十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇

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第三章 同居開始で溺愛されてます

四十五話

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「あ、あれ」


 ぽた、ぽたとシーツに雫が吸い込まれていく。


「どっか痛い?擦ろうか?」


 麗音は心配そうにこちらを覗き込む。

 ああ、やばい、どうしよう、麗音に心配されるなんて、俺は、麗音の憧れでないといけないのに……


「……っう、うわああぁ……」


 一度涙が溢れると後は止まらなかった。

 麗音の前で、俺は情けなくも嗚咽した。

 背中に麗音の手が回され、温もりを感じる。


「しゅん兄ちゃん、大丈夫だよ」


 マスクを取った麗音が耳元で囁く。


「麗音……俺情けない兄ちゃんでごめんな……」

「そんなことないよ、しゅん兄ちゃんは偉いよ、俺の誇りだよ」

「俺、俺……さっき、怖い夢見たんだ」

「うん」

「俺の……好き、だった人が遠くへ行っちゃう夢と、嫌いな奴からいじめられる夢……」

「……そうだったんだ。大丈夫だよ、しゅん兄ちゃんにいじわるする奴は、俺がやっつけるから」

(麗音をいじめる奴は許さねえからな)


 ……本当に、あの頃とあべこべだ。

 昔は団地で一番小さかった麗音を守っていたのに、今は俺が麗音に守られようとしている。

 何故だろう、情けないはずなのに、とても心強い。


「……麗音、ありがとな、もう大丈夫そうだ」

「本当に?無理してない?」

「ああ、体調もちゃんと戻ったし、熱も無いし、出社準備するぞ」


 うん!と元気よく返した麗音が少しだけ動きを止めた。


「しゅん兄ちゃん、ちょっとそのまま待って」

「ん?なんだ?」


 俺の額に、麗音の唇が触れた。

「……え?」


 意味が分からなかった。

 麗音の唇が俺の額に。


「えへへ、元気になるおまじない。母さんがよくしてくれたんだ」


 いやいや待て待て!

 おまじないだとしても、額にき、キス!?

 幼馴染同士で、キス!?

 目の前がぐらぐらと揺れ、俺は床にぶっ倒れた。

ドシーン!!


「しゅん兄ちゃん!?」


 麗音の声が遠くに聞こえる。

 その後、原因不明の高熱を出した俺は、午後も休む羽目になった。

 麗音も一緒に休み、片時も離れてくれなかった……

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