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一章 龍王は王配と出会う
22.ヨシュアの秘密
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目を覚ましたときには龍王はヨシュアの隣りで眠っていなかった。
長椅子に腰かけて目を閉じている龍王の周囲に水の精霊が集まり、領地に向けて広がっていくのをヨシュアは感じる。
視察のときにも一度見ていたが、龍王の水の加護を発現させるときに集まってくる水の精霊の数は尋常ではなかった。
大陸一の魔術師のヨシュアであろうとも、これだけの水の精霊を操ることはできない。
龍族とはやはり特別な存在なのだと改めて感じる。
目を開けた龍王はヨシュアが起きているのを見て驚いていたようだった。
昨夜は龍王の言葉に負けてヨシュアは龍王と同じ寝台で寝た。
龍王と王配が男性で、王配であるヨシュアは体格のいい方なので広い寝台を用意されていたが、二人で眠ると肩が触れそうになる場面は何度もあった。それでも龍王はヨシュアに何もしかけて来なくて、ヨシュアも警戒していたが結局眠ってしまった。
龍王の方はほとんど眠れなかったのであろう、目の下に隈ができていた。
眠そうにしている龍王を休ませたかったが、早朝から領地の変化に気付いた領主に呼ばれて、礼を言われて、そのまま朝食も広間で食べるようになってしまって、ヨシュアも龍王も落ち着かなかった。
馬車に乗ってハタッカ王国との国境の町を出るときに、ヨシュアは龍王に馬車の中の寝台で休むように促した。
「少し休まれた方がいいでしょう。昨夜は眠れなかったのでしょう?」
「ヨシュア殿が隣りにいると思うと、落ち着かなくて……」
「やはり、わたしは長椅子で休んだ方がよかったですね」
「どうして? わたしは嬉しかったのですよ」
国境付近の道となると舗装されていない土を踏み固めた道で、馬車はガタゴトと揺れる。
ヨシュアは龍王に今こそ打ち明けるべきかと考えていた。
ヨシュアが龍王に愛されても愛し返すことのできない理由。
それはこれが政略結婚だというだけではなかった。
龍王からの好意に関してはヨシュアも嫌ではなかったし、龍王の孤独を思えばヨシュアのようにそばにいて心を砕いてくれるものに心揺れる気持ちは分からなくもない。
ヨシュアもまた別の孤独を胸に抱えているのだから。
次に行くのはラバン王国の国境に接する町だ。
そこではラバン王国の国王であるマシューや姪のレイチェルたちもヨシュアと龍王に会いに来る。
龍王がヨシュアの暮らす青陵殿に足しげく通い、夜も共に過ごしていることは志龍王国全土だけでなく、周辺諸国にも誤解を振り撒きながら広がっていることだろう。
龍王はたった一人の王配を寵愛している。
その噂が真実かマシューに確かめられたときに、ヨシュアはまだ龍王に自分の秘密も明かしていないというのは言いにくかった。
「龍王陛下は、三百年のときをわたしと過ごしてくださると仰いましたね」
「わたしの寿命がどれくらいかは分からないが、ヨシュア殿も魔術師として血の濃い方ではあるし、わたしも龍族として血の濃い王族である。三百年くらいは共に過ごせるのではないかと思ったのですが」
「龍族は、生涯に一度だけ、伴侶に自分と同じだけの寿命を与えることができると聞いています」
龍族が寿命の長さの違うものを伴侶に迎えた場合には、生まれたときに握っているという玉をそのものに与えて、寿命を同じくするという話は有名だった。
その話があったからこそ、ラバン王国国王のマシューは王弟であるヨシュアを志龍王国の龍王のもとに嫁がせたのだ。
「もしや、ヨシュア殿はそれほど長くは生きないというのですか? それならば、わたしはあなたにわたしが生まれて来たときに握っていたとされる玉をお渡ししても構いません」
前龍王と王妃は同じ龍族の王族だったために、玉を渡して寿命を同じくするようなことはなかったが、龍王はヨシュアの寿命が自分よりも短いのであれば玉を渡して同じ寿命にすることも厭わないと告げてくる。
愛していると、何度もヨシュアに言ってきた龍王ならばそうすることを躊躇わないであろうことは、ヨシュアにも容易に予想が付いていた。
「玉を受け取ったものは、龍族の亡くなるときに共に命を落とすとも聞きました」
「寿命が同じになるのですから、生きるのも死ぬのも一緒です。ヨシュア殿が願うのならば、王都に帰り次第……いいえ、新婚旅行を中断して玉を取りに帰っても構わない。わたしはヨシュア殿を失ってから生きる時間など考えたくもないのです」
龍王がこれだけヨシュアにのめり込む意味がヨシュアにはよく分かっていなかった。
まだヨシュアは龍王に愛を告げたわけでもないし、体を許したわけでもない。
それなのに、龍王はヨシュアをたった一人の伴侶として見ている。
「取り返しはつかないのですよ。わたしに玉を捧げてしまったら、龍王陛下とわたしは寿命を同じくすることになる。他に捧げたい相手ができても捧げることはできなくなってしまう」
「他に捧げたい相手ができるはずがありません。わたしはヨシュア殿以外の配偶者を持つつもりはない。わたしはあなたを愛しているのですから」
はっきりとヨシュアの鮮やかに青い目を見詰めて告げる黒く輝く目に、ヨシュアは長くため息をついた。
ラバン王国との国境の町に着く前には、秘密を明かさねばならない。
「わたしは、千年を超して生きると言われています。もしかすると、何千年単位なのかもしれない」
「どういうことですか?」
短命ではなく逆に長命だということを明かせば、龍王が明らかに戸惑っているのが分かる。
何千年も生きるものなど、龍族においても今までいなかったのだろう。
「わたしは先祖返りの妖精です。龍王陛下だけでなく、乳兄弟のネイサン以外に肌を見せなかったのはそのせいです。わたしの背中には、妖精の薄翅があります」
普段は畳んでいるが、広げれば空も飛べる光でできた薄翅がヨシュアの背中にはある。
ヨシュアがラバン王国で結婚しなかったのも、必ず相手より長く生きて、相手を看取らねばならないと分かっていたからだ。
「玉を渡されたら、龍王陛下はわたしと同じときを生きることになります。わたしとただ二人、いつ尽きるともしれない何千年の孤独を共にできますか?」
ただでさえ寂しがり屋で、臆病で、王族とも思えないような人物だ。
人知を超えるような時間をヨシュアと共に生きてほしいというのは、あまりにも勝手な物言いだった。
「あなたは、それを知ったときに、孤独に苛まれなかったのですか?」
黒い目でヨシュアを見詰めてくる龍王の表情には、驚きはあったが、嫌悪感や拒絶は感じ取れなかった。
「わたしはラバン王国にいれば、両親だけでなく、兄も姪も、その子孫たちからも置いて行かれる。兄はそのことを心配して、わたしを志龍王国に送り出してくれたのです」
せめて自分たちを看取らせることのないように、マシューはヨシュアをラバン王国から送り出した。龍族の寿命を分ける玉の話は知っていたので、ヨシュアが龍王から玉を渡されて、龍王と同じ寿命になればいいと思ったのかもしれないが、妖精の血はそれほど甘くないことをヨシュアは感じていた。
恐らくは、ヨシュアを龍王の寿命に合わせるのではなくて、龍王の方をヨシュアの寿命に合わせてしまう気しかしない。
そうなれば、千年を超え、下手をすれば何千年もの時間を龍王とヨシュアは共に生きることになる。
「あなたがあれだけ頑なだった理由が分かった気がします。あなたはわたしを愛してしまえば、必ず置いていく、それが怖かったのですね」
龍王がどれだけ長く生きたとしても五百年。その後はヨシュアは龍王を見送って、志龍王国の繁栄を見守りながら、一人で生きていかなければいけない。
それを思えば最初から愛さないつもりで、政略結婚と割り切って、志龍王国を守る守護神にでもなれればいいと思っていたのだ。
「龍王陛下は、王女殿下も、その子孫も、前王妃殿下も、みなに置いて行かれる覚悟などできないでしょう。ですので、わたしは、龍王陛下のお気持ちを受け取ることはできません」
「龍王位を三百年務めたら、次の龍王に龍王位を譲って、ヨシュア殿と旅に出ましょう。ヨシュア殿とわたしを誰も知らない場所に行くのです。そこで時間が過ぎれば、また別の場所に移ればいい。命が尽きるまで、志龍王国に縛られておくことはないのです。ヨシュア殿と一緒ならば、旅も楽しいことでしょう」
「楽観的に仰いますが、千年、それ以上の時間をただ二人で生きるということの意味を分かっていらっしゃいますか?」
明るく告げる龍王ににじり寄って問い詰めれば、龍王は黒い目を細めて、少し寂しそうに微笑んだ。
「きっと、胸が張り裂けるようにつらいでしょうね。でも、あなた一人を残して死ぬよりも、わたしはあなたと生きる未来を選びたい。ヨシュア、わたしのそばにいてください。そうすれば、わたしは何も怖くはない」
「もっと慎重にお考えになることをお勧めします」
「わたしはきちんと考えました。わたしを長い人生に連れて行くことを恐れているのは、あなたの方ではないのですか?」
真っすぐな龍王の言葉がヨシュアの胸に刺さる。
黙ってしまったヨシュアの手を握り、龍王は辛抱強く言い続けた。
「ヨシュア、あなたのいない人生など、わたしには意味がないのです。あなたが嫁いできてくださってから、わたしの人生が始まったような気すらします。わたしが龍族として生まれたのも、あなたが先祖返りの妖精として生まれたのも、全てが運命だったのではないかと思っています。ヨシュア、あなたの孤独をわたしにも半分背負わせてください」
これまで孤独に震えていたのは龍王のはずだったのに、ヨシュアの方が龍王に慰められている。
秘密を打ち明けられなかったのも、龍王の愛を受け取ることができなかったのも、ヨシュアが自分に与えられた気の遠くなるような時間に怯えていたからかもしれない。
握られた龍王の手は確かに温かかった。
長椅子に腰かけて目を閉じている龍王の周囲に水の精霊が集まり、領地に向けて広がっていくのをヨシュアは感じる。
視察のときにも一度見ていたが、龍王の水の加護を発現させるときに集まってくる水の精霊の数は尋常ではなかった。
大陸一の魔術師のヨシュアであろうとも、これだけの水の精霊を操ることはできない。
龍族とはやはり特別な存在なのだと改めて感じる。
目を開けた龍王はヨシュアが起きているのを見て驚いていたようだった。
昨夜は龍王の言葉に負けてヨシュアは龍王と同じ寝台で寝た。
龍王と王配が男性で、王配であるヨシュアは体格のいい方なので広い寝台を用意されていたが、二人で眠ると肩が触れそうになる場面は何度もあった。それでも龍王はヨシュアに何もしかけて来なくて、ヨシュアも警戒していたが結局眠ってしまった。
龍王の方はほとんど眠れなかったのであろう、目の下に隈ができていた。
眠そうにしている龍王を休ませたかったが、早朝から領地の変化に気付いた領主に呼ばれて、礼を言われて、そのまま朝食も広間で食べるようになってしまって、ヨシュアも龍王も落ち着かなかった。
馬車に乗ってハタッカ王国との国境の町を出るときに、ヨシュアは龍王に馬車の中の寝台で休むように促した。
「少し休まれた方がいいでしょう。昨夜は眠れなかったのでしょう?」
「ヨシュア殿が隣りにいると思うと、落ち着かなくて……」
「やはり、わたしは長椅子で休んだ方がよかったですね」
「どうして? わたしは嬉しかったのですよ」
国境付近の道となると舗装されていない土を踏み固めた道で、馬車はガタゴトと揺れる。
ヨシュアは龍王に今こそ打ち明けるべきかと考えていた。
ヨシュアが龍王に愛されても愛し返すことのできない理由。
それはこれが政略結婚だというだけではなかった。
龍王からの好意に関してはヨシュアも嫌ではなかったし、龍王の孤独を思えばヨシュアのようにそばにいて心を砕いてくれるものに心揺れる気持ちは分からなくもない。
ヨシュアもまた別の孤独を胸に抱えているのだから。
次に行くのはラバン王国の国境に接する町だ。
そこではラバン王国の国王であるマシューや姪のレイチェルたちもヨシュアと龍王に会いに来る。
龍王がヨシュアの暮らす青陵殿に足しげく通い、夜も共に過ごしていることは志龍王国全土だけでなく、周辺諸国にも誤解を振り撒きながら広がっていることだろう。
龍王はたった一人の王配を寵愛している。
その噂が真実かマシューに確かめられたときに、ヨシュアはまだ龍王に自分の秘密も明かしていないというのは言いにくかった。
「龍王陛下は、三百年のときをわたしと過ごしてくださると仰いましたね」
「わたしの寿命がどれくらいかは分からないが、ヨシュア殿も魔術師として血の濃い方ではあるし、わたしも龍族として血の濃い王族である。三百年くらいは共に過ごせるのではないかと思ったのですが」
「龍族は、生涯に一度だけ、伴侶に自分と同じだけの寿命を与えることができると聞いています」
龍族が寿命の長さの違うものを伴侶に迎えた場合には、生まれたときに握っているという玉をそのものに与えて、寿命を同じくするという話は有名だった。
その話があったからこそ、ラバン王国国王のマシューは王弟であるヨシュアを志龍王国の龍王のもとに嫁がせたのだ。
「もしや、ヨシュア殿はそれほど長くは生きないというのですか? それならば、わたしはあなたにわたしが生まれて来たときに握っていたとされる玉をお渡ししても構いません」
前龍王と王妃は同じ龍族の王族だったために、玉を渡して寿命を同じくするようなことはなかったが、龍王はヨシュアの寿命が自分よりも短いのであれば玉を渡して同じ寿命にすることも厭わないと告げてくる。
愛していると、何度もヨシュアに言ってきた龍王ならばそうすることを躊躇わないであろうことは、ヨシュアにも容易に予想が付いていた。
「玉を受け取ったものは、龍族の亡くなるときに共に命を落とすとも聞きました」
「寿命が同じになるのですから、生きるのも死ぬのも一緒です。ヨシュア殿が願うのならば、王都に帰り次第……いいえ、新婚旅行を中断して玉を取りに帰っても構わない。わたしはヨシュア殿を失ってから生きる時間など考えたくもないのです」
龍王がこれだけヨシュアにのめり込む意味がヨシュアにはよく分かっていなかった。
まだヨシュアは龍王に愛を告げたわけでもないし、体を許したわけでもない。
それなのに、龍王はヨシュアをたった一人の伴侶として見ている。
「取り返しはつかないのですよ。わたしに玉を捧げてしまったら、龍王陛下とわたしは寿命を同じくすることになる。他に捧げたい相手ができても捧げることはできなくなってしまう」
「他に捧げたい相手ができるはずがありません。わたしはヨシュア殿以外の配偶者を持つつもりはない。わたしはあなたを愛しているのですから」
はっきりとヨシュアの鮮やかに青い目を見詰めて告げる黒く輝く目に、ヨシュアは長くため息をついた。
ラバン王国との国境の町に着く前には、秘密を明かさねばならない。
「わたしは、千年を超して生きると言われています。もしかすると、何千年単位なのかもしれない」
「どういうことですか?」
短命ではなく逆に長命だということを明かせば、龍王が明らかに戸惑っているのが分かる。
何千年も生きるものなど、龍族においても今までいなかったのだろう。
「わたしは先祖返りの妖精です。龍王陛下だけでなく、乳兄弟のネイサン以外に肌を見せなかったのはそのせいです。わたしの背中には、妖精の薄翅があります」
普段は畳んでいるが、広げれば空も飛べる光でできた薄翅がヨシュアの背中にはある。
ヨシュアがラバン王国で結婚しなかったのも、必ず相手より長く生きて、相手を看取らねばならないと分かっていたからだ。
「玉を渡されたら、龍王陛下はわたしと同じときを生きることになります。わたしとただ二人、いつ尽きるともしれない何千年の孤独を共にできますか?」
ただでさえ寂しがり屋で、臆病で、王族とも思えないような人物だ。
人知を超えるような時間をヨシュアと共に生きてほしいというのは、あまりにも勝手な物言いだった。
「あなたは、それを知ったときに、孤独に苛まれなかったのですか?」
黒い目でヨシュアを見詰めてくる龍王の表情には、驚きはあったが、嫌悪感や拒絶は感じ取れなかった。
「わたしはラバン王国にいれば、両親だけでなく、兄も姪も、その子孫たちからも置いて行かれる。兄はそのことを心配して、わたしを志龍王国に送り出してくれたのです」
せめて自分たちを看取らせることのないように、マシューはヨシュアをラバン王国から送り出した。龍族の寿命を分ける玉の話は知っていたので、ヨシュアが龍王から玉を渡されて、龍王と同じ寿命になればいいと思ったのかもしれないが、妖精の血はそれほど甘くないことをヨシュアは感じていた。
恐らくは、ヨシュアを龍王の寿命に合わせるのではなくて、龍王の方をヨシュアの寿命に合わせてしまう気しかしない。
そうなれば、千年を超え、下手をすれば何千年もの時間を龍王とヨシュアは共に生きることになる。
「あなたがあれだけ頑なだった理由が分かった気がします。あなたはわたしを愛してしまえば、必ず置いていく、それが怖かったのですね」
龍王がどれだけ長く生きたとしても五百年。その後はヨシュアは龍王を見送って、志龍王国の繁栄を見守りながら、一人で生きていかなければいけない。
それを思えば最初から愛さないつもりで、政略結婚と割り切って、志龍王国を守る守護神にでもなれればいいと思っていたのだ。
「龍王陛下は、王女殿下も、その子孫も、前王妃殿下も、みなに置いて行かれる覚悟などできないでしょう。ですので、わたしは、龍王陛下のお気持ちを受け取ることはできません」
「龍王位を三百年務めたら、次の龍王に龍王位を譲って、ヨシュア殿と旅に出ましょう。ヨシュア殿とわたしを誰も知らない場所に行くのです。そこで時間が過ぎれば、また別の場所に移ればいい。命が尽きるまで、志龍王国に縛られておくことはないのです。ヨシュア殿と一緒ならば、旅も楽しいことでしょう」
「楽観的に仰いますが、千年、それ以上の時間をただ二人で生きるということの意味を分かっていらっしゃいますか?」
明るく告げる龍王ににじり寄って問い詰めれば、龍王は黒い目を細めて、少し寂しそうに微笑んだ。
「きっと、胸が張り裂けるようにつらいでしょうね。でも、あなた一人を残して死ぬよりも、わたしはあなたと生きる未来を選びたい。ヨシュア、わたしのそばにいてください。そうすれば、わたしは何も怖くはない」
「もっと慎重にお考えになることをお勧めします」
「わたしはきちんと考えました。わたしを長い人生に連れて行くことを恐れているのは、あなたの方ではないのですか?」
真っすぐな龍王の言葉がヨシュアの胸に刺さる。
黙ってしまったヨシュアの手を握り、龍王は辛抱強く言い続けた。
「ヨシュア、あなたのいない人生など、わたしには意味がないのです。あなたが嫁いできてくださってから、わたしの人生が始まったような気すらします。わたしが龍族として生まれたのも、あなたが先祖返りの妖精として生まれたのも、全てが運命だったのではないかと思っています。ヨシュア、あなたの孤独をわたしにも半分背負わせてください」
これまで孤独に震えていたのは龍王のはずだったのに、ヨシュアの方が龍王に慰められている。
秘密を打ち明けられなかったのも、龍王の愛を受け取ることができなかったのも、ヨシュアが自分に与えられた気の遠くなるような時間に怯えていたからかもしれない。
握られた龍王の手は確かに温かかった。
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