土地神様に守られて 〜転生したらまた魔女の男子だった件〜

秋月真鳥

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転生したらまた魔女の男子だった件

160.僕とリラの高等学校卒業

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 秋が終わりを告げて、冬休みに入ってからも僕とリラは母の家に通い続けた。
 勉強のためでもあったし、まだ小さなフレーズちゃんの様子を見たかったからでもあるし、スリーズちゃんと触れ合いたい気持ちもあった。

 レオくんはこの冬は母の家に来ないようだ。
 秋の間にレオくんが言っていた。

「赤ちゃんがうまれたんだ。おとうとだったんだよ! おれ、うれしくてうれしくて。かあちゃんもとうちゃんも、おおよろこびしてるよ」

 元魔女だったので女性の方が出生率が高いような気がしていたが、愛し合う二人の間では男性が生まれるか女性が生まれるかの確率は同じようだ。
 魔法使いの森で四人目の男性の魔法使いは、レオくんの弟だった。

「弟が二人もいる魔法使いなんて、今は私だけじゃない? レオも大変だったけど、今度の弟も大変かしら? お母さんをしっかり助けないと」

 ナンシーちゃんも弟が生まれたことを喜んでいた。
 レオくんの弟はトールくんと名前が付けられた。
 弟が生まれたので、レオくんはお母さんの手伝いのために冬休みは自分の家で過ごすのだ。
 最初にレオくんがスリーズちゃんと遊び始めた頃と違って、レオくんもしっかりとお手伝いのできる年になっていた。

 冬は燕のフレーズちゃんにとっては少し苦手な季節のようだ。鳥かごから出されているが、温かな毛糸で編んだ巣の中に閉じこもって、お父さんにご飯を運んでもらっている。

「燕族は暖かな地域で暮らすから、フレーズにはこの土地の冬は寒すぎるのかもしれないね」

 フレーズちゃんに何度もご飯を運んでから、お父さんはフレーズちゃんと一緒に毛糸の巣の中に入ってフレーズちゃんを温めてあげていた。

 僕とリラは卒業の試験のための準備に入っていた。
 リラは肉体強化の魔法を見せるつもりなのだ。
 僕は卒業制作として空間拡張の魔法を使ったポケットの付いたスリーズちゃんの上着を作る気でいた。
 春夏秋冬問わず肌を守るために着ることができる素材で、大量に物が入るポケットがついていれば、便利なのではないだろうか。
 ウエストポーチもいいのだが、どうしても腰回りが鬱陶しく感じてしまうことがある。特に小さなスリーズちゃんにとっては、両手が空いているということはとても大切だと思ったのだ。

 魔法使いの子どもたちにこんな上着が流行ればいい。薄くて軽いが、日光を遮って、春夏秋冬問わず着られる上着は重宝するはずだ。

「スリーズちゃん、モデルとして卒業制作発表会に来てくれる?」
「おにいちゃんのやくにたてるの? いくわ!」

 スリーズちゃんにお願いするとやる気で答えてくれた。

「リラはどんな卒業試験なの?」
「ゴーレムを倒すのよ!」
「え!?」

 ゴーレムといえば魔法で作られた強化人形で、守護に使われることが多い。リラの肉体強化の魔法の相手になれる魔法使いの教師がいないので、ゴーレムと戦うことになったと聞いて、僕は恐れをなしていた。

「ゴーレムとか、リラ、怪我しちゃうんじゃない?」
「平気よ! 私、強いんだから!」
「リラ、気を付けてね」

 リラの体に少しでも傷がついたら嫌なので、僕はリラのためにも守護の付与魔法がかかった服を作ろうかと考えたが、母に止められた。

「リラを信じてあげなさい」

 小さい頃からリラは勇敢だった。信じたいと思うのだが、ゴーレムという名前を聞くとどうしても僕はリラが心配だった。

 冬休みが終わると卒業試験まではすぐだった。
 僕はスリーズちゃんを連れて行って、裾の長いカーディガン風の上着を着てもらって、先生に見てもらう。ビーズ刺繍も、付与魔法も一切手を抜かなかった。
 ポケットに空間拡張の魔法がかけられているのを確認して先生が評価をしてくれる。

「とてもよくできています。形もお洒落で、この年齢の女の子の体によく合っています。付与魔法も完璧に紡がれています。ポケットの空間拡張は、そこまでなくてもいいかもしれませんが、力を見せるための卒業制作だと考えれば、相応しいでしょう」

 合格点をもらって僕は嬉しくてスリーズちゃんを抱き上げてくるくると回っていた。スリーズちゃんは誇らし気な顔で抱っこされていた。

 リラの卒業試験を見に行くのは怖かったけれど、スリーズちゃんも見たがったので僕は恐る恐る見ることにした。
 石で作られたゴーレムが高等学校の校庭に現れている。対するリラは薔薇乙女仮面の格好だった。
 燕尾服風の上着にワンピース姿で、前髪は編んでいて、後ろの髪は編んで薔薇の髪飾りで留めている。

「薔薇乙女仮面、行くわ!」
「おねえちゃん、がんばれー!」
「リラちゃん頑張ってー!」

 構えを取ったリラにスリーズちゃんとナンシーちゃんの声援が送られる。
 ゴーレムが動き出し拳を振り下ろす。避けたリラだが、拳が地面にめり込んでへこんでいるのを見て、僕は震えてしまった。
 あんな攻撃を受けたらリラが死んでしまうかもしれない。

「遅いわ!」

 めり込んだ拳に駆けあがってリラが走っていく。
 ゴーレムの肩まで駆け上がったリラは、華麗にゴーレムの頭に蹴りを入れた。
 ゴーレムの頭が砕ける。
 頭が砕けても動いているゴーレムがリラを攻撃しようとするが、リラは素早く飛び降りて拳を逃れる。
 自分の肩を殴ってしまったゴーレムがよろけているのに、リラが胴体に鋭い突きを入れた。

 胴体からひびが広がってゴーレムが崩れていく。

「勝者、リラ!」
「やったー!」

 勝者が告げられてリラは飛び跳ねて喜んでいた。

「おねえちゃん、かっこうよかった!」
「リラちゃんおめでとう!」
「リラ、怪我をしてない? 大丈夫?」

 スリーズちゃんとナンシーちゃんが駆け寄るのに、僕も遅れて駆け寄ってリラの顔をしっかりと見る。あんな硬そうな石を蹴ったり殴ったりしたので、リラの足や手が傷付いていないか心配だったが、大丈夫そうだった。

「平気よ、お兄ちゃん!」

 元気に答えたリラに、僕は胸を撫で下ろしたのだった。

 卒業試験も無事に終わって、卒業式の日、母はお父さんとフレーズちゃんの入った小さな鳥かごを持って来てくれた。スリーズちゃんも一緒だ。セイラン様とレイリ様も卒業式に来てくれている。

 卒業式ではナンシーちゃんが代表の言葉を述べることになっていた。

 一時期は進級を危ぶまれていたのに、努力して、成績優秀者にまでなったナンシーちゃんこそが、代表に相応しいと先生たちも認めてくれたのだ。

「私が高等学校に通っている間に、魔女族は魔法使いになり、魔女の森は魔法使いの街になりました。私には二人目の弟も生まれました。これから様々な変化を私たちは経験し、受け入れて行くでしょう。その全てに柔軟に対応できるように、この高等学校で学んだことを活かしていきたいです」

 ナンシーちゃんらしい代表の言葉に僕は拍手を送っていた。
 ナンシーちゃんのお父さんとお母さんとレオくんも来ていて、ナンシーちゃんのお父さんは赤ちゃんを抱っこしていた。あれがトールくんだろう。

 レオくんというお兄ちゃんがいるから、トールくんもきっとナンシーちゃんのお父さんとお母さんにしっかりと育てられる。
 魔法使いの街にはまた男の子が増えて行くのだ。

 卒業式が終わったら、社に帰ってマオさんの作ってくれたご馳走を食べた。
 海老や小柱と三つ葉の天ぷらが乗った天丼とお味噌汁と野菜の煮物だった。天丼が甘辛いたれでとても美味しい。

「セイラン様とレイリ様にもありますよ。お酒のおつまみにしてください」

 セイラン様とレイリ様には小エビの唐揚げと、山菜の天ぷらが出された。

「ありがとう、マオ。美味しくいただこう」
「お酒が進みますね」
「ラーイとリラが卒業した祝杯だ。飲もう」
「ラーイとリラも乾杯しましょう」

 セイラン様とレイリ様はお酒で、僕とリラは麦茶で乾杯をする。

 僕もリラも誇らしい気持ちで胸がいっぱいだった。
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