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九章 オクサラ辺境伯とヴァンニ家の動向
27.困惑の告白
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わたくしは今、困惑している。
「アイラ・ラント様、君は本当の愛をまだ知らないだけなんだ」
研究課程の医学の授業で同じ授業になった男性に引き留められて、廊下で目の前で演説されているのだ。
「八歳も年下の婚約者を宛がわれて、君は幼い頃からそれ以外の選択肢を与えられなかった。本当は燃えるような恋をしたい、命を懸けるような恋をしたい。そう思っているのだろう。私には分かる。言わなくても分かっているのだよ」
全く意味が分からない。
わたくしとマウリ様の婚約は最初はマウリ様が小さくて自分の意志はなかったかもしれないけれど、今は成長してわたくしと結婚する日を指折り数えて待っていてくれる。泣き虫で臆病だけれど、大事なときには必ずわたくしを守ってくれて、わたくしの一番傍にいてくれるマウリ様を、わたくしはとても頼りにしていた。
「わたくしとマウリ様との関係はあなたが想像しているようなものではありません。そもそも、わたくしとマウリ様との婚約は公爵家同士が取り交わしたもの。破棄するという選択肢はありません」
酷く冷ややかな声がわたくしの口から出てしまったような気がするが、それも仕方がないことだろう。目の前の男性は勘違いをしているのだ。わたくしを不幸だと思っているのならばそれは大間違いというものだ。
「建前としてそう言わなくてはいけないのだね、分かっているよ。私なら、君に身を焦がすような恋をさせてみせることができる。私に身を委ねるだけでいい」
「お話にならないようなので失礼します」
全くわたくしの話を聞いていないその男性に怒りを覚えつつ、わたくしはその場を立ち去った。研究課程で勉強した後はヘルレヴィ家にイルミ様が来る日だった。イルミ様はトゥーレ様が清貧をモットーとする厳しい修行をする王都の神殿に修行に行ったので、その話をしてくださるために来たのだ。
「トゥーレ様は神殿で周囲に馴染んで溶け込んでいるようです。手紙には、アルベルト様は規則を破ってばかりで、脱走しようとして罰を受けて一日食事を抜かれたと書かれていました」
「全く反省していないのですね」
「麻の生成りの神官衣しか与えられず、髪も剃って、毎日自分たちの食べる食材を庭で育てる日々ですからね。甘やかされてきたアルベルト様には耐えられないのでしょう」
「畑仕事もやってみると楽しいのですがね」
毒を盛られたスティーナ様を助けるために、わたくしは11歳から畑仕事を始めた。マウリ様やミルヴァ様はまだ3歳だった。その頃から土と親しんでいるわたくしにとっては、早朝に起きて畑仕事をするのも全く苦ではなかった。
「全ての統治者がアイラ様のようだったらいいのに」
「わたくしのよう、ですか?」
「自ら経験したことを人間は重視します。アイラ様は畑仕事をして、医学も学んでいらっしゃる。わたくしも研究課程で勉強していましたが、学ぶことの大事さを実感しました」
イルミ様は高等学校を卒業した年には研究課程に入れなかったので、一年遅れて研究課程に入学している。わたくしの二学年上だから、もう卒業式が終わって卒業した頃だろう。
「そういえば、イルミ様は生徒に絡まれたことがありますか?」
「どういう方でしたか?」
問いかけられてわたくしは絡んで来た男性を思い出そうとするけれど、言動の印象が強すぎて姿の印象がほとんどないことに気付く。確か茶色の髪だったような気がするけれど、顔はほとんど覚えていない。
「恋について語って来たのです」
「あ! わたくしも絡まれたことがあります。情熱的な恋をしたくないか、と」
「それ! それです!」
どうやら同一人物にイルミ様も絡まれていたようだった。
「あの方はたくさんの女性……特に地位のある女性に声をかけているようなのです」
イルミ様はアンティラ家の当主で、わたくしはラント家の娘でヘルレヴィ家の次期当主の婚約者。地位が欲しくて女性に手当たり次第に声をかけているというのは許せない気がする。
「顔がいいので、騙される女性もいるとか……」
「顔!? よかったのですか!?」
「わたくしも、顔のことは全然見ていなくて」
驚いてしまったが、イルミ様もわたくしと同じで、絡んで来た男性が気持ち悪いだけで顔のことは全く見ていなかったようだ。男性は伯爵家の子息のようだが、家を継げないので地位のある女性に片っ端から声をかけて自分のものにしようと考えているようだった。
「入学したときはわたくしと同学年だったのですが、今はアイラ様と同学年なのですね」
「え? 留年しているのですか?」
研究課程の授業は決して生温いものではない。勉強をしなければ簡単に単位を落としてしまう。二年生までは進級できたようだが、その後その男性は二年も留年しているという事実が分かってしまった。
これからもその男性に絡まれることがあると思うと研究課程に行くのが嫌になりそうでわたくしはため息が出る。
「アイラ様、マウリ様をその方と会わせるのはどうですか?」
「マウリ様をですか?」
「本当に品格のあるヘルレヴィ家の後継者を前にしたら、その方も黙ると思います」
イルミ様がマウリ様を高く評価してくれているのは嬉しいのだが、わたくしはマウリ様が年齢のことや、まだ成長しきっていないことで嫌なことを言われないか気になっていた。
「マウリ様が傷付かなければいいのですが」
「アイラ様はマウリ様を信じて頼っていいと思います」
そう言われてわたくしはマウリ様に相談してみることにした。
イルミ様が帰ってから、わたくしは勉強の休憩をしていたマウリ様の隣りのソファに腰かける。イルミ様と紅茶を飲んでいたので、もう紅茶は飲みたい気分ではなかったが、わたくしが座ると使用人さんは紅茶のカップを持ってきてくれた。
ソーサーに乗ったティーカップを手に取って、なかなか話し出せないでいるわたくしに、マウリ様が蜂蜜色のお目目でじっとわたくしを見詰める。
「アイラ様、心配事?」
「実は、わたくし、研究課程で変な男性に絡まれたのです。イルミ様も過去に絡まれたようです」
「え!? アイラ様、無事だった?」
「無視して去ったので無事でしたが、その方はわたくしを口説こうとしているようで」
口説こうとしている。
その言葉がわたくしの口から出た瞬間、マウリ様の眉がきりりと吊り上がる。
「アイラ様に迷惑をかけるだけじゃなくて、口説くだなんて、許せない」
「同じ授業を履修している方のようなのですよ」
「アイラ様はラント家の御令嬢で、私の婚約者。アイラ様に軽々しく声をかけるのは、ヘルレヴィ家のことも、私のことも馬鹿にしている!」
凛々しく言うマウリ様にわたくしは驚いてしまう。
マウリ様はわたくしに向き直った。
「アイラ様の邪魔をする奴を、私が成敗してあげる。研究課程に連れて行って!」
通常ならば研究課程の生徒でもないマウリ様を研究課程に連れて行くのは躊躇われることだが、ヘルレヴィ家の沽券に関わってくるとなると話は別だ。ヘルレヴィ家の婚約者であるわたくしを口説くということは、ヘルレヴィ家の次期後継者であるマウリ様を侮辱していることにもなるのだとはっきりとその人物に知らしめなければいけない。
わたくしはマウリ様を研究課程に連れて行くことを決めた。
夏休みの近い初夏の日、わたくしは研究課程にマウリ様と一緒に登校した。マウリ様の姿を見て周囲がざわついているのが分かる。12歳のマウリ様は研究課程の生徒たちの中ではとても目立った。
「どのひとがアイラ様に声をかけたの?」
「あの方です」
わたくしがマウリ様に教えるまでもなく、その男性は自分から進み出てマウリ様に告げた。
「ここは子どもの来るところではありませんよ?」
「子どもなのはあなたではないのですか?」
「は? お坊ちゃんが何を仰っているのやら」
完全に馬鹿にした様子のその男性に、マウリ様はビシッと姿勢を正して告げる。
「あなたは私の婚約者のアイラ様を口説いたそうですね? 私はヘルレヴィ家の次期後継者、そして、アイラ様はその婚約者にしてラント家の御令嬢。あなたがしたことはヘルレヴィ家のことも、ラント家のことも侮辱しているのだと分かっていますか?」
「そちらの御令嬢が勘違いしたのではないですか? 私はモテるから、振られた腹いせに難癖付けてくる方も多くて」
「嘘を吐きましたね?」
「何が嘘だというのですか? 証拠でもあるのですか? これだから子どもの言うことは信用できない」
声を上げて笑う男性をマウリ様は威圧するように睨みつけている。ドラゴンの気配が強くなって、わたくしはぎゅっとマウリ様の手を握り締めた。
「私が12歳であることと、私の言うことが信用できないということには関係がない。あなたがしてきたことを、アンティラ家のイルミ様も同じように口説かれたというではないですか。複数証人がいるのですよ」
「イルミ様も私に振られた腹いせに、難癖付けて来ているだけですよ。そんな女の言葉を信じるから、子どもなんです」
「そんな女? 今、イルミ様を『そんな女』と言いましたね? イルミ様は侯爵家の当主ですよ。あなたは口の利き方も知らないのですか?」
ごうっとマウリ様の後ろにドラゴンの影が広がった気がした。ドラゴンの威圧を受けて、男性が震え出す。
「本性を見せて来るなんて、ずるい!」
「あなたは私に敵対した! 私の大事な方を傷付けようとした! 私は戦いも厭わない!」
「ひぃ!? ドラゴンが!?」
ものすごい威圧を真正面から受けて、男性の姿が揺らぐ。男性は小型の犬の姿になって尻尾を巻いて逃げ出してしまった。
マウリ様がドラゴンの気配を消してわたくしの方を見上げる。
「父上と母上に言って、あの方を処分してもらいましょう」
「マウリ様、ありがとうございました」
「アイラ様のためだから、頑張ったよ」
にっこりと笑うマウリ様は格好良くてわたくしは惚れ直す勢いだった。
「アイラ・ラント様、君は本当の愛をまだ知らないだけなんだ」
研究課程の医学の授業で同じ授業になった男性に引き留められて、廊下で目の前で演説されているのだ。
「八歳も年下の婚約者を宛がわれて、君は幼い頃からそれ以外の選択肢を与えられなかった。本当は燃えるような恋をしたい、命を懸けるような恋をしたい。そう思っているのだろう。私には分かる。言わなくても分かっているのだよ」
全く意味が分からない。
わたくしとマウリ様の婚約は最初はマウリ様が小さくて自分の意志はなかったかもしれないけれど、今は成長してわたくしと結婚する日を指折り数えて待っていてくれる。泣き虫で臆病だけれど、大事なときには必ずわたくしを守ってくれて、わたくしの一番傍にいてくれるマウリ様を、わたくしはとても頼りにしていた。
「わたくしとマウリ様との関係はあなたが想像しているようなものではありません。そもそも、わたくしとマウリ様との婚約は公爵家同士が取り交わしたもの。破棄するという選択肢はありません」
酷く冷ややかな声がわたくしの口から出てしまったような気がするが、それも仕方がないことだろう。目の前の男性は勘違いをしているのだ。わたくしを不幸だと思っているのならばそれは大間違いというものだ。
「建前としてそう言わなくてはいけないのだね、分かっているよ。私なら、君に身を焦がすような恋をさせてみせることができる。私に身を委ねるだけでいい」
「お話にならないようなので失礼します」
全くわたくしの話を聞いていないその男性に怒りを覚えつつ、わたくしはその場を立ち去った。研究課程で勉強した後はヘルレヴィ家にイルミ様が来る日だった。イルミ様はトゥーレ様が清貧をモットーとする厳しい修行をする王都の神殿に修行に行ったので、その話をしてくださるために来たのだ。
「トゥーレ様は神殿で周囲に馴染んで溶け込んでいるようです。手紙には、アルベルト様は規則を破ってばかりで、脱走しようとして罰を受けて一日食事を抜かれたと書かれていました」
「全く反省していないのですね」
「麻の生成りの神官衣しか与えられず、髪も剃って、毎日自分たちの食べる食材を庭で育てる日々ですからね。甘やかされてきたアルベルト様には耐えられないのでしょう」
「畑仕事もやってみると楽しいのですがね」
毒を盛られたスティーナ様を助けるために、わたくしは11歳から畑仕事を始めた。マウリ様やミルヴァ様はまだ3歳だった。その頃から土と親しんでいるわたくしにとっては、早朝に起きて畑仕事をするのも全く苦ではなかった。
「全ての統治者がアイラ様のようだったらいいのに」
「わたくしのよう、ですか?」
「自ら経験したことを人間は重視します。アイラ様は畑仕事をして、医学も学んでいらっしゃる。わたくしも研究課程で勉強していましたが、学ぶことの大事さを実感しました」
イルミ様は高等学校を卒業した年には研究課程に入れなかったので、一年遅れて研究課程に入学している。わたくしの二学年上だから、もう卒業式が終わって卒業した頃だろう。
「そういえば、イルミ様は生徒に絡まれたことがありますか?」
「どういう方でしたか?」
問いかけられてわたくしは絡んで来た男性を思い出そうとするけれど、言動の印象が強すぎて姿の印象がほとんどないことに気付く。確か茶色の髪だったような気がするけれど、顔はほとんど覚えていない。
「恋について語って来たのです」
「あ! わたくしも絡まれたことがあります。情熱的な恋をしたくないか、と」
「それ! それです!」
どうやら同一人物にイルミ様も絡まれていたようだった。
「あの方はたくさんの女性……特に地位のある女性に声をかけているようなのです」
イルミ様はアンティラ家の当主で、わたくしはラント家の娘でヘルレヴィ家の次期当主の婚約者。地位が欲しくて女性に手当たり次第に声をかけているというのは許せない気がする。
「顔がいいので、騙される女性もいるとか……」
「顔!? よかったのですか!?」
「わたくしも、顔のことは全然見ていなくて」
驚いてしまったが、イルミ様もわたくしと同じで、絡んで来た男性が気持ち悪いだけで顔のことは全く見ていなかったようだ。男性は伯爵家の子息のようだが、家を継げないので地位のある女性に片っ端から声をかけて自分のものにしようと考えているようだった。
「入学したときはわたくしと同学年だったのですが、今はアイラ様と同学年なのですね」
「え? 留年しているのですか?」
研究課程の授業は決して生温いものではない。勉強をしなければ簡単に単位を落としてしまう。二年生までは進級できたようだが、その後その男性は二年も留年しているという事実が分かってしまった。
これからもその男性に絡まれることがあると思うと研究課程に行くのが嫌になりそうでわたくしはため息が出る。
「アイラ様、マウリ様をその方と会わせるのはどうですか?」
「マウリ様をですか?」
「本当に品格のあるヘルレヴィ家の後継者を前にしたら、その方も黙ると思います」
イルミ様がマウリ様を高く評価してくれているのは嬉しいのだが、わたくしはマウリ様が年齢のことや、まだ成長しきっていないことで嫌なことを言われないか気になっていた。
「マウリ様が傷付かなければいいのですが」
「アイラ様はマウリ様を信じて頼っていいと思います」
そう言われてわたくしはマウリ様に相談してみることにした。
イルミ様が帰ってから、わたくしは勉強の休憩をしていたマウリ様の隣りのソファに腰かける。イルミ様と紅茶を飲んでいたので、もう紅茶は飲みたい気分ではなかったが、わたくしが座ると使用人さんは紅茶のカップを持ってきてくれた。
ソーサーに乗ったティーカップを手に取って、なかなか話し出せないでいるわたくしに、マウリ様が蜂蜜色のお目目でじっとわたくしを見詰める。
「アイラ様、心配事?」
「実は、わたくし、研究課程で変な男性に絡まれたのです。イルミ様も過去に絡まれたようです」
「え!? アイラ様、無事だった?」
「無視して去ったので無事でしたが、その方はわたくしを口説こうとしているようで」
口説こうとしている。
その言葉がわたくしの口から出た瞬間、マウリ様の眉がきりりと吊り上がる。
「アイラ様に迷惑をかけるだけじゃなくて、口説くだなんて、許せない」
「同じ授業を履修している方のようなのですよ」
「アイラ様はラント家の御令嬢で、私の婚約者。アイラ様に軽々しく声をかけるのは、ヘルレヴィ家のことも、私のことも馬鹿にしている!」
凛々しく言うマウリ様にわたくしは驚いてしまう。
マウリ様はわたくしに向き直った。
「アイラ様の邪魔をする奴を、私が成敗してあげる。研究課程に連れて行って!」
通常ならば研究課程の生徒でもないマウリ様を研究課程に連れて行くのは躊躇われることだが、ヘルレヴィ家の沽券に関わってくるとなると話は別だ。ヘルレヴィ家の婚約者であるわたくしを口説くということは、ヘルレヴィ家の次期後継者であるマウリ様を侮辱していることにもなるのだとはっきりとその人物に知らしめなければいけない。
わたくしはマウリ様を研究課程に連れて行くことを決めた。
夏休みの近い初夏の日、わたくしは研究課程にマウリ様と一緒に登校した。マウリ様の姿を見て周囲がざわついているのが分かる。12歳のマウリ様は研究課程の生徒たちの中ではとても目立った。
「どのひとがアイラ様に声をかけたの?」
「あの方です」
わたくしがマウリ様に教えるまでもなく、その男性は自分から進み出てマウリ様に告げた。
「ここは子どもの来るところではありませんよ?」
「子どもなのはあなたではないのですか?」
「は? お坊ちゃんが何を仰っているのやら」
完全に馬鹿にした様子のその男性に、マウリ様はビシッと姿勢を正して告げる。
「あなたは私の婚約者のアイラ様を口説いたそうですね? 私はヘルレヴィ家の次期後継者、そして、アイラ様はその婚約者にしてラント家の御令嬢。あなたがしたことはヘルレヴィ家のことも、ラント家のことも侮辱しているのだと分かっていますか?」
「そちらの御令嬢が勘違いしたのではないですか? 私はモテるから、振られた腹いせに難癖付けてくる方も多くて」
「嘘を吐きましたね?」
「何が嘘だというのですか? 証拠でもあるのですか? これだから子どもの言うことは信用できない」
声を上げて笑う男性をマウリ様は威圧するように睨みつけている。ドラゴンの気配が強くなって、わたくしはぎゅっとマウリ様の手を握り締めた。
「私が12歳であることと、私の言うことが信用できないということには関係がない。あなたがしてきたことを、アンティラ家のイルミ様も同じように口説かれたというではないですか。複数証人がいるのですよ」
「イルミ様も私に振られた腹いせに、難癖付けて来ているだけですよ。そんな女の言葉を信じるから、子どもなんです」
「そんな女? 今、イルミ様を『そんな女』と言いましたね? イルミ様は侯爵家の当主ですよ。あなたは口の利き方も知らないのですか?」
ごうっとマウリ様の後ろにドラゴンの影が広がった気がした。ドラゴンの威圧を受けて、男性が震え出す。
「本性を見せて来るなんて、ずるい!」
「あなたは私に敵対した! 私の大事な方を傷付けようとした! 私は戦いも厭わない!」
「ひぃ!? ドラゴンが!?」
ものすごい威圧を真正面から受けて、男性の姿が揺らぐ。男性は小型の犬の姿になって尻尾を巻いて逃げ出してしまった。
マウリ様がドラゴンの気配を消してわたくしの方を見上げる。
「父上と母上に言って、あの方を処分してもらいましょう」
「マウリ様、ありがとうございました」
「アイラ様のためだから、頑張ったよ」
にっこりと笑うマウリ様は格好良くてわたくしは惚れ直す勢いだった。
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