書物の森に憧れて 読んだ本の個人的感想

営業のＫの『怪談禁事録 朝が来ない』読みました

　
　こちら「営業のＫ」さんという著者による実録怪談ものとなります。
　そう、著者が実際に見聞きしたり体験した実際に起き出来事を書き綴ったという体裁の怪異集なのですが、いかんせん創作感が半端ない。
　超自然の存在や力が普通に出てきて、異能の力で現実に介入してくるため「本当にあった怖い話」系のお話を期待すると鼻白みます。

「そんな事を言われてもこれは本当にあったんだよ！」

　と言われれば信じないこちらが悪いのですが……。
　でもぶっちゃけお化けだの呪いだのこの世に存在しないでしょ？
　明治の妖怪博士・井上円了は世の中の怪異のほとんどは合理的な科学で説明がつくと説きましたが「真怪」と言って〝その時代の科学や知識では解明や説明がつかない現象〟として、妖怪変化の存在を全否定する事はしませんでしたが、いわゆる幽霊だの呪いだのといった超自然の存在や力がこの世に存在する、出現するのが極めて低確率であっても本当にあるのならそれらに対処する公的機関が無いとおかしいんですよ。
　実録系怪談ものって、そのうえで読者に「ひょっとしたら……」という思いを抱かせる内容じゃないといけないんですけど、本作は完全にオカルト・ホラーもののキャラクター文芸・ライトノベルみたいな内容なんです。

「そんな事を言われてもこれは本当にあったんだよ！」

　と言われればそれまでなんですが、私には創作にしか思えない。そして創作として考えた場合ちょっとそれはどうなんだ的な部分がちらほら。
　登場人物がやたら説明的な科白を言うんです。
　そんな切羽詰まった状況でそんな説明科白言うかよ！　という場面がやたらとあります。
　独語癖でもない限りそんな風に自分の感情や思考を口に出して説明しないから！　そういうのは地の文で説明するべきだから！
　あと収録されて作品のひとつはこんな感じではじまるんですけど――。

　この〝何度かの怪異〟とやらはこの後に語られる怪異本編とは何ひとつ関わりがありません。
　そのくだり必要か？

「そんな事を言われてもこれは本当にあったんだよ！」

　と言われたらどうしようもないけどさぁ……。
　そもそも〝俺〟って誰だよ！　いや営業のＫさんなんでしようけど、唐突な自分語りに少し混乱しました。
　なんか不満ばかり述べていますが本書は『妖魔夜行』や『ゴースハンターRPG』といった（我ながら例えが古い！）怪奇ものTRPGの良いシナリオソースになると思います。
　自分ならこの出だしからどう物語を創るか、みたいな楽しみもあります。
　せっかく760円＋悪税もしたのだから他山の石として活用せねば……。