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続×3.雪豹くんとにぎやかな家族
4-48.隠されたわけ
アークが目を伏せる。
「俺がスノウにそれを教えられなかったのは、スノウが心配のあまりブレスラウに試練のことを悟られる可能性があると思ったからだ」
「ブレスラウに知られたらダメだったの?」
スノウがきょとんと目を丸くすると、アークは口元にほのかな笑みを浮かべた。
愛しそうに頬を撫でられて、スノウは目を細めて擦り寄る。
「ああ。咄嗟の対応力をはかるという意味があったからな」
「……なるほど。それは、絶対、ブレスラウにバレたらダメだね。僕が聞かされてたら、あっさりバレちゃうっていうのも理解できる」
スノウは自分が隠し事ができない性質だと自覚していた。子どもたちに危険が及ぶかもしれないことならば、なおさら隠し続けることなんてできないだろう。
心配のあまり、ブレスラウに何かあると悟られて問い詰められた挙句、あっさりと答えを告げている光景が容易に想像できた。
口を引き結ぶ。
アークの対応は正しかったとしか言えない。心情的には納得できなくても、これは受け入れるべき事柄だ。
「——そっかぁ……それじゃあ、ブレスラウの試練の結果はどうなの?」
過去のことばかりを思い悩まず、今後のことを考えようと意識を切り替えて尋ねる。
すると、アークとロウエンが難しい表情で首を傾げた。
「まだすべての対処が終わっていないから、結果を出すのは早いが……」
「あ、そっか。問題の解決、っていうのが試練なんだもんね。実行犯たちの背後関係を洗ったり、対処したりする必要があるんだ?」
「そうだな。次は人を動かす手腕をはかる感じだろう。背後にいる者への対処はどうするか、考え中だが」
ぽん、と手を打って納得を示すスノウに、アークが曖昧に頷く。
ブレスラウは自分のことを話されているというのに、これまであまり関心がない様子だったけれど、ふと顔を上げた。
「実行犯を見つけるのに、ママが手を出したのはいいの?」
「……僕、やっちゃった?」
吹雪を作ったことを思い出して、スノウはアークの顔を窺う。
事情を知らなかったのだからしょうがないはずだけれど、スノウがブレスラウの試練に干渉してしまったのは事実だ。それが結果にどう影響するのだろうか。
「いや、あれは……試練を見守っていた竜族が『雪豹族の能力を甘く見ていた我らが悪い』と報告してきたから、問題はないだろう」
「え、僕たち見られてたの?」
「ママが竜族に認められた……」
監視者がいたことに驚くスノウに対して、ブレスラウの感想はズレていた。ほのかに喜びが滲む声音に、スノウはパチパチと目を瞬かせる。
「ブレスラウ、そんなに僕が竜族のみんなから軽視されてたの気にしてたんだね」
パーティー中も、その後の様子でも分かっていたことだったけれど、ブレスラウの愛情が感じられた気がして、スノウも嬉しくなる。
にこにこと微笑むと、ブレスラウが照れた様子で目を逸らした。そんな顔さえスノウにとっては可愛い。
「……あいつらと戦うの、絶対魔物相手より簡単だったと思う。試練として、大丈夫?」
ブレスラウが話を変えた。
確かにそれはスノウも気になっていたことで、アークに目で答えを求める。
「あの男が使っていた身を隠す魔法アイテムは、相応の強さがないとつき崩せないものだ。だからこそ、これまで警邏隊が取り逃がしてきたわけだ。それに対処できたのだから、強さの証明としては十分だろう。もともと、本質的な力の強さは理解されていたというのもあるが」
アークの説明に納得する。
スノウは『ブレスラウは簡単に壊していたように見えていたけど』と思い、なんだか誇らしくなった。
(僕の可愛い子、ブレスラウは強いんだよ!)
誰に主張することもできない自慢を、心の中で叫んでおさめる。
だいぶ気分が上向いてきた。
「じゃあ、あとは、問題を片付ける能力をはかられるの?」
「そうだな。執務を教えるついでにしよう。別に、背後にいる者たちをブレスラウ一人で皆殺しにしてこいと言うつもりはない」
「当たり前だよ!」
過激なことを言うアークを咎めたけれど、不思議そうにされたので、竜族の感覚ではそういうことを求めてもおかしくなかったらしい。
スノウは『やっぱり種族差の理解って難しいなぁ』と遠い目をしてしまった。
「俺がスノウにそれを教えられなかったのは、スノウが心配のあまりブレスラウに試練のことを悟られる可能性があると思ったからだ」
「ブレスラウに知られたらダメだったの?」
スノウがきょとんと目を丸くすると、アークは口元にほのかな笑みを浮かべた。
愛しそうに頬を撫でられて、スノウは目を細めて擦り寄る。
「ああ。咄嗟の対応力をはかるという意味があったからな」
「……なるほど。それは、絶対、ブレスラウにバレたらダメだね。僕が聞かされてたら、あっさりバレちゃうっていうのも理解できる」
スノウは自分が隠し事ができない性質だと自覚していた。子どもたちに危険が及ぶかもしれないことならば、なおさら隠し続けることなんてできないだろう。
心配のあまり、ブレスラウに何かあると悟られて問い詰められた挙句、あっさりと答えを告げている光景が容易に想像できた。
口を引き結ぶ。
アークの対応は正しかったとしか言えない。心情的には納得できなくても、これは受け入れるべき事柄だ。
「——そっかぁ……それじゃあ、ブレスラウの試練の結果はどうなの?」
過去のことばかりを思い悩まず、今後のことを考えようと意識を切り替えて尋ねる。
すると、アークとロウエンが難しい表情で首を傾げた。
「まだすべての対処が終わっていないから、結果を出すのは早いが……」
「あ、そっか。問題の解決、っていうのが試練なんだもんね。実行犯たちの背後関係を洗ったり、対処したりする必要があるんだ?」
「そうだな。次は人を動かす手腕をはかる感じだろう。背後にいる者への対処はどうするか、考え中だが」
ぽん、と手を打って納得を示すスノウに、アークが曖昧に頷く。
ブレスラウは自分のことを話されているというのに、これまであまり関心がない様子だったけれど、ふと顔を上げた。
「実行犯を見つけるのに、ママが手を出したのはいいの?」
「……僕、やっちゃった?」
吹雪を作ったことを思い出して、スノウはアークの顔を窺う。
事情を知らなかったのだからしょうがないはずだけれど、スノウがブレスラウの試練に干渉してしまったのは事実だ。それが結果にどう影響するのだろうか。
「いや、あれは……試練を見守っていた竜族が『雪豹族の能力を甘く見ていた我らが悪い』と報告してきたから、問題はないだろう」
「え、僕たち見られてたの?」
「ママが竜族に認められた……」
監視者がいたことに驚くスノウに対して、ブレスラウの感想はズレていた。ほのかに喜びが滲む声音に、スノウはパチパチと目を瞬かせる。
「ブレスラウ、そんなに僕が竜族のみんなから軽視されてたの気にしてたんだね」
パーティー中も、その後の様子でも分かっていたことだったけれど、ブレスラウの愛情が感じられた気がして、スノウも嬉しくなる。
にこにこと微笑むと、ブレスラウが照れた様子で目を逸らした。そんな顔さえスノウにとっては可愛い。
「……あいつらと戦うの、絶対魔物相手より簡単だったと思う。試練として、大丈夫?」
ブレスラウが話を変えた。
確かにそれはスノウも気になっていたことで、アークに目で答えを求める。
「あの男が使っていた身を隠す魔法アイテムは、相応の強さがないとつき崩せないものだ。だからこそ、これまで警邏隊が取り逃がしてきたわけだ。それに対処できたのだから、強さの証明としては十分だろう。もともと、本質的な力の強さは理解されていたというのもあるが」
アークの説明に納得する。
スノウは『ブレスラウは簡単に壊していたように見えていたけど』と思い、なんだか誇らしくなった。
(僕の可愛い子、ブレスラウは強いんだよ!)
誰に主張することもできない自慢を、心の中で叫んでおさめる。
だいぶ気分が上向いてきた。
「じゃあ、あとは、問題を片付ける能力をはかられるの?」
「そうだな。執務を教えるついでにしよう。別に、背後にいる者たちをブレスラウ一人で皆殺しにしてこいと言うつもりはない」
「当たり前だよ!」
過激なことを言うアークを咎めたけれど、不思議そうにされたので、竜族の感覚ではそういうことを求めてもおかしくなかったらしい。
スノウは『やっぱり種族差の理解って難しいなぁ』と遠い目をしてしまった。
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