異世界転移したら、スマホが超優秀美少女に~ギルド本部にも追放されたので孤高の英雄を目指します~

流転

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五章

賽は投げられた

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「その心意気は買いましょう。帝都を救済し王とし君臨するのでは無く、一から務めるというのですね?」

 ルミエルは、頭を抱え表情を崩し高笑いをした。
 耳障りな声を右から左へと流し口に出す。

「ええ、そうよ。私がルールであり、私が正義になる。全てを壊し一から始めるわ。堕天使も何もかもいない平和な世界を」

「まあ、どちらにせよこの世界の監視者となるのなら計画通り……と言う事ですか」

「何を言っているの?」

「いえ、こちらの話です。貴女が王となり方翼は神と──これはこれは、面白くなってきましたね」

「意味の分からないことを……」

「すいません。では、始めましょうか」

 ルミエルは、槍を構え急降下をする。だがそれはアルトリアにとっては都合が良かった。先ほどのように空から攻撃をされては防戦一方となる所。直接攻撃に転じてくれたのなら対処のしようもある。
 剣を構え、視線は逸らさずにルミエルを捉え間合いに入ったのを確認し自分に対して叫ぶ。

「ここだ!! ──はぁぁあ!!」

 目は翡翠に変わり、時は止まる。堕天使にも効果があるのは確信がこれで出来た。

 アルトリアは、柄を力強く握り振り上げる。初めて人の形をした生き物を手にかける故に、莫大な勇気を消費。

「でも、手は汚さなくてはならない」

 意を決し、振り上げた剣を振り下げる。空を切る音が短く鳴るとアルトリアの口からは「えっ?」と言葉が漏れる。

 血が出る事も無く、肉を切った感覚もない。それどころかルミエルは砂煙が如く消え、切っ先は地を叩いていた。

 辺を見渡せどルミエルは、見当たらない。 

「えっと……はぁはぁ……逃げた、のかしら」

 相手の逃避に、微かな期待を乗せて天を仰ぎみると一つの影がアルトリアを包む。

「逃げる? 私が? それは、有り得ない話ですよ」

 確信は、見事に崩壊。目の前には翼を翻すルミエルが時を生きている。

「やはり、私の力では……ダメ、なのッ」

 悔し紛れに出た言葉は弱音では無く、自分を責める鋭利な刃物。挫かれた戦意を首の皮一枚で持ち堪えてるのは、それでも約束を果たす為。

 アルトリアは、目に力を再び宿し言った。


「ダメなんかじゃないわ……。何度でも、何度でも私はっ!!」

「はぁあああ!!」

「それじゃあ、意味がありません」

 ルミエルは、背後から容赦なくアルトリアの脇腹を蹴り上げる。降下するスピードと合わせた物理攻撃は、いくら鎧を纏っていようと意味は成さず。
 逆に逃げ場のなくなった衝撃は、体全身に行き渡った。

「ガッ……ハ……」

 初めて味わった血の味、他者からの容赦がない暴力。アルトリアは、飛びそうになる意識を痛みを用いて手繰り寄せる。数回バウンドをし、木に体をめり込ませ停止。呼吸がしにくいことから、あばら骨が数本イッてると考えに至る。だが、それでもアルトリアは立ち上がる。文字通り、命を燃やし守ってくれたバルハの為にも大人になるのだ、と。

 視界は霞み、鼻血は止まらない。息をする度に血が器官を伝い口に行き渡る。たった一撃で満身創痍。それは、人と天使との圧倒的な力の差を知らしめるのに十分だった。

「ふむ、どうやら一命は取り留めたようですね」

 鎧は、蹴られた所を中心に大破しており、青黒く染まった横っ腹が露わになっている。ルミエルは、着地をすると蹴った右足の爪先で地を叩いた。それは、アルトリアから見れば蹴ったダメージさえも微々たるものだと思えるぐらい余裕な素振り。

「こ、こんなの余裕、よ」

 負けじと歯を食いしばり、蹌踉めき笑う膝に喝をいれて剣を構える。

「クロノスとは、世界。世界とは時間に縛られている。貴女が扱う時間は、流れを止めるだけ。それでは世界に疎まれ終わるのみ」

(世界は……時間? ……クロノスは時間を制する……)

 ルミエルの言葉にアルトリアは何かを掴む。

(なら、時を加速させるのは? でも、この場所を加速させた所でなんの意味も成さない。ならば……私、そう、私自身の時を加速させるのはどうかしら)

「何かを掴んだようですね、クロノスの残り香よ」

「煩いわね。お喋りすぎた自分を恨みなさい」

(行くわよッ!!)

 強く念じ、アルトリアは自分自身の歩む時間と今いる世界の時間に矛盾を生じさせた。この大陸での一秒はアルトリアが十秒進んだ過去の話。確実に今、アルトリアは時間を超越した存在に近づいたのだ。

「まだ甘い! もっとです、もっと高みを目指しなさい! 誰にも囚われることなく、この世界を守れる存在になる為に、早く速く強くなるのです!」

 ルミエルは、尋常ではないスピードのアルトリアの剣戟を躱す。今を楽しんでいるかのように顔は歪み、瞳には凶器の色が色濃く宿っていた。

 脱兎し、飛びかかり音を置き去りに振るわれる剣は、凡そ人が追いつけるスピードではない。もし、かりに追いつけるモノがあるとするならば、今でもなおアルトリアを照らす光、ぐらいだろうか。

「はぁはぁ、でも体の負荷が莫大……」

「何を苦しそうな顔をしているのですか!まだまだいきますよ」

 ルミエルは、太陽の光で体を眩ませながら縦一閃、アルトリアに切りかかる。

「くっ……まだ、まだ……よ!!」

 アルトリアは、ルミエルの時をマイナスへと働きかけ紙一重で躱し自分の時を早めて背中に切りかかる。だが、それすらも見越した思考をルミエルはしていたのか、難なく躱し飛翔した。

「さあ、もっと楽しませて下さい。貴女にはそれだけの価値がある」

「はあはあ、何を言ってるのよ。勝手に期待されていい迷惑よ、本当に」

 何十分にも渡る攻防は、どちら側によることも無く均衡を保つ。そんな中でアルトリアは、とうとう膝をついた。

「残念です。クロノスの残り香よ、貴女に少なからず期待をした私達が間違えだったのかも知れません。──では、死んでくださ──」

 額に切っ先を当てられ、少し押されただけで皮膚は裂け、血は鼻筋を伝い滴る。
 掴みかけた時の力を発揮できずに居る自分が悔しく、手は拳を作り強く握った。
 瞳は生きるのを諦めず、まだある可能性を逃さまいとルミエルを穿つ。

「大丈夫? アルトリア」

 この時、正に奇跡が起こった瞬間だった。
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