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七章 辺境伯領の特産品を
23.レーニちゃんからの嬉しい知らせ
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「ふーちゃん、レーニちゃんのために詩を読んであげましょうね。わたくしが書き写してあげます」
目の前で繰り広げられている光景に、わたくしは口を出せずにいる。
「レーニじょう、わたちはおあいつるたびに、むねのはなのつぼみがふくらんでいくのをかんじまつ。このはながさきみだれるとき、わたちのレーニじょうへのきもちがみのるのでしょう。はなのなかでねむる、こいのようせいたん。このきもちをレーニじょうにとどけてくだたい」
「なんて素敵な詩なのかしら! ふーちゃん、しっかりと書き写しましたからね」
「あい。レーニじょうにわたちてくだたい」
「わたくしからもお手紙を書いて、レーニちゃんに送りましょうね」
「レーニじょうはよろこんでくれるでちょうか?」
「可愛いふーちゃんからの詩です。喜んでくれるに決まっています」
「レーニじょう、わたちにこまをくれまちた。おはなのかたちのこまでつ。わたちのたらかものでつ」
花の形の独楽を大事に抱くふーちゃんにクリスタちゃんは目を細めている。ふーちゃんは本当にレーニちゃんのことが大好きなのだと伝わってくるようだ。
それにしても、詩はよく理解できない。
これはわたくしの芸術的センスがないからなのだろう。
ノエル殿下も以前ふーちゃんが作った詩を褒めていたし、クリスタちゃんも絶賛している。わたくしには分からないがふーちゃんには詩の才能があるようなのだ。
「ふーちゃんの詩を聞いていると、わたくしもハインリヒ殿下に詩を書きたくなってきますわ」
「クリスタちゃん、今はレーニちゃんのことに集中しましょう」
「そうでした。わたくしったら、いけませんわ」
クリスタちゃんまで詩を書き出すとわたくしが混乱するばかりなので、レーニちゃんに書く手紙のことで気を反らしておいた。
レーニちゃんの手紙の中にホルツマン伯爵家のことは書く気はない。
お誕生日に来てくれたことのお礼と、ふーちゃんとまーちゃんに折り紙で花の形の独楽を折って来てくれたことのお礼と、デニスくんに会いたいという話を中心に書くつもりだった。
デニスくんも一歳の誕生日を終えていて、もう一緒に食事が食べられるころではないだろうか。少しずつお話もできるようになってきて、可愛い時期真っ盛りである。
そんなことを考えながら手紙を書いていると、レーニちゃんから手紙が届いたと両親が持って来てくれた。
レーニちゃんに手紙を書いているときに手紙が届くなど、以心伝心かと思ってしまったが、それよりもレーニちゃんがホルツマン伯爵家の噂を聞いたのではないかという危惧が心に生まれる。
もしそうだったら、レーニちゃんを慰めなければいけない。書きかけの手紙の内容は変更しなければいけなかった。
『エリザベート・ディッペル様、クリスタ・ディッペル様
急なお手紙をお許しください。わたくし、嬉しくて嬉しくて、どうしてもお二人に伝えたいことがあったのです。わたくしの母が妊娠していることが分かったのです。パウリーネ先生に診てもらって、間違いないとのことでした。わたくしはデニスだけでなく、もう一人弟か妹が増えるのです。わたくしは今嬉しくてとても幸せです。フランツ様にも、マリア様にも、ディッペル公爵夫妻にもよろしくお伝えください。
レーニ・リリエンタール』
クリスタちゃんとわたくし宛の手紙を読んでわたくしとクリスタちゃんは顔を見合わせた。
「レーニ嬢にもう一人弟か妹が増えるのですね」
「とてもおめでたいことではないですか」
喜んでいると、両親もリリエンタール侯爵から送られて来た手紙を見せてくれた。そこには、リリエンタール侯爵が第三子を身籠ったこと、リリエンタール侯爵もディッペル家のように子だくさんになることを望んでいたから家族全員がとても喜んでいることが書かれていた。
「これはお祝いのお手紙を書かなければいけませんね」
「私たちもリリエンタール侯爵に返事を書こう」
レーニちゃんは十一歳か十二歳年の離れた弟か妹が生まれることになるのだが、年が離れているとそれだけ弟妹が可愛く感じられるのは、わたくしもふーちゃんとまーちゃんで経験済みだった。
「フランツ、レーニ嬢はもう一人弟か妹が生まれるそうですよ」
「レーニじょう、デニスどののおねえたま、でつ」
「さらにお姉様になるのです。デニス殿はお兄様になるのです」
「わたち、まーたんのおにいたま。デニスどの、だれのおにいたまでつか?」
「まだ分かっていないのですよ。赤ちゃんは生まれるまでは男の子か女の子か分からないものなのです」
ふーちゃんに教えていると、まーちゃんが母のスカートを引っ張っている。
「わたくち、いちゅ、おねえたま、なう?」
「マリアはお姉様にはならないですね。マリアは末っ子です」
「わたくち、おねえたま、ならない?」
「マリアはお姉様にならないけれど、二人の素敵なお姉様と一人の素敵なお兄様がいるじゃないか」
「わたくち、おねえたま、なりたかった」
ちょっとしょんぼりとしているまーちゃんには残念なことだが、母はもう子どもを産む気はない様子だった。
まーちゃんがディッペル家の末っ子ということになるだろう。
方向転換して、わたくしはレーニちゃんにお祝いのお手紙を書くことにした。
『レーニ・リリエンタール嬢へ
先日はわたくしのお誕生日のお茶会にお越しくださってありがとうございました。フランツとマリアへのお土産の折り紙、二人ともとても喜んでいました。フランツは宝物にして大事にしまっています。この度はリリエンタール侯爵のご懐妊、おめでとうございます。レーニ嬢にまた弟か妹が生まれるのは本当におめでたいです。嬉しい知らせを聞いて、わたくしも幸せをお裾分けされた気分です。リリエンタール侯爵はしばらく社交界に出てこないかもしれないので、次に会えるのがいつかは分かりませんが、お体に気を付けて、リリエンタール侯爵にもお体を大事にされますようお伝えください。
エリザベート・ディッペル』
書き終わるとわたくしはクリスタちゃんにお願いをしに行った。
「クリスタ、レーニ嬢に何か折り紙をプレゼントしたいのです。一緒に作りませんか?」
「いいですね。わたくしも何かプレゼントしたいです」
二人で折り紙の本を見ていると、ふーちゃんとまーちゃんが膝の上に乗ってくる。
膝の上に乗ったふーちゃんとまーちゃんは色紙を手に取って折ろうと頑張っている。
「ふーちゃん、上手ですよ。端っこは裏面が見えないように綺麗に合わせてください」
「まーちゃん、わたくしがお手伝いしてあげますね。ここを折り上げましょうね」
ふーちゃんにはわたくしが手を貸して、まーちゃんにはクリスタちゃんが手に手を添えて、簡単なチューリップを折り上げた。
わたくしとクリスタちゃんが下手に何か折るよりも、これをふーちゃんとまーちゃんが作ったと書いて封筒に入れた方が喜ばれる気もするし、レーニちゃんへのお礼にもなる気がしていた。
「ふーちゃんとまーちゃんの作品を入れましょう」
「お花の独楽のお礼ですね」
クリスタちゃんもすぐに理解してくれて、『フランツが折りました』と『マリアが折りました』というメモと一緒に折り紙のチューリップは封筒に入れられた。
お手紙が出来上がると、両親に託す。
「レーニ嬢に届けてください」
「これがわたくし、これがお姉様、これがフランツからです」
「分かりましたよ。リリエンタール侯爵領に送りましょうね」
「すぐに着くと思うよ」
レーニちゃんとお手紙でやり取りができることをわたくしは嬉しく思っていた。
今のレーニちゃんならばホルツマン伯爵家の噂を聞いてもきっと大丈夫だろう。
レーニちゃんはリリエンタール侯爵と新しいお父様に愛されているし、弟か妹がまた生まれてくるのだ。
幸福の中にあるレーニちゃんにはホルツマン伯爵家の噂などどうでもいい話だろう。それよりも、生まれてくるのが弟か妹かで悩んでいるのかもしれない。
弟でも妹でも可愛いものではあるし、どちらにせよ無事に産まれてくれることが一番大事だ。
リリエンタール侯爵の妊娠の経過が順調で、レーニちゃんの弟か妹が無事に産まれてくることをわたくしは祈っていた。
目の前で繰り広げられている光景に、わたくしは口を出せずにいる。
「レーニじょう、わたちはおあいつるたびに、むねのはなのつぼみがふくらんでいくのをかんじまつ。このはながさきみだれるとき、わたちのレーニじょうへのきもちがみのるのでしょう。はなのなかでねむる、こいのようせいたん。このきもちをレーニじょうにとどけてくだたい」
「なんて素敵な詩なのかしら! ふーちゃん、しっかりと書き写しましたからね」
「あい。レーニじょうにわたちてくだたい」
「わたくしからもお手紙を書いて、レーニちゃんに送りましょうね」
「レーニじょうはよろこんでくれるでちょうか?」
「可愛いふーちゃんからの詩です。喜んでくれるに決まっています」
「レーニじょう、わたちにこまをくれまちた。おはなのかたちのこまでつ。わたちのたらかものでつ」
花の形の独楽を大事に抱くふーちゃんにクリスタちゃんは目を細めている。ふーちゃんは本当にレーニちゃんのことが大好きなのだと伝わってくるようだ。
それにしても、詩はよく理解できない。
これはわたくしの芸術的センスがないからなのだろう。
ノエル殿下も以前ふーちゃんが作った詩を褒めていたし、クリスタちゃんも絶賛している。わたくしには分からないがふーちゃんには詩の才能があるようなのだ。
「ふーちゃんの詩を聞いていると、わたくしもハインリヒ殿下に詩を書きたくなってきますわ」
「クリスタちゃん、今はレーニちゃんのことに集中しましょう」
「そうでした。わたくしったら、いけませんわ」
クリスタちゃんまで詩を書き出すとわたくしが混乱するばかりなので、レーニちゃんに書く手紙のことで気を反らしておいた。
レーニちゃんの手紙の中にホルツマン伯爵家のことは書く気はない。
お誕生日に来てくれたことのお礼と、ふーちゃんとまーちゃんに折り紙で花の形の独楽を折って来てくれたことのお礼と、デニスくんに会いたいという話を中心に書くつもりだった。
デニスくんも一歳の誕生日を終えていて、もう一緒に食事が食べられるころではないだろうか。少しずつお話もできるようになってきて、可愛い時期真っ盛りである。
そんなことを考えながら手紙を書いていると、レーニちゃんから手紙が届いたと両親が持って来てくれた。
レーニちゃんに手紙を書いているときに手紙が届くなど、以心伝心かと思ってしまったが、それよりもレーニちゃんがホルツマン伯爵家の噂を聞いたのではないかという危惧が心に生まれる。
もしそうだったら、レーニちゃんを慰めなければいけない。書きかけの手紙の内容は変更しなければいけなかった。
『エリザベート・ディッペル様、クリスタ・ディッペル様
急なお手紙をお許しください。わたくし、嬉しくて嬉しくて、どうしてもお二人に伝えたいことがあったのです。わたくしの母が妊娠していることが分かったのです。パウリーネ先生に診てもらって、間違いないとのことでした。わたくしはデニスだけでなく、もう一人弟か妹が増えるのです。わたくしは今嬉しくてとても幸せです。フランツ様にも、マリア様にも、ディッペル公爵夫妻にもよろしくお伝えください。
レーニ・リリエンタール』
クリスタちゃんとわたくし宛の手紙を読んでわたくしとクリスタちゃんは顔を見合わせた。
「レーニ嬢にもう一人弟か妹が増えるのですね」
「とてもおめでたいことではないですか」
喜んでいると、両親もリリエンタール侯爵から送られて来た手紙を見せてくれた。そこには、リリエンタール侯爵が第三子を身籠ったこと、リリエンタール侯爵もディッペル家のように子だくさんになることを望んでいたから家族全員がとても喜んでいることが書かれていた。
「これはお祝いのお手紙を書かなければいけませんね」
「私たちもリリエンタール侯爵に返事を書こう」
レーニちゃんは十一歳か十二歳年の離れた弟か妹が生まれることになるのだが、年が離れているとそれだけ弟妹が可愛く感じられるのは、わたくしもふーちゃんとまーちゃんで経験済みだった。
「フランツ、レーニ嬢はもう一人弟か妹が生まれるそうですよ」
「レーニじょう、デニスどののおねえたま、でつ」
「さらにお姉様になるのです。デニス殿はお兄様になるのです」
「わたち、まーたんのおにいたま。デニスどの、だれのおにいたまでつか?」
「まだ分かっていないのですよ。赤ちゃんは生まれるまでは男の子か女の子か分からないものなのです」
ふーちゃんに教えていると、まーちゃんが母のスカートを引っ張っている。
「わたくち、いちゅ、おねえたま、なう?」
「マリアはお姉様にはならないですね。マリアは末っ子です」
「わたくち、おねえたま、ならない?」
「マリアはお姉様にならないけれど、二人の素敵なお姉様と一人の素敵なお兄様がいるじゃないか」
「わたくち、おねえたま、なりたかった」
ちょっとしょんぼりとしているまーちゃんには残念なことだが、母はもう子どもを産む気はない様子だった。
まーちゃんがディッペル家の末っ子ということになるだろう。
方向転換して、わたくしはレーニちゃんにお祝いのお手紙を書くことにした。
『レーニ・リリエンタール嬢へ
先日はわたくしのお誕生日のお茶会にお越しくださってありがとうございました。フランツとマリアへのお土産の折り紙、二人ともとても喜んでいました。フランツは宝物にして大事にしまっています。この度はリリエンタール侯爵のご懐妊、おめでとうございます。レーニ嬢にまた弟か妹が生まれるのは本当におめでたいです。嬉しい知らせを聞いて、わたくしも幸せをお裾分けされた気分です。リリエンタール侯爵はしばらく社交界に出てこないかもしれないので、次に会えるのがいつかは分かりませんが、お体に気を付けて、リリエンタール侯爵にもお体を大事にされますようお伝えください。
エリザベート・ディッペル』
書き終わるとわたくしはクリスタちゃんにお願いをしに行った。
「クリスタ、レーニ嬢に何か折り紙をプレゼントしたいのです。一緒に作りませんか?」
「いいですね。わたくしも何かプレゼントしたいです」
二人で折り紙の本を見ていると、ふーちゃんとまーちゃんが膝の上に乗ってくる。
膝の上に乗ったふーちゃんとまーちゃんは色紙を手に取って折ろうと頑張っている。
「ふーちゃん、上手ですよ。端っこは裏面が見えないように綺麗に合わせてください」
「まーちゃん、わたくしがお手伝いしてあげますね。ここを折り上げましょうね」
ふーちゃんにはわたくしが手を貸して、まーちゃんにはクリスタちゃんが手に手を添えて、簡単なチューリップを折り上げた。
わたくしとクリスタちゃんが下手に何か折るよりも、これをふーちゃんとまーちゃんが作ったと書いて封筒に入れた方が喜ばれる気もするし、レーニちゃんへのお礼にもなる気がしていた。
「ふーちゃんとまーちゃんの作品を入れましょう」
「お花の独楽のお礼ですね」
クリスタちゃんもすぐに理解してくれて、『フランツが折りました』と『マリアが折りました』というメモと一緒に折り紙のチューリップは封筒に入れられた。
お手紙が出来上がると、両親に託す。
「レーニ嬢に届けてください」
「これがわたくし、これがお姉様、これがフランツからです」
「分かりましたよ。リリエンタール侯爵領に送りましょうね」
「すぐに着くと思うよ」
レーニちゃんとお手紙でやり取りができることをわたくしは嬉しく思っていた。
今のレーニちゃんならばホルツマン伯爵家の噂を聞いてもきっと大丈夫だろう。
レーニちゃんはリリエンタール侯爵と新しいお父様に愛されているし、弟か妹がまた生まれてくるのだ。
幸福の中にあるレーニちゃんにはホルツマン伯爵家の噂などどうでもいい話だろう。それよりも、生まれてくるのが弟か妹かで悩んでいるのかもしれない。
弟でも妹でも可愛いものではあるし、どちらにせよ無事に産まれてくれることが一番大事だ。
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