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四章 セラフィナと音楽
13.新年のパーティーの後で
新年のパーティーのお茶会まで終わらせて、わたくしは着替えてミカの待っている子ども部屋に行った。一人でつまらなそうにお茶をしていたミカは、わたくしを見て金色の目を輝かせた。
「おねえさま、しんねんのパーティーはおわったの?」
「わたくしはお茶会までしか出られませんから、終わりました」
「おねえさま、いっしょにあそぼう!」
一人で寂しかったのだろう。ミカはお茶を終わらせてしまうと、わたくしとソファに座った。
以前はエリカに寄りかかるようにして座っていたが、わたくしもミカも体が大きくなって、できなくなってしまった。わたくしとミカは並んで座っていたが、ミカの手には絵本が握られていた。
「じぶんでよめるようになったけれど、おねえさまによんでほしいの。だめ?」
「ダメではないですよ。読みましょう」
ミカはまだ四歳なのだ。絵本を読んでもらいたいこともある。わたくしが絵本を手に取ると、それは詩集だった。
わたくしにはなかなか理解しにくい詩集だが、ミカはこれをとても気に入っているので仕方がない。
読み始めるとミカがじっとわたくしの顔を見て聞いている。
「えーっと、『わたしの胸には瑠璃色の小鳥が震えているのです。その小鳥を温めてくれるあなたの手を待っているのです』」
なぜ、小鳥は瑠璃色なのか。小鳥は震えるのか。本当に全く意味が分からない。
わたしには意味が分からないのに、ミカは胸に手を当てて感動して聞いているようだった。
「おねえさま、ありがとう。もういっかい、よんでほしいな」
「も、もう一回ですね」
ミカにおねだりされるとわたくしは弱い。
意味が分からないながらももう一回詩集を読むと、ミカは満足して次はミュージカルごっこを始めてしまった。
「おねえさまは、わるいやつにおわれるれいじょうなんだよ」
「はい」
「わたしのうしろにかくれていてね」
「はい」
ミカの好むシチュエーションは、勇敢な武士が悪い奴に追われているところを助けるところから始まるミュージカルのようだ。
架空の悪い奴をやっつけて、ミカがわたくしの手を取って歌い出す。
「そなたのこころのうまれたばかりのことりを~せっしゃはまもりたいとおもったのだ~♪」
明らかに詩集に影響を受けているミカに、わたくしは何とも言えない顔になってしまう。
わたくしが若干引いていると、ミカから指導が入った。
「おねえさまとわたしは、こいにおちるんだから、もっとすきすきっておかおをしていないとだめなんだよ!」
「わたくしと恋に落ちるのですか?」
「そうだよ!」
「恋……ミカは恋に落ちたことがありますか?」
わたくしはアルベルト様と会うと嬉しくなることはあるが、これが恋なのかよく分からない。ミカには恋が分かるのかと問いかけると、ミカは一生懸命考えていた。
「リヴィアじょうにあったらかわいいなっておもうし、セリーヌじょうもすき。でも、これがこいなのかよくわからない」
「恋って何でしょうね」
「であうとむねがきゅんとして、はなれるときにはちぢにひきさかれるようなきぶんになるってほんにかいてあったよ」
「わたくし、そんな気分になったことはありません」
正直なところ、恋愛感情がよく分からないわたくしに、ミカも首を傾げている。
「わたしもよくわからないの。おねえさまのことはだいすきで、おねえさまがしんねんのパーティーにいってしまったらさびしくて、かなしかったけれど、これはこいとはちがうんでしょう?」
「そうですね。姉に恋はしません」
「ダニエルとなかよくしてるととてもたのしくて、かえるときにはすごくさびしいけど、これもこいじゃないの?」
「それは友人に対する友情ですね」
「こいってむずかしい」
「難しいですね」
二人で恋に関してしばらく話していた。
夕食もその日は二人きりだった。
ラファエルお兄様とお父様とお母様は新年のパーティーの晩餐会に出ている。ラファエルお兄様とお父様とお母様はそのまま夜会にも出るのだろう。
新年のパーティーはラファエルお兄様とお父様とお母様が一番忙しい日だった。
「わたしはいつになったらしんねんのパーティーにでられるの?」
夕食をナイフとフォークを上手に使いながら食べるミカ。ミカは本当に食べることが上手だ。食いしん坊なので食べることに対する情熱が違うのだろう。
「わたくしのように昼食会とお茶会に出られるようになるのが六歳ですね。晩餐会と夜会に出られるのは、社交界デビューした十五歳を過ぎてからになります」
「わたし、はやくろくさいになりたいな」
「ミカはミカのスピードで大きくなればいいのですよ」
優しくミカに言い聞かせながら、わたくしはアルベルト様との会話を思い出していた。
アルベルト様の卒業式のパーティーでパートナーとして幼すぎて浮かないか気にしていたわたくしに、アルベルト様はわたくしを守ると言ってくれた。
もしかするとアルベルト様もわたくしが急いで成長しなくていいと思ってくれているのかもしれない。
そのことを考えると胸の中が温かくなってくる。
わたくしはアルベルト様に守られているのだと感じていた。
夕食後はお風呂に入って部屋で休んだ。
ラファエルお兄様とお父様とお母様は今頃夜会に出ているだろう。わたくしが出ても眠くなってしまうので、出席できなくてよかったが、アルベルト様のことが少し気にかかった。
アルベルト様は誰かをダンスに誘ったりしていないだろうが、女性からダンスに誘われたら断れるのだろうか。基本的にダンスは男性の方から申し込んで、女性はそれを受けるか、断るか決めていいのだとバロワン先生から教えられていたが、ごくまれに女性から申し込むこともあるようだ。
アルベルト様が誰かとダンスをしているところを思い浮かべると、胸がもやもやしてしまう。
アルベルト様と一度だけお茶会で踊ったことがあるが、リードがとても上手で踊りやすかった。
わたくし以外と踊ってほしくないと思うのは、いけないことなのだろうか。
そんなことを考えながらわたくしは眠りに落ちていた。
翌朝、わたくしはミカとラファエルお兄様とお父様とお母様と朝食をご一緒した。
昨日は夕食を一緒に食べられなかったので、ラファエルお兄様もお父様もお母様もわたくしとミカの時間に合わせてくださったようだ。
普段はお父様とお母様には執務があって、ラファエルお兄様には学園があるので、朝食は時々しか一緒にしていない。
「きょうは、おとうさまとおかあさまとおにいさまとおねえさまと、みんないっしょですね。わたし、みんないっしょがいちばんすきです」
「ミカエルには昨日は寂しい思いをさせたね」
「一年に一度の行事ですから、わたくしたちも出ないわけにはいかなかったのです」
「今日はミカエルと一緒に遊んであげようね」
お父様とお母様の気遣う言葉と、ラファエルお兄様の遊んでくれるという言葉にミカは喜んで両手を掲げていた。
「わたし、おねえさまとおにいさまとおとうさまとおかあさまといっしょにすごせないから、しんねんのパーティーはきらいだなっておもってたの。でもきょうはおにいさまがあそんでくれるなら、がまんする」
「何をして遊ぼうか?」
「えほんをよんで、ミュージカルごっこをして、おさんぽにいって、ゆきでもあそびたいな」
「いいよ、全部しよう」
「やったー! おにいさまありがとう」
今日はラファエルお兄様が詩集を読まされて、ミュージカルごっこでも遊ぶのかと思うと、ちょっと微笑ましい気もしたけれど、わたくしはミカとラファエルお兄様の話しているのを見守っていた。
その日のお茶の時間には、アルベルト様が訪ねて来てくださった。
アルベルト様はティールームでわたくしと一緒にお茶をした。ラファエルお兄様とミカも同席していた。
「昨日はラファエルはアンリエット嬢とたくさん踊っていたね」
「結婚が発表されたからね。アルベルトはずっと壁際で葡萄酒を飲んでいたな」
「わたしが踊りたい相手は一人だけだからね」
アルベルト様とラファエルお兄様の話を聞いて、わたくしは思わず身を乗り出してしまう。
「アルベルト様は踊らなかったのですか?」
「わたしは婚約者がいる身だよ、他の相手と踊ったりしないよ」
「誘われたのではないですか?」
「強引な令嬢もいたけれど、全部お断りしたよ」
アルベルト様はわたくし以外と踊らなかった。
そのことが分かって安堵している自分がいる。
アルベルト様がもし他の誰かと踊っていたら、わたくしは正体の知れない胸のもやもやを抱え続けていただろう。
「セラフィナと婚約しているのに他の相手と踊ったら父上が許さないよ」
「わたしの父上もね」
ラファエルお兄様とアルベルト様が言っているのを聞いて、お父様もベルンハルト公爵家の叔父様も、わたくしがいるのにアルベルト様が他の相手と踊るのは反対だと知ってほっとする。
アルベルト様がわたくし以外と踊らないことがどうしてこんなに嬉しいのか。
わたくしはこの感情はなになのかよく分かっていなかった。
「おねえさま、しんねんのパーティーはおわったの?」
「わたくしはお茶会までしか出られませんから、終わりました」
「おねえさま、いっしょにあそぼう!」
一人で寂しかったのだろう。ミカはお茶を終わらせてしまうと、わたくしとソファに座った。
以前はエリカに寄りかかるようにして座っていたが、わたくしもミカも体が大きくなって、できなくなってしまった。わたくしとミカは並んで座っていたが、ミカの手には絵本が握られていた。
「じぶんでよめるようになったけれど、おねえさまによんでほしいの。だめ?」
「ダメではないですよ。読みましょう」
ミカはまだ四歳なのだ。絵本を読んでもらいたいこともある。わたくしが絵本を手に取ると、それは詩集だった。
わたくしにはなかなか理解しにくい詩集だが、ミカはこれをとても気に入っているので仕方がない。
読み始めるとミカがじっとわたくしの顔を見て聞いている。
「えーっと、『わたしの胸には瑠璃色の小鳥が震えているのです。その小鳥を温めてくれるあなたの手を待っているのです』」
なぜ、小鳥は瑠璃色なのか。小鳥は震えるのか。本当に全く意味が分からない。
わたしには意味が分からないのに、ミカは胸に手を当てて感動して聞いているようだった。
「おねえさま、ありがとう。もういっかい、よんでほしいな」
「も、もう一回ですね」
ミカにおねだりされるとわたくしは弱い。
意味が分からないながらももう一回詩集を読むと、ミカは満足して次はミュージカルごっこを始めてしまった。
「おねえさまは、わるいやつにおわれるれいじょうなんだよ」
「はい」
「わたしのうしろにかくれていてね」
「はい」
ミカの好むシチュエーションは、勇敢な武士が悪い奴に追われているところを助けるところから始まるミュージカルのようだ。
架空の悪い奴をやっつけて、ミカがわたくしの手を取って歌い出す。
「そなたのこころのうまれたばかりのことりを~せっしゃはまもりたいとおもったのだ~♪」
明らかに詩集に影響を受けているミカに、わたくしは何とも言えない顔になってしまう。
わたくしが若干引いていると、ミカから指導が入った。
「おねえさまとわたしは、こいにおちるんだから、もっとすきすきっておかおをしていないとだめなんだよ!」
「わたくしと恋に落ちるのですか?」
「そうだよ!」
「恋……ミカは恋に落ちたことがありますか?」
わたくしはアルベルト様と会うと嬉しくなることはあるが、これが恋なのかよく分からない。ミカには恋が分かるのかと問いかけると、ミカは一生懸命考えていた。
「リヴィアじょうにあったらかわいいなっておもうし、セリーヌじょうもすき。でも、これがこいなのかよくわからない」
「恋って何でしょうね」
「であうとむねがきゅんとして、はなれるときにはちぢにひきさかれるようなきぶんになるってほんにかいてあったよ」
「わたくし、そんな気分になったことはありません」
正直なところ、恋愛感情がよく分からないわたくしに、ミカも首を傾げている。
「わたしもよくわからないの。おねえさまのことはだいすきで、おねえさまがしんねんのパーティーにいってしまったらさびしくて、かなしかったけれど、これはこいとはちがうんでしょう?」
「そうですね。姉に恋はしません」
「ダニエルとなかよくしてるととてもたのしくて、かえるときにはすごくさびしいけど、これもこいじゃないの?」
「それは友人に対する友情ですね」
「こいってむずかしい」
「難しいですね」
二人で恋に関してしばらく話していた。
夕食もその日は二人きりだった。
ラファエルお兄様とお父様とお母様は新年のパーティーの晩餐会に出ている。ラファエルお兄様とお父様とお母様はそのまま夜会にも出るのだろう。
新年のパーティーはラファエルお兄様とお父様とお母様が一番忙しい日だった。
「わたしはいつになったらしんねんのパーティーにでられるの?」
夕食をナイフとフォークを上手に使いながら食べるミカ。ミカは本当に食べることが上手だ。食いしん坊なので食べることに対する情熱が違うのだろう。
「わたくしのように昼食会とお茶会に出られるようになるのが六歳ですね。晩餐会と夜会に出られるのは、社交界デビューした十五歳を過ぎてからになります」
「わたし、はやくろくさいになりたいな」
「ミカはミカのスピードで大きくなればいいのですよ」
優しくミカに言い聞かせながら、わたくしはアルベルト様との会話を思い出していた。
アルベルト様の卒業式のパーティーでパートナーとして幼すぎて浮かないか気にしていたわたくしに、アルベルト様はわたくしを守ると言ってくれた。
もしかするとアルベルト様もわたくしが急いで成長しなくていいと思ってくれているのかもしれない。
そのことを考えると胸の中が温かくなってくる。
わたくしはアルベルト様に守られているのだと感じていた。
夕食後はお風呂に入って部屋で休んだ。
ラファエルお兄様とお父様とお母様は今頃夜会に出ているだろう。わたくしが出ても眠くなってしまうので、出席できなくてよかったが、アルベルト様のことが少し気にかかった。
アルベルト様は誰かをダンスに誘ったりしていないだろうが、女性からダンスに誘われたら断れるのだろうか。基本的にダンスは男性の方から申し込んで、女性はそれを受けるか、断るか決めていいのだとバロワン先生から教えられていたが、ごくまれに女性から申し込むこともあるようだ。
アルベルト様が誰かとダンスをしているところを思い浮かべると、胸がもやもやしてしまう。
アルベルト様と一度だけお茶会で踊ったことがあるが、リードがとても上手で踊りやすかった。
わたくし以外と踊ってほしくないと思うのは、いけないことなのだろうか。
そんなことを考えながらわたくしは眠りに落ちていた。
翌朝、わたくしはミカとラファエルお兄様とお父様とお母様と朝食をご一緒した。
昨日は夕食を一緒に食べられなかったので、ラファエルお兄様もお父様もお母様もわたくしとミカの時間に合わせてくださったようだ。
普段はお父様とお母様には執務があって、ラファエルお兄様には学園があるので、朝食は時々しか一緒にしていない。
「きょうは、おとうさまとおかあさまとおにいさまとおねえさまと、みんないっしょですね。わたし、みんないっしょがいちばんすきです」
「ミカエルには昨日は寂しい思いをさせたね」
「一年に一度の行事ですから、わたくしたちも出ないわけにはいかなかったのです」
「今日はミカエルと一緒に遊んであげようね」
お父様とお母様の気遣う言葉と、ラファエルお兄様の遊んでくれるという言葉にミカは喜んで両手を掲げていた。
「わたし、おねえさまとおにいさまとおとうさまとおかあさまといっしょにすごせないから、しんねんのパーティーはきらいだなっておもってたの。でもきょうはおにいさまがあそんでくれるなら、がまんする」
「何をして遊ぼうか?」
「えほんをよんで、ミュージカルごっこをして、おさんぽにいって、ゆきでもあそびたいな」
「いいよ、全部しよう」
「やったー! おにいさまありがとう」
今日はラファエルお兄様が詩集を読まされて、ミュージカルごっこでも遊ぶのかと思うと、ちょっと微笑ましい気もしたけれど、わたくしはミカとラファエルお兄様の話しているのを見守っていた。
その日のお茶の時間には、アルベルト様が訪ねて来てくださった。
アルベルト様はティールームでわたくしと一緒にお茶をした。ラファエルお兄様とミカも同席していた。
「昨日はラファエルはアンリエット嬢とたくさん踊っていたね」
「結婚が発表されたからね。アルベルトはずっと壁際で葡萄酒を飲んでいたな」
「わたしが踊りたい相手は一人だけだからね」
アルベルト様とラファエルお兄様の話を聞いて、わたくしは思わず身を乗り出してしまう。
「アルベルト様は踊らなかったのですか?」
「わたしは婚約者がいる身だよ、他の相手と踊ったりしないよ」
「誘われたのではないですか?」
「強引な令嬢もいたけれど、全部お断りしたよ」
アルベルト様はわたくし以外と踊らなかった。
そのことが分かって安堵している自分がいる。
アルベルト様がもし他の誰かと踊っていたら、わたくしは正体の知れない胸のもやもやを抱え続けていただろう。
「セラフィナと婚約しているのに他の相手と踊ったら父上が許さないよ」
「わたしの父上もね」
ラファエルお兄様とアルベルト様が言っているのを聞いて、お父様もベルンハルト公爵家の叔父様も、わたくしがいるのにアルベルト様が他の相手と踊るのは反対だと知ってほっとする。
アルベルト様がわたくし以外と踊らないことがどうしてこんなに嬉しいのか。
わたくしはこの感情はなになのかよく分かっていなかった。
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