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十章 ふーちゃんとまーちゃんの婚約
20.オリヴァー殿の詩の解釈
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翌日は早朝にふーちゃんとまーちゃんが起こしに来た。
わたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんが洗面を終えて着替えて廊下に出ると、可愛いシャツと半ズボンのふーちゃん、袖なしのワンピースのまーちゃんが廊下で待っていた。
「お散歩に行きましょう!」
「いいおてんきですよ!」
元気いっぱいのふーちゃんとまーちゃんに連れられて、お屋敷を出る前に全員日除けの上着を着て帽子を被って、庭に行った。
辺境伯家の庭にはブーゲンビリアやハイビスカス、アラマンダやプルメリアが咲き乱れている。
南国の美しい花々を見ながら庭を歩いていると、まーちゃんの帽子が飛ばされた。
「あ! おぼうし!」
走って取りに行くまーちゃんの前に現れたのは、オリヴァー殿だった。
「この水色の帽子はあなたのですか?」
「は、はい。わたくしのです」
「オリヴァー殿、ありがとうございます。マリア、この方が昨日お話ししたオリヴァー・シュタール殿です」
「初めまして、オリヴァー・シュタールと申します。辺境伯家に招かれるのは初めてで、せっかくなのでお庭を見せていただいていたところです」
「こんな早朝に来られるとは思いませんでした」
「辺境伯から朝食のお誘いを受けたのです。それにしても、気合を入れて早く来すぎてしまいました」
苦笑しているオリヴァー殿から帽子を受け取って、まーちゃんはオリヴァー殿を見上げている。
「せがたかいのですね」
「辺境伯領の民は中央の方々よりも長身ですからね。辺境伯もとても背が高いです」
「エリザベートおねえさまと、ハインリヒでんかとおなじとしなのですよね?」
「そうです。私は春生まれなので、ハインリヒ殿下より少し早く十五歳になって、社交界デビューもしましたが」
オリヴァー殿に見惚れるようにして話しているまーちゃんにわたくしが促す。
「マリア、自分の名前を名乗るのですよ」
「そうでした。わたくしは、マリア・ディッペルです」
「私はフランツ・ディッペルです」
「初めまして。ディッペル家の方々とお知り合いになれて嬉しいです」
微笑んで優雅に一礼するオリヴァー殿にまーちゃんは釘付けである。ふーちゃんも挨拶はしていたが、気持ちはレーニちゃんの方に向いている気がする。
「きのう、エリザベートおねえさまがいっていました。へんきょうはくりょうでがくえんにかようかたはすくないのだと」
「よくご存じですね、マリア様。辺境伯領は軍人の多い領地です。学園に通うよりも士官学校に通うものの方がずっと多いのです。それに中央とは一時期独立派によって、辺境伯領は隔絶していました。中央の学園に通うものは非常に少ないでしょうね」
「しかんがっこうとは、どのようなところですか? へんきょうはくりょうにあるのですか?」
「士官学校は王都にもあって、エクムント様はそちらの士官学校を卒業されましたが、辺境伯領にもあります。ほとんどの貴族の子息は士官学校に入学して、軍人になるのです」
それは辺境伯領が軍備を大事とする辺境ならではのことなのかもしれない。
学園に通う辺境伯領の方が少ない理由も、これで分かった。
「隣国との関係も良好ですし、今後はエクムント様は貴族の子息令嬢に士官学校ではなく王都の学園に通うように促すのかもしれません。私は軍人になりたいとは思っていなかったので、学園で学べてとても有意義です」
オリヴァー殿の言葉に、オリヴァー殿が本当に学園が好きなのだというのが伝わってくる。話を聞きながらわたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんとふーちゃんとまーちゃんは、オリヴァー殿と辺境伯家のお屋敷に入った。
辺境伯家のお屋敷に入ると、オリヴァー殿はエクムント様に挨拶に行く。
「お招きいただきありがとうございます。オリヴァー・シュタールです」
「エリザベート嬢の学友だと聞いています。よく来てくれました、オリヴァー殿」
「エクムント様にはお茶会で何度かお会いしていますが、今年からは私も社交界デビューしたので、お誕生日の昼食会と晩餐会にもぜひ出席させていただきたいと思っております」
「シュタール侯爵家は辺境伯領においても大事な家です。辺境伯家とこれからも仲良くしていただきたいところです」
挨拶が終わったところで、わたくしたちは食堂に移動した。
食堂では朝食の準備がされている。
朝食はパンとサラダと卵とソーセージだった。食後のデザートにたっぷりと果物が用意されていて、それは好きなだけ取り分けていい形式になっていた。
「朝から来てもらったのは、食堂からの景色をオリヴァー殿にお見せしたかったのです。食堂からは庭がよく見えます」
「少し庭を拝見させていただきましたが、とてもよく整った美しい場所だと思いました」
食堂の大きな窓からは庭の花々がよく見える。
「朝が一番花が美しいのですよ。昼からは暑さに負けて萎れてしまいます」
エクムント様が指し示す窓の外を見てみると、ブーゲンビリアやハイビスカス、アラマンダやプルメリアの花々が見える。
うっとりと見ていると、まーちゃんがテーブルで苦戦していた。
「くだものがっ! とれません!」
まーちゃんは子ども用の高い椅子を使っているが、そこから降りるとテーブルの上に乗っている果物に手が届かないのだ。果物が大好きなまーちゃんはレギーナが手伝うのを待たずにテーブルに手を伸ばしている。
「どれをお取りしましょうか?」
「いいのですか? ぜんぶ、すこしずつおねがいします」
「分かりました。全種類お取りしますね」
そこへ声をかけてくださったのはオリヴァー殿だった。
わたくしもクリスタちゃんも両親も助けに行こうと思っていたのだが、レギーナの仕事を奪うわけにはいかないと躊躇していたのだ。レギーナは部屋の端で控えていたので、まーちゃんの行動にすぐに気付けなかった。
「申し訳ありません、オリヴァー様」
「構いませんよ。私にも年の離れた妹がいます。慣れています」
謝るレギーナに、オリヴァー殿は気にせずにまーちゃんのお皿に山盛りの果物を取り分けてくれた。
まーちゃんは自分の席にまでオリヴァー殿に持って来てもらって、椅子によじ登ってフォークで果物を突き刺して美味しそうに食べている。
「オリヴァー殿、ありがとうございました」
「いいえ、困っている幼い方がいたらお助けするのは当然のことです」
「オリヴァーどの、このくだもの、とてもおいしいです。ありがとうございます」
わたくしがお礼を言えば、オリヴァー殿は当然のことだと言い、まーちゃんも果物を食べながらお礼を言っていた。
朝食が終わると、食堂のソファに移動して寛いだ雰囲気でフルーツティーやミントティーを飲む。辺境伯領には新鮮な牛乳があまりないようなので、ミルクティーを飲むのは難しそうだし、それよりも冷やされたフルーツティーやミントティーの方が喉を爽やかにした。
「オリヴァー殿は詩の解釈ができると聞いています。私は不器用な軍人で、芸術を解さないので詩がよく分からないのですが、オリヴァー殿はどうやって詩を解釈しているのですか?」
「私はノエル殿下の詩も、クリスタ様の詩も、フランツ様の詩も、根底にあるのは人生に対する圧倒的な明るい感情だと思っております。人生はこんなにも素晴らしく楽しいのだと謳歌している詩なのです」
「人生を、謳歌している?」
「そうです。授業だからといって真面目に考えすぎずに、楽観的に明るく軽く考えることが重要なのです。例え悲しい詩であってもその根底には人生を謳歌している気持ちが現れているので、深刻に考えることはないのです」
こんな風に説明されると、エクムント様も詩に対する心構えが変わってきたようだ。
「そうなのですね。私はつい書かれている通りに読み取ろうとして真剣に考え込んでしまって、根底に流れるものまで思い付きませんでした」
「詩は歓びです。生きることの素晴らしさを詠っているのです。そう考えて読むと、全く違った視点になると思います」
「オリヴァー殿に話を聞けてよかった。これならば、私も詩のことが少しは分かりそうです」
エクムント様も詩について前向きになっている様子を見ると、オリヴァー殿を紹介してよかったと思う。
ノエル殿下の詩がこの国の上流階級の嗜みとなると、わたくしとエクムント様が全く理解できないのでは困ってしまうと思ってはいたのだ。
「オリヴァー殿、後で私の詩を聞いてください」
「喜んでお聞きします、フランツ様」
オリヴァー殿がノエル殿下の詩の解釈をしていることを知って、ふーちゃんは自分の詩を聞かせたくてたまらなくなってしまったようだ。
クリスタちゃんもうずうずしているのが見て取れる。
これまでは詩のことはよく分からないと諦めていたわたくしも、困惑せずにふーちゃんとクリスタちゃんの詩を聞けそうな気がしていた。
わたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんが洗面を終えて着替えて廊下に出ると、可愛いシャツと半ズボンのふーちゃん、袖なしのワンピースのまーちゃんが廊下で待っていた。
「お散歩に行きましょう!」
「いいおてんきですよ!」
元気いっぱいのふーちゃんとまーちゃんに連れられて、お屋敷を出る前に全員日除けの上着を着て帽子を被って、庭に行った。
辺境伯家の庭にはブーゲンビリアやハイビスカス、アラマンダやプルメリアが咲き乱れている。
南国の美しい花々を見ながら庭を歩いていると、まーちゃんの帽子が飛ばされた。
「あ! おぼうし!」
走って取りに行くまーちゃんの前に現れたのは、オリヴァー殿だった。
「この水色の帽子はあなたのですか?」
「は、はい。わたくしのです」
「オリヴァー殿、ありがとうございます。マリア、この方が昨日お話ししたオリヴァー・シュタール殿です」
「初めまして、オリヴァー・シュタールと申します。辺境伯家に招かれるのは初めてで、せっかくなのでお庭を見せていただいていたところです」
「こんな早朝に来られるとは思いませんでした」
「辺境伯から朝食のお誘いを受けたのです。それにしても、気合を入れて早く来すぎてしまいました」
苦笑しているオリヴァー殿から帽子を受け取って、まーちゃんはオリヴァー殿を見上げている。
「せがたかいのですね」
「辺境伯領の民は中央の方々よりも長身ですからね。辺境伯もとても背が高いです」
「エリザベートおねえさまと、ハインリヒでんかとおなじとしなのですよね?」
「そうです。私は春生まれなので、ハインリヒ殿下より少し早く十五歳になって、社交界デビューもしましたが」
オリヴァー殿に見惚れるようにして話しているまーちゃんにわたくしが促す。
「マリア、自分の名前を名乗るのですよ」
「そうでした。わたくしは、マリア・ディッペルです」
「私はフランツ・ディッペルです」
「初めまして。ディッペル家の方々とお知り合いになれて嬉しいです」
微笑んで優雅に一礼するオリヴァー殿にまーちゃんは釘付けである。ふーちゃんも挨拶はしていたが、気持ちはレーニちゃんの方に向いている気がする。
「きのう、エリザベートおねえさまがいっていました。へんきょうはくりょうでがくえんにかようかたはすくないのだと」
「よくご存じですね、マリア様。辺境伯領は軍人の多い領地です。学園に通うよりも士官学校に通うものの方がずっと多いのです。それに中央とは一時期独立派によって、辺境伯領は隔絶していました。中央の学園に通うものは非常に少ないでしょうね」
「しかんがっこうとは、どのようなところですか? へんきょうはくりょうにあるのですか?」
「士官学校は王都にもあって、エクムント様はそちらの士官学校を卒業されましたが、辺境伯領にもあります。ほとんどの貴族の子息は士官学校に入学して、軍人になるのです」
それは辺境伯領が軍備を大事とする辺境ならではのことなのかもしれない。
学園に通う辺境伯領の方が少ない理由も、これで分かった。
「隣国との関係も良好ですし、今後はエクムント様は貴族の子息令嬢に士官学校ではなく王都の学園に通うように促すのかもしれません。私は軍人になりたいとは思っていなかったので、学園で学べてとても有意義です」
オリヴァー殿の言葉に、オリヴァー殿が本当に学園が好きなのだというのが伝わってくる。話を聞きながらわたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんとふーちゃんとまーちゃんは、オリヴァー殿と辺境伯家のお屋敷に入った。
辺境伯家のお屋敷に入ると、オリヴァー殿はエクムント様に挨拶に行く。
「お招きいただきありがとうございます。オリヴァー・シュタールです」
「エリザベート嬢の学友だと聞いています。よく来てくれました、オリヴァー殿」
「エクムント様にはお茶会で何度かお会いしていますが、今年からは私も社交界デビューしたので、お誕生日の昼食会と晩餐会にもぜひ出席させていただきたいと思っております」
「シュタール侯爵家は辺境伯領においても大事な家です。辺境伯家とこれからも仲良くしていただきたいところです」
挨拶が終わったところで、わたくしたちは食堂に移動した。
食堂では朝食の準備がされている。
朝食はパンとサラダと卵とソーセージだった。食後のデザートにたっぷりと果物が用意されていて、それは好きなだけ取り分けていい形式になっていた。
「朝から来てもらったのは、食堂からの景色をオリヴァー殿にお見せしたかったのです。食堂からは庭がよく見えます」
「少し庭を拝見させていただきましたが、とてもよく整った美しい場所だと思いました」
食堂の大きな窓からは庭の花々がよく見える。
「朝が一番花が美しいのですよ。昼からは暑さに負けて萎れてしまいます」
エクムント様が指し示す窓の外を見てみると、ブーゲンビリアやハイビスカス、アラマンダやプルメリアの花々が見える。
うっとりと見ていると、まーちゃんがテーブルで苦戦していた。
「くだものがっ! とれません!」
まーちゃんは子ども用の高い椅子を使っているが、そこから降りるとテーブルの上に乗っている果物に手が届かないのだ。果物が大好きなまーちゃんはレギーナが手伝うのを待たずにテーブルに手を伸ばしている。
「どれをお取りしましょうか?」
「いいのですか? ぜんぶ、すこしずつおねがいします」
「分かりました。全種類お取りしますね」
そこへ声をかけてくださったのはオリヴァー殿だった。
わたくしもクリスタちゃんも両親も助けに行こうと思っていたのだが、レギーナの仕事を奪うわけにはいかないと躊躇していたのだ。レギーナは部屋の端で控えていたので、まーちゃんの行動にすぐに気付けなかった。
「申し訳ありません、オリヴァー様」
「構いませんよ。私にも年の離れた妹がいます。慣れています」
謝るレギーナに、オリヴァー殿は気にせずにまーちゃんのお皿に山盛りの果物を取り分けてくれた。
まーちゃんは自分の席にまでオリヴァー殿に持って来てもらって、椅子によじ登ってフォークで果物を突き刺して美味しそうに食べている。
「オリヴァー殿、ありがとうございました」
「いいえ、困っている幼い方がいたらお助けするのは当然のことです」
「オリヴァーどの、このくだもの、とてもおいしいです。ありがとうございます」
わたくしがお礼を言えば、オリヴァー殿は当然のことだと言い、まーちゃんも果物を食べながらお礼を言っていた。
朝食が終わると、食堂のソファに移動して寛いだ雰囲気でフルーツティーやミントティーを飲む。辺境伯領には新鮮な牛乳があまりないようなので、ミルクティーを飲むのは難しそうだし、それよりも冷やされたフルーツティーやミントティーの方が喉を爽やかにした。
「オリヴァー殿は詩の解釈ができると聞いています。私は不器用な軍人で、芸術を解さないので詩がよく分からないのですが、オリヴァー殿はどうやって詩を解釈しているのですか?」
「私はノエル殿下の詩も、クリスタ様の詩も、フランツ様の詩も、根底にあるのは人生に対する圧倒的な明るい感情だと思っております。人生はこんなにも素晴らしく楽しいのだと謳歌している詩なのです」
「人生を、謳歌している?」
「そうです。授業だからといって真面目に考えすぎずに、楽観的に明るく軽く考えることが重要なのです。例え悲しい詩であってもその根底には人生を謳歌している気持ちが現れているので、深刻に考えることはないのです」
こんな風に説明されると、エクムント様も詩に対する心構えが変わってきたようだ。
「そうなのですね。私はつい書かれている通りに読み取ろうとして真剣に考え込んでしまって、根底に流れるものまで思い付きませんでした」
「詩は歓びです。生きることの素晴らしさを詠っているのです。そう考えて読むと、全く違った視点になると思います」
「オリヴァー殿に話を聞けてよかった。これならば、私も詩のことが少しは分かりそうです」
エクムント様も詩について前向きになっている様子を見ると、オリヴァー殿を紹介してよかったと思う。
ノエル殿下の詩がこの国の上流階級の嗜みとなると、わたくしとエクムント様が全く理解できないのでは困ってしまうと思ってはいたのだ。
「オリヴァー殿、後で私の詩を聞いてください」
「喜んでお聞きします、フランツ様」
オリヴァー殿がノエル殿下の詩の解釈をしていることを知って、ふーちゃんは自分の詩を聞かせたくてたまらなくなってしまったようだ。
クリスタちゃんもうずうずしているのが見て取れる。
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