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十三章 わたくしの結婚
45.晩餐会と初夜
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お茶会が終わると子どもたちは部屋に戻る。
今度こそ大人たちだけでの晩餐会の披露宴が始まるのだ。
そのころには挨拶周りも終わっていたが、わたくしは席について再度挨拶に来る貴族たちの対応をする。席にはついているが椅子には座れないので、足は痛んで脹脛が腫れているのを感じる。
「エクムント様、私もシュタール家の当主となりました。これからも辺境伯領のために励んでいこうと思います」
「オリヴァー殿、当主になられておめでとうございます。これからもシュタール家は辺境伯領で辺境伯家を支える大事な家。どうかよろしくお願いします」
「エクムント様からそのようなことを言われるとは、オリヴァー・シュタール、今まで以上に辺境伯家に忠誠を誓い、お力になるとお約束します」
学園を卒業すると同時にシュタール家を継いだオリヴァー殿は、シュタール家の当主になっていた。補佐としてお父上がそばにいるだろうが、これからはシュタール家に仕事を任せるときにはオリヴァー殿にお願いすることとなる。
オリヴァー殿はわたくしの学園の同級生であるし、マリアの婚約者なので信頼ができる相手といえば間違いがなかった。
エクムント様とオリヴァー殿の話を聞いて、お辞儀をしてオリヴァー殿を見送ると、ホルツマン家のリーゼロッテ嬢が挨拶に来た。リーゼロッテ嬢は伯爵家の後継者で、王宮での催しに出られるような身分ではないのだが、リーゼロッテ嬢をわたくしが認めて、お茶会に招いていたので招待されたのだろう。
「ミリヤム嬢はアッペル大公家に雇われて生まれてくるお子様の乳母となることが決まっていると聞きました。オリヴァー様もシュタール家の当主になられて、エリザベート様はエクムント様と結婚されて、皆様それぞれの道を歩き始めたのですね」
「そうなりますね。ハインリヒ殿下は来年の春には結婚します」
「エリザベート様はホルツマン家にいい印象を持っておられなかったと思います。それを許してくださって、お茶会に招いてくださって、結婚式にまで招待してくださったこと、わたくしは生涯忘れません」
「リーゼロッテ嬢……」
「ホルツマン家は辺境伯領にはありませんが、辺境伯家のためならば何でも致します。今後何かございましたらいつでも仰ってください」
わたくしがリーゼロッテ嬢をお茶会に招いた甲斐があったようだ。貴族社会ではやはり、見方が多い方が心強い。
ホルツマン家はラルフ殿がレーニ嬢を困らせていた件、ローザ嬢がクリスタに絡んできた件など、様々な問題はあったものの、ローザ嬢を修道院に入れて、レーニ嬢の元父親は断種の上監視を付けて平民の身分の落とすということでわたくしたちの間では解決はしていた。
ホルツマン家のひとたちはローザ嬢とその養父を病死してもらおうとまで思い詰めていたのだ。病死とは建前で、薬かナイフか選ばせて自害させるというのが本当のところである。
そんな血生臭いことはとても耐えられなかったので、わたくしはローザ嬢を修道院に入れて、養父は断種の上監視を付けて平民に落とすという処置を言い渡したのだが、そのことでホルツマン家に恩を売った形にはなっていた。
その後までリーゼロッテ嬢を責めようとは思わなかったし、リーゼロッテ嬢がまともな感性の持ち主だということは分かっていたので、わたくしもお茶会に招いてホルツマン家と和解したことを示したのだ。
学年では首席で聡明なリーゼロッテ嬢は今後、ホルツマン家の当主となるだろう。その暁にはわたくしたちのために働いてもらうことになるかもしれない。
ホルツマン家に売った恩が返ってきそうで、わたくしは満足していた。
晩餐会の夕食が終わると、大広間に場所を移して舞踏会が開かれる。
朝食を食べて以来飲み物以外ほぼ口にできていないわたくしはお腹が空いていたし、立ちっぱなしで足も腫れて疲れていた。
エクムント様に手を引かれて踊りの輪の中に入ると、何とか踊れるが、優雅に踊れているかは自信がない。
結婚式がこんなにも体力を使うものだっただなんてわたくしは考えてもいなかった。
踊り疲れて大広間の端のソファで休んでいると、貴族たちが話しかけてくる。
「本日はお天気にも恵まれて最高の結婚式でしたね」
「エリザベート様は美しく、エクムント様は格好良くて、素晴らしかったです」
祝われているのだから、立ち上がってお礼を言わなければいけない。
「ありがとうございます。これからもわたくしたちのこと、よろしくお願いいたします」
「お褒めにあずかり光栄です。今後とも辺境伯領共々私たちのことよろしくお願いします」
こんな風に声を掛けてくる貴族が途切れないままで舞踏会もお開きの時間になった。
やっと部屋に戻れると思っていると、エクムント様がわたくしを抱き上げる。
「皆様、本日は本当にありがとうございました。私は妻、エリザベートとこれから生涯共に暮らしていきます。幸せな家庭を築けるように努力していきたいと思います。本日は私たちの結婚式にご参列下さりありがとうございました!」
優雅にわたくしを抱き上げて部屋に戻って行くエクムント様にわたくしは熱い頬を押さえていた。
辺境伯家の部屋に行くと、わたくしの荷物が運び込まれている。
わたくしを床に降ろしたエクムント様がバスルームでバスタブに湯を張ってくださる。
「足を痛めたのではないですか? 最後の方立ち方がいつもと違いました」
「わたくし、そんなに気付かれるような顔をしていましたか?」
「いいえ、完璧な笑顔でしたが、立ち方が違いました。気付いたのは私だけだと思います」
エクムント様には気付かれていた。
「最後抱き上げてくださったのも?」
「エリザベートが階段を上がらなくてよくするためでした」
そこまでエクムント様は考えてくださっていた。
「バスタブにお湯を張りました。お湯の中で足を揉むと腫れが和らぐと思います」
「ありがとうございます」
お礼を言って、わたくしはお風呂に入らせてもらうことにした。
ウエディングドレスを脱ぐと、今まで締め付けられていたのがよく分かる解放感だった。
裸になってバスタブに入って足を揉むとものすごく気持ちいい。エクムント様の心遣いに感謝しながら、わたくしはお風呂でゆっくりと足を揉んで、体と髪も洗ってパジャマを着て出てきた。
ウエディングドレスはマルレーンがしっかりと回収して辺境伯領での結婚式でも着られるようにしてくれているはずだ。
わたくしがバスルームから出ると入れ違いにエクムント様がバスルームに入った。
シャワーを浴びている音が聞こえる。
これからわたくしとエクムント様の初夜が始まる。
初夜と言えば結婚した夫婦が初めて結ばれる夜のことである。
エクムント様と結ばれたいと思う気持ちはあるのだが、わたくしは昨日よく眠れなかったし、結婚式で疲れているのもあってものすごく眠くなっていた。
時刻は日付が変わるくらいになっているし、もう限界かもしれない。
パジャマを着たエクムント様がバスルームから出て来たときには、わたくしはベッドの端に座ってうとうととし始めていた。
「エリザベート、大丈夫ですか?」
「す、すみません。わたくし、体力がなくて」
「エリザベート」
エクムント様がわたくしを抱き寄せて口付けをしてくださる。唇を塞ぐ口付けに心拍数は上がるが、眠気は消えてくれない。
「今日は、休みましょう」
「いいのですか、エクムント様?」
「辺境伯領での結婚式もあるのです。エリザベートをこれ以上疲れさせるわけにはいきません」
どこまでもエクムント様は紳士だった。
同じベッドに入るとエクムント様がわたくしの体を抱き締める。
エクムント様はわたくしと同じボディソープとシャンプーを使っているはずなのに、全く違ういい匂いがした。
エクムント様に抱き締められてわたくしは目を閉じる。
それが限界だった。
そのままわたくしは深い眠りに落ちていた。
今度こそ大人たちだけでの晩餐会の披露宴が始まるのだ。
そのころには挨拶周りも終わっていたが、わたくしは席について再度挨拶に来る貴族たちの対応をする。席にはついているが椅子には座れないので、足は痛んで脹脛が腫れているのを感じる。
「エクムント様、私もシュタール家の当主となりました。これからも辺境伯領のために励んでいこうと思います」
「オリヴァー殿、当主になられておめでとうございます。これからもシュタール家は辺境伯領で辺境伯家を支える大事な家。どうかよろしくお願いします」
「エクムント様からそのようなことを言われるとは、オリヴァー・シュタール、今まで以上に辺境伯家に忠誠を誓い、お力になるとお約束します」
学園を卒業すると同時にシュタール家を継いだオリヴァー殿は、シュタール家の当主になっていた。補佐としてお父上がそばにいるだろうが、これからはシュタール家に仕事を任せるときにはオリヴァー殿にお願いすることとなる。
オリヴァー殿はわたくしの学園の同級生であるし、マリアの婚約者なので信頼ができる相手といえば間違いがなかった。
エクムント様とオリヴァー殿の話を聞いて、お辞儀をしてオリヴァー殿を見送ると、ホルツマン家のリーゼロッテ嬢が挨拶に来た。リーゼロッテ嬢は伯爵家の後継者で、王宮での催しに出られるような身分ではないのだが、リーゼロッテ嬢をわたくしが認めて、お茶会に招いていたので招待されたのだろう。
「ミリヤム嬢はアッペル大公家に雇われて生まれてくるお子様の乳母となることが決まっていると聞きました。オリヴァー様もシュタール家の当主になられて、エリザベート様はエクムント様と結婚されて、皆様それぞれの道を歩き始めたのですね」
「そうなりますね。ハインリヒ殿下は来年の春には結婚します」
「エリザベート様はホルツマン家にいい印象を持っておられなかったと思います。それを許してくださって、お茶会に招いてくださって、結婚式にまで招待してくださったこと、わたくしは生涯忘れません」
「リーゼロッテ嬢……」
「ホルツマン家は辺境伯領にはありませんが、辺境伯家のためならば何でも致します。今後何かございましたらいつでも仰ってください」
わたくしがリーゼロッテ嬢をお茶会に招いた甲斐があったようだ。貴族社会ではやはり、見方が多い方が心強い。
ホルツマン家はラルフ殿がレーニ嬢を困らせていた件、ローザ嬢がクリスタに絡んできた件など、様々な問題はあったものの、ローザ嬢を修道院に入れて、レーニ嬢の元父親は断種の上監視を付けて平民の身分の落とすということでわたくしたちの間では解決はしていた。
ホルツマン家のひとたちはローザ嬢とその養父を病死してもらおうとまで思い詰めていたのだ。病死とは建前で、薬かナイフか選ばせて自害させるというのが本当のところである。
そんな血生臭いことはとても耐えられなかったので、わたくしはローザ嬢を修道院に入れて、養父は断種の上監視を付けて平民に落とすという処置を言い渡したのだが、そのことでホルツマン家に恩を売った形にはなっていた。
その後までリーゼロッテ嬢を責めようとは思わなかったし、リーゼロッテ嬢がまともな感性の持ち主だということは分かっていたので、わたくしもお茶会に招いてホルツマン家と和解したことを示したのだ。
学年では首席で聡明なリーゼロッテ嬢は今後、ホルツマン家の当主となるだろう。その暁にはわたくしたちのために働いてもらうことになるかもしれない。
ホルツマン家に売った恩が返ってきそうで、わたくしは満足していた。
晩餐会の夕食が終わると、大広間に場所を移して舞踏会が開かれる。
朝食を食べて以来飲み物以外ほぼ口にできていないわたくしはお腹が空いていたし、立ちっぱなしで足も腫れて疲れていた。
エクムント様に手を引かれて踊りの輪の中に入ると、何とか踊れるが、優雅に踊れているかは自信がない。
結婚式がこんなにも体力を使うものだっただなんてわたくしは考えてもいなかった。
踊り疲れて大広間の端のソファで休んでいると、貴族たちが話しかけてくる。
「本日はお天気にも恵まれて最高の結婚式でしたね」
「エリザベート様は美しく、エクムント様は格好良くて、素晴らしかったです」
祝われているのだから、立ち上がってお礼を言わなければいけない。
「ありがとうございます。これからもわたくしたちのこと、よろしくお願いいたします」
「お褒めにあずかり光栄です。今後とも辺境伯領共々私たちのことよろしくお願いします」
こんな風に声を掛けてくる貴族が途切れないままで舞踏会もお開きの時間になった。
やっと部屋に戻れると思っていると、エクムント様がわたくしを抱き上げる。
「皆様、本日は本当にありがとうございました。私は妻、エリザベートとこれから生涯共に暮らしていきます。幸せな家庭を築けるように努力していきたいと思います。本日は私たちの結婚式にご参列下さりありがとうございました!」
優雅にわたくしを抱き上げて部屋に戻って行くエクムント様にわたくしは熱い頬を押さえていた。
辺境伯家の部屋に行くと、わたくしの荷物が運び込まれている。
わたくしを床に降ろしたエクムント様がバスルームでバスタブに湯を張ってくださる。
「足を痛めたのではないですか? 最後の方立ち方がいつもと違いました」
「わたくし、そんなに気付かれるような顔をしていましたか?」
「いいえ、完璧な笑顔でしたが、立ち方が違いました。気付いたのは私だけだと思います」
エクムント様には気付かれていた。
「最後抱き上げてくださったのも?」
「エリザベートが階段を上がらなくてよくするためでした」
そこまでエクムント様は考えてくださっていた。
「バスタブにお湯を張りました。お湯の中で足を揉むと腫れが和らぐと思います」
「ありがとうございます」
お礼を言って、わたくしはお風呂に入らせてもらうことにした。
ウエディングドレスを脱ぐと、今まで締め付けられていたのがよく分かる解放感だった。
裸になってバスタブに入って足を揉むとものすごく気持ちいい。エクムント様の心遣いに感謝しながら、わたくしはお風呂でゆっくりと足を揉んで、体と髪も洗ってパジャマを着て出てきた。
ウエディングドレスはマルレーンがしっかりと回収して辺境伯領での結婚式でも着られるようにしてくれているはずだ。
わたくしがバスルームから出ると入れ違いにエクムント様がバスルームに入った。
シャワーを浴びている音が聞こえる。
これからわたくしとエクムント様の初夜が始まる。
初夜と言えば結婚した夫婦が初めて結ばれる夜のことである。
エクムント様と結ばれたいと思う気持ちはあるのだが、わたくしは昨日よく眠れなかったし、結婚式で疲れているのもあってものすごく眠くなっていた。
時刻は日付が変わるくらいになっているし、もう限界かもしれない。
パジャマを着たエクムント様がバスルームから出て来たときには、わたくしはベッドの端に座ってうとうととし始めていた。
「エリザベート、大丈夫ですか?」
「す、すみません。わたくし、体力がなくて」
「エリザベート」
エクムント様がわたくしを抱き寄せて口付けをしてくださる。唇を塞ぐ口付けに心拍数は上がるが、眠気は消えてくれない。
「今日は、休みましょう」
「いいのですか、エクムント様?」
「辺境伯領での結婚式もあるのです。エリザベートをこれ以上疲れさせるわけにはいきません」
どこまでもエクムント様は紳士だった。
同じベッドに入るとエクムント様がわたくしの体を抱き締める。
エクムント様はわたくしと同じボディソープとシャンプーを使っているはずなのに、全く違ういい匂いがした。
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