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五章
第七天使
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「頭が……痛てぇ」
三半規管が狂い、頭を抱えずには居られない状況下で辰巳が視界に入れたのは暗闇。
──いや、宇宙だった。
断定は出来はしない、何故なら宇宙なら星は輝きはせずにただの石だからだ。
「だが……、この暖かい無数の輝きは一体──」
立ちくらみ眼前が歪む中で、辰巳は色々な把握に努める。が、苛む様に訪れる吐き気が呼吸すらまともにさせてはくれない。
「ンだよ。仲間とはぐれただけでこの有様か?」
何処からか気だるく覇気のない、端的に言えばやる気の無い男性の声が聞こえた。それも離れた距離ではなく、間近。この暗闇の中で、それでいて限りなく近くで聞こえた、嘲笑う声に本能は自然とロンの槍の切っ先を前に向けた。
「だ、誰だ!?」
上擦った声は、命を危惧する。一人でいる事が不安だとか嫌だとかではない。一人でいる事はとうの昔に辰巳は慣れているのだ。
では無く、辰巳が恐れていたのはもっと具体的なものだった。
・一つ、目前としていた帝都・アルヴァアロンの姿がない。
・二つ、誰かの力により強制的に転移させられた。
・三つ、声がした途端に漂うのは、やる気がない声とは裏腹に息がしにくいほどの威圧感・緊迫感。
辰巳は張り裂けそうな律動を深呼吸で宥める。そして固唾を飲み込み、それらを踏まえて一人でいる状況で最悪な事態を懸念していた。
(──敵は一人じゃない……。俺達は今、バラバラとなり敵と対峙しているのか?)
指を鳴らす音が響くと一つの球体が頭上に上り発光した。
「ふーん、こいつが神法に似たモノを扱う人間ねぇ……。だが……だが──ククックハハハハッ!」
目の前に現れた四枚の白と黒の翼を持つ青髪の天使は高らかに嘲笑う。あまりにもおかしいのか、頭を抱え肩を揺らし口を大きく開く姿は馬鹿にしているとしか思えない。だが、辰巳は憤怒を鎮め冷静に至る。もし、例えば今の作法が態と隙を作っている故の事なら、怒りに身を任せ突っかかれば相手側の思う壷だ。辰巳は切っ先を天使に向けたまま双眸は相手を一点に穿つ。
(アイツらは、無事なのだろうか……)
「何がおかしいんだ」
自分が、力の持ち主じゃない事を悟られない為に辰巳は余裕なフリをした。もしかしたら、さっきの高笑いは見抜いたからこそ出た勝利の咆哮なのかもしれない。ならなおのこと辰巳は、その答えを正すために力を振るわなければと覚悟を決める。
「何がおかしいって、訳じゃないんだが……。いや、おかしいのか。クカッ……可笑しいとしか言いようがねぇーんだな」
「言いたい事が分からねぇな。俺はお前を簡単に殺せるんだぜ」
余裕を見せたつもりが、言って辰巳は後悔をした。本能が感じ取ったモノは正に辰巳に向けられた凶悪なまでの正に殺意。口角を吊り上げて、後頭部で手を編んだ隙だらけの格好をした天使から体臭の如く留まることを知らず滲み出ていた。
「殺せる? このベルフェゴールを? 簡単に? いやいや、そりゃあ参ったねえ」
膝は笑い、汗は額から滴る。対峙し、圧倒的な力の差。いや、存在の格差を身をもって辰巳は味わう事となる。
ベルフェゴールは、強いとか弱いとかそんな規格に、次元に収まる存在ではない。つまりは、辰巳の想像を遥かに越えた何かを彼は持っているのだ。
(だが……それでも)
「俺は、選ばれたんだよ。お前等、堕天使の野望を挫く神の使い。即ち神使としてな」
不安を振り払う事は出来なくても、気にせぬように努めて笑みを浮かべた。
「はん。俺らの野望? 何も知らない害悪が何を言ってやがる。自惚れるのもいい加減にしろよ」
若干、声音が変わったのを辰巳は聞き逃さなかった。人の気持ちを逆撫でする物言いが一変し、自分達の為にベルフェゴールが喋った瞬間でもある。
「自惚れてるのはそっちだろ? さっきまでのピエロはどうした? 最後の最後まで戯けてみせろよ、ベルフェゴールさん」
「こんな奴が……ルシファーが期待した奴か……。見る目がないもんだな、アイツも。アイツの理想を夢をぶち壊すのも仲間の役目ってやつか」
「何を一人でくっちゃべってやがる」
「ん? いや、すまない。まあじゃあめんどくせぇけど始めるか? 神法がなんたるかを俺が教えてやるよ」と、ベルフェゴールが初めて事を構えた時、アルトリアは膝を付き絶叫していた。
「バルハ……!! ねぇ、バルハ! だめ、死んじゃダメッ!! 目を、目を開けて!」
「アルトリア……様。最後の最期まで貴女様のお役に立てて幸せでした……」
三半規管が狂い、頭を抱えずには居られない状況下で辰巳が視界に入れたのは暗闇。
──いや、宇宙だった。
断定は出来はしない、何故なら宇宙なら星は輝きはせずにただの石だからだ。
「だが……、この暖かい無数の輝きは一体──」
立ちくらみ眼前が歪む中で、辰巳は色々な把握に努める。が、苛む様に訪れる吐き気が呼吸すらまともにさせてはくれない。
「ンだよ。仲間とはぐれただけでこの有様か?」
何処からか気だるく覇気のない、端的に言えばやる気の無い男性の声が聞こえた。それも離れた距離ではなく、間近。この暗闇の中で、それでいて限りなく近くで聞こえた、嘲笑う声に本能は自然とロンの槍の切っ先を前に向けた。
「だ、誰だ!?」
上擦った声は、命を危惧する。一人でいる事が不安だとか嫌だとかではない。一人でいる事はとうの昔に辰巳は慣れているのだ。
では無く、辰巳が恐れていたのはもっと具体的なものだった。
・一つ、目前としていた帝都・アルヴァアロンの姿がない。
・二つ、誰かの力により強制的に転移させられた。
・三つ、声がした途端に漂うのは、やる気がない声とは裏腹に息がしにくいほどの威圧感・緊迫感。
辰巳は張り裂けそうな律動を深呼吸で宥める。そして固唾を飲み込み、それらを踏まえて一人でいる状況で最悪な事態を懸念していた。
(──敵は一人じゃない……。俺達は今、バラバラとなり敵と対峙しているのか?)
指を鳴らす音が響くと一つの球体が頭上に上り発光した。
「ふーん、こいつが神法に似たモノを扱う人間ねぇ……。だが……だが──ククックハハハハッ!」
目の前に現れた四枚の白と黒の翼を持つ青髪の天使は高らかに嘲笑う。あまりにもおかしいのか、頭を抱え肩を揺らし口を大きく開く姿は馬鹿にしているとしか思えない。だが、辰巳は憤怒を鎮め冷静に至る。もし、例えば今の作法が態と隙を作っている故の事なら、怒りに身を任せ突っかかれば相手側の思う壷だ。辰巳は切っ先を天使に向けたまま双眸は相手を一点に穿つ。
(アイツらは、無事なのだろうか……)
「何がおかしいんだ」
自分が、力の持ち主じゃない事を悟られない為に辰巳は余裕なフリをした。もしかしたら、さっきの高笑いは見抜いたからこそ出た勝利の咆哮なのかもしれない。ならなおのこと辰巳は、その答えを正すために力を振るわなければと覚悟を決める。
「何がおかしいって、訳じゃないんだが……。いや、おかしいのか。クカッ……可笑しいとしか言いようがねぇーんだな」
「言いたい事が分からねぇな。俺はお前を簡単に殺せるんだぜ」
余裕を見せたつもりが、言って辰巳は後悔をした。本能が感じ取ったモノは正に辰巳に向けられた凶悪なまでの正に殺意。口角を吊り上げて、後頭部で手を編んだ隙だらけの格好をした天使から体臭の如く留まることを知らず滲み出ていた。
「殺せる? このベルフェゴールを? 簡単に? いやいや、そりゃあ参ったねえ」
膝は笑い、汗は額から滴る。対峙し、圧倒的な力の差。いや、存在の格差を身をもって辰巳は味わう事となる。
ベルフェゴールは、強いとか弱いとかそんな規格に、次元に収まる存在ではない。つまりは、辰巳の想像を遥かに越えた何かを彼は持っているのだ。
(だが……それでも)
「俺は、選ばれたんだよ。お前等、堕天使の野望を挫く神の使い。即ち神使としてな」
不安を振り払う事は出来なくても、気にせぬように努めて笑みを浮かべた。
「はん。俺らの野望? 何も知らない害悪が何を言ってやがる。自惚れるのもいい加減にしろよ」
若干、声音が変わったのを辰巳は聞き逃さなかった。人の気持ちを逆撫でする物言いが一変し、自分達の為にベルフェゴールが喋った瞬間でもある。
「自惚れてるのはそっちだろ? さっきまでのピエロはどうした? 最後の最後まで戯けてみせろよ、ベルフェゴールさん」
「こんな奴が……ルシファーが期待した奴か……。見る目がないもんだな、アイツも。アイツの理想を夢をぶち壊すのも仲間の役目ってやつか」
「何を一人でくっちゃべってやがる」
「ん? いや、すまない。まあじゃあめんどくせぇけど始めるか? 神法がなんたるかを俺が教えてやるよ」と、ベルフェゴールが初めて事を構えた時、アルトリアは膝を付き絶叫していた。
「バルハ……!! ねぇ、バルハ! だめ、死んじゃダメッ!! 目を、目を開けて!」
「アルトリア……様。最後の最期まで貴女様のお役に立てて幸せでした……」
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