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第2部 天然女子高生のための再そーかつ
第37話 データマイニング
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。
金曜日の朝、いつも通り登校した私、野掘真奈は同じクラスの梅畑伝治君がスマートフォンの画面を見て何やら唸っているのを目にした。
「梅畑君、何かあったの? それゲームの画面?」
「ああ、野掘さん。実は今度オンラインのゲーム大会に参加することになったんだけど、競技種目のゲームが難しすぎて……」
「これ、恋愛ゲームってやつじゃないの? あんまりeスポーツには使われなさそうだけど」
梅畑君は以前から高校生プロゲーマーとして世界的に活躍していて、普段はeスポーツの花形でもある格闘ゲームを主に練習していると聞いていた。
「恋愛ゲームっていうのはその通りなんだけど、結構特殊なゲームなんだ。6つ子の姉妹と同時に恋愛して、全員の好感度を最大にした上で誰か一人に告白すればクリアなんだけど……」
梅畑君が説明してくれた所によると、彼が現在練習しているのは『ろくぶんのいち☆メモリアル!』という家庭用機の恋愛ゲームで、ヒロイン6人は顔と髪型が全く同じで見分ける手段は体格と雰囲気のわずかな違いしかないという。
6人はそれぞれ趣味趣向が異なるのでかける言葉や渡すプレゼントを間違えると好感度が下がってしまい、ゲーム大会では6人を正しく見分けて最短時間でゲームをクリアした人が優勝になるらしい。
「そ、それは難しいね……」
「俺って女の子の友達は多くないしかわいい子の前に来ると緊張して話せないぐらいだから、どうしても6人のヒロインを見分けられなくて。でもプロゲーマーとしてゲームから逃げ出したくはないから、どうにかできないかな?」
「うーん、何かいい案あるかも」
私は「かわいい子」ではないということなのかと少し思いつつ考えると、ふとアイディアがひらめいた。
「そうだ、微妙な違いを見分ける練習として、AIの学習法を参考にしてみたらどう? 確かデータマイニングっていうらしいんだけど、大量のデータを一気に読み込んで、そこから法則性を見つけるんだって。ヒロイン6人のイラストを毎日飽きるほど眺めたら、自然と見分けられるようになるんじゃない?」
「ゲーム中ではキャラクターは3Dモデルだけど、そのやり方すごく有効だと思う。今日から試してみるから、上手くいったら報告するよ。本当にありがとう!」
梅畑君はそう言うとスマホでゲームの公式サイトにアクセスし、私は彼がゲーム大会で優勝できるといいなと思った。
その翌週の月曜日……
「おはよう! あっ、梅畑君。今度ゲームの大会に出るんでしょ?」
「朝日さん! そ、そうだよ。朝日さんも知ってたんだね」
朝から元気に登校してきたのは新聞部員の朝日千春さんで、梅畑君は以前から朝日さんに片思いしているので今回もキョドりつつ返事をした。
「それにしても朝日さん、今日も素敵なCカップだね! いつも見てたから分かるよ!!」
「○ね!!!」
データマイニングの結果を褒め言葉にしようとした梅畑君は、朝日さんの右ストレートで顔面を潰されつつ椅子ごと倒れた。
「こんな朝っぱらからセクハラとか何考えてるの!? これだからゲーム脳の人って大嫌い!!」
「れ、恋愛ゲームをやり込んだのに……」
朝日さんに激怒されながら気絶した梅畑君を見て、私もしばらく彼には近寄らないでおこうと思った。
(続く)
金曜日の朝、いつも通り登校した私、野掘真奈は同じクラスの梅畑伝治君がスマートフォンの画面を見て何やら唸っているのを目にした。
「梅畑君、何かあったの? それゲームの画面?」
「ああ、野掘さん。実は今度オンラインのゲーム大会に参加することになったんだけど、競技種目のゲームが難しすぎて……」
「これ、恋愛ゲームってやつじゃないの? あんまりeスポーツには使われなさそうだけど」
梅畑君は以前から高校生プロゲーマーとして世界的に活躍していて、普段はeスポーツの花形でもある格闘ゲームを主に練習していると聞いていた。
「恋愛ゲームっていうのはその通りなんだけど、結構特殊なゲームなんだ。6つ子の姉妹と同時に恋愛して、全員の好感度を最大にした上で誰か一人に告白すればクリアなんだけど……」
梅畑君が説明してくれた所によると、彼が現在練習しているのは『ろくぶんのいち☆メモリアル!』という家庭用機の恋愛ゲームで、ヒロイン6人は顔と髪型が全く同じで見分ける手段は体格と雰囲気のわずかな違いしかないという。
6人はそれぞれ趣味趣向が異なるのでかける言葉や渡すプレゼントを間違えると好感度が下がってしまい、ゲーム大会では6人を正しく見分けて最短時間でゲームをクリアした人が優勝になるらしい。
「そ、それは難しいね……」
「俺って女の子の友達は多くないしかわいい子の前に来ると緊張して話せないぐらいだから、どうしても6人のヒロインを見分けられなくて。でもプロゲーマーとしてゲームから逃げ出したくはないから、どうにかできないかな?」
「うーん、何かいい案あるかも」
私は「かわいい子」ではないということなのかと少し思いつつ考えると、ふとアイディアがひらめいた。
「そうだ、微妙な違いを見分ける練習として、AIの学習法を参考にしてみたらどう? 確かデータマイニングっていうらしいんだけど、大量のデータを一気に読み込んで、そこから法則性を見つけるんだって。ヒロイン6人のイラストを毎日飽きるほど眺めたら、自然と見分けられるようになるんじゃない?」
「ゲーム中ではキャラクターは3Dモデルだけど、そのやり方すごく有効だと思う。今日から試してみるから、上手くいったら報告するよ。本当にありがとう!」
梅畑君はそう言うとスマホでゲームの公式サイトにアクセスし、私は彼がゲーム大会で優勝できるといいなと思った。
その翌週の月曜日……
「おはよう! あっ、梅畑君。今度ゲームの大会に出るんでしょ?」
「朝日さん! そ、そうだよ。朝日さんも知ってたんだね」
朝から元気に登校してきたのは新聞部員の朝日千春さんで、梅畑君は以前から朝日さんに片思いしているので今回もキョドりつつ返事をした。
「それにしても朝日さん、今日も素敵なCカップだね! いつも見てたから分かるよ!!」
「○ね!!!」
データマイニングの結果を褒め言葉にしようとした梅畑君は、朝日さんの右ストレートで顔面を潰されつつ椅子ごと倒れた。
「こんな朝っぱらからセクハラとか何考えてるの!? これだからゲーム脳の人って大嫌い!!」
「れ、恋愛ゲームをやり込んだのに……」
朝日さんに激怒されながら気絶した梅畑君を見て、私もしばらく彼には近寄らないでおこうと思った。
(続く)
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