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第3部 天然女子高生のための超そーかつ
第83話 官製談合
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生には(後略)
「寒下さん、どう思われます? 『多~いお茶』も『一一四五一四茶』も『ナントカ還元茶』も、正直一長一短としか感じられないのですが」
「教頭先生の仰る通りですね。料理人の視点と致しましても、どれが特に優れているとは思われません」
「寒下さん、それに教頭先生、これ自販機で売ってるペットボトルのお茶ですよね? こんなに沢山並んでますけど……」
ある日の放課後、ジュースを買いに学生食堂を訪れた私は学生食堂調理師長の寒下丹次郎さんとマルクス高校教頭の琴名枯之助先生が何やら話し込んでいるのを見かけた。
「ああ、野掘さん。実は経費節約のために来年度から自販機のお茶の種類を一つに絞ることになって、寒下さんからもご意見を頂いているんだ。ただ、どのお茶も正直そこまで違いがないから、各社の協定で毎年交代にして貰うことも検討せざるを得なくてね……」
「事情はすごくよく分かりますけど、それって談合とか言うんじゃないですか? 法的にどうなんでしょう」
発注する側が競争入札の参加業者に談合を持ちかけている形なので、教頭先生のアイディアはいわゆる官製談合に近いように感じた。
「全く、野掘さんの言う通りだよ。私としては全生徒に投票して貰った結果に基づいて選定するお茶を決めるべきだと思うのですが、教頭先生としてはいかがでしょうか?」
「確かに、そのやり方が最も公正でしょうね。各社からわが校までPRに来て貰うことにするので、その時は野掘さんもぜひ投票に参加してください」
「分かりました!」
寒下さんの発案により、それから2週間後に体育館にて各飲料メーカーのPRイベントが行われた。
各社による自社製品のPRは順調に進み……
「それではこれにてヨントリー『五右衛門』のPRは終了となります。最後は日本コクコーラ『綾香』のPRです!」
「みっなさーん! 日本コクコーラの『綾香』を選んでくれたらぁ、この私、『九段坂46』のセンターを務める千野アヤカの直筆サイン色紙を生徒さん全員にプレゼントしまーす! みんな、投票してくれるかなぁー!?」
「「もっちろんでーす!!」」
「選ばれたのはアヤカでしたっ! これは正当なPRの結果ですからね~」
「何かすっごく民主主義の実態って感じがするね!」
「朝日さん、それ言っちゃ駄目」
体育館のステージ上に現れたアイドルを眺めながら論評した新聞部の朝日千春さんに、私は談合を否定した所で公正な競争になるとは限らないなあと思った。
(続く)
「寒下さん、どう思われます? 『多~いお茶』も『一一四五一四茶』も『ナントカ還元茶』も、正直一長一短としか感じられないのですが」
「教頭先生の仰る通りですね。料理人の視点と致しましても、どれが特に優れているとは思われません」
「寒下さん、それに教頭先生、これ自販機で売ってるペットボトルのお茶ですよね? こんなに沢山並んでますけど……」
ある日の放課後、ジュースを買いに学生食堂を訪れた私は学生食堂調理師長の寒下丹次郎さんとマルクス高校教頭の琴名枯之助先生が何やら話し込んでいるのを見かけた。
「ああ、野掘さん。実は経費節約のために来年度から自販機のお茶の種類を一つに絞ることになって、寒下さんからもご意見を頂いているんだ。ただ、どのお茶も正直そこまで違いがないから、各社の協定で毎年交代にして貰うことも検討せざるを得なくてね……」
「事情はすごくよく分かりますけど、それって談合とか言うんじゃないですか? 法的にどうなんでしょう」
発注する側が競争入札の参加業者に談合を持ちかけている形なので、教頭先生のアイディアはいわゆる官製談合に近いように感じた。
「全く、野掘さんの言う通りだよ。私としては全生徒に投票して貰った結果に基づいて選定するお茶を決めるべきだと思うのですが、教頭先生としてはいかがでしょうか?」
「確かに、そのやり方が最も公正でしょうね。各社からわが校までPRに来て貰うことにするので、その時は野掘さんもぜひ投票に参加してください」
「分かりました!」
寒下さんの発案により、それから2週間後に体育館にて各飲料メーカーのPRイベントが行われた。
各社による自社製品のPRは順調に進み……
「それではこれにてヨントリー『五右衛門』のPRは終了となります。最後は日本コクコーラ『綾香』のPRです!」
「みっなさーん! 日本コクコーラの『綾香』を選んでくれたらぁ、この私、『九段坂46』のセンターを務める千野アヤカの直筆サイン色紙を生徒さん全員にプレゼントしまーす! みんな、投票してくれるかなぁー!?」
「「もっちろんでーす!!」」
「選ばれたのはアヤカでしたっ! これは正当なPRの結果ですからね~」
「何かすっごく民主主義の実態って感じがするね!」
「朝日さん、それ言っちゃ駄目」
体育館のステージ上に現れたアイドルを眺めながら論評した新聞部の朝日千春さんに、私は談合を否定した所で公正な競争になるとは限らないなあと思った。
(続く)
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