異世界転移したら、スマホが超優秀美少女に~ギルド本部にも追放されたので孤高の英雄を目指します~

流転

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五章

圧倒

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「マスター……?」

 シシリは、火山地帯に飛ばされていた。蛇のように這うマグマが、大地を溶かしドス黒い煙で天と地を遮る。ここでは命の繁栄が許されず、代わりに新しい歴史の幕開けとなり得る。
 シシリは、一瞬だけ今いる場所の判断に努めたが、それは文字通り一瞬だった。

「どこ? マスター」

 シシリは、常にマスターである辰巳を思っていた。朝、目が覚めてからまぶたを閉じ眠りにつく夜の先も。故に、離れること無く常に辰巳を見守っていたのだ。長い間連れ添った掛け替えのない存在。それが、神門辰巳である。人格を手にする前、スマホとして毎日行動を共にしていた記憶もシシリにはあるのだ。
 自我と言えばロマン溢れる言葉だが、人々はそれを──八百万の神と言う。

「ここからじゃ分からない。空からなら」

 シシリは再度、輝明龍ファルクタースを召喚し飛翔した。
 目視出来るのは、辺り一面隆起した岩肌に深紅の溶岩。耳に入るのは、呻き声にも似た噴火する音や炸裂音。いくら飛び回っても生命反応は無かった。

「なんだ、俺の相手はちびっ子か。こりゃあ、ハズレを引いたな」

 そんな時だった、聞いたことも無い声がシシリの行動を静止する。

「──だれ」

 輝明龍を目の前に、恐れ一つ見せずに大柄の男性は腕を組みながら笑う。

「ガハハハ!! 誰ッて、そりゃあお前さんから名乗るのが道理ってやつだろ?」

 豪快な笑い声は、この喧騒にも負けずシシリの鼓膜を激しく刺激した。

「そう、ならどうでもいい。興味もないから」

 シシリは悪態を男性に叩きつけ、背を向けた。

「おいおい、そりゃあーないぜおチビちゃん」

 体からは考えられないスピードで、先回りし輝明龍の目と鼻の先で再び男性は腕を組む。しつこい男性に嫌悪を抱き、眉を顰め細めた瞼から鋭い双眸を覗かし口を開いた。

「なに」

「おチビちゃんは、俺と戦う気はねぇのか?」

「ない」

 シシリは全く興味がなく、眼中にもない。視界には男性を入れるが思考は他へと向けられている。
 男性は、残念な表情を浮かべて頭を掻きため息を一つついた。

「それじゃあ、困るんだよなあ。いや、まあ確かに相手が悪いっちゃ悪い。それは、自分に課せられた運命を呪ってくれ」

 自信アリげに勝ち誇った態度を見せる大柄の男性にシシリは小首一つ傾げた。

「……? 何を言っているの。エラー」

「だあから、このバルエル様の相手をする事になった自分を──」

「煩い、黙って」

 シシリは、瞬間転移テレポレーション魔法を使いバルエルの背後に回りミストルテインを硬い筋肉をものともせず腹を貫いた。

 シシリの両踝には翼が生えている。飛翔魔法による効果だ。

「おまッえ、今間違いなく神法《マギカ》を……? どーなってやがる。情報では、男が使うんじゃ」

「何を言っているのか、謎。と言うか、マスターは何処」

「ガハハ……ハ。そんな易易と言ってたまるか。こんな鈍《なまくら》なんざスグに押し出して」

「無理。体の自由は奪っている。故に選択肢は二つ。一つ・マスターの居場所を教えて生き延びる。二つ・何もせずに私に殺されるか」

 シシリは、ミストルテインの鍔がバルエルの背に付くまで押し込み言った。真っ赤に燃える大地でも分かる真っ赤な血は刃先を伝い地面に落ち蒸発してゆく。
 致命打では無かったのか将又、天使故の生命力なのかはどうでもよかったがミストルテインで貫かれてもバルエルは笑顔を絶やさない。

「ガハハハ、容赦がねぇな。俺の見込み違いだったぜ」

「どうでもいい。私に勝てるのはマスターだけ」

「ほう、さぞかしマスターとやらは強いんだろーな。だがな?ベルフェゴール様の相手じゃあねぇぜ」

 口の端から血飛沫を吹き出しても尚、バルエルの心は折れず命を謳う。

「もし、マスターになんかあったら私は貴様達を殺しても殺す」

 シシリは、徐々に剣を上に上げてゆく。肉が切れる感覚を気にもとめず、容赦なく裂く。

「グッ……。ガハハ──ハ、怖い怖い。だが、まあーそれは叶わねぇ話だ、な」

「なに」

「お前の選択肢には従わねぇ。つまり、俺の勝ちだ」

「何を意味の分からない」

「お前に答えを教えるつもりもねぇし、お前に殺される訳にもいかねえ──つまり、な? 一緒に死のーや!! 弾け飛びやがれ!!」

 次の瞬間、バルエルの体は肥大化し内から光が溢れ出る。同時に体温が急上昇し喉が焼ける感覚をシシリは覚えた。

「じゃあな、おチビちゃん」

 最後に振り返り見せたのは、敗者が見せる顔ではなく勝者が見せる勝ち誇った笑顔だった。


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