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a little hope (1)
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「いやすまなかった。全てこちらの落ち度だ。言い訳も無い」
イケメンは開口一番にそう言った。
「何か俺に謝らるようなことしたんスか?」
理由も分からず謝られても恐ろしいだけである。これからの事についてならそれは尚更だ。
どの道、あんな醜態を晒した時点で試験は不合格だろうことは分かっていた。
もちろん、侮っていたわけじゃない。多少の違いこそあれどやることは皆同じだ。傲慢から死に繋がるものほど惨めなものはない。
いつかのじっちゃんはよくそう溢していた。死とは理不尽なものではあるが、
それを引き寄せるかどうかはあくまでも俺たちの判断に依るものだ。
だからリスクは常に計算しろ、割に合わぬものなら手を引け。命の代償としてこれほど釣り合わぬものはないのだと。
その意味では今回の試験は多少リスキーではあった。現に死にかけたわけである。
「・・・君は、おかしいとは思わなかったのかい?」
「何を?」
「この試験のことだよ。君は命を賭けて望んだようだけれど、普通は避けて通るものだと思うんだが」
さも、本当に分からないのだと、そのイケメンは答えを促す。
しかしそんなことは考えれば分かることだ。
「その先にしか望むものが無いのなら渡る以外無いんじゃないスか?」
「それで、命を落とす可能性があってもかい?」
「そりゃ命は惜しい。けど判断は俺がする。だからたとえ死んでも馬鹿だなぁって笑えるじゃないスか」
答えなんて単純明快。
要は自分がその結末に納得できるかどうかである。
今回の試験は俺にとってはそれに値した。途中ズラかろうともしたけれど、あの少女を見つけてしまったから。
そこに俺はきっと意味があると思った。だから戦った、それだけなのである。
「俺の道なんで。先導なんて余分なものは見なかった。俺が中心なんだから、終わりを決めるのも俺次第っス」
だから今はたただ、生き残ったことだけを喜んでいれば良いだけの話。
「・・・君は、どうしてウチに来たいと思ったんだい?」
「え?いや、特には。募集の紙が一番デカかったから、強ぇんだろうなって」
後、笑いながら窓口で勧められたのもある。出会いとはこれ必然。
どこでも良かったが、目についたところに直感で申し込んだわけである。
「よぉ、お前」
脇の壁にもたれかかかっていた男から声がかかった。
コイツは確か俺に試験を案内したやつだな。
「お前は今回の件をどうするつもりだ」
「どうとは?」
「協会に持ち込むのかって話だよ。別に止めやしねぇよ。俺も身の振り方ってやつがあるからな」
「バリオス」
「うるせぇ。細々したことは嫌いなんだよ」
ドッカリとイケメンの横に腰を下ろした男が答えを促してくる。
何だコイツ、態度デケェな。
「協会って、ギルド案内してくれたとこ?何でワザワザ報告に行くんスか」
それは、少し惨めである。
「紹介してくれてどうも、けど落ちちまいました面目ないって、そりゃ惨めでしょ。いや義務があるんなら行くっスけど」
ルールや規定がある以上は仕方ないが、できれば御免被りたい。
ってかいちいち報告するのはそも性に合っていない。統括を自負しているんなら結果ぐらい把握しているだろうに。
「おい、待て。何の話だ」
「だから報告の話でしょ?何スか、それってルールなんスか?あの窓口の人は何も言ってなかったっス」
抵抗するのも少し恥ではあるが、衆目に晒されるよりかはマシである。
新参者である以上、ある程度許容はされても羞恥を感じないわけはない。
「お前、まさかこの試験が正常だとでもおも「あぁ、割りこんですまない。何点か質問したいことがあるんだ」
話に割り込むようにイケメンが遮ってきた。まぁ恥をかく話題よりはマシな方に持っていってくれることを願うしかない。
「ウチを選んだ理由は先程聞いたけれど、君はどうしてギルドに入ろうと思ったんだい?」
本質たる質問ではあるが、その答えはいつだって口にしてきた。
国を出て、王たることだけは捨てきれず。
ただ、いつの日か誰しもが讃えずにはいられない、そんな王国を夢に見て。
「キレイなものが見たいから」
「キレイ?」
「そう。本当にキレイなもの。嫌なもの、見たくもないものばかり見てきたから」
一見だけでは分からないもの、その本質。側だけではなく、その全てが輝いているもの。
子供の理屈かもしれないけれど、そういうものを集めていけば、俺も変わっていくんじゃないのかと。
本当に、キレイなものを見に行きなさい。
最後の国民はそう言って、笑ってこの世を後にした。
その笑顔には、今までに感じたことの無い救いがあったから。
「まぁ、もう1つは見たけどね」
俺の隣に座り、何も語らずただぼんやりと周りを見ている小狐。
尻尾をユラユラ揺らせながら、いつ終わるとも知れないこの尋問に付き合ってくれていた。
「・・・っ」
「うん?あぁ、そういや腹減ったな。何か食いに行くか」
結果が知れているものにこれ以上時間をかけるのも無駄である。
しかし随分と回りくどい伝え方をするもんだ。残念でした、とそれだけ言えばいいものを。
「じゃ俺は飯食いに行くんでこれで。また何かあれば協会通じて連絡ください。欠員が出ることを祈ってます」
「あ、いや、君ちょ」
「おい」
ふんぞりかえったままで、傍らの男は言った。
「お前、名は」
登録票は渡したはずだが、これ以上時間を取られるのも面倒か。
荷物を纏めた後、改めて自己紹介。
「ゼノ。ゼノ・ブラッドバーン」
~ゼノ・ブラッドバーン~
イケメンは開口一番にそう言った。
「何か俺に謝らるようなことしたんスか?」
理由も分からず謝られても恐ろしいだけである。これからの事についてならそれは尚更だ。
どの道、あんな醜態を晒した時点で試験は不合格だろうことは分かっていた。
もちろん、侮っていたわけじゃない。多少の違いこそあれどやることは皆同じだ。傲慢から死に繋がるものほど惨めなものはない。
いつかのじっちゃんはよくそう溢していた。死とは理不尽なものではあるが、
それを引き寄せるかどうかはあくまでも俺たちの判断に依るものだ。
だからリスクは常に計算しろ、割に合わぬものなら手を引け。命の代償としてこれほど釣り合わぬものはないのだと。
その意味では今回の試験は多少リスキーではあった。現に死にかけたわけである。
「・・・君は、おかしいとは思わなかったのかい?」
「何を?」
「この試験のことだよ。君は命を賭けて望んだようだけれど、普通は避けて通るものだと思うんだが」
さも、本当に分からないのだと、そのイケメンは答えを促す。
しかしそんなことは考えれば分かることだ。
「その先にしか望むものが無いのなら渡る以外無いんじゃないスか?」
「それで、命を落とす可能性があってもかい?」
「そりゃ命は惜しい。けど判断は俺がする。だからたとえ死んでも馬鹿だなぁって笑えるじゃないスか」
答えなんて単純明快。
要は自分がその結末に納得できるかどうかである。
今回の試験は俺にとってはそれに値した。途中ズラかろうともしたけれど、あの少女を見つけてしまったから。
そこに俺はきっと意味があると思った。だから戦った、それだけなのである。
「俺の道なんで。先導なんて余分なものは見なかった。俺が中心なんだから、終わりを決めるのも俺次第っス」
だから今はたただ、生き残ったことだけを喜んでいれば良いだけの話。
「・・・君は、どうしてウチに来たいと思ったんだい?」
「え?いや、特には。募集の紙が一番デカかったから、強ぇんだろうなって」
後、笑いながら窓口で勧められたのもある。出会いとはこれ必然。
どこでも良かったが、目についたところに直感で申し込んだわけである。
「よぉ、お前」
脇の壁にもたれかかかっていた男から声がかかった。
コイツは確か俺に試験を案内したやつだな。
「お前は今回の件をどうするつもりだ」
「どうとは?」
「協会に持ち込むのかって話だよ。別に止めやしねぇよ。俺も身の振り方ってやつがあるからな」
「バリオス」
「うるせぇ。細々したことは嫌いなんだよ」
ドッカリとイケメンの横に腰を下ろした男が答えを促してくる。
何だコイツ、態度デケェな。
「協会って、ギルド案内してくれたとこ?何でワザワザ報告に行くんスか」
それは、少し惨めである。
「紹介してくれてどうも、けど落ちちまいました面目ないって、そりゃ惨めでしょ。いや義務があるんなら行くっスけど」
ルールや規定がある以上は仕方ないが、できれば御免被りたい。
ってかいちいち報告するのはそも性に合っていない。統括を自負しているんなら結果ぐらい把握しているだろうに。
「おい、待て。何の話だ」
「だから報告の話でしょ?何スか、それってルールなんスか?あの窓口の人は何も言ってなかったっス」
抵抗するのも少し恥ではあるが、衆目に晒されるよりかはマシである。
新参者である以上、ある程度許容はされても羞恥を感じないわけはない。
「お前、まさかこの試験が正常だとでもおも「あぁ、割りこんですまない。何点か質問したいことがあるんだ」
話に割り込むようにイケメンが遮ってきた。まぁ恥をかく話題よりはマシな方に持っていってくれることを願うしかない。
「ウチを選んだ理由は先程聞いたけれど、君はどうしてギルドに入ろうと思ったんだい?」
本質たる質問ではあるが、その答えはいつだって口にしてきた。
国を出て、王たることだけは捨てきれず。
ただ、いつの日か誰しもが讃えずにはいられない、そんな王国を夢に見て。
「キレイなものが見たいから」
「キレイ?」
「そう。本当にキレイなもの。嫌なもの、見たくもないものばかり見てきたから」
一見だけでは分からないもの、その本質。側だけではなく、その全てが輝いているもの。
子供の理屈かもしれないけれど、そういうものを集めていけば、俺も変わっていくんじゃないのかと。
本当に、キレイなものを見に行きなさい。
最後の国民はそう言って、笑ってこの世を後にした。
その笑顔には、今までに感じたことの無い救いがあったから。
「まぁ、もう1つは見たけどね」
俺の隣に座り、何も語らずただぼんやりと周りを見ている小狐。
尻尾をユラユラ揺らせながら、いつ終わるとも知れないこの尋問に付き合ってくれていた。
「・・・っ」
「うん?あぁ、そういや腹減ったな。何か食いに行くか」
結果が知れているものにこれ以上時間をかけるのも無駄である。
しかし随分と回りくどい伝え方をするもんだ。残念でした、とそれだけ言えばいいものを。
「じゃ俺は飯食いに行くんでこれで。また何かあれば協会通じて連絡ください。欠員が出ることを祈ってます」
「あ、いや、君ちょ」
「おい」
ふんぞりかえったままで、傍らの男は言った。
「お前、名は」
登録票は渡したはずだが、これ以上時間を取られるのも面倒か。
荷物を纏めた後、改めて自己紹介。
「ゼノ。ゼノ・ブラッドバーン」
~ゼノ・ブラッドバーン~
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