異世界転移したら、スマホが超優秀美少女に~ギルド本部にも追放されたので孤高の英雄を目指します~

流転

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六章

苦悩

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「それって、まさか──ゼクス」

 ゼクスの、熱い眼差しは冷める事なく、強い意思を浮かばせる。

「ああ、そうだ。レルガルドを救ってくれた力を……。ここにいる奴等は、なんの罪もない。理不尽に襲われ、傷つき、このざまだ」

 ゼクスは、辰巳とシシリと並び、観てくれと言わんばかりに手を伸ばす。
 付け加える様に「安心しろ、ギルドは壊滅だ」と、囁く。ゼクスは、咎める者が居ないと言いたいのだと察しはしたが、辰巳が躊躇していたのはもっと違う場所。

「俺は、今、慕うべき人が居る。彼女より目立っては、彼女の進もうとしている道を阻むかもしれない」

 ゼクスは、力なく手を下ろした。横目で見た、ゼクスの何も言い返さない表情は思う部分がある。
 彼は、未だに罪悪感をしっかりと覚えているのだろう。だからこそ、強引に頼む事が出来ずにいるに違いない。
 辰巳は、それでも留まり話を逸らした。

「ギルドに居た奴らは、どーなったんだ?」

「あ、ああ……。俺もレルガルドも、あの場所にいたのだが──正に地獄だったよ。数人は虫に殺された。が、それよりも驚いたのは、受け付けの連中は皆が、翼を伸ばし異形と化し飛び去ったんだ」

(やはり、あいつらは観測者だったのか。力を持つ者を影で管理していた)

「俺は、な……。手足が出なかったよ。助けを求める、女の冒険者が目の前で、虫に噛みちぎられ、血飛沫を口から吹き出し、目から血の涙をながし、最後の最期まで俺を見ていた……。なのに──」

 声を震わし、咎める様に力強く右手首を握っていた。少なからず辰巳は、共感をする。力がないと分かるからこそ、おごる事さえも許されない底辺。勇気があれば、あるいは何か変わってたかもしれない。
 しかし、ベルフェゴールとの戦いの後もそうだったが、辰巳は自分の無能を認めてしまっていた。

「なら、なら……一層の事、認めてしまえばいい」

 辰巳は、自分に言い聞かせる様に口ずさむ。

「俺は、いや、俺達は弱い。他と比べたら力も無く才能も劣る」

「タツ、ミ?」

「確かに、有象無象に紛れても分からないちっぽけな存在だ。闇の中で、異彩を放ち異才を用いて存在を知らしめる事なんか、出来るはずもない。歴史にも名を刻めない石っころだ」

 目を閉じて、深く息を吸って吐き再び口を開く。不思議と気持ちが軽くなり、何かを見つけ出せそうな気持ちに辰巳はなってゆく。

「なら、石っころでいいじゃねぇか。前衛に出て、敵を薙ぎ払い目立つ必要だって無い。脇役でも構いやしない。石っころだって、イシツブテにはなるんだ。力が無いなら無いなりに、その力を最大限に活かせばいい。最大限以上を求めるのではなく、限界を目指せばいい。だろ?ゼクス」

「だから、俺は……。大人数を守れる一人を……、シシリを守れればいい」

 正直、ベルフェゴールを含む七人を辰巳は相手に出来ない。相手にもされはしないだろう。加えて、彼等が戻ったと言う事は、力の持ち主がシシリだと言うのがバレたも当然。だからこそ、辰巳は、身を呈して守る相手をシシリと決めた。だが、シシリはそれを良しとせずに否定をして見せる。

「それは、間違えている」

「──ッ?」

「マスターは、私を守る必要が無く、マスターは私に守られる必要がある。だから、マスターの守るべき人は私じゃない。今から失礼な事を言う」

 シシリは、辰巳を見つめる。

「な、なんだよ」

 気迫に押されて、辰巳は引きつった笑顔で誤魔化すが、シシリはお構い無しに無表情を保つ。

「マスターの言っている事は、正しい。紛うことなき正義の味方。自己犠牲を厭わない覚悟を持った強者……あるいは、狂者。けれど、自己犠牲をする為の芯がぶれている。言い方を変えれば、振り回されている」

「お、俺はただ!!」

 弱気者を守れるまでの力が無い、と分かった今、辰巳に出来るのは護衛。武を弁えたはずが、シシリは根本を否定した。弁えた時、プライドが傷つかなかったと言えば嘘になる。確かに自分で弱者だと公言はした、したが、それでも強くありたいとは思っていた。

 ひとえに──男故。

 シシリは、それでも首を横に振る。

「マスターの意思は何処にあるの?」

「俺の……意思?」

「そう。マスターの意思。ここに来て、誰かに言われるがまま堕天使を殺すのがマスターの意思?」

「アルトリアが、自分に無いものを持っていて、それを手助けしたいのがマスターの意思?」

「私を守って、傷つくのが自分の意思?」

 途切れることの無い質問は、辰巳の心中を圧迫してゆく。
 言い返せなかった。辰巳は、今までを振り返り、自分を勇敢な主人公と照らし合わせ、なぞってきた事に気が付かされたからだ。

 そこに、自分の明白な意思は無く。心の何処かでは、他人だれかなら、こうするかもしれない。世界を救う英雄ならば、騎士にもなるかもしれない。
 身も蓋もない理想を、偶像を抱いていたからだ。
 濁りもない、潔白な質問だからこそ、辰巳は返答に困っていた。

「私の意思は、最初から変わっていない。他の誰かよりも、マスターを守る。マスターの言葉こそが全て、したがうに足る法。マスターがもし、アルトリアを殺せと言えば、私は躊躇う事なく殺す。死ねと言われれば死ぬ」

「つまりは、そーいう事。どんな場面でも、無駄な思考に毒されないのが本当の意思」

「俺の……意思。少し、時間をくれないか」

 辰巳が、視線を伏せて言葉を濁す。すると、真横から聞こえた、手を叩く音が沈んだ空気をかき消した。

「ま、まあ、あれだよ。人は、迷う生き物だ!だろ?と言うか、だ!お前が言っていた慕う人ってのは、そのアルトリアと言う人物か?」

 調子が戻らない辰巳は、短く頷くとゼクスは辰巳の両肩を掴み揺さぶった。

「もしかして、アルトリアとは……王族の家名か!?」

「ああ、そうだ」

「頼む、アルトリア……いや、アルトリア様と会わせてくれ!!」とゼクスが大声を発した時、背後からアルトリアが返事をした。

「私に用事、とはなんですか??」
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