してもらうよ!」
スノウは子どもたちを連れて執務室に乗り込み、アークに詰め寄った。
アークは珍しく気圧され、気まずそうに目を逸らしている。明らかに、スノウに咎められる心当たりがありそうな様子だ。
「騒ぎに巻き込まれちゃったせいで、ルミシャンスは怯えちゃうし、街散策はほとんどできなかったし、疲れちゃったんだから」
うつらうつらとしているルミシャンスをルイスに預け、アークの頬に両手を添える。ぐいっと引き寄せたら、窺うような目で見つめられた。
「……怒っているか?」
「そう見えるなら、そうかもしれないね」
「……悪かった」
スノウの感情を察してもらえてなによりだ。スノウ自身、分かりやすいようにむくれて見せているのだけれど。
子どもたちの前で大人気ないなんて、今更の話である。ルミシャンスは寝ているし、ブレスラウは気にしない様子だから。
「謝罪よりも説明! アークのことだから、命に危険はないって判断だったんだろうけど。ルイスだって無傷だし」
ルミシャンスを抱いて揺らしているルイスを横目で確認する。
ルイスは保護されて帰ってきた途端、「ご心配おかけしましたー」と緊張感がない笑みを浮かべて謝ってきた。
スノウが思わず「攫われてたんだよね?」と聞いてしまうくらい呑気な雰囲気だったのだ。
ルイス曰く、「魔法アイテムで転移させられたのは驚きましたが、すぐ脱出できましたので」ということらしい。
転移先は鉄格子のある牢屋のようになっていて、魔力の放出が封じられた空間だったそうだ。
でも、ルイスは即座にスライム型に戻って、鉄格子の間を抜け出てきた。内在魔力の操作が封じられていなかったからできたことである。
帰ってきて説明した後、ルイスは「魔族なんて人型をとっていても、本質は様々なのに、お馬鹿なやり方でしたね」と余裕な表情で笑っていた。
実際、ルイスを連れてきてくれた警邏隊も「これまでも全員自力で脱出しています。ことごとく運がない連中のようですね」と呆れた雰囲気だった。
「——もし攫われたのがルミシャンスやブレスラウだったら、逃げられなかったかもしれなかった……」
ルイスの説明を思い出しながら、その状況に子どもたちを当てはめて、スノウは恐ろしくなる。
愛する子どもたちが攫われるだけでも怖いのに、危害を加えられるなんて考えたくもない。
「いや、ルミシャンスはともかく、ブレスラウは逃げるどころか、周囲一帯を破壊するだろう」
「うん。そうしたかった」
アークに続いてブレスラウに言い切られて、スノウも『確かにそうかも……?』と思ったので否定できなかった。
「で、でも、狙われたのはたぶん、ルミシャンスの方だよ!?」
「ルミシャンスにはスノウがついているだろう? もしくはルイスが。スノウが一緒なら、守護の腕輪で共に守られるからそもそも攫われることはない。ルイスが一緒なら、どうとでも逃げられる」
アークが冷静な口調で言う。
その声を聞いていると、怒っているスノウの方がおかしい気がしてきた。
「むぅ……そうなんだろうけど……」
納得できない思いが抑えきれない。
頬を膨らませていると、アークに優しく撫でられた。申し訳なさそうに微笑まれて、刺々しい気分が丸くなってしまう。
「スノウが心配する気持ちは親として当然なのだろう。悲しませて悪かった」
「……どうしてそんなことをしたの?」
アークが自分から進んでこんなことをするとは思えない。
じっと真剣な目を向けたら、アークの眉間にシワが寄った。逸らされた眼差しが、遠くの誰かを睨むように険しさを孕んでいる。
「竜族たちからの要請だ」
「え、どういうこと……?」
予想外な返事に、スノウは目を丸くする。
アークは苦々しげな表情でため息をついた後、「ひとまず座って話をしよう」とスノウを抱き寄せた。
その仕草が癒やしを求めるような甘える仕草だったので、スノウは抵抗せずに受け入れる。
座る場所がアークの膝の上なのはどうかと思うけれど。
ブレスラウの目が少し気になってしまった。
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