異世界転移したら、スマホが超優秀美少女に~ギルド本部にも追放されたので孤高の英雄を目指します~

流転

文字の大きさ
35 / 41
六章

やるべき事は

しおりを挟む
「えっと……あのっ」

 ゼクスは、虚を衝かれた様子でアルトリアを瞳におさめていた。そしてすぐ様、辰巳の肩に乗せていた手に力が入り、助けを乞う。

「お、おい。想像と違いすぎたんだが。もっと、貫禄があって、賢者っぽい御仁かと思っていたぞ……。まさか、年端もゆかぬ女の子だとは」

 小さい声で囁いたつもりなのだろう。だが、アルトリアは皮肉が篭っていそうな満遍な笑みを浮かべた。

「女の子で、何か問題でもあるのでしょうか?ふふふ、安心してください。私が正真正銘のアルトリア家・王女ラウラ=アルトリアよ」

 高圧的な態度をとった訳でもないが、女慣れをしていない訳でもないゼクスの目は泳ぐ。
 女性相手に圧倒された様子の、お調子者のゼクスは鼻をポリポリとかいて、引き攣った笑顔を浮かべる。

「あは、ははは? 嫌ですよッ、冗談に決まってるじゃないですかぁ」

「お前、前はそんなキャラだっけか?」 

 違和感を覚えた辰巳が問うと、ゼクスは恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「う、うるせーよ!!」

「マスター、ゼクスが発育した年端もゆかぬ女性に発情している。危険……マスターが」

「おい、お前な。倒置法を使って俺を危険に晒すな」

「そ~言いながら、お前はなんで一歩引いてんだよタツミ!!」

「いや、なんか怖かったから……な? と言うか、アルトリアに用事があったんだろ??」

 辰巳は、自分の肩を抱きながら逸れた話題を元あるレールに戻す。ゼクスは「ああ」と頷いてから深々と頭を下げた。

「アルトリア様がここに来た、と言う事は知られているのですよね? 故にお願いがあります」

「私の事は、アルトリアと呼んでいただいて構わないわ。それと、知られている。とは、虫の事とかかしら?それなら──」

「では、お言葉に甘えて。その事ではありません。皇帝の正体です」

 ゼクスの言葉に一同は静まり返る。無表情で立つシシリを横に、辰巳とアルトリアは顔色を互いに伺った。

「いえ。私は、私達はその話をしらないわ。知っているのは、破滅の塔カタストロフィと、風穴から現れた虫の事」

「皇帝を、帝都の大半は死んだと思っています」

「ああ、俺達も仲間から死んだと聞いていた」

「やはりそうか」

 ゼクスは言い難いのか顎に手を添えて頷く。
 話を切り出したゼクスが黙り、辺りは異様な緊張感に包まれた。

「奴は生きている」と、ゼクスが、衝撃的な言葉を発したのは、どれぐらい時間が経ってからか。
 奇跡だと喜ぶべき真実にも関わらず、ゼクスの表情は曇り怖い。それどころか、瞳には怒りと憎しみが宿り、ランタンの灯で眼光は鋭さを増していた。

「奴は、自らをこう名乗っていた。ルシファーと」

 ゼクスは、握り拳を作ると自分の手の平を殴り怒りを形にする。

「全て、合点がいくってもんだ」

「合点、だと?」

 辰巳が問いかける。

「ああ。この帝都ができた理由、ギルドの本質。皇帝その者が、災厄で最悪の根源だったんだ」

「つまり、この嘗て王都だった帝都を襲わせ、乗っ取ったのも全てはルシファーの戦略──?」

「俺の位置づけは、今言った通りだ。納得も行くだろ?代替わりもない、ずっと一人の皇帝が帝都を治めていた。そんなんは、化物じゃなきゃ出来やしない」

 ゼクスは、自分の考えを話し続ける。若しかしたら鼻で笑われる内容なのかもしれないが、辰巳はスグに信じることが出来た。

「俺も、ゼクスが言ったことは限りなく真に近いと思う」

 これに関しては、過去の過ちは一切関係がない。真正面に居る、ゼクスの表情は驚いた様子だが辰巳には根拠があった。今は亡き、バルハから聞かされた話では死霊等が押し寄せて来たと言っていた。併せて、ゼクスとレルガルドとの件が起きた時。つまり、堕天使と初めて交わった時も死霊やホムンクルスの量は異常だった。
 と、なれば、堕天使達と死霊達は何らかの関係があって然るべきだと、辰巳は思っていたのだ。

「信じてくれんのか? なんの、証拠もない言葉を。虚言、妄言の類だと侮蔑されても、おかしくは無い俺の言葉を」

 辰巳は、静かに頷いてゼクスに話を進めるように促した。

「頼みってのは……。今、この帝都で戦力になる奴らは外周の見回り及び討伐を行なっている。だが、いつまで続くかわからなければ、いつまで俺達が持つかも分からない」

「確かにそうよね」

「だから、その前に相手の本陣である破滅の塔カタストロフィを叩く他ない。俺達に、その名誉をくれ……いや、下さい。アルトリア」

 再び、ゼクスは頭を下げる。

「そして、我儘を言うならば、その指揮を貴女にとってもらいたい。正直、統率もされていない状況下では個々が強くても多数には及ばない」

 お調子者のゼクスからは、到底想像のつかない重重しい声音。辰巳も、アルヴァアロンの荒れ具合を思い出し、平和だった日本と照らし合わせて共感する。
 どの国にも、先導するものがおり、皆が不満感や満足感を抱きながら嫌でも従う。従うからこそ秩序が生まれ統率がなされる。
 弱い人間は、誰か導くものが居るからこそ道が明白に見える。ならば、今のアルヴァアロンはどうだろうか。皆が皆、自分可愛さに我儘を振りまいている。偽善も善も、薄汚れた欲望の前では霞んでいた。この重体患者が居る場所だって、自己主張を怠らない声の方が目立つ。
 故に答えは簡単だった。

 ──つまりは、背徳。

 この時、同時に辰巳は、シシリに言われた意思についても考えていた。

(アルトリアは、今で言う統率者。シシリは、力もあり騎士に足る存在。なら、俺に出来ること──って、違うだろ! これは周りに気を使って謙虚になり、空気を読んでいるに過ぎない。俺の強い……意思、か)

 辰巳が自問自答をしてる中、ゼクスがアルトリアの指示を仰いでいる時。アルトリアでは無く、シシリが口を開いた。

「自惚れないで。貴方達が行っても死体の山が増えるだけ」
 無表情で、端的に、要点だけをくり抜き容赦なく現実を叩きつける。同情もせず、共感もせず、誰視点にもならずに。ゼクスからすれば、冷酷であり冷徹であり無慈悲だったであろう。
 故に、頭を下げたまま、口の端を噛み締め拳を力いっぱい握っていた。しかし、言い返せないのもまた冷静と怒りの狭間で揺れているからに違いない。
 辰巳は、ゼクスの肩にそっと触れた。

「シシリの話を聞いてみよう。これは、やり返しのつかない物語だから」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

落ちこぼれと追放された俺、実は神々の直系だった件~気づいたら最上位種族を次々救ってハーレムができてた~

えりぽん
ファンタジー
冒険者パーティを追放された青年カイは、力を封じたまま生きていた。 だが、助けた少女の一言をきっかけに、封印されていた「神の血」が覚醒する。 無自覚に最強を通り越した力で魔王国を滅ぼし、竜や精霊、女神たちまでも惹きつけていく――。 「ざまぁ? 俺はただ助けたかっただけなんだけど……」 気づけば、世界中のヒロインたちが彼に跪いていた。

処理中です...