天翔ける獣の願いごと

asagi

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Ⅴ.この想い、天まで届け

48.愛の証

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 ちゅ、と後孔にキスするように触れる。ただそこにあるだけなのに、確かな存在感と熱を感じて、悠里は口づけをほどき甘く喘いだ。指とはまったく違う。長く焦らされた奥がそれを求めて無意識の内に蠢いてしまうのが、淫らで恥ずかしかった。でも、どうやっても止められそうにない。

「ぁっ」
「ふ、ぅ……悠里」

 硬いものが後孔表面を愛撫するように動く。狼泉の額から、再び汗が滴った。悠里は震える手を伸ばして、狼泉の顔に触れる。

「ね、ろうせん、はやく……」

 快感と焦れったさに蕩けた頭では、ねだる言葉しか出てこない。狼泉の腰に脚を絡めて引き寄せると、先端がグッと埋まった。予想以上の圧迫感に、悠里は目をぎゅっと瞑って身体を硬直させてしまう。

「っん、ぁっ!」
「クッ……」

 きゅうきゅうと狼泉のものを締めつける。限界まで広がった後孔は、じっくりとほぐされていたおかげで痛みはまったくなかった。だが、指よりも、埋められているという感覚が強い。

「んぅ……おぉ、きぃ……っ」

 思わず目に涙を浮かべ、狼泉をなじる。心の中で『もうちょっと縮んで!』と思ってしまった。それはさすがに無茶な願いだと分かっているので、言葉にしなかったが。

「っ……まだ、全然、いれてないぞ」
「うそ……あと、どれ、くらぃ?」

 狼泉が眉を寄せ、苦笑する。その言葉が信じられなくて、悠里は目を見開いた。

「……ここまで、届くくらい?」

 狼泉の手が悠里の下腹部に触れて、圧をかけてくる。そのせいで余計に埋められているものを意識してしまい、悠里はのけぞって喘いだ。
 だが、狼泉が言わんとしていることは理解できた。指で広げられたところより、さらに奥まで届くと言っているのだろう。たぶん、まだ半分もはいっていない。奥まで届くことを想像すると、中がきゅんと切なく蠢いた。

「ぁ、ん……」
「くっ……。悠里、できれば、少し緩めてほしい……。長く、可愛がれない」
「む、りぃっ……ゃ、ああっ」

 声を出した瞬間に僅かに緩んだのを見逃さず、ずずずと這いいってくる。それを反射的にぎゅうっと締めつけると、硬さと熱をまざまざと感じた。自分の動きにさらに快感を煽られて、悠里はポロポロと涙をこぼす。

「泣かないでくれ……」

 狼泉の唇が目尻に触れて、涙を吸い取る。潤み歪んだ視界に映る狼泉は、眉を寄せながら頬を上気させていて、感じているのが悠里だけではないのだと実感した。

(今、セックス、してるんだ……)

 不意に身にしみるように理解する。悠里たちは、愛を確かめ合う行為をしているのだ。悠里は狼泉を愛している。狼泉も悠里を愛している。言葉がなくとも伝わる想いに、心が満たされた。
 心の動きが体の反応に直結する。きつく食んでいた内壁が、狼泉のものを愛撫するように柔らかく潤み、甘く吸い付くように蠢いた。

「ろう、せん、っ……だい、すき、ぃ」
「っ、あぁ、俺も、愛してる」

 口元を緩めて愛を囁くと、狼泉から愛おしげな眼差しが返ってくる。心が満たされて、幸せでたまらない。身も心も狼泉を受け入れた瞬間だった。
 グイッと押し込まれるものに、「ああっ!」と嬌声をこぼす。トンと軽い衝撃と共に、下半身が密着したのを感じた。奥までいっぱいになるくらい開かれて、満たされている。

「ぅ……ぁ……は、ぁ……」
「……全部、入ったぞ」
「ぅ、ん……いっぱ、い……かた、ぃ、ね……」

 そっと自分の下腹部を撫でる。この中に狼泉がいるのだと思うと、驚くほどの愛おしさが湧き上がってきた。苦しい息をこぼしながらも、思わずふふっと微笑んでしまう。

「っ……悪い、動く……」
「えっ? ぁ、……あ、んっ!」

 喉の奥で唸るような声の後、ずるりと抜けていく切なさを感じて、悠里は眉を顰めた。それはほんの一瞬のことで、すぐに奥までズンッと押し込まれて、頭の中が真っ白になる。快感というより、衝撃だった。
 身体がビクビクと震え、内壁が狼泉に絡みつく。その抵抗をものともせず、イッたばかりで敏感な内壁をゴリゴリと抉るように刺激されて、悠里は泣き惑った。

「はっ……気持ち、いいだろう、っ?」
「やぁっ……ああっ、ふ、ぁ」
「悠里、いいって、言ってみろ……」

 何を言われているか理解できない。でも、狼泉に何かを求められていることは感じ取って、悠里は絶えず熱い息がこぼれ落ちる唇を必死に動かす。

「ぁ、んぁ……いぃ、っああ!」
「ふっ、気持ちいいな」
「んぅ……いぃ……きもちぃ、っ」

 壊れたように「いい」と呟く度に、気持ちよさが押し寄せてくる。ガツガツと突かれて身体を揺さぶられて、自分が感じて喘ぐだけの生き物になってしまったみたいに思えた。
 だが、感じ入った表情で悠里を味わう狼泉を視界に捉え、悠里は幸福感を覚えて口元を緩める。狼泉が喜んでくれるなら、啼かされるだけの囲われ生活も魅力的な気がする。

「楽しそう、だな」
「んっ、ぁあ、ふ、……すき、っ」
「俺も……愛してる、っ」
「ああっ! ん、ぅ……ぁ」

 抜ける寸前のところから、最奥までガツッと突かれる。前の方からビシャと白濁が散った。身体がガクガクと震え、内壁が搾り取るように狼泉を締めつける。頭の中は真っ白で、身体の制御が一切できない。
 そのままグリグリと中をかき混ぜられて、悠里は掠れた喘ぎ声を上げる。埋められた楔がビクッと跳ね、中が熱いもので満たされるような感覚があった。嬲るように腰を揺すられて、グチュグチュとひどい水音がする。

「ふぅ……」
「ろ、せん……」
「ん……?」

 重い瞼をこじ開けると、満たされた表情の狼泉が見えた。悠里の呼びかけに応える眼差しが甘い。胸がきゅっと締めつけられるような愛しさを覚えて、悠里は頬を緩める。
 手を伸ばして狼泉を抱き寄せると、優しく唇が重なった。互いの粘膜をすり合わせ吸い付く。舌が絡みついたところから、じんわりと甘やかな痺れが広がっていった。

「ぁ……ん……」
「悠里……」

 埋められたままだったものが、ゆるゆると内壁を擦る。そこで初めて、それがまだ硬度を失っていないことに気づいた。
 きょとんと狼泉を見上げると、鼻先に柔らかく噛みつかれる。狼泉の目が、ねだるように悠里を見つめ返した。

「ろうせん……」

 目を合わせれば、もう言葉は必要なかった。
 腰に絡めた脚に力を込めると、途端に、奥をガツンと抉られて、再び快感が溢れる。

「ああっ……んぅ」
「ふ……」

 寝室に満ちる熱は、まだまだ冷める気配がない。離れがたい愛おしさに、悠里も狼泉も箍が外れたようにお互いを求め続けた。

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