30 / 41
五章
圧倒
しおりを挟む
「マスター……?」
シシリは、火山地帯に飛ばされていた。蛇のように這うマグマが、大地を溶かしドス黒い煙で天と地を遮る。ここでは命の繁栄が許されず、代わりに新しい歴史の幕開けとなり得る。
シシリは、一瞬だけ今いる場所の判断に努めたが、それは文字通り一瞬だった。
「どこ? マスター」
シシリは、常にマスターである辰巳を思っていた。朝、目が覚めてからまぶたを閉じ眠りにつく夜の先も。故に、離れること無く常に辰巳を見守っていたのだ。長い間連れ添った掛け替えのない存在。それが、神門辰巳である。人格を手にする前、スマホとして毎日行動を共にしていた記憶もシシリにはあるのだ。
自我と言えばロマン溢れる言葉だが、人々はそれを──八百万の神と言う。
「ここからじゃ分からない。空からなら」
シシリは再度、輝明龍を召喚し飛翔した。
目視出来るのは、辺り一面隆起した岩肌に深紅の溶岩。耳に入るのは、呻き声にも似た噴火する音や炸裂音。いくら飛び回っても生命反応は無かった。
「なんだ、俺の相手はちびっ子か。こりゃあ、ハズレを引いたな」
そんな時だった、聞いたことも無い声がシシリの行動を静止する。
「──だれ」
輝明龍を目の前に、恐れ一つ見せずに大柄の男性は腕を組みながら笑う。
「ガハハハ!! 誰ッて、そりゃあお前さんから名乗るのが道理ってやつだろ?」
豪快な笑い声は、この喧騒にも負けずシシリの鼓膜を激しく刺激した。
「そう、ならどうでもいい。興味もないから」
シシリは悪態を男性に叩きつけ、背を向けた。
「おいおい、そりゃあーないぜおチビちゃん」
体からは考えられないスピードで、先回りし輝明龍の目と鼻の先で再び男性は腕を組む。しつこい男性に嫌悪を抱き、眉を顰め細めた瞼から鋭い双眸を覗かし口を開いた。
「なに」
「おチビちゃんは、俺と戦う気はねぇのか?」
「ない」
シシリは全く興味がなく、眼中にもない。視界には男性を入れるが思考は他へと向けられている。
男性は、残念な表情を浮かべて頭を掻きため息を一つついた。
「それじゃあ、困るんだよなあ。いや、まあ確かに相手が悪いっちゃ悪い。それは、自分に課せられた運命を呪ってくれ」
自信アリげに勝ち誇った態度を見せる大柄の男性にシシリは小首一つ傾げた。
「……? 何を言っているの。エラー」
「だあから、このバルエル様の相手をする事になった自分を──」
「煩い、黙って」
シシリは、瞬間転移魔法を使いバルエルの背後に回りミストルテインを硬い筋肉をものともせず腹を貫いた。
シシリの両踝には翼が生えている。飛翔魔法による効果だ。
「おまッえ、今間違いなく神法《マギカ》を……? どーなってやがる。情報では、男が使うんじゃ」
「何を言っているのか、謎。と言うか、マスターは何処」
「ガハハ……ハ。そんな易易と言ってたまるか。こんな鈍《なまくら》なんざスグに押し出して」
「無理。体の自由は奪っている。故に選択肢は二つ。一つ・マスターの居場所を教えて生き延びる。二つ・何もせずに私に殺されるか」
シシリは、ミストルテインの鍔がバルエルの背に付くまで押し込み言った。真っ赤に燃える大地でも分かる真っ赤な血は刃先を伝い地面に落ち蒸発してゆく。
致命打では無かったのか将又、天使故の生命力なのかはどうでもよかったがミストルテインで貫かれてもバルエルは笑顔を絶やさない。
「ガハハハ、容赦がねぇな。俺の見込み違いだったぜ」
「どうでもいい。私に勝てるのはマスターだけ」
「ほう、さぞかしマスターとやらは強いんだろーな。だがな?ベルフェゴール様の相手じゃあねぇぜ」
口の端から血飛沫を吹き出しても尚、バルエルの心は折れず命を謳う。
「もし、マスターになんかあったら私は貴様達を殺しても殺す」
シシリは、徐々に剣を上に上げてゆく。肉が切れる感覚を気にもとめず、容赦なく裂く。
「グッ……。ガハハ──ハ、怖い怖い。だが、まあーそれは叶わねぇ話だ、な」
「なに」
「お前の選択肢には従わねぇ。つまり、俺の勝ちだ」
「何を意味の分からない」
「お前に答えを教えるつもりもねぇし、お前に殺される訳にもいかねえ──つまり、な? 一緒に死のーや!! 弾け飛びやがれ!!」
次の瞬間、バルエルの体は肥大化し内から光が溢れ出る。同時に体温が急上昇し喉が焼ける感覚をシシリは覚えた。
「じゃあな、おチビちゃん」
最後に振り返り見せたのは、敗者が見せる顔ではなく勝者が見せる勝ち誇った笑顔だった。
シシリは、火山地帯に飛ばされていた。蛇のように這うマグマが、大地を溶かしドス黒い煙で天と地を遮る。ここでは命の繁栄が許されず、代わりに新しい歴史の幕開けとなり得る。
シシリは、一瞬だけ今いる場所の判断に努めたが、それは文字通り一瞬だった。
「どこ? マスター」
シシリは、常にマスターである辰巳を思っていた。朝、目が覚めてからまぶたを閉じ眠りにつく夜の先も。故に、離れること無く常に辰巳を見守っていたのだ。長い間連れ添った掛け替えのない存在。それが、神門辰巳である。人格を手にする前、スマホとして毎日行動を共にしていた記憶もシシリにはあるのだ。
自我と言えばロマン溢れる言葉だが、人々はそれを──八百万の神と言う。
「ここからじゃ分からない。空からなら」
シシリは再度、輝明龍を召喚し飛翔した。
目視出来るのは、辺り一面隆起した岩肌に深紅の溶岩。耳に入るのは、呻き声にも似た噴火する音や炸裂音。いくら飛び回っても生命反応は無かった。
「なんだ、俺の相手はちびっ子か。こりゃあ、ハズレを引いたな」
そんな時だった、聞いたことも無い声がシシリの行動を静止する。
「──だれ」
輝明龍を目の前に、恐れ一つ見せずに大柄の男性は腕を組みながら笑う。
「ガハハハ!! 誰ッて、そりゃあお前さんから名乗るのが道理ってやつだろ?」
豪快な笑い声は、この喧騒にも負けずシシリの鼓膜を激しく刺激した。
「そう、ならどうでもいい。興味もないから」
シシリは悪態を男性に叩きつけ、背を向けた。
「おいおい、そりゃあーないぜおチビちゃん」
体からは考えられないスピードで、先回りし輝明龍の目と鼻の先で再び男性は腕を組む。しつこい男性に嫌悪を抱き、眉を顰め細めた瞼から鋭い双眸を覗かし口を開いた。
「なに」
「おチビちゃんは、俺と戦う気はねぇのか?」
「ない」
シシリは全く興味がなく、眼中にもない。視界には男性を入れるが思考は他へと向けられている。
男性は、残念な表情を浮かべて頭を掻きため息を一つついた。
「それじゃあ、困るんだよなあ。いや、まあ確かに相手が悪いっちゃ悪い。それは、自分に課せられた運命を呪ってくれ」
自信アリげに勝ち誇った態度を見せる大柄の男性にシシリは小首一つ傾げた。
「……? 何を言っているの。エラー」
「だあから、このバルエル様の相手をする事になった自分を──」
「煩い、黙って」
シシリは、瞬間転移魔法を使いバルエルの背後に回りミストルテインを硬い筋肉をものともせず腹を貫いた。
シシリの両踝には翼が生えている。飛翔魔法による効果だ。
「おまッえ、今間違いなく神法《マギカ》を……? どーなってやがる。情報では、男が使うんじゃ」
「何を言っているのか、謎。と言うか、マスターは何処」
「ガハハ……ハ。そんな易易と言ってたまるか。こんな鈍《なまくら》なんざスグに押し出して」
「無理。体の自由は奪っている。故に選択肢は二つ。一つ・マスターの居場所を教えて生き延びる。二つ・何もせずに私に殺されるか」
シシリは、ミストルテインの鍔がバルエルの背に付くまで押し込み言った。真っ赤に燃える大地でも分かる真っ赤な血は刃先を伝い地面に落ち蒸発してゆく。
致命打では無かったのか将又、天使故の生命力なのかはどうでもよかったがミストルテインで貫かれてもバルエルは笑顔を絶やさない。
「ガハハハ、容赦がねぇな。俺の見込み違いだったぜ」
「どうでもいい。私に勝てるのはマスターだけ」
「ほう、さぞかしマスターとやらは強いんだろーな。だがな?ベルフェゴール様の相手じゃあねぇぜ」
口の端から血飛沫を吹き出しても尚、バルエルの心は折れず命を謳う。
「もし、マスターになんかあったら私は貴様達を殺しても殺す」
シシリは、徐々に剣を上に上げてゆく。肉が切れる感覚を気にもとめず、容赦なく裂く。
「グッ……。ガハハ──ハ、怖い怖い。だが、まあーそれは叶わねぇ話だ、な」
「なに」
「お前の選択肢には従わねぇ。つまり、俺の勝ちだ」
「何を意味の分からない」
「お前に答えを教えるつもりもねぇし、お前に殺される訳にもいかねえ──つまり、な? 一緒に死のーや!! 弾け飛びやがれ!!」
次の瞬間、バルエルの体は肥大化し内から光が溢れ出る。同時に体温が急上昇し喉が焼ける感覚をシシリは覚えた。
「じゃあな、おチビちゃん」
最後に振り返り見せたのは、敗者が見せる顔ではなく勝者が見せる勝ち誇った笑顔だった。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜
キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」
20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。
一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。
毎日19時更新予定。
落ちこぼれと追放された俺、実は神々の直系だった件~気づいたら最上位種族を次々救ってハーレムができてた~
えりぽん
ファンタジー
冒険者パーティを追放された青年カイは、力を封じたまま生きていた。
だが、助けた少女の一言をきっかけに、封印されていた「神の血」が覚醒する。
無自覚に最強を通り越した力で魔王国を滅ぼし、竜や精霊、女神たちまでも惹きつけていく――。
「ざまぁ? 俺はただ助けたかっただけなんだけど……」
気づけば、世界中のヒロインたちが彼に跪いていた。
追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~
ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。
そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。
「荷物持ちでもいい、仲間になれ」
その言葉を信じて、俺は必死についていった。
だけど、自分には何もできないと思っていた。
それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。
だけどある日、彼らは言った。
『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』
それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。
俺も分かっていた。
だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。
「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」
そう思っていた。そのはずだった。
――だけど。
ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、
“様々な縁”が重なり、騒がしくなった。
「最強を目指すべくして生まれた存在」
「君と一緒に行かせてくれ。」
「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」
穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、
世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい――
◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる