102 / 113
Ⅱ−ⅳ.あなたと過ごす故郷
2−41.ジル様と家族
しおりを挟む
ちょっと別のことに思考が逸れていたら、ジル様がクツクツと喉で笑う声が聞こえてきた。
「ジル様、どうなさいました?」
「いや……フランが家族に愛されているのは知っていたが、こうして実際に見て、嬉しくなっただけだ」
「どうしてジル様が嬉しくなるんですか?」
僅かながらも反感を向けられたのに、ジル様がそれを気にする様子はなかった。そればかりか、大兄様の態度も鷹揚に受け止め、納得しているように見える。
口を噤んでジル様を見つめる家族の様子が気になったけど、僕はジル様に家族を受け入れてもらえたことが嬉しくて、つい微笑んでいた。
「番を健やかに育んでくれた家族に、感謝しないわけがないだろう? フランが愛情を注がれて育ったことを知れて、嬉しいんだ」
目を愛しそうに細めたジル様に見つめられながら、ゆっくりと頬を撫でられる。
家族の前でジル様に触れられるのは少し恥ずかしい。でも、それ以上に、ジル様が僕のことを家族ごと愛してくれているのが伝わってきて、喜びのあまりゆるゆると頬が緩んだ。
「……とても大切な、愛する家族です。ようやくジル様に紹介することができて、僕も嬉しいです」
照れ混じりににこりと微笑み、ジル様の手に頬を擦り寄せる。
慣れた仕草だったから何気なくしたことだったけど、不意に小兄様から「本当に仲が良いようで私も安心したよ」という呟きが聞こえてきて、ハッとして離れた。
そっと家族に視線を向けると、父様から温かな眼差し――でも、ちょっと苦々しい雰囲気の表情――を向けられていた。
大兄様は少し呆れた感じだったけど、先ほどまでのトゲがなくなった気がする。
「小兄様、本当に嬉しそうですね?」
今までにないくらい穏やかに嬉しそうに微笑んでいる小兄様を見て、思わず目を見張ってしまった。
「当然だろう? 可愛い弟の将来がどうなることかと心配していた中で、こんなに素晴らしい方と出会えて、幸せそうにしているところを見ることができたんだから」
「心配?」
首を傾げる僕に対し、父様と大兄様は「あぁ……」と遠くを見るような眼差しになる。
ジル様は一拍遅れて心配の意味を察した様子で、少し眉を寄せ「苦労していたようだな」と呟いた。
「――どういう意味ですか?」
一人だけのけ者にされた気分で、思わず頬を膨らませて拗ねてしまった。
少し驚いた様子になったジル様が、不意にフッと笑いながら、僕の頬にキスを落とす。
「やはり、フランはいつもより可愛らしいな」
「なっ……ちょっと、ジル様……」
ジル様の突然のキスにわたわたとしながら咎めてみる。でも、ジル様だけでなく、家族にも微笑ましそうに見つめられて、咄嗟にジル様に抱きついて顔を隠した。
頬が熱い。こんな顔をジル様はともかく家族に見られたくない。
そんな思いでした行動は、むしろ微笑ましいものとして家族に受け取られたらしい。
「ふふっ、フランも大人になったと思ったのに、まだ甘えただね」
「やることやってるはずなんだけどな」
「兄上」
「……さーせん」
小兄様の静かな圧力を感じる声音に、大兄様が早々に白旗を上げるのは、昔から変わらない。
「親としては複雑な気分だ……」
「父上はそろそろ子離れなさった方がよろしいですよ」
「フレデリック……簡単にそう言うがな……」
父様と小兄様がささやかに言い争っている声を聞きながら、そっとジル様の顔を見上げる。
「……それで、心配というのは、何なんですか?」
「まだ気になるのか。ははっ」
笑ったジル様を、少し拗ねながら見つめると、愛しそうに額にキスされた。
「――フランを娶ろうと、周囲をうろついていた者たちのことだ」
「あぁ……そんなこともありましたね?」
言われてみれば納得である。
ボワージア家の資金面を支える代わりにと、僕との縁談を取り付けようとしていた商人たちは、一人二人ではない。
その対応に家族がどれほど苦労していたか、生じていただろう心痛とあわせて思い出せば、なんとなく家族が安堵する気持ちが理解できた気がする。
お金で僕を買おうとしていた人と比ぶべくもなく、ジル様が素晴らしいのは明確な事実だ。
「――家族を安心させることができたのは、ジル様と出会えてから起きた良いことの中の一つですね」
「お義父君らにもそう思ってもらえたなら嬉しい限りだ」
ジル様と微笑み合った僕は、「甘いなぁ」と苦笑していた小兄様に「大切な番ですからね」と改めてジル様を紹介した。
「ジル様、どうなさいました?」
「いや……フランが家族に愛されているのは知っていたが、こうして実際に見て、嬉しくなっただけだ」
「どうしてジル様が嬉しくなるんですか?」
僅かながらも反感を向けられたのに、ジル様がそれを気にする様子はなかった。そればかりか、大兄様の態度も鷹揚に受け止め、納得しているように見える。
口を噤んでジル様を見つめる家族の様子が気になったけど、僕はジル様に家族を受け入れてもらえたことが嬉しくて、つい微笑んでいた。
「番を健やかに育んでくれた家族に、感謝しないわけがないだろう? フランが愛情を注がれて育ったことを知れて、嬉しいんだ」
目を愛しそうに細めたジル様に見つめられながら、ゆっくりと頬を撫でられる。
家族の前でジル様に触れられるのは少し恥ずかしい。でも、それ以上に、ジル様が僕のことを家族ごと愛してくれているのが伝わってきて、喜びのあまりゆるゆると頬が緩んだ。
「……とても大切な、愛する家族です。ようやくジル様に紹介することができて、僕も嬉しいです」
照れ混じりににこりと微笑み、ジル様の手に頬を擦り寄せる。
慣れた仕草だったから何気なくしたことだったけど、不意に小兄様から「本当に仲が良いようで私も安心したよ」という呟きが聞こえてきて、ハッとして離れた。
そっと家族に視線を向けると、父様から温かな眼差し――でも、ちょっと苦々しい雰囲気の表情――を向けられていた。
大兄様は少し呆れた感じだったけど、先ほどまでのトゲがなくなった気がする。
「小兄様、本当に嬉しそうですね?」
今までにないくらい穏やかに嬉しそうに微笑んでいる小兄様を見て、思わず目を見張ってしまった。
「当然だろう? 可愛い弟の将来がどうなることかと心配していた中で、こんなに素晴らしい方と出会えて、幸せそうにしているところを見ることができたんだから」
「心配?」
首を傾げる僕に対し、父様と大兄様は「あぁ……」と遠くを見るような眼差しになる。
ジル様は一拍遅れて心配の意味を察した様子で、少し眉を寄せ「苦労していたようだな」と呟いた。
「――どういう意味ですか?」
一人だけのけ者にされた気分で、思わず頬を膨らませて拗ねてしまった。
少し驚いた様子になったジル様が、不意にフッと笑いながら、僕の頬にキスを落とす。
「やはり、フランはいつもより可愛らしいな」
「なっ……ちょっと、ジル様……」
ジル様の突然のキスにわたわたとしながら咎めてみる。でも、ジル様だけでなく、家族にも微笑ましそうに見つめられて、咄嗟にジル様に抱きついて顔を隠した。
頬が熱い。こんな顔をジル様はともかく家族に見られたくない。
そんな思いでした行動は、むしろ微笑ましいものとして家族に受け取られたらしい。
「ふふっ、フランも大人になったと思ったのに、まだ甘えただね」
「やることやってるはずなんだけどな」
「兄上」
「……さーせん」
小兄様の静かな圧力を感じる声音に、大兄様が早々に白旗を上げるのは、昔から変わらない。
「親としては複雑な気分だ……」
「父上はそろそろ子離れなさった方がよろしいですよ」
「フレデリック……簡単にそう言うがな……」
父様と小兄様がささやかに言い争っている声を聞きながら、そっとジル様の顔を見上げる。
「……それで、心配というのは、何なんですか?」
「まだ気になるのか。ははっ」
笑ったジル様を、少し拗ねながら見つめると、愛しそうに額にキスされた。
「――フランを娶ろうと、周囲をうろついていた者たちのことだ」
「あぁ……そんなこともありましたね?」
言われてみれば納得である。
ボワージア家の資金面を支える代わりにと、僕との縁談を取り付けようとしていた商人たちは、一人二人ではない。
その対応に家族がどれほど苦労していたか、生じていただろう心痛とあわせて思い出せば、なんとなく家族が安堵する気持ちが理解できた気がする。
お金で僕を買おうとしていた人と比ぶべくもなく、ジル様が素晴らしいのは明確な事実だ。
「――家族を安心させることができたのは、ジル様と出会えてから起きた良いことの中の一つですね」
「お義父君らにもそう思ってもらえたなら嬉しい限りだ」
ジル様と微笑み合った僕は、「甘いなぁ」と苦笑していた小兄様に「大切な番ですからね」と改めてジル様を紹介した。
935
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした
水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」
公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。
婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。
しかし、それは新たな人生の始まりだった。
前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。
そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。
共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。
だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。
彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。
一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。
これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。
痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる