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二章 ご寵愛されてます
27.ソフィアの婚約
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夕食はアレクサンテリ陛下とディアン伯爵家の両親とソフィアと一緒だった。
アレクサンテリ陛下はわたくしの両親に今日のことを説明していた。
「わたしの幼馴染でもあり、側近でもある、シリル・ロセルがソフィアと婚約を結びたいと言っているのだ。シリルのことは幼いころから知っているが、真面目で優秀な男だと思っている」
「シリル様といいますと、ロセル侯爵家の次男ですよね?」
「侯爵家のご令息で、皇帝陛下の側近の方が、ディアン伯爵家に婿入りしてくれるというのですか?」
「シリルはそのつもりのようだ。わたしもそのことを認めるつもりであるし、ロセル侯爵家も反対しないだろう」
アレクサンテリ陛下の言葉に両親は驚きを隠せない様子だったが、それも仕方がないことだろう。ディアン伯爵家は昨日までは子爵家だったのだ。貧乏で使用人も最低限の慎ましい暮らしをしていて、人形やぬいぐるみの事業でやっと領地が立て直ってきたが、田舎の貧しい貴族ということには変わりがなかった。
そこに帝都で活躍している皇帝陛下の側近で、皇帝陛下の幼馴染でもある侯爵家の次男が婿入りしたいと言ってきたのである。驚くだろうし、訝しく思ってもおかしくはなかった。
「シリルは真剣にソフィアのことを想っているようだ。ソフィアも今日シリルとお茶会をして、シリルの印象が変わったようだ。そうだね、ソフィア?」
「わたくしの外見に惹かれて来たのかと思っていましたが、そうではないということは分かりました。このお話はディアン伯爵家にとってはとてもいいお話です。シリル様もディアン伯爵家に来る覚悟があると仰いました」
あくまでも冷静に答えるソフィアに、両親はまだ落ち着かない様子である。
「侯爵家のご令息で、帝都に住んでいらっしゃる方が、ディアン伯爵家で暮らせるだろうか?」
「わたくしたちの家は屋敷と呼ぶには狭く質素ですからね」
「それも覚悟の上だと思います。そうでなくても、慣れていただきます」
結婚するのだからディアン伯爵家に慣れてもらうというソフィアの言葉ははっきりとしていた。ソフィアが甘い感情でシリル様を受け入れるつもりはなくて、どこまでも共に領地を治めるパートナーとして考えているのがよく分かる。
シリル様の方はソフィアに気持ちがあるのだから、婚約してからソフィアの気持ちが変わってくるかもしれない。それはシリル様次第だし、ソフィア次第でもあった。
「わたくしに今できることは、学園を首席で卒業することです。お姉様は学園の首席をずっと保っていらっしゃいました。わたくしもそれを見習って、立派な統治者となれるように勉強していきたいと思っています」
真面目なソフィアの言葉に、両親も納得したのが小さく頷いていた。
ディアン伯爵家の家族は、翌日、領地に帰って行ったが、ロセル侯爵家から正式な婚約の申し込みがすぐに届いたということをわたくしはアレクサンテリ陛下から聞いた。
「ずっと婚約も結婚も拒んでいたシリルが、やっと婚約する気になったのだ。ロセル侯爵家は歓迎してすぐに動いたようだね」
「シリル様は真剣にソフィアのことを想ってくださっているようでしたが、ソフィアはまだ気持ちがないようで、わたくしは少し心配です」
「レイシーも最初のころはわたしを愛してはいなかったよね。婚約してから始まる愛というのもあると思うのだよ、わたしたちのように」
「それはそうですが……」
シリル様とソフィアの気持ちが釣り合うのはいつなのか。
わたくしは気にしていた。
ロセル侯爵家はシリル様とソフィアの婚約を早く成立させたいようで、学園が冬休みの間に婚約式をすると言っているようだ。ソフィアの衣装の準備も間に合っていないだろうし、シリル様も準備ができているのか怪しい。
冬休みは残り二週間ほどしかない。
これではソフィアの衣装は誂えられないだろう。
「婚約を急ぐのはいいのですが、ソフィアが婚約式の衣装を揃えられなかったら、恥をかくのではないかと思っています」
「いや、ディアン伯爵家は間に合わせるのではないかな」
「間に合いますか?」
「ディアン伯爵家の領地には人形やぬいぐるみやその衣装を作ることが中心だが、優秀なお針子はたくさんいるのではないか」
言われてみればそうだった。
たくさん入っている注文で追われているが、今は非常事態なのである。工場で働くお針子たちが力を合わせれば、一週間ほどでソフィアの婚約式の衣装が作れるかもしれない。
「わたくしも、何かできないでしょうか」
「レイシーはソフィアに花冠を作ってあげたらどうかな?」
「花冠! それはいいですね!」
わたくしは婚約式のときにアレクサンテリ陛下がラヴァル夫人に依頼して選んでもらった花冠を着けて出席した。ソフィアの衣装が分かれば、それに合わせた花冠を作れるかもしれない。
わたくしはすぐにディアン伯爵家に連絡をして、ソフィアの婚約衣装のデザイン画を送ってもらった。
それに合わせて花冠を作る。
ソフィアは金髪に菫色の瞳で、シリル様は焦げ茶色の髪に青い目だから、白い薔薇に薄紫と薄い青の薔薇を混ぜた花冠を作ることにした。
花冠を作ることはディアン伯爵家にも伝えて、婚約式当日にわたくしが持って行くとも伝えた。
婚約式はロセル侯爵家の要望で、帝都のロセル侯爵家のタウンハウスで行われることになっていた。
アレクサンテリ陛下は自分の側近の婚約式であり、わたくしの妹の婚約式でもあるので、出席してくださると仰っている。わたくしも当然出席するつもりだった。
皇帝陛下であるアレクサンテリ陛下と妃候補であるわたくしが出席するので、場所がロセル侯爵家のタウンハウスになったのは間違いなかった。
一週間で花冠を作り上げるのはかなり大変だった。
新年の休暇も終わって、わたくしは妃教育が再開されていたし、毎日一時間以上は音楽の練習もしなければいけない。その合間を探して、必死に花冠を作ること一週間。
なんとかわたくしは花冠を作り上げていた。
ソフィアとシリル様の婚約式に、わたくしとアレクサンテリ陛下は馬車で向かった。
帝都のお屋敷を訪ねるのは、カイエタン宰相閣下のお屋敷で開かれたお茶会以来だったので、緊張したが、護衛がしっかりと守ってくれていたので何の問題もなく辿り着けた。
ロセル侯爵家のタウンハウスは大きく、広かった。
大広間で開かれる婚約式が始まる前に、わたくしはソフィアのところに行って、花冠を手渡した。
「お姉様、ありがとうございます」
「ソフィア、幸せになるのですよ」
「わたくしは、お姉様が皇帝陛下を愛していて、皇帝陛下もお姉様のことを愛していると聞いてから、少しだけお二人に憧れていました。両親も愛し合って結婚をしたし、わたくしもそうなりたいと思っていました」
「ソフィアはシリル様を愛せそうですか?」
「今はまだ分かりません。でも、そうなれたらいいと思います」
ソフィアもシリル様との関係に前向きな気持ちになれているようだった。
それならば、わたくしはソフィアを応援する以外の選択肢はない。
「ソフィア、婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます、お姉様。わたくしもお姉様と皇帝陛下、そして、両親のような夫婦を目指します」
「わたくし、まだ結婚していませんけどね」
「もうすぐ結婚されるではないですか」
わたくしが茶化すと、ソフィアが笑顔を見せる。
緊張していたようだったので、ソフィアの笑顔が見られてわたくしは安心した。
白いドレスを着ているソフィアを抱き締める。
「ソフィア、あなたはわたくしの最愛の妹。何かあったらわたくしに相談してくださいね」
「はい、お姉様。わたくしもお姉様が大好きです」
姉妹揃って十歳年上の男性と婚約することになったが、愛の前では年の差はあまり関係ないのかもしれない。
その日、わたくしの妹、ソフィアはロセル侯爵家のシリル様と婚約した。
アレクサンテリ陛下はわたくしの両親に今日のことを説明していた。
「わたしの幼馴染でもあり、側近でもある、シリル・ロセルがソフィアと婚約を結びたいと言っているのだ。シリルのことは幼いころから知っているが、真面目で優秀な男だと思っている」
「シリル様といいますと、ロセル侯爵家の次男ですよね?」
「侯爵家のご令息で、皇帝陛下の側近の方が、ディアン伯爵家に婿入りしてくれるというのですか?」
「シリルはそのつもりのようだ。わたしもそのことを認めるつもりであるし、ロセル侯爵家も反対しないだろう」
アレクサンテリ陛下の言葉に両親は驚きを隠せない様子だったが、それも仕方がないことだろう。ディアン伯爵家は昨日までは子爵家だったのだ。貧乏で使用人も最低限の慎ましい暮らしをしていて、人形やぬいぐるみの事業でやっと領地が立て直ってきたが、田舎の貧しい貴族ということには変わりがなかった。
そこに帝都で活躍している皇帝陛下の側近で、皇帝陛下の幼馴染でもある侯爵家の次男が婿入りしたいと言ってきたのである。驚くだろうし、訝しく思ってもおかしくはなかった。
「シリルは真剣にソフィアのことを想っているようだ。ソフィアも今日シリルとお茶会をして、シリルの印象が変わったようだ。そうだね、ソフィア?」
「わたくしの外見に惹かれて来たのかと思っていましたが、そうではないということは分かりました。このお話はディアン伯爵家にとってはとてもいいお話です。シリル様もディアン伯爵家に来る覚悟があると仰いました」
あくまでも冷静に答えるソフィアに、両親はまだ落ち着かない様子である。
「侯爵家のご令息で、帝都に住んでいらっしゃる方が、ディアン伯爵家で暮らせるだろうか?」
「わたくしたちの家は屋敷と呼ぶには狭く質素ですからね」
「それも覚悟の上だと思います。そうでなくても、慣れていただきます」
結婚するのだからディアン伯爵家に慣れてもらうというソフィアの言葉ははっきりとしていた。ソフィアが甘い感情でシリル様を受け入れるつもりはなくて、どこまでも共に領地を治めるパートナーとして考えているのがよく分かる。
シリル様の方はソフィアに気持ちがあるのだから、婚約してからソフィアの気持ちが変わってくるかもしれない。それはシリル様次第だし、ソフィア次第でもあった。
「わたくしに今できることは、学園を首席で卒業することです。お姉様は学園の首席をずっと保っていらっしゃいました。わたくしもそれを見習って、立派な統治者となれるように勉強していきたいと思っています」
真面目なソフィアの言葉に、両親も納得したのが小さく頷いていた。
ディアン伯爵家の家族は、翌日、領地に帰って行ったが、ロセル侯爵家から正式な婚約の申し込みがすぐに届いたということをわたくしはアレクサンテリ陛下から聞いた。
「ずっと婚約も結婚も拒んでいたシリルが、やっと婚約する気になったのだ。ロセル侯爵家は歓迎してすぐに動いたようだね」
「シリル様は真剣にソフィアのことを想ってくださっているようでしたが、ソフィアはまだ気持ちがないようで、わたくしは少し心配です」
「レイシーも最初のころはわたしを愛してはいなかったよね。婚約してから始まる愛というのもあると思うのだよ、わたしたちのように」
「それはそうですが……」
シリル様とソフィアの気持ちが釣り合うのはいつなのか。
わたくしは気にしていた。
ロセル侯爵家はシリル様とソフィアの婚約を早く成立させたいようで、学園が冬休みの間に婚約式をすると言っているようだ。ソフィアの衣装の準備も間に合っていないだろうし、シリル様も準備ができているのか怪しい。
冬休みは残り二週間ほどしかない。
これではソフィアの衣装は誂えられないだろう。
「婚約を急ぐのはいいのですが、ソフィアが婚約式の衣装を揃えられなかったら、恥をかくのではないかと思っています」
「いや、ディアン伯爵家は間に合わせるのではないかな」
「間に合いますか?」
「ディアン伯爵家の領地には人形やぬいぐるみやその衣装を作ることが中心だが、優秀なお針子はたくさんいるのではないか」
言われてみればそうだった。
たくさん入っている注文で追われているが、今は非常事態なのである。工場で働くお針子たちが力を合わせれば、一週間ほどでソフィアの婚約式の衣装が作れるかもしれない。
「わたくしも、何かできないでしょうか」
「レイシーはソフィアに花冠を作ってあげたらどうかな?」
「花冠! それはいいですね!」
わたくしは婚約式のときにアレクサンテリ陛下がラヴァル夫人に依頼して選んでもらった花冠を着けて出席した。ソフィアの衣装が分かれば、それに合わせた花冠を作れるかもしれない。
わたくしはすぐにディアン伯爵家に連絡をして、ソフィアの婚約衣装のデザイン画を送ってもらった。
それに合わせて花冠を作る。
ソフィアは金髪に菫色の瞳で、シリル様は焦げ茶色の髪に青い目だから、白い薔薇に薄紫と薄い青の薔薇を混ぜた花冠を作ることにした。
花冠を作ることはディアン伯爵家にも伝えて、婚約式当日にわたくしが持って行くとも伝えた。
婚約式はロセル侯爵家の要望で、帝都のロセル侯爵家のタウンハウスで行われることになっていた。
アレクサンテリ陛下は自分の側近の婚約式であり、わたくしの妹の婚約式でもあるので、出席してくださると仰っている。わたくしも当然出席するつもりだった。
皇帝陛下であるアレクサンテリ陛下と妃候補であるわたくしが出席するので、場所がロセル侯爵家のタウンハウスになったのは間違いなかった。
一週間で花冠を作り上げるのはかなり大変だった。
新年の休暇も終わって、わたくしは妃教育が再開されていたし、毎日一時間以上は音楽の練習もしなければいけない。その合間を探して、必死に花冠を作ること一週間。
なんとかわたくしは花冠を作り上げていた。
ソフィアとシリル様の婚約式に、わたくしとアレクサンテリ陛下は馬車で向かった。
帝都のお屋敷を訪ねるのは、カイエタン宰相閣下のお屋敷で開かれたお茶会以来だったので、緊張したが、護衛がしっかりと守ってくれていたので何の問題もなく辿り着けた。
ロセル侯爵家のタウンハウスは大きく、広かった。
大広間で開かれる婚約式が始まる前に、わたくしはソフィアのところに行って、花冠を手渡した。
「お姉様、ありがとうございます」
「ソフィア、幸せになるのですよ」
「わたくしは、お姉様が皇帝陛下を愛していて、皇帝陛下もお姉様のことを愛していると聞いてから、少しだけお二人に憧れていました。両親も愛し合って結婚をしたし、わたくしもそうなりたいと思っていました」
「ソフィアはシリル様を愛せそうですか?」
「今はまだ分かりません。でも、そうなれたらいいと思います」
ソフィアもシリル様との関係に前向きな気持ちになれているようだった。
それならば、わたくしはソフィアを応援する以外の選択肢はない。
「ソフィア、婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます、お姉様。わたくしもお姉様と皇帝陛下、そして、両親のような夫婦を目指します」
「わたくし、まだ結婚していませんけどね」
「もうすぐ結婚されるではないですか」
わたくしが茶化すと、ソフィアが笑顔を見せる。
緊張していたようだったので、ソフィアの笑顔が見られてわたくしは安心した。
白いドレスを着ているソフィアを抱き締める。
「ソフィア、あなたはわたくしの最愛の妹。何かあったらわたくしに相談してくださいね」
「はい、お姉様。わたくしもお姉様が大好きです」
姉妹揃って十歳年上の男性と婚約することになったが、愛の前では年の差はあまり関係ないのかもしれない。
その日、わたくしの妹、ソフィアはロセル侯爵家のシリル様と婚約した。
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