異世界転移したら、スマホが超優秀美少女に~ギルド本部にも追放されたので孤高の英雄を目指します~

流転

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五章

アルトリアの決意「前編」

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「此処は一体なんなのでしょうか、アルトリア様」

「私にも分からないわ。ただ一つ分かると言えば、何処かに転移したことぐらいね」

 アルトリアとバルハは広大な湿地帯へと体を置いていた。濁った水・流木・異様に伸びた木々・汗ばむ湿気は今までの環境とは異なるものだ。だが、アルトリアが覚えた違和感はもっと違う場所にあった。

「それに、此処は本当に生きているのかしら」

「生きている、とはどー言った事でしょうか」

 バルハは、先頭で辺を見渡すアルトリアを写しながら問う。するとアルトリアは徐に人差し指を口にくわえてから天へと指を突き立て腕を伸ばした。

「風が、ね? 無いの。いいえ、風どころか水の流れる音、動物達の気配も全く」

 大自然と共に生きてきたからこそ、瞬時に感じるものだった。バルハも、納得をしたのかそれ以上アルトリアに問う事も無く隣に立つ。

「確かにアルトリア様の言うとうりです。実に不思議な場所です」

「でしょう? でも、一番は私達が皆からはぐれたという事。これが敵の仕業なら早く合流するのが先決。──歩きましょう、バルハ」

 一歩先を行き、アルトリアは言った。

「ええ。それがいいですね」

 付き従うバルハは、静かに後ろを歩く。波紋も描かず、それどころか水に濡れることも泥濘に足を取られることもない。
 無音の中を二つの息だけが生命を彩る。

「ねぇ、バルハ」

 ふと、吐息と共にアルトリアは素朴に問う。

「なんですか? アルトリア様」

「私は父や母の記憶も無いし、帝都に……元王都で育った事も無い分思い入れもないの」

「はい」

「私の選択はあっていたのかしら。そのまま滅びを気にせず、バルハと遠く遠くの大陸に逃げれば良かったのかしらね」

 バルハは、小さい声で「はい」と答えて、間髪を入れることなく口を開いた。

「どちらも正解で、どちらも不正解です。良いですか? アルトリア様。前者も後者も、他人に問えば賛否両論です。結局は人の主観でしか決まりません。貴女様の決めた意向は、本当の意味で理解出来るのは自分自身しか居ないのです。ですから、一番に自分がしたい事が、貴女様だけの正解なんですよ」

 丁寧に神妙にバルハは言った。落ち着き、優しい声。一番聞き慣れて、頼もしい声。アルトリアは、心地好く鼓膜を叩くバルハの声に耳を任せて深く息を吐いた。

「ふぅ──、そうね、そうよね。自分が正しいかなんかは、自分にしか分からない。なら、自分が本当にしたい事をすればいいのよね。タツミ達が言っていたように」

「そうです、アルトリア様。彼等は見ず知らずの老骨を無利益で救ってくださいました。優しく、そして強い彼等は、貴女様を導く光となるでしょう」

「──騎士であり家臣であり、そしてなにより一人の友として……」

「一人の友、ね。タツミには、違う感じで振り向いて欲しいのだけれど……」

 頬を薄紅に染め下を向きアルトリアは声を吃らせた。
 アルトリアにとって、タツミはバルハを救ってくれた恩人でもあり自分を肯定し支えてくれる存在だと覚えている。不思議と惹き込まれる黒い瞳も笑顔も今となって尚鮮明に思い出していた。
 声を吃らせた要因はそれであり、自分でも分かったからこそ器官が詰まり咳き込む。

「ゴホッ! べ、別に深い意味は無いのよ! それよりも、ほらあっちは開けた道があるのじゃないかしら!」

 バルハに突っ込まれるのを恐れ、アルトリアは早歩きで前へ進んだ。一方、バルハはと言うと我が子を愛でる様子で微笑を浮かべる。

「はい、かしこまりましたアルトリア様」

 それから、歩く事三十分ほどが過ぎ二人は開けた場所に来ていた。
 だが、周りは何も無い。上から降り注ぐ日が水を反射させているぐらいだろう。アルトリアは、そんなことよりも、と肩を竦ませバルハを勢いよく指を指した。

「さっきの話は、他言無用だからね! バルハ」

 バルハは微笑み、首を左右に振るって、

「誰にもいいませんよ、安心してください」

「もう、本当かなあ?」と、アルトリアはバルハの言葉に耳を傾けホッと肩を撫で下ろす。

「ええ、信じてください」

「それならいいのだけれど……。私達はいつになったら抜け出せるのかしら」

「いつにって……それは私を殺せば道が開かれますよ。我主わがしゅの血を引きし者よ……。そして、使命に背きし落とし子よ」

「貴方は、一体……」

 目の前に現れた、宙に浮かぶ男性は二枚の白い翼を翻しながらも冷めた瞳でアルトリアを穿つ。
 興味も無いのか、感情を捨てた無機質な声が逆に悪寒を感じさせ身の毛がよだつ雰囲気を漂わせていた。

「私は、大天使ベルフェル様に仕える天使が一人、ルミエル」

 翼の羽を広げ浮かぶ姿は、日に反射した事も相まって神々しく荘厳たるものを感じざるを得ない。

「そして、貴女の事は知っています。クロノス様の血を引きし半神半人のアルトリアだとね」

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