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第9話 めんどくさ〜〜☺︎
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それから日が経って、入学式だ。
セーラー服のような襟と、高貴そうな感じの紺色のスカート。スカーフの色で学年がわかるらしく、一年は赤だった。
初めて着る制服を撫でながら、先生のありがたいお話を聞く。
とても眠い。
私はいつかのM室(体育館)の椅子に座り、入学式を行なっている。教壇では校長先生が長々と話している。
そして、『校長先生のお話』が始まってから、もう五分経つ。文字にするとそれほどもないように感じるけど、ただ座って興味もない話を聞くだけとか、拷問でしかないからね?
サファが恋しい……早く会いたい……もうダメだ帰りたい……。と安定のホームシックに悩まされながら、さらに五分。
まだ終わらないの?よくそんなに話すことあるよね。それもうセンスなんじゃない?それか天性の能力。
「今日は美しく花も咲き誇り……」
どうでもいいんだよそんなこと!見ればわかんじゃん!なーんでそんなくだらないこと言うの!
「あ、校長先生、そろそろお時間が押していまして……」
「ん、そうか。では、短くなりましたが、これで挨拶を終わりにしたいと思います。」
ナイス教頭先生!流石!イケメン!モテ男!ヒューヒュー!気がきくね!
長ったらしい挨拶を聴き終え、ため息を吐く。
そしてまだ何かあるらしく、『新入生挨拶』やら『生徒会長のお話』やらを聞き流し、やっとの事で入学式が終わる。
チラッと周りを見ると、みんな疲れているみたいだった。そりゃそうやん。
「では、これから少しの間自由時間とします。30分になったらクラス別に分かれ、担当の先生の指示に従い各教室へ行くように」
教壇から教頭先生らしき人がマイクを使って言う。あんまり聞こえないというか、聞き取りづらい。
そんなことを考えながら、ミュディーとチェリスのところへ行く。
「ミュディー様、チェリス様、おはようございます」
「ああ、おはよう。大丈夫だったか?」
「リナフィー様の件でしたら、大丈夫です。もう解決していますので、ご安心ください。」
「ふーん……本当に、ごめんね」
しゅん、とした様子でミュディーが俯く。かわいい。第一印象はチャラ男だけど、中々にいい人だね。すごい好み。どストライク。
「いえ、お気になさらず!そんなことより、クラス割り振りを見に行きませんか?後ろの方に貼ってあるようですよ」
「あ、本当だ。じゃあ行こっか!」
「お待ちくださいまし!」
突然、誰かから止められる。振り向くと、リナフィーが腕組みをしてこちらを見下している。ただ身長が小さいからか、普通に見上げてる。
何の用だろう?あの件だったらもう済んでいるのに。そう思いながら、なんとなくミュディーの顔を見る。案の定不機嫌だ。
「何、なんできたの。」
「そんなに怒らないで欲しいですわ。ワタクシは、ただ謝りに来ただけですの。…………レミーウィル様、あの時は本当に、ごめんなさい」
本当に真剣な顔で謝りにくるあたり、いい人なんだろうな。ただ見た目と話し方のせいで誤解され、違う人種が付きまとうようになった、みたいな感じかな?
んー、可愛い。さすがリナフィーあざとい!
「別に、気にしてないからいいですよ。それより、一緒にクラス割り振り見ませんか?」
「!いいんですの?ワタクシは、あなたに……」
「いいです。ほら、行きましょう。」
「ああ、ありがとうございますわ……!」
私が無理やり手を掴むと、感動したように目をウルウルさせるリナフィー。可愛い。純粋ー。
「なぁ、本当に許していいのか?」
「いいと言ってるじゃないですか。しつこいですよ、チェリス様。」
リナフィーの手を引きクラス割り振りを見に行こうとしながら、チェリスの返事をする。そろそろしつこいぞ。しつこい男はモテないぞ!
そう言っているのに、チェリスは食い下がらない。
「う、そうは言ってもだな……」
「納得しないのもわかりますが、もう済んだことですし、なにより私は気にしていません。わかりましたか?」
「……まぁ、レミィがそういうならいいが……」
「ご理解していただきありがとうございます」
そうこう話しているうちに、クラス割り振りの紙が見えるところまできた。
人がかなりいるけど、紙が大きいので見えやすい。
「んー、あ、私はA組でした。お!リナフィー様と同じですね!」
「そうですわね。ミュディー様も同じですわ」
「あ、本当だー」
「俺もAなんだが。」
「本当ですね。」
「もっと他に……いや、なんでもない」
「そうですか?」
なんと、4人とも同じクラスだった。いいね!楽しくなりそうでなによりです。
チェリスが何やら言っているけど、まぁ案の定この扱いだね。ふふふ。
「えっと……A組はあそこに集まってますね。行きましょう」
「ええ。」
「うん。」
「おう。」
A組という看板を持った人がいたので、間違いなくそこだろう。と、指差す。
3人と一緒に歩き始めていたところ、ふと疑問に思ったことを聞いて見た。
「ところで、リナフィー様。お連れの2人はどちらへ行かれたんですか?」
「……どこもなにも、別の人のところですわ。それが何かしら?」
「いえ、ただ気になっただけです。」
「そう。ならいいですわ。」
ちょっと不機嫌になるリナフィーちゃん可愛いっっ!
でも、まぁ、そうだよね、自分は悪くないのに自分の責任にされ、さらに自分の元から離れたんだもんね。その話をされたら不機嫌になるよねー。ごめんよ。
私達は雑談をしながらA組と書いてある、看板のところへ行った。ちょうどそのタイミングで、パリシュ様がこちらへ近づいてきた。
「パリシュ様。お久しぶりです」
「やぁ。そちらは上手く行っているようで助かったよ。」
にっこりと微笑み、いいおじさんな雰囲気を醸し出す。私もつられて笑顔になる。上品なオジサマって感じだね。
「いえ、当然のことをしたまでです。今日はどうしてこちらに?」
「少しお話をしてくてね。……リゼット嬢、少し、いいかい?」
「え、えぇ」
リナフィーが不安げな表情を見せる。まぁ、話の内容は予想できるだろうし、それはそうだろうね。
大丈夫だよリナフィー!怖くなーいよっ!なんてったって私が直々にお話ししてみた人だからネっ!
「では、少し席を外させてもらうよ。失礼。」
「わかりました。」
リナフィーとパリシュ様は少し離れたところに行く。リナフィーは少しお叱りを受けているようで、しょんぼりしている。
「あれ何話してるんだ?」
「言わなくても分かるでしょう。例の件です。」
「あー……っと……」
「まさかわからないんですか?」
「うーん……あっ!わかるぞ!アレだな、アレ!」
「本当にわかってるんですかね。まぁ、わかってなくても別に構いませんが」
しばらくしてから、リナフィーが帰ってきた。心なしかしょんぼりしている気がする。まぁそりゃそーか、慰めてあげよう!
「おかえりなさい、リナフィー様。大丈夫ですか?」
「大丈夫ですわ。それより、今はなんの時間ですの?」
「今は……集合待ちだと思います。多分もうそろそろ次の行動に移るはずですよ」
「わかりましたわ」
ぷい、とリナフィーが外をむく。
ふふふ、怒られちゃってしょぼんとしてるね。可愛らしい。
やっぱり見た目からして可愛いから何しても可愛く見えちゃうんだよなぁ~♡
「では、皆様お揃いのようなので、移動したいと思います」
私達は先導する先生について行った。
「はい、ここがA組のクラスになります。」
案内された場所は、前世とそれほど変わらない教室のようなところだ。ようなというか、たぶん教室。
黒板があって、机があって、椅子がある。背面黒板もある。ロッカーは扉付きで、一人一人に用意されている。
同じようだけど、こっちの方がお金がかかってそう。無駄に金キラだらけだし、椅子にはソファですかって感じのクッションが敷かれている。
まぁ予想できてたね。
「では、黒板にある通りの席に座ってください。みなさんから見て、左前の人が出席番号一番、そして右後ろの人が出席番号最後の人になります。」
んー、ここも前世と変わらないね。
みんながガタガタと椅子に座る。やっぱりお嬢様、お坊ちゃんだらけだからか、家にあるであろう椅子より柔らかくないのが不満らしい。
私は窓側の一番後ろ。出席番号は結構早いほうみたい。
ミュディー、チュリスは少し遠くなってしまったけど、リナフィーがちょっとだけ近い。私の右斜め前にいる。
ここなら教室も見渡せていいね、ラッキー!
「皆さん席に着けましたね。では、自己紹介をいたします。」
おっ!、と思いつつ、先生を見る。
メガネに、ちょっとだけボサっとしたパツキンの髪。背が高くてヒョロヒョロ。優しそうだけど、頼りなさそう。
「私が今日から皆さんの担任になる、エディック・ジェファソニーです。よろしくお願いします。」
ペコッ、と長い体を折り曲げてお辞儀をする。それにみんなが控えめにぱちぱちと拍手をする。
「では、一人一人自己紹介していきましょうか」
出席番号一番の方から、と指で指示する。これも中々に前世と変わらない。こういう時一番の人はほんとに損するなぁ、と思う。
チラッ、と体をずらして一番の人を見ると、黒髪のようで、少しだけ親近感が湧く。
「おっけー!まず、俺はタイヨー・ヤマダ!変わった名前だけど、俺の両親が東の方の島国生まれだからな。勉強は苦手だから、色々教えてくれよな!」
黒目黒髪の少年は、ニカッ!と太陽のような笑顔でグッドサインをしている。
いやいや、待って、タイヨー……太陽?それに東の方の島国って、もしかして日本のこと?
だとしたら、これはなんとしても仲良くなるしかない。
もしかして、お米とか食べれたり、する?????
もしかして、日本の話とかできちゃったり、する!?!?!?!?
わーー!ちょっと興奮してきた。
みんながエディック先生の時と同じようにぱちぱちと拍手をする。私も拍手をする。心なしか拍手の音が人より大きかった気もするけど、気にしない!
そのあとは2番の人、3番の人と続いて、6番である私の番になった。
よくある小説のように家柄を言わないといけないとか、そういうのはないみたいで安心した。
「私はレミーウィル・カンザキです。趣味は……読書、かな?名前が長いのでレミィと呼んでください。よろしくお願いします」
ぱちぱちと拍手が起こる。みんなやる気がなさそう。
「男遊びのひどい女よ」
おっっっっっっとぉ??????
いま誰か私の悪口言わなかったか????
殴るぞこら。
「え、いま何か言いましたか?」
教室を見渡すと、明らかにそいつだろ、って佇まいの人がいる。席から見て、番号24番さん。
薄ピンクでくるくるツインテールの、足を組んでる子。
見た目だけは他の人よりずば抜けて可愛いのに、もう品がない様子が見て取れる。
初対面の人にあんなこと言われる筋合いはない。男遊び??なんのことやら。チュリスやミュディーのことだったら、とんだお門違いだ。やめてほしい!
「24番さん、何か言いたいようですが、何か?」
「私は24番さんなんて名前じゃないわ。私はリアード家の長女、ティランよ。男を垂れ回してるような女だと言っているのよ、何か間違ってる?」
クスクスと数人が笑う。おそらく取り巻きだろう。不愉快な態度に、他の人も落ち着かない様子だ。
「ふーん、そうですか。あ、自己紹介終わりましたので、次の方どうぞ。こんな空気にしてしまいすみません」
ぺこり、と7番さんに謝っておく。
言っておくけど、私は口喧嘩がしたいわけでも敵を増やしたいわけでも、目立ちたいわけでもない。
悪いけど、穏便に済ませるつもりはないが荒立たせるつもりはさらさらない。まぁ勝手に盛り上がってていただけたら。
「ヒッ、えっと、7番の、モル・ディエゴです。お願いしましゅ……」
………………。
本当に申し訳ない限りです。
着々と自己紹介が終わり、リナフィー、チュリス、24番さん(ティラン)、ミュディーも終わる。
そのあとは少しの自由時間が言い渡されたので、私は例の1番のタイヨーくんに話しかけるべく席を立った。
その時だった。
「あら、男をたぶらかす悪女はどこへ行こうというの?まさかまた男遊びにでも?ふふふ」
は????????
なんで話しかけてくんねん帰れ帰れ。
セーラー服のような襟と、高貴そうな感じの紺色のスカート。スカーフの色で学年がわかるらしく、一年は赤だった。
初めて着る制服を撫でながら、先生のありがたいお話を聞く。
とても眠い。
私はいつかのM室(体育館)の椅子に座り、入学式を行なっている。教壇では校長先生が長々と話している。
そして、『校長先生のお話』が始まってから、もう五分経つ。文字にするとそれほどもないように感じるけど、ただ座って興味もない話を聞くだけとか、拷問でしかないからね?
サファが恋しい……早く会いたい……もうダメだ帰りたい……。と安定のホームシックに悩まされながら、さらに五分。
まだ終わらないの?よくそんなに話すことあるよね。それもうセンスなんじゃない?それか天性の能力。
「今日は美しく花も咲き誇り……」
どうでもいいんだよそんなこと!見ればわかんじゃん!なーんでそんなくだらないこと言うの!
「あ、校長先生、そろそろお時間が押していまして……」
「ん、そうか。では、短くなりましたが、これで挨拶を終わりにしたいと思います。」
ナイス教頭先生!流石!イケメン!モテ男!ヒューヒュー!気がきくね!
長ったらしい挨拶を聴き終え、ため息を吐く。
そしてまだ何かあるらしく、『新入生挨拶』やら『生徒会長のお話』やらを聞き流し、やっとの事で入学式が終わる。
チラッと周りを見ると、みんな疲れているみたいだった。そりゃそうやん。
「では、これから少しの間自由時間とします。30分になったらクラス別に分かれ、担当の先生の指示に従い各教室へ行くように」
教壇から教頭先生らしき人がマイクを使って言う。あんまり聞こえないというか、聞き取りづらい。
そんなことを考えながら、ミュディーとチェリスのところへ行く。
「ミュディー様、チェリス様、おはようございます」
「ああ、おはよう。大丈夫だったか?」
「リナフィー様の件でしたら、大丈夫です。もう解決していますので、ご安心ください。」
「ふーん……本当に、ごめんね」
しゅん、とした様子でミュディーが俯く。かわいい。第一印象はチャラ男だけど、中々にいい人だね。すごい好み。どストライク。
「いえ、お気になさらず!そんなことより、クラス割り振りを見に行きませんか?後ろの方に貼ってあるようですよ」
「あ、本当だ。じゃあ行こっか!」
「お待ちくださいまし!」
突然、誰かから止められる。振り向くと、リナフィーが腕組みをしてこちらを見下している。ただ身長が小さいからか、普通に見上げてる。
何の用だろう?あの件だったらもう済んでいるのに。そう思いながら、なんとなくミュディーの顔を見る。案の定不機嫌だ。
「何、なんできたの。」
「そんなに怒らないで欲しいですわ。ワタクシは、ただ謝りに来ただけですの。…………レミーウィル様、あの時は本当に、ごめんなさい」
本当に真剣な顔で謝りにくるあたり、いい人なんだろうな。ただ見た目と話し方のせいで誤解され、違う人種が付きまとうようになった、みたいな感じかな?
んー、可愛い。さすがリナフィーあざとい!
「別に、気にしてないからいいですよ。それより、一緒にクラス割り振り見ませんか?」
「!いいんですの?ワタクシは、あなたに……」
「いいです。ほら、行きましょう。」
「ああ、ありがとうございますわ……!」
私が無理やり手を掴むと、感動したように目をウルウルさせるリナフィー。可愛い。純粋ー。
「なぁ、本当に許していいのか?」
「いいと言ってるじゃないですか。しつこいですよ、チェリス様。」
リナフィーの手を引きクラス割り振りを見に行こうとしながら、チェリスの返事をする。そろそろしつこいぞ。しつこい男はモテないぞ!
そう言っているのに、チェリスは食い下がらない。
「う、そうは言ってもだな……」
「納得しないのもわかりますが、もう済んだことですし、なにより私は気にしていません。わかりましたか?」
「……まぁ、レミィがそういうならいいが……」
「ご理解していただきありがとうございます」
そうこう話しているうちに、クラス割り振りの紙が見えるところまできた。
人がかなりいるけど、紙が大きいので見えやすい。
「んー、あ、私はA組でした。お!リナフィー様と同じですね!」
「そうですわね。ミュディー様も同じですわ」
「あ、本当だー」
「俺もAなんだが。」
「本当ですね。」
「もっと他に……いや、なんでもない」
「そうですか?」
なんと、4人とも同じクラスだった。いいね!楽しくなりそうでなによりです。
チェリスが何やら言っているけど、まぁ案の定この扱いだね。ふふふ。
「えっと……A組はあそこに集まってますね。行きましょう」
「ええ。」
「うん。」
「おう。」
A組という看板を持った人がいたので、間違いなくそこだろう。と、指差す。
3人と一緒に歩き始めていたところ、ふと疑問に思ったことを聞いて見た。
「ところで、リナフィー様。お連れの2人はどちらへ行かれたんですか?」
「……どこもなにも、別の人のところですわ。それが何かしら?」
「いえ、ただ気になっただけです。」
「そう。ならいいですわ。」
ちょっと不機嫌になるリナフィーちゃん可愛いっっ!
でも、まぁ、そうだよね、自分は悪くないのに自分の責任にされ、さらに自分の元から離れたんだもんね。その話をされたら不機嫌になるよねー。ごめんよ。
私達は雑談をしながらA組と書いてある、看板のところへ行った。ちょうどそのタイミングで、パリシュ様がこちらへ近づいてきた。
「パリシュ様。お久しぶりです」
「やぁ。そちらは上手く行っているようで助かったよ。」
にっこりと微笑み、いいおじさんな雰囲気を醸し出す。私もつられて笑顔になる。上品なオジサマって感じだね。
「いえ、当然のことをしたまでです。今日はどうしてこちらに?」
「少しお話をしてくてね。……リゼット嬢、少し、いいかい?」
「え、えぇ」
リナフィーが不安げな表情を見せる。まぁ、話の内容は予想できるだろうし、それはそうだろうね。
大丈夫だよリナフィー!怖くなーいよっ!なんてったって私が直々にお話ししてみた人だからネっ!
「では、少し席を外させてもらうよ。失礼。」
「わかりました。」
リナフィーとパリシュ様は少し離れたところに行く。リナフィーは少しお叱りを受けているようで、しょんぼりしている。
「あれ何話してるんだ?」
「言わなくても分かるでしょう。例の件です。」
「あー……っと……」
「まさかわからないんですか?」
「うーん……あっ!わかるぞ!アレだな、アレ!」
「本当にわかってるんですかね。まぁ、わかってなくても別に構いませんが」
しばらくしてから、リナフィーが帰ってきた。心なしかしょんぼりしている気がする。まぁそりゃそーか、慰めてあげよう!
「おかえりなさい、リナフィー様。大丈夫ですか?」
「大丈夫ですわ。それより、今はなんの時間ですの?」
「今は……集合待ちだと思います。多分もうそろそろ次の行動に移るはずですよ」
「わかりましたわ」
ぷい、とリナフィーが外をむく。
ふふふ、怒られちゃってしょぼんとしてるね。可愛らしい。
やっぱり見た目からして可愛いから何しても可愛く見えちゃうんだよなぁ~♡
「では、皆様お揃いのようなので、移動したいと思います」
私達は先導する先生について行った。
「はい、ここがA組のクラスになります。」
案内された場所は、前世とそれほど変わらない教室のようなところだ。ようなというか、たぶん教室。
黒板があって、机があって、椅子がある。背面黒板もある。ロッカーは扉付きで、一人一人に用意されている。
同じようだけど、こっちの方がお金がかかってそう。無駄に金キラだらけだし、椅子にはソファですかって感じのクッションが敷かれている。
まぁ予想できてたね。
「では、黒板にある通りの席に座ってください。みなさんから見て、左前の人が出席番号一番、そして右後ろの人が出席番号最後の人になります。」
んー、ここも前世と変わらないね。
みんながガタガタと椅子に座る。やっぱりお嬢様、お坊ちゃんだらけだからか、家にあるであろう椅子より柔らかくないのが不満らしい。
私は窓側の一番後ろ。出席番号は結構早いほうみたい。
ミュディー、チュリスは少し遠くなってしまったけど、リナフィーがちょっとだけ近い。私の右斜め前にいる。
ここなら教室も見渡せていいね、ラッキー!
「皆さん席に着けましたね。では、自己紹介をいたします。」
おっ!、と思いつつ、先生を見る。
メガネに、ちょっとだけボサっとしたパツキンの髪。背が高くてヒョロヒョロ。優しそうだけど、頼りなさそう。
「私が今日から皆さんの担任になる、エディック・ジェファソニーです。よろしくお願いします。」
ペコッ、と長い体を折り曲げてお辞儀をする。それにみんなが控えめにぱちぱちと拍手をする。
「では、一人一人自己紹介していきましょうか」
出席番号一番の方から、と指で指示する。これも中々に前世と変わらない。こういう時一番の人はほんとに損するなぁ、と思う。
チラッ、と体をずらして一番の人を見ると、黒髪のようで、少しだけ親近感が湧く。
「おっけー!まず、俺はタイヨー・ヤマダ!変わった名前だけど、俺の両親が東の方の島国生まれだからな。勉強は苦手だから、色々教えてくれよな!」
黒目黒髪の少年は、ニカッ!と太陽のような笑顔でグッドサインをしている。
いやいや、待って、タイヨー……太陽?それに東の方の島国って、もしかして日本のこと?
だとしたら、これはなんとしても仲良くなるしかない。
もしかして、お米とか食べれたり、する?????
もしかして、日本の話とかできちゃったり、する!?!?!?!?
わーー!ちょっと興奮してきた。
みんながエディック先生の時と同じようにぱちぱちと拍手をする。私も拍手をする。心なしか拍手の音が人より大きかった気もするけど、気にしない!
そのあとは2番の人、3番の人と続いて、6番である私の番になった。
よくある小説のように家柄を言わないといけないとか、そういうのはないみたいで安心した。
「私はレミーウィル・カンザキです。趣味は……読書、かな?名前が長いのでレミィと呼んでください。よろしくお願いします」
ぱちぱちと拍手が起こる。みんなやる気がなさそう。
「男遊びのひどい女よ」
おっっっっっっとぉ??????
いま誰か私の悪口言わなかったか????
殴るぞこら。
「え、いま何か言いましたか?」
教室を見渡すと、明らかにそいつだろ、って佇まいの人がいる。席から見て、番号24番さん。
薄ピンクでくるくるツインテールの、足を組んでる子。
見た目だけは他の人よりずば抜けて可愛いのに、もう品がない様子が見て取れる。
初対面の人にあんなこと言われる筋合いはない。男遊び??なんのことやら。チュリスやミュディーのことだったら、とんだお門違いだ。やめてほしい!
「24番さん、何か言いたいようですが、何か?」
「私は24番さんなんて名前じゃないわ。私はリアード家の長女、ティランよ。男を垂れ回してるような女だと言っているのよ、何か間違ってる?」
クスクスと数人が笑う。おそらく取り巻きだろう。不愉快な態度に、他の人も落ち着かない様子だ。
「ふーん、そうですか。あ、自己紹介終わりましたので、次の方どうぞ。こんな空気にしてしまいすみません」
ぺこり、と7番さんに謝っておく。
言っておくけど、私は口喧嘩がしたいわけでも敵を増やしたいわけでも、目立ちたいわけでもない。
悪いけど、穏便に済ませるつもりはないが荒立たせるつもりはさらさらない。まぁ勝手に盛り上がってていただけたら。
「ヒッ、えっと、7番の、モル・ディエゴです。お願いしましゅ……」
………………。
本当に申し訳ない限りです。
着々と自己紹介が終わり、リナフィー、チュリス、24番さん(ティラン)、ミュディーも終わる。
そのあとは少しの自由時間が言い渡されたので、私は例の1番のタイヨーくんに話しかけるべく席を立った。
その時だった。
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更新待ってます^_^
初めまして!
桜姫も家族も順応が早いですねw
更新楽しみにしています!