君は僕の運命、僕を殺す定め

秋月真鳥

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後日談 (受け視点)

5.見えない未来を共に生きる

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 抵抗してもアルトゥロは全くやめてくれずに、ミヒャエルは意識を飛ばすまで抱かれてしまった。翌朝中にまだ入っていたら蹴り飛ばしてやろうと思っていたが、さすがにそこまではされず、裸のままでシャワーを浴びて綺麗になった体で抱き締められていただけだった。

「紅茶を持ってきてくれる?」

 掠れた声でアルトゥロにお願いして、紅茶を持ってきてもらってお互いに着替えを終えてから、ミヒャエルはアルトゥロに低い声で告げた。

「そこに座って」
「こうか?」
「違う! 正座で!」

 掠れた声でもかなり迫力があったのだろう、驚いたアルトゥロは大人しくベッドの上に正座した。ベッドの端にミヒャエルは座って紅茶のティーカップを持ってじとりとアルトゥロを睨み付けた。

「僕は、何度も、無理って言ったよね?」
「気持ちよさそうだったから……」
「もう止めてとも言ったよね?」
「それで抜こうとしたら締め付けて来るから」

 何を言っているのか。
 無理に無理以外の意味はないし、止めてと言われたら止めるのが普通だ。締め付けていたのは気持ちよかったからというのもあるが、単純にアルトゥロのものが大きすぎて、ずっとミヒャエルは力を抜いていてもそこを締め付けているような状態になっていただけだ。
 紅茶で喉を潤して、ミヒャエルはアルトゥロに真実を告げる。

「君は自覚がないのかもしれないけど、君のものは相当大きいんだからね!」
「え!? み、ミヒャエル、そんなはしたないことを口にして」
「口にしないと君は分かってくれないだろう? 君のブツはでかいんだよ! ものすごくね! しかも長い!」

 ドラッグストアで買った一番大きなサイズのコンドームが入らなかった時点で気付いて欲しかったのだが、アルトゥロは全くそのことに気付いていなかったようだ。特別に注文しなければコンドームが使えない時点で気付く頭もないのかと呆れてしまう。
 これがミヒャエルの憧れ続けていた英雄の姿なのだとしみじみとアルトゥロを見ると、ベッドの上に正座したままで項垂れている。本当に英雄なのか母のルイーゼが生きていたら問い詰めたい気分だった。

「そんなもので責め立てられたら、僕は死ぬかと思うよ」
「死なないでくれ、ミヒャエル」
「全部入れたら、入っちゃいけないところまで来てる気がするし」
「そうだったのか!?」

 顔を上げたアルトゥロが若干嬉しそうな顔をしているのは気のせいだろうか。入っちゃいけないところまで中心が来ていると聞いて喜ぶアルトゥロがもし何か言ったら罵ってしまいそうな気がしたが、アルトゥロはそれ以上何も言わなかった。

「手加減というものを覚えた方がいい」
「それなら、もう抱いたらダメなのか?」

 手加減しなければ抱いてはダメだと告げるミヒャエルに、アルトゥロは明らかに意気消沈している。さすがに少し哀れになって来たので、抱くことは条件付きで許してやることにした。

「毎日は無理だ。週末の次の日が休みのときくらいはいいよ」
「週に二日だけ……」
「それ以上されたら、本当に僕の体がもたない!」

 不満そうなアルトゥロにそれ以上は無理だと告げると、渋々と言った様子で頷いた。

「分かった、ミヒャエルの言う通りにする」

 英雄がこんなにも分かりやすくていいのだろうか。
 英雄譚ではアルトゥロは立派で堂々としていて、王太子のディーデリヒに一目で惚れられていた。その中身がこんなに子どもっぽく、情けなかったなんて、想像もしていなかった。

「僕が英雄様を尻に敷いてるなんて不思議だ」
「俺は英雄様でもなんでもないよ」
「いや、君は英雄だよ」

 ミヒャエルが言うとアルトゥロは否定する。それでも一応、アルトゥロはこの国の英雄として認識されていた。
 実際にこの国を狙っていた隣国は、アルトゥロがディーデリヒのピアスを使ってミヒャエルに大魔法使いを憑依させて魔王にすることを阻止したために守られた。それだけではなく、ディーデリヒは壊れたピアスを証拠に禁じられた憑依魔法を復活させようとした隣国を責めて、この国に有利な条件で和平を結ぶことができた。
 功労者としてアルトゥロは表彰されていたし、将来はディーデリヒの取り立てで国の重鎮となるだろうと言われていた。

「国王の配偶者でもないし、英雄でもない」
「本来なら、どっちも君は手に入れられるはずだったのに」

 それを壊したのはミヒャエルだと俯きかけたとき、アルトゥロが正座から立ち上がれずにバランスを崩してベッドから落ちた。床の上で「足が痺れた」と呻いているアルトゥロの姿に、これが本当に英雄かと何度目になるか分からない疑問を抱きつつ、ミヒャエルはアルトゥロに手を貸して引き起こした。

「英雄じゃないし、初夜はお預けされるし、ミヒャエルの尻には敷かれてるし、こんな俺はミヒャエルの好みじゃないかな?」

 情けない問いかけにミヒャエルは笑ってしまう。心の底から笑ったのは初めてかもしれない。

「幻滅したけど、英雄なんていなかったんだって、思えたよ」
「どういう意味だ?」
「君は英雄じゃなくても、僕のそばで生きていけばいいんだよ」

 こんな情けない英雄はディーデリヒには相応しくなかった。責任を取るべきはミヒャエルの方なのかもしれない。何度も英雄譚の内容を告げに行ったせいでアルトゥロを情けない英雄にしてしまった。
 ミヒャエルがアルトゥロを幸せにする。その気持ちを込めて言うと、アルトゥロがミヒャエルを抱き寄せて口付けた。
 冬休みが終わると、ミヒャエルは大学に復学した。大学ではディーデリヒを含めた学友たちが、同じ学年になったミヒャエルを仲間に加えてくれた。

「俺は今はフィルツ家の養子になっているけれど、ハーマン家で過ごした間、兄上で、ずっと大好きだった、妻のミヒャエル・ハーマンだ」
「初めまして、ディーデリヒ王太子殿下、皆様」
「ディーデリヒでいいよ。敬語もいらない。みんなそうしてる」
「それでは、ディーデリヒ、よろしく」

 人懐っこく微笑むディーデリヒはアルトゥロと同じくらいの身長で、顔立ちもとても整っている。見惚れてから、ミヒャエルはアルトゥロの方が好みだと思う。ディーデリヒの姿に見惚れている間に、アルトゥロとディーデリヒが話していた。

「アルトゥロはいつからミヒャエルのことが好きだったんだ?」
「初めて見たときかな。確か、7歳のときだったと思う」

 初対面でミヒャエルはアルトゥロに名前も名乗らなかったし、態度も悪かったはずなのに、アルトゥロはあのときにミヒャエルに惚れたと言っている。

「君、そんな昔から僕のことが好きだったのか?」
「言ってなかったっけ?」
「聞いてない」

 そんなにずっと自分のことをアルトゥロが想ってくれていたなんて考えると顔が熱くなって、ミヒャエルは頬を押さえた。

「初めて会ったときからミヒャエルが好きだった。ミヒャエルが予言のことを口にするたびに俺はミヒャエルを好きなのにとずっと思ってた。思ってるだけじゃ伝わらないんだな」
「君は、言葉が足りない」
「それはミヒャエルだって同じだろう?」
「僕は言うべきことははっきり言ったよ?」
「予言のことばかり口にして、一番大事なことを言ってなかった」

 言い争いのようになってしまったのに、ディーデリヒや学友たちの視線は優しい気がする。これが友達というものなのだろうか。

「仲がいいところを見せつけられちゃったな」
「今の会話のどこが仲がいいんだか」
「俺とミヒャエルが仲がいいことは本当だろう?」
「え? 僕、君と仲がいいのか?」

 ディーデリヒに言われてミヒャエルが真顔になると、アルトゥロが何かに気付いたようだった。

「ミヒャエル……俺はミヒャエルの気持ちを聞いていない」
「え? 結婚しておいて今更それを聞くのか?」
「俺には言わせたのに、ミヒャエルは言ってない」
「言わなくても分かるだろう?」
「俺は母上の前で言わされたんだぞ? 言わなくても分かることなんてない」

 言っていないが結婚までしているし、アルトゥロへの感情がなければあの凶悪なブツを受け入れる前に魔法で攻撃してでも逃げていただろう。あれを受け入れるのがどれだけ覚悟のいることなのか、アルトゥロは分かっていないのだ。
 そんなことディーデリヒや学友の前で言うわけにはいかず真っ赤になるミヒャエルにアルトゥロが宣言する。

「今週末に、絶対言わせてみせる!」
「アルトゥロ!」

 ベッドの上で今週末、また泣かされるのか。
 抱かれていくうちにアルトゥロの凶悪なブツにミヒャエルも慣れることができるのか。未来は全く見えてこない。
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