魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行

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生存決闘 4 なぜか使えないルーン魔術

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 生存~決闘~!

 飛空挺から生存決闘サバイブ・デュエルに参加する生徒たちがひとりずつ、迷いの森の無作為な場所に降ろされてゆく。
 今回の生存決闘は参加者ひとりひとりが勝ちを競うものではない。個人対個人ではなく鬼一法眼きいちほうげんとグローリー・ストリックランドの教え子たちによる個人対集団の戦いだ。
 総勢30人をひとりで相手取らなければならない。
 この30人という人数がくせ者である。 
 三人一組のチーム、三位一体トリニティユニットが10組み出来る算段になる。
 トリニティ・ユニットとは近年確立された魔導兵団戦における最新鋭の概念で、前衛は攻撃・防御のふたり、後衛は攻守の支援や回復役のひとりで構成される理想の構成された有利な組み合わせであり、ユニットが編成される前に個々に叩くのが常道である。

「俺は最後に降りる。みんな先に降りて、好きな相手と組めばいい」

 それを、鬼一はみずから放棄した。

「東方の米つきバッタめ、悪魔殺しだの戦争の英雄だからだのといって調子に乗りおって……」

 ストリックランドと過去の決闘で鬼一に苦杯をなめさせされた彼の教え子たちは奮起した。
 なんとしてもこの生存決闘サバイブ・デュエルを魔術戦闘で、圧倒強大な魔力で叩き潰してやると。



 プリンプリン山の麓に広がる迷いの森は広大だ。
 今回はそのすべてを生存戦の舞台にするわけではなく、そのわずかな一画。学院に近い側を生存戦のフィールドとして指定している。
 派手な色に着色された【魔縄ルーン・ロープ】で仕切りをし、そこから外へ出た者は失格となる。
 気絶や降参による戦闘不能を致死判定とし、攻撃手段は純粋な魔術や呪術のみ。時間無制限の一本勝負。
 そのため鬼一はあえて『今回の生存戦は呪術のみで戦う』という【制約ギアス】をみずからもうし出た。
 さらに長期の調査などで使用する記録保存用の行動履歴水晶ジャーナルクリスタルを身につけた。これにより対戦者相手に体術を駆使した〝反則〟をおこなえば、その行動は記録されて明るみに出ることになる。

「雷火よ・煌めき・迸れ」

 よどみない完璧な発音によって唱えられた真なる言葉、ルーンによって世界は改変され、鬼一の指先から放たれた雷線が跳びかかろうとした狼の鼻先で火花を散らす――はずであった。
 結果は不発。

「GANッ!」

 不発に終わった魔術【昏倒電圧スタン・ボルト】の代わりにひるがえった鬼一の足刀が狼の鼻先に叩き込まれ、野生の獣はその痛みと衝撃におどろき、退散した。

「紀伊や京都の山中で熊や猪に遭遇したことはあったが、生きた野生の狼を目にしたのははじめてだ。やはりそこいらの犬よりも大きくて迫力があるな。それに、やつらが最初に人間のどの部分を狙うのか参考になった」

 狼が最初に狙うのは脛。脚をつぶして獲物の動きを封じてから首の後ろを噛む。頚椎はたいていの動物にとって急所であり、ここをやられると即死だ。狼に襲われた人の体験談ではこの二点はほとんど共通している。腕を噛まれることも多いが、それは人がとっさに腕で防ごうとするからだ。

「本に書いてあるとおりだと我が身をもって証明できた、いい経験だ。いい経験なのだが――雷火よ・煌めき・迸れ」

 鬼一は再度【昏倒電圧スタン・ボルト】の呪文を唱える。
昏倒電圧スタン・ボルト】とは微弱な電気を飛ばして対象を一時的に麻痺させる初歩の初歩、極めて殺傷力の低い護身用の攻性魔術だ。
 小さな火を作る【着火ティンダー】や魔法による明かりを灯す【光明ライト】などと同等の初級レベルの魔術であり、マカロン王立魔術学院の生徒なら誰しもが習得しているはずのものでる。
 だが鬼一法眼、いまだにこの世界のルーン魔術を使うことができなかった。
 魔術学院に入学するにはまず確かで信頼の置ける身元があること。
 そして適性があるかの診断を受けてから座学と実技のふたつの試験に受からなければならない。
 鬼一の場合、その正体は異世界人というかなり身元のあやふやなものではあるが召喚したのがマカロン王国の姫君その人であり、その後の活躍で騎士爵の位を授与され、家と土地も与えられた。
 いわば国が後ろ盾であり身元は確かということになる。
 魔術適性についても地水火風の基本四元素に加えてより高位の光と闇の属性までも高い適性値を出した。
 魔力容量と魔力密度、ふたつの魔力測定にいたってはウィリデ・ユウリンを除いた並み居る講師陣をも凌ぐ数値を見せて周囲を驚かせたものだ。
 座学についても申し分のない成績であったが肝心の実技についてはたった今のように初歩の魔術すら発動できず、どうも上手くいかない。
 それでも創立して間もない魔術学院は鬼一法眼の入学を認めた。
 素質はじゅうぶんにあるし、戦争の英雄にして悪魔殺しの勇者である鬼一を学院に迎えることは大きな意味があったからだ。

「我ながら詠唱も集中も完璧で瑕疵ひとつないのになぜ発動しないのか」

 高い魔力と正確なルーンの詠唱。このふたつがそろってなぜ初歩の魔術すら発動しないのか、実に謎である。

「俺がこの世界の人間ではないからか? 俺は最初からこの世界の言語を理解し、話すことができた。これは世界に受け入れられている証左だと思っていたが違うのか……」

 元いた世界の呪術とは異なる異世界の魔術に知的好奇心を抱き、ぜひ使ってみたいと願っている鬼一にとってこの状況は実に不本意なものであった。
 ぶつくさと独語しながら木々から葉をむしり取ると沼の水を汲み、しつこくルーンを唱える。
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