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第二幕II 大好きと黒薔薇
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「セオドア……?」
ロゼの元に辿り着いた光は優しく消える。その奥から、セオドアが駆けてきた。初めて見る、焦った表情だった。
「何、してるの!起きたらいないし、扉開いてるし……本当、心臓止まるかと思った」
勢いよく、ロゼはセオドアに抱きしめられる。寒さで冷え切っていた身体が、徐々に熱を取り戻した。緊張していた心が、安心してほぐれていく。
「なんで、来て……」
「ロゼがこんな奥まで行くからだよ。昨日ことで怒って、勝手にいなくなって、そのまま消える気でいた?」
「違……」
ロゼは、セオドアの背中に腕を回して、力なく抱き返す。
「外には、花があるって言ってたから、ごめんなさいとありがとうと一緒に、セオドアにあげようと」
「その後は、出ていくつもりだったの?」
「だって俺、要らないんじゃ……ないの?何も、ない俺に、魔法、かけてくれなかったから、本当はずっと、俺が辛いって言って、新しい場所に、連れていくの、まって……」
震える手で、ぎゅっと白いローブを掴む。セオドアは、ロゼの耳元で優しくも威圧的に囁く。
「そんなわけないよ。俺、ロゼがいないと生きて行けないんだから。要らないなんて、一度も思ったことない。魔法をかけなかったのは、ロゼ自身の心から本当の幸せを奪いたくないから、意思を受け付けない支配じゃなくて、どこまでと俺に愛されて欲しかったから。辛くなんてならないでって願ってた」
「……あ」
セオドアはそっと身体を引くと、ロゼの涙を拭った。酷く目が腫れていて、全身もボロボロになっている。そんなロゼに、セオドアは口付けをした。唇が触れるだけの、優しいものだった。
「俺、セオドアの気持ち、全然分かってなかった」
「また泣いてる。目が溶けちゃうよ?」
曇り一つない綺麗な赤い目を見つめて、呆れ顔でセオドアが言う。
「勝手に出るんだ、どうしようもない。そうだ、花、今一つだけ見つけたんだ」
ロゼは、頬を紅潮させながら、明るい声を出す。泣きじゃくっていたことを忘れて、すぐにでも飛び跳ねそうな勢いだ。
「それは、何?お別れの花?」
「ずっと一緒にいたいって花」
幼い笑顔を見せるロゼの周りに、黒い荊が生える。そこには、一輪の美しい黒薔薇が咲いている。ロゼは、その薔薇をそっと摘む。棘のない、魔法でできた黒薔薇をロゼはセオドアに渡した。
「俺は、セオドアが大好きだ」
「俺も、ロゼが大好き。もう、離さないよ」
「へへ、初めてのプレゼント。大成功だ」
白い服装には、黒薔薇がよく目立った。ロゼのような繊細さがありながら、強く気高く咲き誇っている。
「帰ろう。今日は、二人で朝ごはんが食べられるね」
「うん……あ、膝、擦りむいたんだった」
「もう、また傷が増えちゃったね。おいで」
ロゼは、甘えるようにセオドアに近づく。そして、いつものように、軽く抱き上げた。
「甘えん坊さん……可愛いね」
「セオドアも、笑ってる。可愛い」
二人は、少し明るくなった森を抜ける。途中、ロゼは腕の中で規則正しい寝息を立て始めた。
「初めてのプレゼント、か」
セオドアは、低く呟くと二人の家へと戻った。
ロゼの元に辿り着いた光は優しく消える。その奥から、セオドアが駆けてきた。初めて見る、焦った表情だった。
「何、してるの!起きたらいないし、扉開いてるし……本当、心臓止まるかと思った」
勢いよく、ロゼはセオドアに抱きしめられる。寒さで冷え切っていた身体が、徐々に熱を取り戻した。緊張していた心が、安心してほぐれていく。
「なんで、来て……」
「ロゼがこんな奥まで行くからだよ。昨日ことで怒って、勝手にいなくなって、そのまま消える気でいた?」
「違……」
ロゼは、セオドアの背中に腕を回して、力なく抱き返す。
「外には、花があるって言ってたから、ごめんなさいとありがとうと一緒に、セオドアにあげようと」
「その後は、出ていくつもりだったの?」
「だって俺、要らないんじゃ……ないの?何も、ない俺に、魔法、かけてくれなかったから、本当はずっと、俺が辛いって言って、新しい場所に、連れていくの、まって……」
震える手で、ぎゅっと白いローブを掴む。セオドアは、ロゼの耳元で優しくも威圧的に囁く。
「そんなわけないよ。俺、ロゼがいないと生きて行けないんだから。要らないなんて、一度も思ったことない。魔法をかけなかったのは、ロゼ自身の心から本当の幸せを奪いたくないから、意思を受け付けない支配じゃなくて、どこまでと俺に愛されて欲しかったから。辛くなんてならないでって願ってた」
「……あ」
セオドアはそっと身体を引くと、ロゼの涙を拭った。酷く目が腫れていて、全身もボロボロになっている。そんなロゼに、セオドアは口付けをした。唇が触れるだけの、優しいものだった。
「俺、セオドアの気持ち、全然分かってなかった」
「また泣いてる。目が溶けちゃうよ?」
曇り一つない綺麗な赤い目を見つめて、呆れ顔でセオドアが言う。
「勝手に出るんだ、どうしようもない。そうだ、花、今一つだけ見つけたんだ」
ロゼは、頬を紅潮させながら、明るい声を出す。泣きじゃくっていたことを忘れて、すぐにでも飛び跳ねそうな勢いだ。
「それは、何?お別れの花?」
「ずっと一緒にいたいって花」
幼い笑顔を見せるロゼの周りに、黒い荊が生える。そこには、一輪の美しい黒薔薇が咲いている。ロゼは、その薔薇をそっと摘む。棘のない、魔法でできた黒薔薇をロゼはセオドアに渡した。
「俺は、セオドアが大好きだ」
「俺も、ロゼが大好き。もう、離さないよ」
「へへ、初めてのプレゼント。大成功だ」
白い服装には、黒薔薇がよく目立った。ロゼのような繊細さがありながら、強く気高く咲き誇っている。
「帰ろう。今日は、二人で朝ごはんが食べられるね」
「うん……あ、膝、擦りむいたんだった」
「もう、また傷が増えちゃったね。おいで」
ロゼは、甘えるようにセオドアに近づく。そして、いつものように、軽く抱き上げた。
「甘えん坊さん……可愛いね」
「セオドアも、笑ってる。可愛い」
二人は、少し明るくなった森を抜ける。途中、ロゼは腕の中で規則正しい寝息を立て始めた。
「初めてのプレゼント、か」
セオドアは、低く呟くと二人の家へと戻った。
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