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八章 エリザベートの学園入学
8.お茶会はエクムント様のエスコートで
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順番にお風呂に入って、わたくしとクリスタちゃんのベッドをくっ付けて、レーニちゃんと三人で眠ることにした。
ぎゅうぎゅうで眠るのはディッペル領でもやっていて、慣れているし楽しいので構わない。
レーニちゃんは布団の中でもぞもぞとしている。
何か話したいことがあるのだろう。わたくしとクリスタちゃんが待っていると、レーニちゃんが話し出した。
「わたくし、初潮が来ましたの」
「わたくしも今年の春に学園に入学してすぐに来ました」
「エリザベートお姉様も? 同じですね」
わたくしは少し遅い方なのかもしれないが、一歳年下のレーニちゃんも初潮が来たと聞いて何となく仲間意識を持ってしまう。
「わたくしはまだですが、そのうち来るのでしょうね」
「女性として生まれたからには生理は来ないと困りますからね」
生理の話をしていると、レーニちゃんが学園の話に興味を持って問いかけてくる。
「学園ではエリザベートお姉様はどのように過ごしているのですか?」
「ゲオルギーネ・ザックス嬢に指導していただいて、お茶はノエル殿下やノルベルト殿下やハインリヒ殿下と一緒にしています」
「ゲオルギーネ様というのは、エリザベートお姉様と同室なのですか?」
「寮は部屋を二人で使う決まりなのです。一年生は六年生が同室になって、学園のことを教えてくださるのです」
「わたくしにも学園のことを教えてくださる六年生がついてくださるのですね」
学園のことに興味津々のレーニちゃんにわたくしは学園での話をもっとしたかったが、眠くなってしまって欠伸が抑えきれなかった。
欠伸をしているわたくしに、レーニちゃんもクリスタちゃんも寝ようと言ってくれて、その晩はぐっすりと眠った。
朝はふーちゃんに起こされた。
「エリザベートおねえさま、クリスタおねえさま、レーニじょう、おさんぽにいきましょう!」
「おたんぽ! おたんぽ!」
ふーちゃんもまーちゃんも朝食の前にお散歩に行く気満々である。
両親の顔を見れば頷いてくれているので、両親とクリスタちゃんとふーちゃんとまーちゃんとレーニちゃんでお散歩に出かけた。
王宮の庭は広く、噴水に飛び込みたがっているまーちゃんとうずうずしているふーちゃんを両親が止めている。
「コレット、いないねー」
「まーたん……じゃない、マリア、コレットはおうちよ」
「コレット、おうち?」
噴水を見るとまーちゃんはハシビロコウのコレットのことを思い出してしまうようだ。ハシビロコウのコレットは水場が好きで噴水の周辺によくいるのだ。
「レーニじょう、おはながさいています」
「綺麗ですね。これはペチュニアですね」
「これはなんですか?」
「ガザニアですよ」
レーニちゃんの手を引っ張ってお花のところに連れて行くふーちゃんの頬は薔薇色に染まっていた。
朝のお散歩が終わると朝食を食べる。
部屋でレーニちゃんも一緒に食べる朝食にふーちゃんは興奮してあまり食べていないようだった。これではお昼までお腹がもたないかもしれない。
「フランツ、レーニ嬢のことばかり見ていないで、朝食を食べましょうね」
「レーニじょうとおはなししたいの!」
「お話は朝食の後でもたくさんできます。フランツ様、このオムレツはふわふわでとても美味しいですよ」
レーニちゃんの助けを得てなんとかふーちゃんに朝食を食べさせることができた。
朝食が終わると両親はノルベルト殿下の昼食会に出るために着替えている。
わたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんはお茶会からの参加であるし、ふーちゃんとまーちゃんは参加しないので食後はゆっくりと寛げた。
両親を見送ってふーちゃんが持ってきた絵本を読んでいると、まーちゃんもわたくしの前に絵本を積み上げていく。
「まーちゃん、こんなに絵本を持ってきたのですか?」
「わたくち、えほんがだいすちなの。えーおねえたま、いっぱいよんで?」
「いいですよ。まーちゃんの読んで欲しい絵本は全部読みましょうね」
学園に行っている間、ふーちゃんとまーちゃんには随分と寂しい思いをさせてしまった。わたくしはそれを取り戻すつもりでふーちゃんとまーちゃんとたくさん触れ合った。
昼食も部屋で食べて、お茶会のための準備をする。
学園ではわたくしは自分一人で身支度をしているので、もう髪も自分で結えるようになっているし、ドレスも自分で着られるようになっている。
わたくしが小さい頃は母はコルセットを付けていたが、コルセットも付けない方向に変わってきているので、ドレスの着用はますます楽になっていた。
「クリスタちゃん、わたくしが髪を編んで差し上げますわ」
「ありがとうございます、レーニちゃん。前髪も編んでくださいね」
クリスタちゃんは髪をレーニちゃんに編んでもらって準備を整えていた。
今日のノルベルト殿下のお誕生日のお茶会ではまだクリスタちゃんとハインリヒ殿下の婚約の話は出ないだろうが、明日を挟んで明後日のハインリヒ殿下のお誕生日の昼食会にはクリスタちゃんとハインリヒ殿下の婚約の話が発表されるだろう。
そのときにはクリスタちゃんは白を基調としたドレスを着て、髪も結い上げてハインリヒ殿下との婚約の発表に臨むだろう。
お茶会に出かけようとしていると、部屋のドアがノックされる。
わたくしがドアを開けると、エクムント様が立っていた。
「エリザベート嬢をお迎えに来ました」
「エクムント様、嬉しいです」
エクムント様はわたくしをエスコートしてくれるために来てくれたのだ。ハインリヒ殿下は王族なので会場を離れられないが、エクムント様は辺境伯なのでわたくしを迎えに来ることができる。
「エリザベート様は本当にエクムント様に大事にされているのですね」
「お姉様が羨ましいです」
レーニちゃんとクリスタちゃんに言われてわたくしは悪い気分ではなかった。
よく考えてみればエクムント様も二十三歳なのだ。前世で言えば大学を卒業して就職一年目くらいの年齢である。
それを考えると、カサンドラ様が去年まではエクムント様について来て公の場で振る舞いを教えていたのもよく分かる。
今年からはエクムント様は一人で、カサンドラ様は辺境伯領でのみエクムント様の教育を続けることになる。
差し出された白い手袋を付けた手に手を重ねると、エクムント様が優しく微笑む。それが妹のような存在に対する笑みであっても、わたくしは嬉しくて有頂天になってしまった。
わざわざ部屋に迎えに来てくれるくらいわたくしはエクムント様に大事にされている。将来はエクムント様はわたくしを愛してくれるのではないかと期待してしまう。
エクムント様にエスコートされて、クリスタちゃんとレーニちゃんと一緒にわたくしはお茶会の会場に行った。部屋を出るときにふーちゃんが涙を堪えていて、まーちゃんが泣き出してしまっていたのが心に残っていたが、二人ともまだお茶会に出席できる年ではないので仕方がない。
会場に行くとノルベルト殿下とノエル殿下が仲睦まじくわたくしたちを迎えてくれた。
「僕の誕生日にお越しいただきありがとうございます。レーニ嬢は弟君が生まれたとのこと。おめでとうございます」
「ありがとうございます、ノルベルト殿下。妹が欲しいとは思っていたのですが、無事に産まれて健康であれば弟でもやはり可愛くて幸せです」
「僕もユリアーナが生まれたときには感動したものです。ハインリヒのときには小さすぎて記憶がないのですが」
「私も兄上は気が付いたら兄上でしたね」
笑い合うノルベルト殿下とハインリヒ殿下の和やかな様子にわたくしは『クリスタ・ノメンゼンの真実の愛』のような兄弟の確執は全くないのだと安心してしまう。
「エクムント殿、後で一緒にお茶をして話を聞いてくださいませんか?」
「ノルベルト殿下は何か相談があるのですか?」
「はい。僕は大人の男性と話す機会がないので、エクムント殿を頼りにしているのです」
「私でよろしければお話を聞きましょう」
胸に手を当てて一礼するエクムント様の優雅な仕草に胸がドキドキする。
ノルベルト殿下のお誕生日の後は一日休みが入って、その次の日にハインリヒ殿下のお誕生日の式典が行われる。ハインリヒ殿下のお誕生日の式典には、昼食会からお茶会、晩餐会までクリスタちゃんは全部出なければいけないだろう。
水色の目でじっとハインリヒ殿下を見詰めるクリスタちゃんの横顔が少し大人びて見えて、わたくしは眩しい気分だった。
ぎゅうぎゅうで眠るのはディッペル領でもやっていて、慣れているし楽しいので構わない。
レーニちゃんは布団の中でもぞもぞとしている。
何か話したいことがあるのだろう。わたくしとクリスタちゃんが待っていると、レーニちゃんが話し出した。
「わたくし、初潮が来ましたの」
「わたくしも今年の春に学園に入学してすぐに来ました」
「エリザベートお姉様も? 同じですね」
わたくしは少し遅い方なのかもしれないが、一歳年下のレーニちゃんも初潮が来たと聞いて何となく仲間意識を持ってしまう。
「わたくしはまだですが、そのうち来るのでしょうね」
「女性として生まれたからには生理は来ないと困りますからね」
生理の話をしていると、レーニちゃんが学園の話に興味を持って問いかけてくる。
「学園ではエリザベートお姉様はどのように過ごしているのですか?」
「ゲオルギーネ・ザックス嬢に指導していただいて、お茶はノエル殿下やノルベルト殿下やハインリヒ殿下と一緒にしています」
「ゲオルギーネ様というのは、エリザベートお姉様と同室なのですか?」
「寮は部屋を二人で使う決まりなのです。一年生は六年生が同室になって、学園のことを教えてくださるのです」
「わたくしにも学園のことを教えてくださる六年生がついてくださるのですね」
学園のことに興味津々のレーニちゃんにわたくしは学園での話をもっとしたかったが、眠くなってしまって欠伸が抑えきれなかった。
欠伸をしているわたくしに、レーニちゃんもクリスタちゃんも寝ようと言ってくれて、その晩はぐっすりと眠った。
朝はふーちゃんに起こされた。
「エリザベートおねえさま、クリスタおねえさま、レーニじょう、おさんぽにいきましょう!」
「おたんぽ! おたんぽ!」
ふーちゃんもまーちゃんも朝食の前にお散歩に行く気満々である。
両親の顔を見れば頷いてくれているので、両親とクリスタちゃんとふーちゃんとまーちゃんとレーニちゃんでお散歩に出かけた。
王宮の庭は広く、噴水に飛び込みたがっているまーちゃんとうずうずしているふーちゃんを両親が止めている。
「コレット、いないねー」
「まーたん……じゃない、マリア、コレットはおうちよ」
「コレット、おうち?」
噴水を見るとまーちゃんはハシビロコウのコレットのことを思い出してしまうようだ。ハシビロコウのコレットは水場が好きで噴水の周辺によくいるのだ。
「レーニじょう、おはながさいています」
「綺麗ですね。これはペチュニアですね」
「これはなんですか?」
「ガザニアですよ」
レーニちゃんの手を引っ張ってお花のところに連れて行くふーちゃんの頬は薔薇色に染まっていた。
朝のお散歩が終わると朝食を食べる。
部屋でレーニちゃんも一緒に食べる朝食にふーちゃんは興奮してあまり食べていないようだった。これではお昼までお腹がもたないかもしれない。
「フランツ、レーニ嬢のことばかり見ていないで、朝食を食べましょうね」
「レーニじょうとおはなししたいの!」
「お話は朝食の後でもたくさんできます。フランツ様、このオムレツはふわふわでとても美味しいですよ」
レーニちゃんの助けを得てなんとかふーちゃんに朝食を食べさせることができた。
朝食が終わると両親はノルベルト殿下の昼食会に出るために着替えている。
わたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんはお茶会からの参加であるし、ふーちゃんとまーちゃんは参加しないので食後はゆっくりと寛げた。
両親を見送ってふーちゃんが持ってきた絵本を読んでいると、まーちゃんもわたくしの前に絵本を積み上げていく。
「まーちゃん、こんなに絵本を持ってきたのですか?」
「わたくち、えほんがだいすちなの。えーおねえたま、いっぱいよんで?」
「いいですよ。まーちゃんの読んで欲しい絵本は全部読みましょうね」
学園に行っている間、ふーちゃんとまーちゃんには随分と寂しい思いをさせてしまった。わたくしはそれを取り戻すつもりでふーちゃんとまーちゃんとたくさん触れ合った。
昼食も部屋で食べて、お茶会のための準備をする。
学園ではわたくしは自分一人で身支度をしているので、もう髪も自分で結えるようになっているし、ドレスも自分で着られるようになっている。
わたくしが小さい頃は母はコルセットを付けていたが、コルセットも付けない方向に変わってきているので、ドレスの着用はますます楽になっていた。
「クリスタちゃん、わたくしが髪を編んで差し上げますわ」
「ありがとうございます、レーニちゃん。前髪も編んでくださいね」
クリスタちゃんは髪をレーニちゃんに編んでもらって準備を整えていた。
今日のノルベルト殿下のお誕生日のお茶会ではまだクリスタちゃんとハインリヒ殿下の婚約の話は出ないだろうが、明日を挟んで明後日のハインリヒ殿下のお誕生日の昼食会にはクリスタちゃんとハインリヒ殿下の婚約の話が発表されるだろう。
そのときにはクリスタちゃんは白を基調としたドレスを着て、髪も結い上げてハインリヒ殿下との婚約の発表に臨むだろう。
お茶会に出かけようとしていると、部屋のドアがノックされる。
わたくしがドアを開けると、エクムント様が立っていた。
「エリザベート嬢をお迎えに来ました」
「エクムント様、嬉しいです」
エクムント様はわたくしをエスコートしてくれるために来てくれたのだ。ハインリヒ殿下は王族なので会場を離れられないが、エクムント様は辺境伯なのでわたくしを迎えに来ることができる。
「エリザベート様は本当にエクムント様に大事にされているのですね」
「お姉様が羨ましいです」
レーニちゃんとクリスタちゃんに言われてわたくしは悪い気分ではなかった。
よく考えてみればエクムント様も二十三歳なのだ。前世で言えば大学を卒業して就職一年目くらいの年齢である。
それを考えると、カサンドラ様が去年まではエクムント様について来て公の場で振る舞いを教えていたのもよく分かる。
今年からはエクムント様は一人で、カサンドラ様は辺境伯領でのみエクムント様の教育を続けることになる。
差し出された白い手袋を付けた手に手を重ねると、エクムント様が優しく微笑む。それが妹のような存在に対する笑みであっても、わたくしは嬉しくて有頂天になってしまった。
わざわざ部屋に迎えに来てくれるくらいわたくしはエクムント様に大事にされている。将来はエクムント様はわたくしを愛してくれるのではないかと期待してしまう。
エクムント様にエスコートされて、クリスタちゃんとレーニちゃんと一緒にわたくしはお茶会の会場に行った。部屋を出るときにふーちゃんが涙を堪えていて、まーちゃんが泣き出してしまっていたのが心に残っていたが、二人ともまだお茶会に出席できる年ではないので仕方がない。
会場に行くとノルベルト殿下とノエル殿下が仲睦まじくわたくしたちを迎えてくれた。
「僕の誕生日にお越しいただきありがとうございます。レーニ嬢は弟君が生まれたとのこと。おめでとうございます」
「ありがとうございます、ノルベルト殿下。妹が欲しいとは思っていたのですが、無事に産まれて健康であれば弟でもやはり可愛くて幸せです」
「僕もユリアーナが生まれたときには感動したものです。ハインリヒのときには小さすぎて記憶がないのですが」
「私も兄上は気が付いたら兄上でしたね」
笑い合うノルベルト殿下とハインリヒ殿下の和やかな様子にわたくしは『クリスタ・ノメンゼンの真実の愛』のような兄弟の確執は全くないのだと安心してしまう。
「エクムント殿、後で一緒にお茶をして話を聞いてくださいませんか?」
「ノルベルト殿下は何か相談があるのですか?」
「はい。僕は大人の男性と話す機会がないので、エクムント殿を頼りにしているのです」
「私でよろしければお話を聞きましょう」
胸に手を当てて一礼するエクムント様の優雅な仕草に胸がドキドキする。
ノルベルト殿下のお誕生日の後は一日休みが入って、その次の日にハインリヒ殿下のお誕生日の式典が行われる。ハインリヒ殿下のお誕生日の式典には、昼食会からお茶会、晩餐会までクリスタちゃんは全部出なければいけないだろう。
水色の目でじっとハインリヒ殿下を見詰めるクリスタちゃんの横顔が少し大人びて見えて、わたくしは眩しい気分だった。
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