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前編 (攻め視点)
5.襲撃事件
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高校の入学式でクラス分けが発表された。アルトゥロはミヒャエルの予言通りにディーデリヒと同じクラスになった。
「あのとき君が助けてくれたと父上に話して、同じクラスになるように手配してもらったんだ」
「光栄です、ディーデリヒ殿下」
「アルトゥロと呼んでいいかな?」
「もちろんです。俺は何と呼べば?」
「敬語も面倒だからやめてくれよ。殿下もいらない。私たちは同じクラスメイトだろう」
人懐っこいディーデリヒはアルトゥロに信頼を寄せてくれているようだった。白い肌の人間が大半を占めるこの国の中で、アルトゥロのような褐色の肌の人間は非常に珍しい。長身で体付きもがっしりとしているので、特にアルトゥロは目立っていた。
ディーデリヒも長身でがっちりとした体付きなので、アルトゥロに親近感を覚えているのかもしれない。二人はすぐに親友になった。
高校生活は順調にスタートしたが、アルトゥロが気にしていたのは入学から二か月後の不審者の侵入だった。国王の嫡子である王太子のディーデリヒのために校内の警護はしっかりと固めてあるはずだし、高校内は安全だと信じたかった。それでも気がかりではあったので、アルトゥロはフリーダに相談して魔法具を作ってもらった。
攻撃を受けると即座に魔法のシールドが張られて身を守る体勢になる魔法具。効果は一度だけだが、一度目の攻撃を防げば逃げることも、反撃することも可能だ。
「あなたも貴族としての自覚が出て来たようですね。防御の魔法具を持ちたがるなんて」
「ディーデリヒ殿下の学友として一番近くにいるのは俺なので」
「あなたが王太子殿下の学友になるなど思ってもいませんでした」
ミヒャエルを説得する助けを得るために、祖母の家を訪ねる途中に助けた相手がディーデリヒだったことをフリーダも覚えているはずだ。そのことでアルトゥロがディーデリヒに親しみを持たれても、フリーダにとってはそれほど関心のある出来事ではないようだった。
「ミヒャエル様はお一人で寂しく過ごしておられないでしょうか」
「使用人もいないのですか?」
「離れの棟には使用人も入れず、お一人で暮らしていると聞きます。わたくしが訪ねて行っても、ドアを開けてくれないのです」
ドアから出てきて庭で「訪ねていただきありがとうございます、叔母上」と丁寧に挨拶はするが、ミヒャエルはすぐに「用事があるので」と離れの棟に閉じこもってしまう。キッチンもバスルームもあるのだが、それ以外は狭い平屋建ての離れの棟は、母屋やアルトゥロが育った離れの屋敷と比べると非常に狭く感じられた。
使用人を中に入れていないのならば、掃除などもミヒャエルが自分でしているのだろう。
「ミヒャエル兄上には俺が会いに行きます」
フリーダの不安を解くためにというよりも、自分が安心したいがためにアルトゥロは近々ミヒャエルの離れの棟を訪ねる気でいた。
高校に不審者が入ったのは、その直後のことだった。車で校門を突き破って入って来た不審者のグループは、途中で警備員に取り押さえられたが、一人だけ逃げおおせて、ディーデリヒのいるクラスまでたどり着いた。
小型の機関銃を乱射しながらクラスに押し入って来た不審者に、机の下に隠れるディーデリヒに覆いかぶさるようにして、アルトゥロも身を隠した。銃弾が当たりそうになって、魔法具のシールドが展開されてアルトゥロとディーデリヒの身を守る。代わりにネックレス型の魔法具は砕け散ってしまったが、アルトゥロとディーデリヒの身は守れた。
銃撃が止まっていたので、机の下からアルトゥロが這い出ると、右肩を押さえたミヒャエルの姿があった。ミヒャエルと対峙するような格好で、不審者は機関銃を取り落として、床に倒れて呻いている。
「兄上!? 怪我をしたのか!?」
「魔法で不審者の機関銃は落とさせた。取り押さえてくれるか?」
床で呻いている不審者をアルトゥロが取り押さえていると、警備員が来て不審者を連れて行った。ミヒャエルの方に駆け寄ると、逃げ出されそうになる。
「兄上、保健室に行きましょう」
「一人で行ける」
「いや、俺が連れていく!」
抱き上げたミヒャエルの身体は細く、考えられないくらい軽かった。保健室で肩の傷を診てもらうミヒャエルのそばについていると、白い肌が露わになってアルトゥロは落ち着かない気分になる。上半身裸になったミヒャエルは骨が浮き出ているくらい細く、淡い色の乳首がアルトゥロの目を奪う。凝視してしまうアルトゥロにミヒャエルは気付いていないようだった。
ミヒャエルの右肩は銃弾が掠めたのか、血が滲んでいる。
「僕に構っていないで、王太子殿下についていた方がいい」
「兄上の方が心配だ」
「僕に構っても意味がないだろう?」
諦めているような表情のミヒャエルに、ますますアルトゥロは放っておけなくなる。
「これは病院で縫合した方がよさそうですね」
「俺の兄なんです。ついていきます」
「保護者の方に連絡をしておきますね」
保健医の範疇では治療できないようで、ミヒャエルは病院に運ばれた。他にも怪我人が数人出たようで、高校はその日休校になって、治療したミヒャエルとアルトゥロは一緒に屋敷に帰った。車の中でミヒャエルは俯いている。
「君は王太子殿下についていて、ますます信頼が厚くなるはずだったのに」
「ディーデリヒは俺がミヒャエルについていったことに関して、当然だと思うよ。兄が怪我をしているのに、弟がついて行かないわけがないだろう」
「僕はそんなことをされる価値のある人間じゃない」
俯いたまま顔を見せてくれないミヒャエルに、アルトゥロは焦れていた。上半身の裸も見てしまったし、淡い色の乳首を凝視してしまったアルトゥロは、腰に篭る熱に自覚があった。
隣りに座るミヒャエルの顎を掴んで固定すると、アルトゥロはその唇を無理やりに塞いだ。ミヒャエルが腕の中で暴れて胸を押して来るが、アルトゥロは逃すつもりはない。
無理やりに口を開かせて、舌を絡めると、ミヒャエルがぎゅっと閉じた眦から涙を滲ませているのが分かる。舌を絡めて、自らの口の中に舌を招いて、柔く舌を噛んで吸うと、びくびくとミヒャエルの体が震える。
「なん、で、こんな……」
「あなたは、自覚がないのか?」
「なんの、じ、かく?」
唇を離すと、唾液で濡れた唇も色っぽくミヒャエルが喘ぐように息をしている。このまま押し倒してしまいたい衝動を抑えるのがアルトゥロにはつらかった。
車内にはカーテンで阻まれているとはいえ運転手がいるし、これ以上ことを進めることはできない。
「放っておけるわけないじゃないか。俺は、あなたのことが……」
「放っておいてほしい。僕に残された時間は少しだけなんだから」
問い詰めたときにミヒャエルは19歳で自分が死ぬと言っていた。今はミヒャエルは16歳なので、残りは三年ということだ。
これまでの予言は全て当たった。
これからも予言は当たり続けるのだろうか。
「俺は、絶対に兄上を殺さない」
「運命には逆らえない。君は僕を殺すんだ」
何度言われても、アルトゥロはその運命だけは否定したかった。否定したいのに、ミヒャエルが言うことがことごとく当たってしまうのが恐ろしくてならない。
アルトゥロはミヒャエルをこんなにも愛してしまっているのに、ミヒャエルはアルトゥロがミヒャエルを殺すと予言し続ける。
7歳のときの流行性耳下腺炎の予言は当たった。10歳のときのフリーダが怪しい詐欺グループに騙されかけるという予言も当たった。15歳になってすぐの王太子のディーデリヒと出会うという予言も当たった。高校に入学したときのディーデリヒと同じクラスになるという予言も当たった。
そして今日、警備の固いはずの王太子の通う高校に不審者のグループが入り込んで襲撃してくるという予言も当たってしまった。
このままでは本当に自分はミヒャエルを殺してしまうのではないか。
アルトゥロの心に不安が芽生え始めていた。
「あのとき君が助けてくれたと父上に話して、同じクラスになるように手配してもらったんだ」
「光栄です、ディーデリヒ殿下」
「アルトゥロと呼んでいいかな?」
「もちろんです。俺は何と呼べば?」
「敬語も面倒だからやめてくれよ。殿下もいらない。私たちは同じクラスメイトだろう」
人懐っこいディーデリヒはアルトゥロに信頼を寄せてくれているようだった。白い肌の人間が大半を占めるこの国の中で、アルトゥロのような褐色の肌の人間は非常に珍しい。長身で体付きもがっしりとしているので、特にアルトゥロは目立っていた。
ディーデリヒも長身でがっちりとした体付きなので、アルトゥロに親近感を覚えているのかもしれない。二人はすぐに親友になった。
高校生活は順調にスタートしたが、アルトゥロが気にしていたのは入学から二か月後の不審者の侵入だった。国王の嫡子である王太子のディーデリヒのために校内の警護はしっかりと固めてあるはずだし、高校内は安全だと信じたかった。それでも気がかりではあったので、アルトゥロはフリーダに相談して魔法具を作ってもらった。
攻撃を受けると即座に魔法のシールドが張られて身を守る体勢になる魔法具。効果は一度だけだが、一度目の攻撃を防げば逃げることも、反撃することも可能だ。
「あなたも貴族としての自覚が出て来たようですね。防御の魔法具を持ちたがるなんて」
「ディーデリヒ殿下の学友として一番近くにいるのは俺なので」
「あなたが王太子殿下の学友になるなど思ってもいませんでした」
ミヒャエルを説得する助けを得るために、祖母の家を訪ねる途中に助けた相手がディーデリヒだったことをフリーダも覚えているはずだ。そのことでアルトゥロがディーデリヒに親しみを持たれても、フリーダにとってはそれほど関心のある出来事ではないようだった。
「ミヒャエル様はお一人で寂しく過ごしておられないでしょうか」
「使用人もいないのですか?」
「離れの棟には使用人も入れず、お一人で暮らしていると聞きます。わたくしが訪ねて行っても、ドアを開けてくれないのです」
ドアから出てきて庭で「訪ねていただきありがとうございます、叔母上」と丁寧に挨拶はするが、ミヒャエルはすぐに「用事があるので」と離れの棟に閉じこもってしまう。キッチンもバスルームもあるのだが、それ以外は狭い平屋建ての離れの棟は、母屋やアルトゥロが育った離れの屋敷と比べると非常に狭く感じられた。
使用人を中に入れていないのならば、掃除などもミヒャエルが自分でしているのだろう。
「ミヒャエル兄上には俺が会いに行きます」
フリーダの不安を解くためにというよりも、自分が安心したいがためにアルトゥロは近々ミヒャエルの離れの棟を訪ねる気でいた。
高校に不審者が入ったのは、その直後のことだった。車で校門を突き破って入って来た不審者のグループは、途中で警備員に取り押さえられたが、一人だけ逃げおおせて、ディーデリヒのいるクラスまでたどり着いた。
小型の機関銃を乱射しながらクラスに押し入って来た不審者に、机の下に隠れるディーデリヒに覆いかぶさるようにして、アルトゥロも身を隠した。銃弾が当たりそうになって、魔法具のシールドが展開されてアルトゥロとディーデリヒの身を守る。代わりにネックレス型の魔法具は砕け散ってしまったが、アルトゥロとディーデリヒの身は守れた。
銃撃が止まっていたので、机の下からアルトゥロが這い出ると、右肩を押さえたミヒャエルの姿があった。ミヒャエルと対峙するような格好で、不審者は機関銃を取り落として、床に倒れて呻いている。
「兄上!? 怪我をしたのか!?」
「魔法で不審者の機関銃は落とさせた。取り押さえてくれるか?」
床で呻いている不審者をアルトゥロが取り押さえていると、警備員が来て不審者を連れて行った。ミヒャエルの方に駆け寄ると、逃げ出されそうになる。
「兄上、保健室に行きましょう」
「一人で行ける」
「いや、俺が連れていく!」
抱き上げたミヒャエルの身体は細く、考えられないくらい軽かった。保健室で肩の傷を診てもらうミヒャエルのそばについていると、白い肌が露わになってアルトゥロは落ち着かない気分になる。上半身裸になったミヒャエルは骨が浮き出ているくらい細く、淡い色の乳首がアルトゥロの目を奪う。凝視してしまうアルトゥロにミヒャエルは気付いていないようだった。
ミヒャエルの右肩は銃弾が掠めたのか、血が滲んでいる。
「僕に構っていないで、王太子殿下についていた方がいい」
「兄上の方が心配だ」
「僕に構っても意味がないだろう?」
諦めているような表情のミヒャエルに、ますますアルトゥロは放っておけなくなる。
「これは病院で縫合した方がよさそうですね」
「俺の兄なんです。ついていきます」
「保護者の方に連絡をしておきますね」
保健医の範疇では治療できないようで、ミヒャエルは病院に運ばれた。他にも怪我人が数人出たようで、高校はその日休校になって、治療したミヒャエルとアルトゥロは一緒に屋敷に帰った。車の中でミヒャエルは俯いている。
「君は王太子殿下についていて、ますます信頼が厚くなるはずだったのに」
「ディーデリヒは俺がミヒャエルについていったことに関して、当然だと思うよ。兄が怪我をしているのに、弟がついて行かないわけがないだろう」
「僕はそんなことをされる価値のある人間じゃない」
俯いたまま顔を見せてくれないミヒャエルに、アルトゥロは焦れていた。上半身の裸も見てしまったし、淡い色の乳首を凝視してしまったアルトゥロは、腰に篭る熱に自覚があった。
隣りに座るミヒャエルの顎を掴んで固定すると、アルトゥロはその唇を無理やりに塞いだ。ミヒャエルが腕の中で暴れて胸を押して来るが、アルトゥロは逃すつもりはない。
無理やりに口を開かせて、舌を絡めると、ミヒャエルがぎゅっと閉じた眦から涙を滲ませているのが分かる。舌を絡めて、自らの口の中に舌を招いて、柔く舌を噛んで吸うと、びくびくとミヒャエルの体が震える。
「なん、で、こんな……」
「あなたは、自覚がないのか?」
「なんの、じ、かく?」
唇を離すと、唾液で濡れた唇も色っぽくミヒャエルが喘ぐように息をしている。このまま押し倒してしまいたい衝動を抑えるのがアルトゥロにはつらかった。
車内にはカーテンで阻まれているとはいえ運転手がいるし、これ以上ことを進めることはできない。
「放っておけるわけないじゃないか。俺は、あなたのことが……」
「放っておいてほしい。僕に残された時間は少しだけなんだから」
問い詰めたときにミヒャエルは19歳で自分が死ぬと言っていた。今はミヒャエルは16歳なので、残りは三年ということだ。
これまでの予言は全て当たった。
これからも予言は当たり続けるのだろうか。
「俺は、絶対に兄上を殺さない」
「運命には逆らえない。君は僕を殺すんだ」
何度言われても、アルトゥロはその運命だけは否定したかった。否定したいのに、ミヒャエルが言うことがことごとく当たってしまうのが恐ろしくてならない。
アルトゥロはミヒャエルをこんなにも愛してしまっているのに、ミヒャエルはアルトゥロがミヒャエルを殺すと予言し続ける。
7歳のときの流行性耳下腺炎の予言は当たった。10歳のときのフリーダが怪しい詐欺グループに騙されかけるという予言も当たった。15歳になってすぐの王太子のディーデリヒと出会うという予言も当たった。高校に入学したときのディーデリヒと同じクラスになるという予言も当たった。
そして今日、警備の固いはずの王太子の通う高校に不審者のグループが入り込んで襲撃してくるという予言も当たってしまった。
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