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十章 奏歌くんとの十年目
9.眠れなかった日の翌朝に
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朗読劇の企画が発表された日、公演が終わって部屋に戻ると奏歌くんがいた。
一刻も早く奏歌くんに伝えたかったが、手も顔も洗いたかったし、公演でかいた汗を流したかった。奏歌くんに注意をされてから、私は奏歌くんがいるときにシャワーを浴びることはなくなった。代わりに汗拭きシートを用意して奏歌くんの見えないバスルームの洗面所などで身体を拭くようにしている。
顔も洗って化粧を落としてしまっても、奏歌くんの前なのでそんなに気にならない。さっぱりとして洗面所から出た私は勉強道具を片付けて晩ご飯の準備を始めた奏歌くんに、キッチンに入り込んで話し始めていた。
「劇団で朗読劇をするのよ。メインは私と百合と美鳥さんと真月さんだけど、端役で他の団員も参加するの」
「朗読劇!?」
「そう、録音してCDが作られるんだけど……なんだったっけ、予約販売なんだって」
予約販売の仕組みを私はよく理解していなかったが奏歌くんに話してみると、奏歌くんは料理を運びながら答えてくれる。
「予約販売でシリアルナンバー付きだろうね。それだったら、転売屋対策になるからね」
「転売屋って何?」
「劇団のグッズは人気だから、正規の値段で買い占めて、それよりも高い値段で売り付けるのが転売屋なんだ。チケットの転売予防のために本人確認を行うことがありますって、劇団のチケットには全部書かれているよ」
「え!? 劇団のチケットはそうだったの!?」
長年劇団にいるが私はそんなことも知らなかった。驚いている私に、奏歌くんが説明を続ける。
「予約販売だと、予約したひとの分だけ生産して、予約したひとは必ず変えて、シリアルナンバーで管理しておけば、転売した場合にはすぐにそのひとの身元が分かるんだ。劇団はその辺はきっちりしてるから、全部管理するんだと思うよ」
「へー」
劇団の男役トップスターなのに劇団の管理体制も知らなかった私。舞台に立って演じられるのならばそれでよくて、劇団のことなど私は把握していなかった。ファンの奏歌くんの方がずっと把握している。
「取材とかで聞かれたら、奏歌くんに教えてもらったことを答えればいいね」
「うん。でも、急に朗読劇のCDが出るなんて、劇団も大胆な戦略に出たね」
その件に関しても私は奏歌くんに話したいことがあったのだった。生の南瓜を浅漬けにしたものをぽりぽりと齧って食べてから、私は事の発端について話す。
「始まりは奏歌くんに私がリスニングの問題や古文を朗読したことだったのよ」
「どういうこと?」
「朗読したら奏歌くんは褒めてくれるし、録音して何度でも聞き直してくれるでしょう? それを百合に話したら、劇団の経営陣に直談判に行っちゃったの」
ものすごい勢いでまくしたてて経営陣すらも引かせる百合は恐ろしかった。企画が通ってしまったのも百合の勢いがあったおかげなのだろう。
「百合さんが直談判したんだ」
「奏歌くんに褒められる私が羨ましかったんだって。私は奏歌くんのためだけでもよかったんだけどな」
南瓜の浅漬けが美味しくてご飯が進む。ぽりぽりと食べていると奏歌くんが頬を染めているのが分かった。
「僕もちょっとだけ、海瑠さんの朗読は独り占めしたいって思ったけど、海瑠さんもそう思っていてくれたなんて、嬉しい」
頬を染める奏歌くんの可愛さに私は胸がドキドキしていた。
晩ご飯を食べると奏歌くんは、歯を磨いてソファに座る私の前に立った。毎日のことだが奏歌くんの姿を見上げていると頭の芯がぼーっとしてくる。
「海瑠さん、血を吸うよ」
「うん、美味しく飲んでね」
奏歌くんの唇が私の首筋に吸い付いて、歯を立てる。ちくりとした痛みと吸われる快感に私はうっとりとしていた。
血を飲み終わると食器を片付けて奏歌くんは自転車で帰って行った。
そろそろ季節的にも夜が暗くなるのが早くなる時期だし、奏歌くんが遅くに帰るのは心配になる。それでも奏歌くんがいない部屋に帰るのは寂しくて私はどうすればいいのかと迷っていた。
奏歌くんに早く帰るように促せば奏歌くんと晩ご飯は一緒に食べられない。お弁当を作ってもらえない日もあるのに、晩ご飯まで別々となると、やはり寂しい。
冬が近づくにつれて奏歌くんは段々と忙しくなってきていて、朝のお弁当作りが無理な日も出てきた。仕方がないことだし、奏歌くんには受験勉強を頑張ってほしいので我が儘は言えないが、僅かな寂しさが少しずつ降り積もって私をネガティブな思考に埋めてしまいそうになっていた。
奏歌くんと少しでも多くの時間を一緒に過ごしたい。
これまでずっと離れずに過ごしてきたのだから、一年くらい我慢しなければいけないと理性は言うのだが、我が儘な本能が奏歌くんの傍にいたくて、存在を感じていたくて、甘えたくて仕方がない。
33歳にもなって恥ずかしいと思うのだが、これが私なのだから仕方がない。
シャワーを浴びてベッドに入ると、季節のせいか少し寒いような気がした。奏歌くんとの距離を感じてしまうと、私の寂しがりな気持ちが出て来てどうしようもない。
制御できない感情に私はなかなか寝付けなかった。
「海瑠、顔色が悪くない? もしかして、生理?」
朝、迎えに来た百合に言われて私はぎくりとする。
「え? 分かる?」
「衣装汚さないようにしないといけないし、公演中の生理は面倒よね」
今朝から生理が来ていたせいか、食欲もなくてお腹も痛い。普段は私は生理が軽い方なのだが、今日は妙に具合が悪かった。昨日あまりよく寝ていないせいかもしれない。
いや、私は生理が軽い方などではなかった。
舞台に立つと忘れてしまうが、奏歌くんと出会うまでの期間は、私はどちらかといえば生理は重くて苦しむ方だった。出血量はそれほどでもないのだが、腹痛と眩暈が酷かった。それがなくなったのは、奏歌くんと出会って食生活と生活習慣が改善されたからだった。
奏歌くんは私の体調にこんなにも影響している。
「鎮痛薬持ってる? 分けようか?」
「持ってない。もらっていい?」
「いいわよ、使って」
劇団に着くと百合が私に鎮痛薬を分けてくれた。それを飲めば少しは落ち着くかと思ったのだが、腹痛は治ったが体が重苦しい感じは抜けない。
「みっちゃん、これ、かなくんから」
楽屋に訪ねて来たやっちゃんが、奏歌くんからのお弁当を手渡してくれる。お弁当を受け取った瞬間、身体の重苦しさが少し改善された気がして、私はこれは精神的なものから来ているのかと悟った。
公演が終わって帰ったら奏歌くんと話をしなければいけない。
「やっちゃん、ありがとう」
「いや、お礼はかなくんに言って」
素っ気ないけれどいつも奏歌くんのお弁当を届けてくれるやっちゃんには感謝している。私はお弁当をバッグに入れて午前中の稽古に励んだ。
昼休憩に入ると奏歌くんのお弁当を持って食堂に行く。食堂では百合と美鳥さんと真月さんが待っていた。私が座ると、百合が鎮痛剤を差し出し、美鳥さんが鉄分のサプリメントを差し出す。
「海瑠さんが生理きついなんて、珍しいって思って。鉄分足りてないんじゃないですか?」
「鎮痛剤は公演前に切れると思うから飲んでおいた方がいいわよ」
「ありがとう」
百合が美鳥さんに話してくれたようだ。
感謝して鉄分のサプリメントと鎮痛剤を受け取ると、真月さんが眉を下げる。
「私、軽い方だからあまり相談には乗れないけど、きつかったら無理しないでくださいね」
「うん、ありがとう」
いい仲間に囲まれていることを実感して私は嬉しかった。
公演は無事に終わって部屋に帰ってくると、奏歌くんが私の顔を見て申し訳なさそうにしている。
「百合さんからメッセージが来たんだ。海瑠さんの体調が悪いから、労わってあげてって」
「大した事ないのよ。ただの生理だし」
男の子である奏歌くんに言ってしまうのは恥ずかしかったが、赤くなりながら答えると、奏歌くんがますます申し訳なさそうにする。
「そうか……ごめん、僕、海瑠さんから血を吸い過ぎてるかもしれない」
「え!? そんなことないと思うよ?」
「ううん、やっちゃんや母さんはこんなに頻繁に吸わなくても平気だって言うよ。僕は吸血鬼同士の子どもで、吸血鬼の血が濃いから、血がたくさん必要なのかもしれないって母さんは言ってたけど、海瑠さんの負担にはなりたくない」
真剣な眼差しの奏歌くんに私は答える。
「負担なんかじゃないよ。昨日はよく眠れなかったの。きっとそのせい」
「眠れなかったの? 何かあった?」
心配そうな奏歌くんに私は全部話してしまうことにした。
「奏歌くんが忙しそうだし、夜が暗くなってきたから、晩ご飯を食べないで帰った方が良いんじゃないかって思ってたの。最近、お弁当を作れない日も出て来たし、奏歌くんは受験生だから忙しくて仕方がないんだと自分に言い聞かせて」
「そんなことないよ。僕は海瑠さんと晩ご飯食べたいよ」
「うん、早く帰った方がいいのは分かっているのに、私は寂しくて奏歌くんを手放したくないの。ちょっとでも長い時間傍にいて欲しい。私にもっと構って欲しい。私のことを甘やかして欲しいって、我が儘ばっかり考えてる」
ごめんなさい。
私が謝ると奏歌くんは胸を張って答えた。
「これだけは、海瑠さんが早く帰りなさいって言っても、僕は譲らないよ! 僕が海瑠さんと晩ご飯を食べたいんだから。僕ももう15歳だし、男だし、気を付けてるから危なくないと思う。僕は海瑠さんの血を吸うのを我慢できても、海瑠さんと晩ご飯を食べないのは我慢できない!」
はっきりと宣言されて私は泣きそうになっていた。
奏歌くんは血を吸うのを我慢しても、私と晩ご飯を食べないのは我慢できない。
そう言ってくれる奏歌くんの気持ちが嬉しくて、私は奏歌くんに早く帰るようには言わなかった。
一刻も早く奏歌くんに伝えたかったが、手も顔も洗いたかったし、公演でかいた汗を流したかった。奏歌くんに注意をされてから、私は奏歌くんがいるときにシャワーを浴びることはなくなった。代わりに汗拭きシートを用意して奏歌くんの見えないバスルームの洗面所などで身体を拭くようにしている。
顔も洗って化粧を落としてしまっても、奏歌くんの前なのでそんなに気にならない。さっぱりとして洗面所から出た私は勉強道具を片付けて晩ご飯の準備を始めた奏歌くんに、キッチンに入り込んで話し始めていた。
「劇団で朗読劇をするのよ。メインは私と百合と美鳥さんと真月さんだけど、端役で他の団員も参加するの」
「朗読劇!?」
「そう、録音してCDが作られるんだけど……なんだったっけ、予約販売なんだって」
予約販売の仕組みを私はよく理解していなかったが奏歌くんに話してみると、奏歌くんは料理を運びながら答えてくれる。
「予約販売でシリアルナンバー付きだろうね。それだったら、転売屋対策になるからね」
「転売屋って何?」
「劇団のグッズは人気だから、正規の値段で買い占めて、それよりも高い値段で売り付けるのが転売屋なんだ。チケットの転売予防のために本人確認を行うことがありますって、劇団のチケットには全部書かれているよ」
「え!? 劇団のチケットはそうだったの!?」
長年劇団にいるが私はそんなことも知らなかった。驚いている私に、奏歌くんが説明を続ける。
「予約販売だと、予約したひとの分だけ生産して、予約したひとは必ず変えて、シリアルナンバーで管理しておけば、転売した場合にはすぐにそのひとの身元が分かるんだ。劇団はその辺はきっちりしてるから、全部管理するんだと思うよ」
「へー」
劇団の男役トップスターなのに劇団の管理体制も知らなかった私。舞台に立って演じられるのならばそれでよくて、劇団のことなど私は把握していなかった。ファンの奏歌くんの方がずっと把握している。
「取材とかで聞かれたら、奏歌くんに教えてもらったことを答えればいいね」
「うん。でも、急に朗読劇のCDが出るなんて、劇団も大胆な戦略に出たね」
その件に関しても私は奏歌くんに話したいことがあったのだった。生の南瓜を浅漬けにしたものをぽりぽりと齧って食べてから、私は事の発端について話す。
「始まりは奏歌くんに私がリスニングの問題や古文を朗読したことだったのよ」
「どういうこと?」
「朗読したら奏歌くんは褒めてくれるし、録音して何度でも聞き直してくれるでしょう? それを百合に話したら、劇団の経営陣に直談判に行っちゃったの」
ものすごい勢いでまくしたてて経営陣すらも引かせる百合は恐ろしかった。企画が通ってしまったのも百合の勢いがあったおかげなのだろう。
「百合さんが直談判したんだ」
「奏歌くんに褒められる私が羨ましかったんだって。私は奏歌くんのためだけでもよかったんだけどな」
南瓜の浅漬けが美味しくてご飯が進む。ぽりぽりと食べていると奏歌くんが頬を染めているのが分かった。
「僕もちょっとだけ、海瑠さんの朗読は独り占めしたいって思ったけど、海瑠さんもそう思っていてくれたなんて、嬉しい」
頬を染める奏歌くんの可愛さに私は胸がドキドキしていた。
晩ご飯を食べると奏歌くんは、歯を磨いてソファに座る私の前に立った。毎日のことだが奏歌くんの姿を見上げていると頭の芯がぼーっとしてくる。
「海瑠さん、血を吸うよ」
「うん、美味しく飲んでね」
奏歌くんの唇が私の首筋に吸い付いて、歯を立てる。ちくりとした痛みと吸われる快感に私はうっとりとしていた。
血を飲み終わると食器を片付けて奏歌くんは自転車で帰って行った。
そろそろ季節的にも夜が暗くなるのが早くなる時期だし、奏歌くんが遅くに帰るのは心配になる。それでも奏歌くんがいない部屋に帰るのは寂しくて私はどうすればいいのかと迷っていた。
奏歌くんに早く帰るように促せば奏歌くんと晩ご飯は一緒に食べられない。お弁当を作ってもらえない日もあるのに、晩ご飯まで別々となると、やはり寂しい。
冬が近づくにつれて奏歌くんは段々と忙しくなってきていて、朝のお弁当作りが無理な日も出てきた。仕方がないことだし、奏歌くんには受験勉強を頑張ってほしいので我が儘は言えないが、僅かな寂しさが少しずつ降り積もって私をネガティブな思考に埋めてしまいそうになっていた。
奏歌くんと少しでも多くの時間を一緒に過ごしたい。
これまでずっと離れずに過ごしてきたのだから、一年くらい我慢しなければいけないと理性は言うのだが、我が儘な本能が奏歌くんの傍にいたくて、存在を感じていたくて、甘えたくて仕方がない。
33歳にもなって恥ずかしいと思うのだが、これが私なのだから仕方がない。
シャワーを浴びてベッドに入ると、季節のせいか少し寒いような気がした。奏歌くんとの距離を感じてしまうと、私の寂しがりな気持ちが出て来てどうしようもない。
制御できない感情に私はなかなか寝付けなかった。
「海瑠、顔色が悪くない? もしかして、生理?」
朝、迎えに来た百合に言われて私はぎくりとする。
「え? 分かる?」
「衣装汚さないようにしないといけないし、公演中の生理は面倒よね」
今朝から生理が来ていたせいか、食欲もなくてお腹も痛い。普段は私は生理が軽い方なのだが、今日は妙に具合が悪かった。昨日あまりよく寝ていないせいかもしれない。
いや、私は生理が軽い方などではなかった。
舞台に立つと忘れてしまうが、奏歌くんと出会うまでの期間は、私はどちらかといえば生理は重くて苦しむ方だった。出血量はそれほどでもないのだが、腹痛と眩暈が酷かった。それがなくなったのは、奏歌くんと出会って食生活と生活習慣が改善されたからだった。
奏歌くんは私の体調にこんなにも影響している。
「鎮痛薬持ってる? 分けようか?」
「持ってない。もらっていい?」
「いいわよ、使って」
劇団に着くと百合が私に鎮痛薬を分けてくれた。それを飲めば少しは落ち着くかと思ったのだが、腹痛は治ったが体が重苦しい感じは抜けない。
「みっちゃん、これ、かなくんから」
楽屋に訪ねて来たやっちゃんが、奏歌くんからのお弁当を手渡してくれる。お弁当を受け取った瞬間、身体の重苦しさが少し改善された気がして、私はこれは精神的なものから来ているのかと悟った。
公演が終わって帰ったら奏歌くんと話をしなければいけない。
「やっちゃん、ありがとう」
「いや、お礼はかなくんに言って」
素っ気ないけれどいつも奏歌くんのお弁当を届けてくれるやっちゃんには感謝している。私はお弁当をバッグに入れて午前中の稽古に励んだ。
昼休憩に入ると奏歌くんのお弁当を持って食堂に行く。食堂では百合と美鳥さんと真月さんが待っていた。私が座ると、百合が鎮痛剤を差し出し、美鳥さんが鉄分のサプリメントを差し出す。
「海瑠さんが生理きついなんて、珍しいって思って。鉄分足りてないんじゃないですか?」
「鎮痛剤は公演前に切れると思うから飲んでおいた方がいいわよ」
「ありがとう」
百合が美鳥さんに話してくれたようだ。
感謝して鉄分のサプリメントと鎮痛剤を受け取ると、真月さんが眉を下げる。
「私、軽い方だからあまり相談には乗れないけど、きつかったら無理しないでくださいね」
「うん、ありがとう」
いい仲間に囲まれていることを実感して私は嬉しかった。
公演は無事に終わって部屋に帰ってくると、奏歌くんが私の顔を見て申し訳なさそうにしている。
「百合さんからメッセージが来たんだ。海瑠さんの体調が悪いから、労わってあげてって」
「大した事ないのよ。ただの生理だし」
男の子である奏歌くんに言ってしまうのは恥ずかしかったが、赤くなりながら答えると、奏歌くんがますます申し訳なさそうにする。
「そうか……ごめん、僕、海瑠さんから血を吸い過ぎてるかもしれない」
「え!? そんなことないと思うよ?」
「ううん、やっちゃんや母さんはこんなに頻繁に吸わなくても平気だって言うよ。僕は吸血鬼同士の子どもで、吸血鬼の血が濃いから、血がたくさん必要なのかもしれないって母さんは言ってたけど、海瑠さんの負担にはなりたくない」
真剣な眼差しの奏歌くんに私は答える。
「負担なんかじゃないよ。昨日はよく眠れなかったの。きっとそのせい」
「眠れなかったの? 何かあった?」
心配そうな奏歌くんに私は全部話してしまうことにした。
「奏歌くんが忙しそうだし、夜が暗くなってきたから、晩ご飯を食べないで帰った方が良いんじゃないかって思ってたの。最近、お弁当を作れない日も出て来たし、奏歌くんは受験生だから忙しくて仕方がないんだと自分に言い聞かせて」
「そんなことないよ。僕は海瑠さんと晩ご飯食べたいよ」
「うん、早く帰った方がいいのは分かっているのに、私は寂しくて奏歌くんを手放したくないの。ちょっとでも長い時間傍にいて欲しい。私にもっと構って欲しい。私のことを甘やかして欲しいって、我が儘ばっかり考えてる」
ごめんなさい。
私が謝ると奏歌くんは胸を張って答えた。
「これだけは、海瑠さんが早く帰りなさいって言っても、僕は譲らないよ! 僕が海瑠さんと晩ご飯を食べたいんだから。僕ももう15歳だし、男だし、気を付けてるから危なくないと思う。僕は海瑠さんの血を吸うのを我慢できても、海瑠さんと晩ご飯を食べないのは我慢できない!」
はっきりと宣言されて私は泣きそうになっていた。
奏歌くんは血を吸うのを我慢しても、私と晩ご飯を食べないのは我慢できない。
そう言ってくれる奏歌くんの気持ちが嬉しくて、私は奏歌くんに早く帰るようには言わなかった。
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