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六章
願わくばわ
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「人は不思議。一人では不安になっても、大勢となれば安心に変わる。それが例え、無謀だとしても恐怖は麻痺して、根拠も無いのに、革新出来ると確信して疑わない」
シシリは、ヒッソリとゼクスを見つめて、指を指す。しかし、客観的な発言は、さながら自分は人で在らざるものとでも言っているかのようだった。
──情報思念体。
辰巳は、五文字の言葉を思い出し少し寂しくもあった。シシリとは、いずれ離れ離れにならないといけない。そんな気がして胸に何かが突き刺さる痛みを伴った。
「ゼクスは、死にたいの?」
小首をかしげるシシリに、ゼクスは首を横に振る。
「いいや。死にたくはない。だが、このまま終わるわけにはいかないし、終わらせるわけにはいかない。だから、行かなくちゃ……。例え、そこで死ぬ運命だったとしても」
視線を伏せたまま、ゼクスはシシリを説得をしたいのか食い下がる。が、あまりにもあまりにも、語彙に乏しい。言葉が見つからないのか、将又、思いの丈をぶつけるのはコレで十分だと踏んだのか。答えはゼクスにしか、分かりはしないだろう。唯一分かるのは、震えた声から漂う覚悟。
けれど、辰巳から言わせれば自殺志願者にしか思えなかった。いや、この場に於いては、きっとアルトリアやシシリも辰巳と同じ気持ちだろう。
故に、ゼクスの肩を持つものはいなかった。
「なら、安心して。破滅の塔で死ぬのは宿命では無く、ただの言葉」
「どー言う意味だ?」
「ゼクスは、死なない。何故なら、私が貴方を破滅の塔に行かせはしないから」
ゼクスの緊張した肩が、撫で下ろされた。
「だ、そうだ。お前は、レルガルド達とアルヴァアロンの中にいる市民を守ってやれ。この状況から鑑みるに、他の街や村の人々は──」
辰巳達が対峙した虫の群れ。シシリの一撃を持ってしても、数からすれば痛くも痒くも無かっただろう。そんな大群が、空から光を奪い去り、様々な生命すらも奪ってゆくのだ。無事である確率の方が低いに決まっていた。
「それに、死体が死霊にならないとも言えない。だから、アルトリア」
辰巳は、アルトリアに視線を向ける。気がついた騎士の格好をした少女は、何かを悟ったのか、剣の柄に手を携え頷いた。
「このアルヴァアロンを救えるのは、アルトリアだ。俺やシシリに出来るのは武力行使。だが、アルトリアにはもっと違う事が出来る。──そうだろ?」
「アルトリア。今、情報拡散魔法を使った」
「フォナゾ?」
「そう、情報拡散魔法。自分が仲間と思う者に、思念を脳内に届ける事が出来る。そして、今、言う仲間とはアルヴァアロンの市民達。だから──伝えて」
辰巳は、驚いていた。情報拡散魔法とは、あくまでもギルド内でチャットを行う為の設定上作られた魔法。実際、ゲーム内で唱えたりすることは無く、意識しているものも居なかったはずだ。ただの凝った設定。それ以上でも以下でもなかった。
優秀すぎる相方を目の前に、心の中で賞賛を贈る。
「私が、伝えたい事……。そう、ね。私は、私の本当の始まりは此処から──。バルハが次に繋げてくれた未来だから、私……やるわ」
アルトリアは、柄を今一度、力強く握って目を瞑った。
「皆さん、私はアルトリア。ラウラ=アルトリア」
(本当に聞こえてやがる)
ゼクスは、摩訶不思議の出来事に辰巳と目を合わせる。当然、周りも奇想天外の事態に近くの人と照らし合わせる様子をみせていた。
辺りが騒ぎ出した頃、アルトリアの声は再び脳内に響く。
「私を知らない人を居るでしょう。私を知っている人も……いえ、私の事は皆さん知るはずもないわね。私の名前を知っている人は多いいはずです。アルトリア王家だと」
「──これを騙りと思ったとしても、責めはしない。皆の意思として尊重するわ。けれど、今から話す事はアルトリアと言う地位を抜きに、一人の人として聞いて欲しいの」
(アルトリア……)
ひたむきな姿勢が、声からも伝わる。そこに王として尊厳を知ら占める姿は無く、皆を優しく包み込むアルトリアの本質が篭っていた。今みたいな言い方をすれば、少なからず馬鹿にする輩は出て来るだろう。今まで、辰巳が甘いと否定をしてきた優しさをアルトリアは止めなかったのだ。
(でも、これがシシリの言っていた、貫き通す意思)
「私は、この街を、世界を救いたい。正直、今でも、話し合いで解決出来るならそれを望むわ。報復には報復。戦いは戦いしかうまない。血で血を洗う戦慄が奏でる旋律は恐怖でしかないもの。
偽物の平和を私は望まない。だからこそ、話し合いをしたかった。でも、現実的にそれは難しいわよね」
「反感も買うでしょう。ですから、私は彼等と戦います。徹底的に、平和と安息を求め、現実を受け止め、未来へ私を繋げてくれた者達の為にも!戦争を止めるには、皆の力が必要。小娘が、見ず知らずの女が、偽善者が、色々な思いがあるのもわかるもの。
だから、話は事が終えてから、何時間でも聞くわ。今は、皆の力を貸して欲しい。新しい夜明けを迎える為にも。今から、私はアルヴァアロンの正門にて力を貸してくれる者が来るのを待つわ。一人の女、ラウラ=アルトリアとして、今を生きる貴方達の協力を──」
アルトリアは、話を終えると華やかな笑顔を浮かべ、正門に向かった。
ゼクスも、あとを付けてゆく。
「マスター。アルトリアは、家でマスターに力を求めた。けれど、今、マスターに一緒に来てと言わなかった理由、わかる?」
「ああ。分かる」
(自分にできる事、自分がすべき事、自分にしか出来ない事。アルトリアは、何だかんだ部を巻きまえている)
「行こう、破滅の塔へ。まだ、意思は分からないが出来ることを優先すべきだ」
「はい、マスター」
シシリは、ヒッソリとゼクスを見つめて、指を指す。しかし、客観的な発言は、さながら自分は人で在らざるものとでも言っているかのようだった。
──情報思念体。
辰巳は、五文字の言葉を思い出し少し寂しくもあった。シシリとは、いずれ離れ離れにならないといけない。そんな気がして胸に何かが突き刺さる痛みを伴った。
「ゼクスは、死にたいの?」
小首をかしげるシシリに、ゼクスは首を横に振る。
「いいや。死にたくはない。だが、このまま終わるわけにはいかないし、終わらせるわけにはいかない。だから、行かなくちゃ……。例え、そこで死ぬ運命だったとしても」
視線を伏せたまま、ゼクスはシシリを説得をしたいのか食い下がる。が、あまりにもあまりにも、語彙に乏しい。言葉が見つからないのか、将又、思いの丈をぶつけるのはコレで十分だと踏んだのか。答えはゼクスにしか、分かりはしないだろう。唯一分かるのは、震えた声から漂う覚悟。
けれど、辰巳から言わせれば自殺志願者にしか思えなかった。いや、この場に於いては、きっとアルトリアやシシリも辰巳と同じ気持ちだろう。
故に、ゼクスの肩を持つものはいなかった。
「なら、安心して。破滅の塔で死ぬのは宿命では無く、ただの言葉」
「どー言う意味だ?」
「ゼクスは、死なない。何故なら、私が貴方を破滅の塔に行かせはしないから」
ゼクスの緊張した肩が、撫で下ろされた。
「だ、そうだ。お前は、レルガルド達とアルヴァアロンの中にいる市民を守ってやれ。この状況から鑑みるに、他の街や村の人々は──」
辰巳達が対峙した虫の群れ。シシリの一撃を持ってしても、数からすれば痛くも痒くも無かっただろう。そんな大群が、空から光を奪い去り、様々な生命すらも奪ってゆくのだ。無事である確率の方が低いに決まっていた。
「それに、死体が死霊にならないとも言えない。だから、アルトリア」
辰巳は、アルトリアに視線を向ける。気がついた騎士の格好をした少女は、何かを悟ったのか、剣の柄に手を携え頷いた。
「このアルヴァアロンを救えるのは、アルトリアだ。俺やシシリに出来るのは武力行使。だが、アルトリアにはもっと違う事が出来る。──そうだろ?」
「アルトリア。今、情報拡散魔法を使った」
「フォナゾ?」
「そう、情報拡散魔法。自分が仲間と思う者に、思念を脳内に届ける事が出来る。そして、今、言う仲間とはアルヴァアロンの市民達。だから──伝えて」
辰巳は、驚いていた。情報拡散魔法とは、あくまでもギルド内でチャットを行う為の設定上作られた魔法。実際、ゲーム内で唱えたりすることは無く、意識しているものも居なかったはずだ。ただの凝った設定。それ以上でも以下でもなかった。
優秀すぎる相方を目の前に、心の中で賞賛を贈る。
「私が、伝えたい事……。そう、ね。私は、私の本当の始まりは此処から──。バルハが次に繋げてくれた未来だから、私……やるわ」
アルトリアは、柄を今一度、力強く握って目を瞑った。
「皆さん、私はアルトリア。ラウラ=アルトリア」
(本当に聞こえてやがる)
ゼクスは、摩訶不思議の出来事に辰巳と目を合わせる。当然、周りも奇想天外の事態に近くの人と照らし合わせる様子をみせていた。
辺りが騒ぎ出した頃、アルトリアの声は再び脳内に響く。
「私を知らない人を居るでしょう。私を知っている人も……いえ、私の事は皆さん知るはずもないわね。私の名前を知っている人は多いいはずです。アルトリア王家だと」
「──これを騙りと思ったとしても、責めはしない。皆の意思として尊重するわ。けれど、今から話す事はアルトリアと言う地位を抜きに、一人の人として聞いて欲しいの」
(アルトリア……)
ひたむきな姿勢が、声からも伝わる。そこに王として尊厳を知ら占める姿は無く、皆を優しく包み込むアルトリアの本質が篭っていた。今みたいな言い方をすれば、少なからず馬鹿にする輩は出て来るだろう。今まで、辰巳が甘いと否定をしてきた優しさをアルトリアは止めなかったのだ。
(でも、これがシシリの言っていた、貫き通す意思)
「私は、この街を、世界を救いたい。正直、今でも、話し合いで解決出来るならそれを望むわ。報復には報復。戦いは戦いしかうまない。血で血を洗う戦慄が奏でる旋律は恐怖でしかないもの。
偽物の平和を私は望まない。だからこそ、話し合いをしたかった。でも、現実的にそれは難しいわよね」
「反感も買うでしょう。ですから、私は彼等と戦います。徹底的に、平和と安息を求め、現実を受け止め、未来へ私を繋げてくれた者達の為にも!戦争を止めるには、皆の力が必要。小娘が、見ず知らずの女が、偽善者が、色々な思いがあるのもわかるもの。
だから、話は事が終えてから、何時間でも聞くわ。今は、皆の力を貸して欲しい。新しい夜明けを迎える為にも。今から、私はアルヴァアロンの正門にて力を貸してくれる者が来るのを待つわ。一人の女、ラウラ=アルトリアとして、今を生きる貴方達の協力を──」
アルトリアは、話を終えると華やかな笑顔を浮かべ、正門に向かった。
ゼクスも、あとを付けてゆく。
「マスター。アルトリアは、家でマスターに力を求めた。けれど、今、マスターに一緒に来てと言わなかった理由、わかる?」
「ああ。分かる」
(自分にできる事、自分がすべき事、自分にしか出来ない事。アルトリアは、何だかんだ部を巻きまえている)
「行こう、破滅の塔へ。まだ、意思は分からないが出来ることを優先すべきだ」
「はい、マスター」
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