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十章 ふーちゃんとまーちゃんの婚約
45.ふーちゃんとまーちゃんに語られるクリスタちゃんの真実
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ホルツマン伯爵夫妻とリーゼロッテ嬢が帰ってからどっと疲れが襲って来て、わたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんは子ども部屋に場所を移して、ソファで寛いでいた。
わたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんがいるのに気付いたふーちゃんとまーちゃんが顔を出す。
まーちゃんは真っ白なドレスを着て、白薔薇の花冠を被っていた。
「エリザベートお姉様、クリスタお姉様、レーニ嬢、見てください! わたくしの婚約式の衣装です! 出来上がったのです!」
「まーちゃん、とても可愛いです」
「これはオリヴァー殿も可愛いと褒めてくださるでしょうね」
「まーちゃん、とてもお似合いです」
褒められて嬉しそうにもじもじしているまーちゃんを見ると、先ほどの殺伐としていた空気が薄れるようで和んでくる。
「汚してはいけないので着替えてきます」
「もう少しだけ、その姿を見せてください」
「あぁ、なんて可愛いのでしょう」
「天使のようですわ」
着替えて来ようとするまーちゃんをわたくしが引き留めてしまうと、クリスタちゃんとレーニちゃんも同じ気持ちのようだった。抱き締めたり、ゆっくりとその場で一回転してもらったりして、可愛さを噛み締める。
可愛いまーちゃんを堪能するとわたくしもクリスタちゃんもレーニちゃんも緊張が解れて来た。
「びっくりしました……。公爵家のみならず、クリスタちゃんを侮辱することで、クリスタちゃんを皇太子殿下であるハインリヒ殿下の婚約者に選んだ王家を侮辱して、その上……」
ノルベルト殿下のことは口に出せなかったけれど、聞こえていたのでクリスタちゃんもレーニちゃんもそのことには気付いているだろう。
「もう少しで不敬罪で死刑か終身刑にされるかと思ったら……ですものね」
「ホルツマン家としてはそれくらいしないとけじめがつけられないと思ったのかもしれません」
病死という単語も、クリスタちゃんはこの場にふーちゃんとまーちゃんがいるので憚られると口にしていない。レーニちゃんも複雑そうな表情をしている。
怖い話題に心が荒んでいたわたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんを癒してくれた可愛いまーちゃんは、着替えてワンピース姿でわたくしのお膝の上に座っていた。ふーちゃんはレーニちゃんのお隣りに座っている。
「エリザベートお姉様、ホルツマン家の方々が来ていたようですが、なんだったのですか? クリスタお姉様が侮辱されたのですか?」
そうであれば決闘も辞しません!
力強く言うふーちゃんのふわふわの金髪をわたくしは撫でる。
「ふーちゃんが決闘することはないのです。もうその方は修道院に入って一生出てこないことになりましたから」
「本当ですか? クリスタお姉様、大丈夫でしたか?」
「わたくし、侮辱されていたのですね。わたくしに話しかけているとは思わなかったので、わたくし、あの方の話を聞いていなかったのです」
「そうですよね、『お姉様』と言われて、自分のことだとは思いませんよね」
クリスタちゃんの言葉にわたくしは納得してしまう。
ディッペル家に引き取られたときにクリスタちゃんはまだ四歳だったのだ。引き取られる前のことを完全に忘れていてもおかしくはない。マリア叔母様のことに関しては、母の妹なので引き取られてからも何度か話をしているし、お墓参りにも行っているので、なんとか覚えていたようだが、元ノメンゼン子爵のことも、その妾のことも、妾の娘のことも全く覚えていなかったのだ。
今更異母妹がいて、その異母妹が急に話しかけて来て、「お姉様」とクリスタちゃんのことを呼んだとしても分からなくても仕方がない。
そう思っていると、レーニちゃんがため息を吐く。
「前の父のことは、大嫌いでした。母というものがありながら外に愛人を作って、わたくしのことも全く顧みないで。でも、ホルツマン家の方々の申し出通りになってしまうかと思ったら、哀れみのような感情がわいてきたのです」
ぼかして話しているが、ホルツマン家の方々の申し出とは、病死のことだっただろう。
病死と言っても、本当に病気にかかるわけではない。毒かナイフか選ばせるのだ。毒を飲んで自分で死ぬか、ナイフで命を奪われることを選ぶか。そうして、葬り去った後で、病死したと公表するのだ。
わたくしとローザ嬢が言い争っていた場にはペオーニエ寮の大縄跳びのチームがいた。ペオーニエ寮の生徒なので貴族教育が浸透しているはずで、軽々しく耳にしたことを口に出さないだろうと思うが、わたくしとローザ嬢が言い争った後でローザ嬢が病死したとなれば、ホルツマン家の方々が手を回したと思われてもおかしくはなかった。
そんな血生臭いことにわたくしは関わりたくないというのが本音だった。
「レーニちゃん、ホルツマン家の方々の申し出とは何ですか?」
「それは内緒です、ふーちゃん」
「婚約者の私にも言えないことですか?」
「わたくしも口に出したくないようなことなのです。分かってください」
「レーニちゃんが口に出したくないようなこと……それならば、聞きません」
ふーちゃんは真相を知りたがっていたが、レーニちゃんが言いたくないと言えば納得していた。
まーちゃんは銀色の光沢のある黒い目をくりくりとさせてわたくしの顔を見上げている。
「エリザベートお姉様、ホルツマン家の方がまた何かしてきたのですか?」
「話せば長くなりますが、ホルツマン家に戻ったリリエンタール公爵の前の夫が養子にした娘が、わたくしに絡んできたのです」
「リリエンタール公爵の前の夫!? レーニ嬢に何か言ってきたのですか!?」
「レーニちゃんではなくて、クリスタちゃんの方なのですが」
「え!? クリスタお姉様に!? どんな繋がりが!?」
まーちゃんの問いかけにふーちゃんも疑問を持ったようだ。
「ホルツマン家の養子の方がどうしてクリスタお姉様に?」
わたくしが話すべきかどうか迷っていると、クリスタちゃんが口を開く。
「わたくしは、実はディッペル家のお父様とお母様の子どもではなかったのです」
「え!? クリスタお姉様が!?」
「どういうことですか!?」
驚いているふーちゃんとまーちゃんにクリスタちゃんが説明をする。
「わたくしはお母様の妹の娘なのです。生まれたときに母を亡くしていて、父からも酷い扱いを受けていたわたくしを、お姉様が引き取るように両親に言ってくださって、お父様とお母様はわたくしを養子にしてくださったのです」
「クリスタお姉様は、私のお姉様じゃないの!?」
「クリスタお姉様は本当はわたくしの何なのですか?」
「正式には従姉になりますが、ディッペル家の養子に入っていますし、わたくしはディッペル家に来たときにまだ四歳で、それ以前のことは覚えていなくて、今話したこともお姉様に教えてもらって知ったので、ふーちゃんとまーちゃんの実の姉のようなものです」
驚いて聞いていたふーちゃんとまーちゃんだが、クリスタちゃんの説明を聞いて安心したようだった。
「それなら、私もクリスタお姉様を実のお姉様と思っていいのですね」
「わたくしもクリスタお姉様を実のお姉様と思います」
「そう思ってくれると嬉しいです」
「クリスタお姉様、隠さずに話してくださってありがとうございます」
「わたくし、隠されていて大きくなってから知ったらショックだったかもしれません。クリスタお姉様がきちんとお話ししてくれてよかったです」
この話に関してはわたくしもどのようにふーちゃんとまーちゃんに伝えようか悩んでいた。ふーちゃんとまーちゃんはまだ小さいので、もう少し大きくなってから伝えた方がいいかもしれないと思ったのだ。
しかし、クリスタちゃんはふーちゃんとまーちゃんが知りたがっている今、伝えることを選んだ。
そのおかげでふーちゃんもまーちゃんも納得することができた。
「話を戻しますが、わたくしに絡んで来たホルツマン家の養子の方は、わたくしの実の父と妾との間に生まれた娘だったのです」
「めかけ?」
「めかけって、何ですか?」
貴族の中で妾や愛人を持つものは少なくはないが、ふーちゃんとまーちゃんにとっては両親が愛し合って生まれた子どもであって、両親が妾や愛人を持つことはあり得なかった。そのためにふーちゃんもまーちゃんも妾という存在を知らなかったのだ。
「正式な妻がいるのに夫が他に愛する相手を妾と言います。妾との間に生まれた娘は、実の父の正式な娘とは認められていませんが、わたくしの異母妹ということになります」
「いぼまい……どういう意味ですか?」
「母が異なる妹のことです」
「妹!? クリスタお姉様の妹はわたくしだけではなかったのですか?」
「わたくしの気持ちの上ではまーちゃんだけがわたくしの妹です。実の父の不貞のせいで生まれた異母妹を妹と認めるつもりはありません」
「よかった。クリスタお姉様の妹はわたくしだけですね」
「そうですよ、まーちゃん」
異母妹の説明もしたのでふーちゃんとまーちゃんもクリスタちゃんが絡まれた理由が理解できたようだった。
「それで、その方はクリスタお姉様を『お姉様』と呼んで絡んできたのですね」
「お金の苦心をされたのですか?」
「まーちゃん、それは、苦心ではなくて無心ですね。そのようなことはされませんでしたが、何かわたくしの悪口を言っていたようです。わたくしは相手にしていなかったので聞いていませんでしたが」
「相手にすることはありません」
「クリスタお姉様、その方はもうクリスタお姉様に近付くことはないのですか?」
「その方は修道院に入ることになりました。もう近付いてくることはありませんよ」
ことの顛末まで丁寧に答えたクリスタちゃんにふーちゃんもまーちゃんも頷いて胸を撫で下ろしていた。
「よかったです、クリスタお姉様」
「もうそんな方が現れないといいですね」
「貴族教育を受けていないような方でしたからね。わたくしももう二度とお会いしないでよくなって本当によかったです」
ローザ嬢と話したのはわたくしだけだが、クリスタちゃんもローザ嬢の言葉を聞いていたのだろう。
教育を受けていない、同じ人類とは思えないような娘だった。わたくしの周囲にいる方々がどれだけ貴族教育をきっちりと受けていて、礼儀正しいかを改めてわたくしは実感していた。
わたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんがいるのに気付いたふーちゃんとまーちゃんが顔を出す。
まーちゃんは真っ白なドレスを着て、白薔薇の花冠を被っていた。
「エリザベートお姉様、クリスタお姉様、レーニ嬢、見てください! わたくしの婚約式の衣装です! 出来上がったのです!」
「まーちゃん、とても可愛いです」
「これはオリヴァー殿も可愛いと褒めてくださるでしょうね」
「まーちゃん、とてもお似合いです」
褒められて嬉しそうにもじもじしているまーちゃんを見ると、先ほどの殺伐としていた空気が薄れるようで和んでくる。
「汚してはいけないので着替えてきます」
「もう少しだけ、その姿を見せてください」
「あぁ、なんて可愛いのでしょう」
「天使のようですわ」
着替えて来ようとするまーちゃんをわたくしが引き留めてしまうと、クリスタちゃんとレーニちゃんも同じ気持ちのようだった。抱き締めたり、ゆっくりとその場で一回転してもらったりして、可愛さを噛み締める。
可愛いまーちゃんを堪能するとわたくしもクリスタちゃんもレーニちゃんも緊張が解れて来た。
「びっくりしました……。公爵家のみならず、クリスタちゃんを侮辱することで、クリスタちゃんを皇太子殿下であるハインリヒ殿下の婚約者に選んだ王家を侮辱して、その上……」
ノルベルト殿下のことは口に出せなかったけれど、聞こえていたのでクリスタちゃんもレーニちゃんもそのことには気付いているだろう。
「もう少しで不敬罪で死刑か終身刑にされるかと思ったら……ですものね」
「ホルツマン家としてはそれくらいしないとけじめがつけられないと思ったのかもしれません」
病死という単語も、クリスタちゃんはこの場にふーちゃんとまーちゃんがいるので憚られると口にしていない。レーニちゃんも複雑そうな表情をしている。
怖い話題に心が荒んでいたわたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんを癒してくれた可愛いまーちゃんは、着替えてワンピース姿でわたくしのお膝の上に座っていた。ふーちゃんはレーニちゃんのお隣りに座っている。
「エリザベートお姉様、ホルツマン家の方々が来ていたようですが、なんだったのですか? クリスタお姉様が侮辱されたのですか?」
そうであれば決闘も辞しません!
力強く言うふーちゃんのふわふわの金髪をわたくしは撫でる。
「ふーちゃんが決闘することはないのです。もうその方は修道院に入って一生出てこないことになりましたから」
「本当ですか? クリスタお姉様、大丈夫でしたか?」
「わたくし、侮辱されていたのですね。わたくしに話しかけているとは思わなかったので、わたくし、あの方の話を聞いていなかったのです」
「そうですよね、『お姉様』と言われて、自分のことだとは思いませんよね」
クリスタちゃんの言葉にわたくしは納得してしまう。
ディッペル家に引き取られたときにクリスタちゃんはまだ四歳だったのだ。引き取られる前のことを完全に忘れていてもおかしくはない。マリア叔母様のことに関しては、母の妹なので引き取られてからも何度か話をしているし、お墓参りにも行っているので、なんとか覚えていたようだが、元ノメンゼン子爵のことも、その妾のことも、妾の娘のことも全く覚えていなかったのだ。
今更異母妹がいて、その異母妹が急に話しかけて来て、「お姉様」とクリスタちゃんのことを呼んだとしても分からなくても仕方がない。
そう思っていると、レーニちゃんがため息を吐く。
「前の父のことは、大嫌いでした。母というものがありながら外に愛人を作って、わたくしのことも全く顧みないで。でも、ホルツマン家の方々の申し出通りになってしまうかと思ったら、哀れみのような感情がわいてきたのです」
ぼかして話しているが、ホルツマン家の方々の申し出とは、病死のことだっただろう。
病死と言っても、本当に病気にかかるわけではない。毒かナイフか選ばせるのだ。毒を飲んで自分で死ぬか、ナイフで命を奪われることを選ぶか。そうして、葬り去った後で、病死したと公表するのだ。
わたくしとローザ嬢が言い争っていた場にはペオーニエ寮の大縄跳びのチームがいた。ペオーニエ寮の生徒なので貴族教育が浸透しているはずで、軽々しく耳にしたことを口に出さないだろうと思うが、わたくしとローザ嬢が言い争った後でローザ嬢が病死したとなれば、ホルツマン家の方々が手を回したと思われてもおかしくはなかった。
そんな血生臭いことにわたくしは関わりたくないというのが本音だった。
「レーニちゃん、ホルツマン家の方々の申し出とは何ですか?」
「それは内緒です、ふーちゃん」
「婚約者の私にも言えないことですか?」
「わたくしも口に出したくないようなことなのです。分かってください」
「レーニちゃんが口に出したくないようなこと……それならば、聞きません」
ふーちゃんは真相を知りたがっていたが、レーニちゃんが言いたくないと言えば納得していた。
まーちゃんは銀色の光沢のある黒い目をくりくりとさせてわたくしの顔を見上げている。
「エリザベートお姉様、ホルツマン家の方がまた何かしてきたのですか?」
「話せば長くなりますが、ホルツマン家に戻ったリリエンタール公爵の前の夫が養子にした娘が、わたくしに絡んできたのです」
「リリエンタール公爵の前の夫!? レーニ嬢に何か言ってきたのですか!?」
「レーニちゃんではなくて、クリスタちゃんの方なのですが」
「え!? クリスタお姉様に!? どんな繋がりが!?」
まーちゃんの問いかけにふーちゃんも疑問を持ったようだ。
「ホルツマン家の養子の方がどうしてクリスタお姉様に?」
わたくしが話すべきかどうか迷っていると、クリスタちゃんが口を開く。
「わたくしは、実はディッペル家のお父様とお母様の子どもではなかったのです」
「え!? クリスタお姉様が!?」
「どういうことですか!?」
驚いているふーちゃんとまーちゃんにクリスタちゃんが説明をする。
「わたくしはお母様の妹の娘なのです。生まれたときに母を亡くしていて、父からも酷い扱いを受けていたわたくしを、お姉様が引き取るように両親に言ってくださって、お父様とお母様はわたくしを養子にしてくださったのです」
「クリスタお姉様は、私のお姉様じゃないの!?」
「クリスタお姉様は本当はわたくしの何なのですか?」
「正式には従姉になりますが、ディッペル家の養子に入っていますし、わたくしはディッペル家に来たときにまだ四歳で、それ以前のことは覚えていなくて、今話したこともお姉様に教えてもらって知ったので、ふーちゃんとまーちゃんの実の姉のようなものです」
驚いて聞いていたふーちゃんとまーちゃんだが、クリスタちゃんの説明を聞いて安心したようだった。
「それなら、私もクリスタお姉様を実のお姉様と思っていいのですね」
「わたくしもクリスタお姉様を実のお姉様と思います」
「そう思ってくれると嬉しいです」
「クリスタお姉様、隠さずに話してくださってありがとうございます」
「わたくし、隠されていて大きくなってから知ったらショックだったかもしれません。クリスタお姉様がきちんとお話ししてくれてよかったです」
この話に関してはわたくしもどのようにふーちゃんとまーちゃんに伝えようか悩んでいた。ふーちゃんとまーちゃんはまだ小さいので、もう少し大きくなってから伝えた方がいいかもしれないと思ったのだ。
しかし、クリスタちゃんはふーちゃんとまーちゃんが知りたがっている今、伝えることを選んだ。
そのおかげでふーちゃんもまーちゃんも納得することができた。
「話を戻しますが、わたくしに絡んで来たホルツマン家の養子の方は、わたくしの実の父と妾との間に生まれた娘だったのです」
「めかけ?」
「めかけって、何ですか?」
貴族の中で妾や愛人を持つものは少なくはないが、ふーちゃんとまーちゃんにとっては両親が愛し合って生まれた子どもであって、両親が妾や愛人を持つことはあり得なかった。そのためにふーちゃんもまーちゃんも妾という存在を知らなかったのだ。
「正式な妻がいるのに夫が他に愛する相手を妾と言います。妾との間に生まれた娘は、実の父の正式な娘とは認められていませんが、わたくしの異母妹ということになります」
「いぼまい……どういう意味ですか?」
「母が異なる妹のことです」
「妹!? クリスタお姉様の妹はわたくしだけではなかったのですか?」
「わたくしの気持ちの上ではまーちゃんだけがわたくしの妹です。実の父の不貞のせいで生まれた異母妹を妹と認めるつもりはありません」
「よかった。クリスタお姉様の妹はわたくしだけですね」
「そうですよ、まーちゃん」
異母妹の説明もしたのでふーちゃんとまーちゃんもクリスタちゃんが絡まれた理由が理解できたようだった。
「それで、その方はクリスタお姉様を『お姉様』と呼んで絡んできたのですね」
「お金の苦心をされたのですか?」
「まーちゃん、それは、苦心ではなくて無心ですね。そのようなことはされませんでしたが、何かわたくしの悪口を言っていたようです。わたくしは相手にしていなかったので聞いていませんでしたが」
「相手にすることはありません」
「クリスタお姉様、その方はもうクリスタお姉様に近付くことはないのですか?」
「その方は修道院に入ることになりました。もう近付いてくることはありませんよ」
ことの顛末まで丁寧に答えたクリスタちゃんにふーちゃんもまーちゃんも頷いて胸を撫で下ろしていた。
「よかったです、クリスタお姉様」
「もうそんな方が現れないといいですね」
「貴族教育を受けていないような方でしたからね。わたくしももう二度とお会いしないでよくなって本当によかったです」
ローザ嬢と話したのはわたくしだけだが、クリスタちゃんもローザ嬢の言葉を聞いていたのだろう。
教育を受けていない、同じ人類とは思えないような娘だった。わたくしの周囲にいる方々がどれだけ貴族教育をきっちりと受けていて、礼儀正しいかを改めてわたくしは実感していた。
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