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第3章 大都市

第38話 武器屋

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【第38話】武器屋


「あの~もしかして、お金全部使っちゃった?」
「………」

 家を建てるため、役所に行った涼だったが、早くその場から離れたいという一心で、手持ちのゴールドを全て、役員の人に渡してきてしまった。

(1000ゴールド。セラフィーに渡してきて正解だったな……)

 そう、まだ1000ゴールドがある。日本円にすれば100万以上は確実にあるだろう。まだ大丈夫だと思っていたが、世の中はそんなに甘くはなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「え、家買ったんですか?」
「ああ」
「それでお金を全て使っちゃったと?」
「まぁ……そうだな……」

 二日酔いが少し良くなったのか、セラフィーはベットの上で杖の手入れをしていた。

「まぁ私が稼いだお金じゃないので、涼さんたちがどう使うかは自由ですが、大丈夫ですか?」
「なにがだ?」

 宿屋の部屋を見渡すとスミレの姿がないことに気付く。そこでイランが……

「ねぇ。そういえばスミレは?」
「何か食べに行きましたよ」
「………」

 嫌な予感がする……

「ただいま」
「あ、お帰りなさい……」

 ドアの方を向くとそこには、腹が膨れているスミレと、金貨ではなく銀貨が8枚のみ入っている袋が握りしめられていた。

「はぁ……」


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 よくよく考えれば、家を買っても家具も1から揃えないといけない。それに加え、食費などの出費もかかる。
つまり、1000ゴールドくらいじゃ足りなかったのだ。

(家ができるまではあの宿屋に居るわけだし。更に金がかかるな……)

 そんなわけで再度ギルドに来た涼とイラン。スミレは満腹で睡眠、セラフィーは二日酔いがまだ残ってる可能性があるため今日だけは置いてきた。

「セラフィー行きたがってたね」
「そうだな」

 セラフィーは今日こそはとギルドに来たがっていたが、我慢しろの一言でしょぼんとしてしまった。

(悪化したらめんどくさいからな……まぁこればっかりは……)

「あ、昨日は助かりました」

 ギルドに入り、受付に行くと早々にお礼を言われる。
それは昨日の依頼の事だった。

「おそらくあなたが来なかったら、ここに居る人たちの何人かは取り返しのつかない事態になっていたからしれませんからね」
「こんなごろつきみたいな連中の心配してんのか?」
「はい! 大切な金づる達ですから」

 笑顔でそう答える受付嬢に若干恐怖を感じた。

「それより、今日のクエストは……」
「ああ、すいません。今日のクエストはこんな感じになってます」

 そう言って渡されたのはDやCランクと書かれていた依頼書だった。

「B以上は無いのか?」
「そうですね~Bランク以上の依頼書は主に魔物討伐のクエストなんですよ。そういった依頼のほとんどは本来この街の騎士団の役目なんです」

 聞いた話では本来、魔物等の人にとって危険な内容の仕事は全て騎士団によって処理されているということ。
 しかし、たまに騎士団の手が空いてない時などに、ギルドに危険な依頼として頼んでいるらしい。
つまり、Bランク以上の依頼書は全て、騎士団からの依頼ということになる。

「これなんてオススメですよ。といってもAランクをクリアしたあなたには物足りないでしょうが……」

 そう言って渡されたのは鉱石採掘の依頼だった。

「500ゴールドか……」
「報酬はこれより下の300や200が普通なんですよ。この依頼は多い方です」

 確かに、酒場に行ったときに見たメニュー表に書かれていた値段はどれも3~5ゴールドだった。それを思うと1日で500は多い方なのだろう。
1日で200ゴールドを消費したスミレが異常なだけだ……

「じゃあこれを受ける」
「了解しました。でしたらここにサインと、あとはグジンさんに会ってください」
「グジン?」

 どうやらこの依頼を受けるためには、その【グジン】という武器職人に会わないといけないらしい。

「ここに記載されているのは特殊な鉱石で取り扱いが分からないと危険なんですよ」

(その取り扱いを聞きに行ってこいってことか……)

「グジンさんが居る場所は……」

 武器職人の場所を受付嬢に教えてもらい、そこに向かうことに。めんどくさいが、この街の武器が見れると考えれば良かったかもしれない。

「武器ね~僕にはもう必要ないかな~」
「お前元々剣士だろ……」
「あれ? 何で知ってるの? まぁいいや。そうだよ。僕は元々剣士だったけど才能が無かったみたい」

 そう言うとイランは下を向いてしまった。

「大切な人も守れない剣なんて存在価値なんて無いんだよ」
「…………」

 涼は何も言い返せなかった。

「そういえば、涼が今持ってる剣って……」

 そんな話をしている内に、看板に2つの剣がクロスしている看板の場所に到着する。

「何か言ったか?」
「いや、何でもない。ほらさっさと済ませるよ」

 ガチャリ



「おお! いらっしゃい。あれ? 君は……」

 店に入ると店長らしき黒髪の30代くらいの男がレジ奥に立っていた。そして、涼の顔を見や否や驚いた顔をした。

「あのドラゴンから逃げ出せたのか! いや~今日は良い日だ!」

 その言葉を聞いて思い出す。あの時、洞窟の近くで会った馬車に乗せてくれた人だった。
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