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王子様との出会い
30.家族が増えて幸せ増える
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婚約式の一か月後、王子様は学園に入学した。
わたくしはその日から、王子様のいない王宮に行って、王太子妃教育を受けることになった。
コンラッドお義兄様も王子様を護衛するために学園に行っているので、昼食は一人だけになり、とても寂しかったが、これも一年だけだと我慢する。一年後には、わたくしも十二歳になって、学園に入学して、王子様と一緒に勉強できるのだとばかり思っていた。
「え!? 違うの!?」
「違いますね」
だから、週末に王子様と話したときにわたくしはものすごく驚いてしまった。
「フィーネ嬢は、学園の入学式の後にお誕生日が来ます。ですので、来年はまだ学園に入学することはできません」
「来年も一人きりなの!?」
「そうなりますね。フィーネ嬢が学園に入学できるのは、再来年で、学年ではわたしと二つ離れていることになります」
あまりのショックにわたくしは立ち尽くしてしまった。
一年だけ我慢すればいいのだと思っていたのに、二年も我慢しなければいけない。
それまでは王子様とは週末の学園が休みの日にしか会うことができない。
しょんぼりとしていると、王子様がわたくしを慰めてくれる。
「夏休みや冬休みはできるだけ一緒に過ごしましょう」
「できるだけってことは、一緒に過ごせない日もあるの?」
「わたしは王太子ですから、公務が入る日もあります」
「わたくし、もっとお勉強する!」
「フィーネ嬢?」
「王子様の公務について行けるようになるわ!」
落ち込んでばかりいるのは性に合わない。わたくしは気を取り直して、気合を入れた。
王子様が公務でわたくしと一緒にいられないかもしれないのならば、わたくしが勉強を頑張って、公務を手伝えるようになればいいだけなのだ。
「わたくし、護衛としても役に立つでしょう? 王子様のそばにいて、公務もきっと手伝えると思うの」
「フィーネ嬢がそんな風に言ってくれるのはとても嬉しいです。ありがとうございます」
「王子様はどんな公務をするの?」
王子様に聞いてみると、ティーカップからお茶を一口飲んで答えてくれる。
「外国からの賓客との食事会や賓客のお相手などですね」
「王子様はまだ十二歳だけど、お客様のお相手をするの?」
「わたしは三歳から国立病院で奉仕活動をしていますし、王族として生まれた以上は年齢に関係なく、できることをするのは当然です」
凛々しく答える王子様に、なんて格好いいんだろうと思ってしまう。
初めて出会ったときから王子様は格好よかったけれど、十二歳になってますます聡明で頼れる相手になってきている。身長も伸びて、成人男性の平均に近付いている気がするので、王子様は国王陛下のように長身になるのだろう。
わたくしが感心していると、王子様がわたくしのお皿に苺のムースの入った小さなガラス容器を置いてくれた。苺のムースはわたくしの大好きなお茶菓子だ。王子様はわたくしのために準備してくれていたのかもしれない。
苺のムースにスプーンを入れると、ぷるるんと揺れて、とても美味しそうだ。一口食べると、幸福が口の中に広がる。
うっとりしているわたくしに、王子様がそっと告げた。
「明日の昼食を楽しみにしていてください」
「明日の昼食?」
学園は週末の二日間が休みなので、明日も王子様は休みだ。
昼食は一緒に食べられると分かっているので、わたくしは王子様の言う通り昼食を楽しみにしていた。
翌日の昼食に、出てきたメニューに、わたくしは歓声を上げてしまった。
「このメニュー、婚約式のときと同じ!」
「フィーネ嬢が食べられなかったのを残念そうにしていたので、厨房に同じものを用意させました」
「ありがとうございます、王子様」
肉団子の入ったスープに、お口直しのレモンのシャーベット、白身魚のソテー、鴨のコンフィ、デザートまでが完璧に再現されていた。
婚約式の日に食べられなくてとても残念だったわたくしの心を救い上げてくれるような王子様の行動に、わたくしは心から感謝した。
昼食のメニューはどれもとても美味しかった。
お腹がいっぱいになって食休みをしていると、王子様がわたくしに話しかける。
「来週はフィーネ嬢のお誕生日ですね。今年も薔薇の花束を持って行きましょうか?」
「本当? わたくし、とても嬉しい」
今年もわたくしはお誕生日に薔薇の花束をプレゼントされるようだった。
わたくしの十一歳のお誕生日のお茶会の日に、王子様は約束通り薔薇の花束を持って来てくれた。ピンクと白が混ざった美しい薔薇で、わたくしは侍女にテーブルに飾ってもらった。
「お姉様、見て。王子様がわたくしにくださったの」
「よかったですね、フィーネ」
「お父様、お母様、お兄様、ジュリエッタお義姉様、見てください!」
わたくしはお祝いの挨拶に来る親しいひとたちに、薔薇の花束を自慢してしまった。
王子様とわたくしは婚約者なので隣の席に座っている。これまでもそうだったが、婚約してからは堂々と隣に座れるようになった。
王子様はわたくしと婚約式のときの話をした。
「あのとき、フィーネ嬢があまりにもかわいらしくて、わたしは声が出ないかと思ったのですよ」
「あのドレス、ショートケーキみたいでかわいかったでしょう?」
「ショートケーキ……言われてみれば、そうだったような気がします。真っ白でレースがふんだんに使ってあって、とてもお似合いでした」
「レオ様にどんな風に見えているか気になっていたから、そう言っていただけてとても嬉しいです」
王子様と話しながらお茶会を楽しんで、わたくしはその日、十一歳になった。
学園に入学できるのはまだまだ先だということはショックだったが、誕生日を迎えられたことは純粋に嬉しかった。
王子様は学園に入学しても、奉仕活動は続けていた。
月に一度の国立病院訪問は、わたくしは必ず王子様に同行した。
怪我人や病人を見ても、わたくしはまだ少しだけ怖かったけれど、王子様の癒しの力を受けて回復していく様子を見れば、純粋によかったと思えた。
王子様は年齢が上がるにつれて癒しの力も強くなっていっているようで、治療する人数が増えているのは感じていた。それでも、王子様は泣き言も文句も言わず、淡々と癒しの力で病人や怪我人を治療して行った。
癒しの力を使うのは疲れるようで、王子様は帰りの馬車ではぐったりしていることが多い。
これだけ真摯に国民と向き合い、怪我や病気で弱った人々を助けようとする王子様は本当に崇高な精神の持ち主だと尊敬する。
今は平民になっている王弟陛下とアルノルト様も、ものすごく嫌がっていた奉仕活動を国中を回って毎日させられているというのだから、大変ではあるだろう。それでも、わたくしは王弟陛下のしたことを知っているし、アルノルト様にも同情はしなかった。
夏休みには、わたくしは王子様に旅行に誘われていた。
エルネスト子爵家にいたころには貧しくて旅行など行ったことがなかったし、王宮に学友として通うようになってからは、勉強が忙しくて旅行どころではなかった。
「フィーネ嬢は旅行に行ったことがないのですか?」
「はい」
素直に答えると、王子様は少し考えて、夏休みの計画を立てた。
「わたしの夏休みに、一緒に旅行に行きましょう。フィーネ嬢は海を見たことがありますか?」
「ないわ」
「わたしも海を見たことがないんです。一緒に行ってみませんか?」
「行きたい!」
王子様と一緒に初めての海を見る。
それはきっと楽しいだろう。
初めての旅行が王子様と一緒でわたくしは弾む胸を抑えきれなかった。
季節はまだ春。
王子様とわたくしが出会って六回目の春が来た。
初めはお姉様に連れられて、一人で寂しく使用人の部屋で待っているのが無理で、お姉様を探しに脱走したら、王子様が襲われているところに出会って、王子様を助けた。
それから王子様の学友になって、王子様と一緒に過ごすようになった。
アルノルト様がわたくしとお姉様を攫おうとしたこともあった。
お姉様の恋心に気が付いて、応援しようと頑張ったこともあった。
わたくしにとっては、この六年間はかけがえのない大事な時間だった。
家族も増えた。
クラヴィス伯爵家の夫妻がお姉様の義理の両親になったし、ベルトラン公爵家のお義父様とお義母様もコンラッドお義兄様も家族になった。ソフィアとアンドレアスも生まれた。お兄様がジュリエッタお義姉様と結婚した。
そして、わたくしは王子様と婚約して、わたくしが成人したら王子様と結婚するのだ。
これからも家族は増えていくだろう。
それがわたくしの幸福なのだとわたくしは噛み締めていた。
わたくしはその日から、王子様のいない王宮に行って、王太子妃教育を受けることになった。
コンラッドお義兄様も王子様を護衛するために学園に行っているので、昼食は一人だけになり、とても寂しかったが、これも一年だけだと我慢する。一年後には、わたくしも十二歳になって、学園に入学して、王子様と一緒に勉強できるのだとばかり思っていた。
「え!? 違うの!?」
「違いますね」
だから、週末に王子様と話したときにわたくしはものすごく驚いてしまった。
「フィーネ嬢は、学園の入学式の後にお誕生日が来ます。ですので、来年はまだ学園に入学することはできません」
「来年も一人きりなの!?」
「そうなりますね。フィーネ嬢が学園に入学できるのは、再来年で、学年ではわたしと二つ離れていることになります」
あまりのショックにわたくしは立ち尽くしてしまった。
一年だけ我慢すればいいのだと思っていたのに、二年も我慢しなければいけない。
それまでは王子様とは週末の学園が休みの日にしか会うことができない。
しょんぼりとしていると、王子様がわたくしを慰めてくれる。
「夏休みや冬休みはできるだけ一緒に過ごしましょう」
「できるだけってことは、一緒に過ごせない日もあるの?」
「わたしは王太子ですから、公務が入る日もあります」
「わたくし、もっとお勉強する!」
「フィーネ嬢?」
「王子様の公務について行けるようになるわ!」
落ち込んでばかりいるのは性に合わない。わたくしは気を取り直して、気合を入れた。
王子様が公務でわたくしと一緒にいられないかもしれないのならば、わたくしが勉強を頑張って、公務を手伝えるようになればいいだけなのだ。
「わたくし、護衛としても役に立つでしょう? 王子様のそばにいて、公務もきっと手伝えると思うの」
「フィーネ嬢がそんな風に言ってくれるのはとても嬉しいです。ありがとうございます」
「王子様はどんな公務をするの?」
王子様に聞いてみると、ティーカップからお茶を一口飲んで答えてくれる。
「外国からの賓客との食事会や賓客のお相手などですね」
「王子様はまだ十二歳だけど、お客様のお相手をするの?」
「わたしは三歳から国立病院で奉仕活動をしていますし、王族として生まれた以上は年齢に関係なく、できることをするのは当然です」
凛々しく答える王子様に、なんて格好いいんだろうと思ってしまう。
初めて出会ったときから王子様は格好よかったけれど、十二歳になってますます聡明で頼れる相手になってきている。身長も伸びて、成人男性の平均に近付いている気がするので、王子様は国王陛下のように長身になるのだろう。
わたくしが感心していると、王子様がわたくしのお皿に苺のムースの入った小さなガラス容器を置いてくれた。苺のムースはわたくしの大好きなお茶菓子だ。王子様はわたくしのために準備してくれていたのかもしれない。
苺のムースにスプーンを入れると、ぷるるんと揺れて、とても美味しそうだ。一口食べると、幸福が口の中に広がる。
うっとりしているわたくしに、王子様がそっと告げた。
「明日の昼食を楽しみにしていてください」
「明日の昼食?」
学園は週末の二日間が休みなので、明日も王子様は休みだ。
昼食は一緒に食べられると分かっているので、わたくしは王子様の言う通り昼食を楽しみにしていた。
翌日の昼食に、出てきたメニューに、わたくしは歓声を上げてしまった。
「このメニュー、婚約式のときと同じ!」
「フィーネ嬢が食べられなかったのを残念そうにしていたので、厨房に同じものを用意させました」
「ありがとうございます、王子様」
肉団子の入ったスープに、お口直しのレモンのシャーベット、白身魚のソテー、鴨のコンフィ、デザートまでが完璧に再現されていた。
婚約式の日に食べられなくてとても残念だったわたくしの心を救い上げてくれるような王子様の行動に、わたくしは心から感謝した。
昼食のメニューはどれもとても美味しかった。
お腹がいっぱいになって食休みをしていると、王子様がわたくしに話しかける。
「来週はフィーネ嬢のお誕生日ですね。今年も薔薇の花束を持って行きましょうか?」
「本当? わたくし、とても嬉しい」
今年もわたくしはお誕生日に薔薇の花束をプレゼントされるようだった。
わたくしの十一歳のお誕生日のお茶会の日に、王子様は約束通り薔薇の花束を持って来てくれた。ピンクと白が混ざった美しい薔薇で、わたくしは侍女にテーブルに飾ってもらった。
「お姉様、見て。王子様がわたくしにくださったの」
「よかったですね、フィーネ」
「お父様、お母様、お兄様、ジュリエッタお義姉様、見てください!」
わたくしはお祝いの挨拶に来る親しいひとたちに、薔薇の花束を自慢してしまった。
王子様とわたくしは婚約者なので隣の席に座っている。これまでもそうだったが、婚約してからは堂々と隣に座れるようになった。
王子様はわたくしと婚約式のときの話をした。
「あのとき、フィーネ嬢があまりにもかわいらしくて、わたしは声が出ないかと思ったのですよ」
「あのドレス、ショートケーキみたいでかわいかったでしょう?」
「ショートケーキ……言われてみれば、そうだったような気がします。真っ白でレースがふんだんに使ってあって、とてもお似合いでした」
「レオ様にどんな風に見えているか気になっていたから、そう言っていただけてとても嬉しいです」
王子様と話しながらお茶会を楽しんで、わたくしはその日、十一歳になった。
学園に入学できるのはまだまだ先だということはショックだったが、誕生日を迎えられたことは純粋に嬉しかった。
王子様は学園に入学しても、奉仕活動は続けていた。
月に一度の国立病院訪問は、わたくしは必ず王子様に同行した。
怪我人や病人を見ても、わたくしはまだ少しだけ怖かったけれど、王子様の癒しの力を受けて回復していく様子を見れば、純粋によかったと思えた。
王子様は年齢が上がるにつれて癒しの力も強くなっていっているようで、治療する人数が増えているのは感じていた。それでも、王子様は泣き言も文句も言わず、淡々と癒しの力で病人や怪我人を治療して行った。
癒しの力を使うのは疲れるようで、王子様は帰りの馬車ではぐったりしていることが多い。
これだけ真摯に国民と向き合い、怪我や病気で弱った人々を助けようとする王子様は本当に崇高な精神の持ち主だと尊敬する。
今は平民になっている王弟陛下とアルノルト様も、ものすごく嫌がっていた奉仕活動を国中を回って毎日させられているというのだから、大変ではあるだろう。それでも、わたくしは王弟陛下のしたことを知っているし、アルノルト様にも同情はしなかった。
夏休みには、わたくしは王子様に旅行に誘われていた。
エルネスト子爵家にいたころには貧しくて旅行など行ったことがなかったし、王宮に学友として通うようになってからは、勉強が忙しくて旅行どころではなかった。
「フィーネ嬢は旅行に行ったことがないのですか?」
「はい」
素直に答えると、王子様は少し考えて、夏休みの計画を立てた。
「わたしの夏休みに、一緒に旅行に行きましょう。フィーネ嬢は海を見たことがありますか?」
「ないわ」
「わたしも海を見たことがないんです。一緒に行ってみませんか?」
「行きたい!」
王子様と一緒に初めての海を見る。
それはきっと楽しいだろう。
初めての旅行が王子様と一緒でわたくしは弾む胸を抑えきれなかった。
季節はまだ春。
王子様とわたくしが出会って六回目の春が来た。
初めはお姉様に連れられて、一人で寂しく使用人の部屋で待っているのが無理で、お姉様を探しに脱走したら、王子様が襲われているところに出会って、王子様を助けた。
それから王子様の学友になって、王子様と一緒に過ごすようになった。
アルノルト様がわたくしとお姉様を攫おうとしたこともあった。
お姉様の恋心に気が付いて、応援しようと頑張ったこともあった。
わたくしにとっては、この六年間はかけがえのない大事な時間だった。
家族も増えた。
クラヴィス伯爵家の夫妻がお姉様の義理の両親になったし、ベルトラン公爵家のお義父様とお義母様もコンラッドお義兄様も家族になった。ソフィアとアンドレアスも生まれた。お兄様がジュリエッタお義姉様と結婚した。
そして、わたくしは王子様と婚約して、わたくしが成人したら王子様と結婚するのだ。
これからも家族は増えていくだろう。
それがわたくしの幸福なのだとわたくしは噛み締めていた。
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