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王子様との出会い
9.お姉様の想いびとと突きつけられた真実
国王陛下と王妃殿下の席も用意されて、わたくしは国王陛下と王妃殿下にもお誕生日を祝われていた。嬉しくて胸が弾む。
国王陛下と王妃殿下はお兄様にも話しかけていた。
「エルネスト子爵夫妻は健在で、アデル殿は経験を積むために王宮で文官の仕事をしたいと願っていると聞いています」
「ご存じでしたか」
「レオンハルトがサラに聞いたようだよ。どうかな、アデルもこの王宮で働いてみないか?」
お兄様の名前はアデルである。
まだ両親が健在で領地経営や事業も取り仕切っているので、お兄様は実のところ仕事がない。お金がなかったために貴族の通う学園に行けなかったので、文官の道を諦めたという過去があった。
それをお姉様は王子様に伝えていたのだ。
「わたしは貴族の学園で勉強していません。文官になれるでしょうか?」
「文官になるための試験があります。それを受験してください」
「アデルは自分で勉強していると聞く。きっといい結果がでるよ」
王妃殿下と国王陛下に言われて、お兄様はやる気になったようだった。
お兄様が王宮の文官になって王都で暮らすようになれば、もっと頻繁に会うことができるようになるだろう。
「勉強して文官になるための試験に合格してみせます」
「お兄様、格好いい!」
「アデルお兄様、頑張ってください」
気合を入れるお兄様に、わたくしとお姉様で応援した。
お茶会では国王陛下と王妃殿下が王子様のことを話していた。
「レオンハルトはずっと子どもができずに、やっと生まれた王子だったので、わたしは期待をかけすぎて厳しくしてしまったかもしれない」
「王族として異例なくらい早く癒しの力が発現してしまったので、奉仕活動にも幼いときから行かせてしまいました」
「もっとレオンハルトを甘やかすのではなくて、ただ、愛して過ごせばよかった」
「わたくしたち、これからでも間に合うでしょうか? レオンハルト、あなたとの関係をやり直したいのです」
王子様のことに関して、国王陛下も王妃殿下も後悔しているようだった。
小さなころから厳しく躾けられた王子様。三歳のときに癒しの力が発現してしまって、それから国立病院で奉仕活動をしていたのだから、きっとつらいことも怖いこともたくさんあっただろう。
それを感じさせないように王子様はずっと耐えてきたのかもしれない。
「父上、母上、嬉しいです。父上と母上がわたしのことを思っていてくれたというだけで、わたしは満足です」
「そんな優等生の返事をしなくていいのだよ」
「レオンハルトはフィーネ嬢のおかげで自分の気持ちを口にするようになったのでしょう?」
「わたしは……わたしは、我が儘を言っていいのですか?」
「もちろんだよ、レオンハルト」
「わたしは、父上と母上にも寂しいと言っていいのですか?」
「言ってください。これからはレオンハルトとの時間を取るようにします。王子として厳しく育てるべきだという言葉に、わたくしは惑わされていました。許してください」
王子様と国王陛下と王妃殿下の関係もよくなっているようだ。
それを見てわたくしは安心していた。
お茶会が終わると、国王陛下と王妃殿下が最初に席を立って、コンラッド様と王子様がわたくしたちを部屋まで送ってくれた。王子様はわたくしの手を取って、コンラッド様はお姉様の手を取って、エスコートしてくれている。
お姉様の顔が赤く、コンラッド様に手を取られて恥ずかしそうに目を伏せている気がする。
その理由が、家族の部屋に行ってから分かった。
「サラ、あなたはコンラッド様をお慕いしているのですか?」
「お母様……それは……」
「おしたい? それはどういうこと? 押したいの?」
お姉様とコンラッド様が押し合いをして遊んでいるところを想像してしまったが、そうではないようだ。
お母様がわたくしに教えてくれる。
「お慕いしているというのは、結婚したいくらい大好きということです」
「けっこんしたいくらい……けっこん……」
お姉様が結婚してしまう。
それを考えるとわたくしは悲しくなってしまう。
お姉様とは離れたくない。
ぎゅっとお姉様のドレスの裾を握り締めると、お姉様がわたくしの髪を撫でてくれる。
「ただの憧れです。わたくしはコンラッド様には釣り合いません」
「つり? お姉様、つりをするの?」
「違うのですよ。コンラッド様は公爵家のご出身、サラは子爵家の出身。結婚するのは難しいということです」
コンラッド様は公爵家の方だった。わたくしも詳しくは分からないが、公爵家が王族に続いて身分が高いことは分かる。コンラッド様は王子様の従兄弟なので、コンラッド様も王子様なのかもしれない。
美しいきらきらの金髪、澄んだ青い目。
確かに絵本の王子様に似ている気がする。
「フィーネ、わたくしの気持ちをコンラッド様に言ってはいけませんよ」
「お姉様がコンラッド様を押したいってことは言わない」
「おしたい」がよく分かっていなかったが、わたくしは頷いた。
でも、お姉様がコンラッド様と結婚したいくらい大好きなのだったら協力したい気持ちもある。
お姉様はわたくしのためにたくさん苦労をした。王宮に働きに出るときも、わたくしを連れて行ってくれた。そのおかげでわたくしは王子様に出会えた。
コンラッド様とお姉様は身分の差があるのだという。
それでお姉様はコンラッド様と結婚できないのだという。
「王子様は……? 王子様は誰とけっこんするの?」
わたくしの問いかけに、お母様が困ったように眉を下げる。
「殿下はまだ年が若いので、結婚の話は出ないでしょうが、近隣諸国の王女殿下やこの国の公爵や侯爵令嬢と結婚するのではないでしょうか」
王子様が結婚してしまう。
わたくしの知らない誰かと。
「王子様がけっこんしても、わたくしは王子様の親友? おそばにいられる?」
その問いかけに関して、母は悲しそうな顔をした。
「それは難しいでしょうね」
「むずかしいの!?」
「大抵の女性は、結婚した後に夫のそばに年齢の近い女性がいるのを好みません。学友はそのころには終わりになっているかもしれませんね」
学友が終わりになる。
学友とは時間制限のあるお役目だった。
友達になったら、一生友達で、仲良くしていけるのだと思っていただけに、わたくしのショックは大きかった。
王子様と一緒にいられる時間が後少ししかないかもしれない。
「な、何歳で、けっこんするの?」
「十八歳くらいでしょうが、王族などは生まれたときから結婚が決まっている婚約者がいる場合もありますね」
王子様と離れなければいけないかもしれない。
それを考えるだけで、悲しくて、寂しくて涙が出てきてしまう。
わたくしの涙を拭きながら、お母様はため息をついた。
「わたくしの娘たちは、前途多難な恋をしてしまうようですね」
恋?
王子様に対するこの感情は恋なのだろうか。
わたくしにはよく分からない。
ただ、王子様とは一生友達で、一生王子様のそばで王子様を守っていけるのだと思っていた。
悲しくて涙が止まらないわたくしをお風呂に入れて、お母様は部屋着に着替えさせてベッドに連れて行った。お昼寝が必要な年齢ではなくなったと思っていたが、泣いたためにわたくしは眠くなっていて、ベッドに入るとうとうととしてしまった。
夢の中で王子様は踊っていた。
王子様がわたくしの手を取って踊ってくれるのが嬉しくて、何回もくるくる回りながら踊っていると、王子様の手が離れた。
王子様は違う令嬢に声をかけに行っていた。
わたくしよりも美しくて、きらきらしたお姫様。
「フィーネ嬢、今日からはわたしはこの方と過ごします」
「王子様……」
「今までありがとうございました」
嫌だ!
王子様とずっと一緒にいたい!
目を覚ましたわたくしは泣いていて、瞼がはれぼったくなっていた。
国王陛下と王妃殿下はお兄様にも話しかけていた。
「エルネスト子爵夫妻は健在で、アデル殿は経験を積むために王宮で文官の仕事をしたいと願っていると聞いています」
「ご存じでしたか」
「レオンハルトがサラに聞いたようだよ。どうかな、アデルもこの王宮で働いてみないか?」
お兄様の名前はアデルである。
まだ両親が健在で領地経営や事業も取り仕切っているので、お兄様は実のところ仕事がない。お金がなかったために貴族の通う学園に行けなかったので、文官の道を諦めたという過去があった。
それをお姉様は王子様に伝えていたのだ。
「わたしは貴族の学園で勉強していません。文官になれるでしょうか?」
「文官になるための試験があります。それを受験してください」
「アデルは自分で勉強していると聞く。きっといい結果がでるよ」
王妃殿下と国王陛下に言われて、お兄様はやる気になったようだった。
お兄様が王宮の文官になって王都で暮らすようになれば、もっと頻繁に会うことができるようになるだろう。
「勉強して文官になるための試験に合格してみせます」
「お兄様、格好いい!」
「アデルお兄様、頑張ってください」
気合を入れるお兄様に、わたくしとお姉様で応援した。
お茶会では国王陛下と王妃殿下が王子様のことを話していた。
「レオンハルトはずっと子どもができずに、やっと生まれた王子だったので、わたしは期待をかけすぎて厳しくしてしまったかもしれない」
「王族として異例なくらい早く癒しの力が発現してしまったので、奉仕活動にも幼いときから行かせてしまいました」
「もっとレオンハルトを甘やかすのではなくて、ただ、愛して過ごせばよかった」
「わたくしたち、これからでも間に合うでしょうか? レオンハルト、あなたとの関係をやり直したいのです」
王子様のことに関して、国王陛下も王妃殿下も後悔しているようだった。
小さなころから厳しく躾けられた王子様。三歳のときに癒しの力が発現してしまって、それから国立病院で奉仕活動をしていたのだから、きっとつらいことも怖いこともたくさんあっただろう。
それを感じさせないように王子様はずっと耐えてきたのかもしれない。
「父上、母上、嬉しいです。父上と母上がわたしのことを思っていてくれたというだけで、わたしは満足です」
「そんな優等生の返事をしなくていいのだよ」
「レオンハルトはフィーネ嬢のおかげで自分の気持ちを口にするようになったのでしょう?」
「わたしは……わたしは、我が儘を言っていいのですか?」
「もちろんだよ、レオンハルト」
「わたしは、父上と母上にも寂しいと言っていいのですか?」
「言ってください。これからはレオンハルトとの時間を取るようにします。王子として厳しく育てるべきだという言葉に、わたくしは惑わされていました。許してください」
王子様と国王陛下と王妃殿下の関係もよくなっているようだ。
それを見てわたくしは安心していた。
お茶会が終わると、国王陛下と王妃殿下が最初に席を立って、コンラッド様と王子様がわたくしたちを部屋まで送ってくれた。王子様はわたくしの手を取って、コンラッド様はお姉様の手を取って、エスコートしてくれている。
お姉様の顔が赤く、コンラッド様に手を取られて恥ずかしそうに目を伏せている気がする。
その理由が、家族の部屋に行ってから分かった。
「サラ、あなたはコンラッド様をお慕いしているのですか?」
「お母様……それは……」
「おしたい? それはどういうこと? 押したいの?」
お姉様とコンラッド様が押し合いをして遊んでいるところを想像してしまったが、そうではないようだ。
お母様がわたくしに教えてくれる。
「お慕いしているというのは、結婚したいくらい大好きということです」
「けっこんしたいくらい……けっこん……」
お姉様が結婚してしまう。
それを考えるとわたくしは悲しくなってしまう。
お姉様とは離れたくない。
ぎゅっとお姉様のドレスの裾を握り締めると、お姉様がわたくしの髪を撫でてくれる。
「ただの憧れです。わたくしはコンラッド様には釣り合いません」
「つり? お姉様、つりをするの?」
「違うのですよ。コンラッド様は公爵家のご出身、サラは子爵家の出身。結婚するのは難しいということです」
コンラッド様は公爵家の方だった。わたくしも詳しくは分からないが、公爵家が王族に続いて身分が高いことは分かる。コンラッド様は王子様の従兄弟なので、コンラッド様も王子様なのかもしれない。
美しいきらきらの金髪、澄んだ青い目。
確かに絵本の王子様に似ている気がする。
「フィーネ、わたくしの気持ちをコンラッド様に言ってはいけませんよ」
「お姉様がコンラッド様を押したいってことは言わない」
「おしたい」がよく分かっていなかったが、わたくしは頷いた。
でも、お姉様がコンラッド様と結婚したいくらい大好きなのだったら協力したい気持ちもある。
お姉様はわたくしのためにたくさん苦労をした。王宮に働きに出るときも、わたくしを連れて行ってくれた。そのおかげでわたくしは王子様に出会えた。
コンラッド様とお姉様は身分の差があるのだという。
それでお姉様はコンラッド様と結婚できないのだという。
「王子様は……? 王子様は誰とけっこんするの?」
わたくしの問いかけに、お母様が困ったように眉を下げる。
「殿下はまだ年が若いので、結婚の話は出ないでしょうが、近隣諸国の王女殿下やこの国の公爵や侯爵令嬢と結婚するのではないでしょうか」
王子様が結婚してしまう。
わたくしの知らない誰かと。
「王子様がけっこんしても、わたくしは王子様の親友? おそばにいられる?」
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「それは難しいでしょうね」
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学友が終わりになる。
学友とは時間制限のあるお役目だった。
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王子様と一緒にいられる時間が後少ししかないかもしれない。
「な、何歳で、けっこんするの?」
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王子様と離れなければいけないかもしれない。
それを考えるだけで、悲しくて、寂しくて涙が出てきてしまう。
わたくしの涙を拭きながら、お母様はため息をついた。
「わたくしの娘たちは、前途多難な恋をしてしまうようですね」
恋?
王子様に対するこの感情は恋なのだろうか。
わたくしにはよく分からない。
ただ、王子様とは一生友達で、一生王子様のそばで王子様を守っていけるのだと思っていた。
悲しくて涙が止まらないわたくしをお風呂に入れて、お母様は部屋着に着替えさせてベッドに連れて行った。お昼寝が必要な年齢ではなくなったと思っていたが、泣いたためにわたくしは眠くなっていて、ベッドに入るとうとうととしてしまった。
夢の中で王子様は踊っていた。
王子様がわたくしの手を取って踊ってくれるのが嬉しくて、何回もくるくる回りながら踊っていると、王子様の手が離れた。
王子様は違う令嬢に声をかけに行っていた。
わたくしよりも美しくて、きらきらしたお姫様。
「フィーネ嬢、今日からはわたしはこの方と過ごします」
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