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4 NHKは素晴らしい
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キャンプ場の大型テントに入るとそこには長机にいくつもの椅子が並んでいて、ボランティアの会の主要メンバーが座っていた。
僕と羽賀さんが座るとテントの入り口の幕は閉じられ、簡易的な教壇に会長(橘さんというらしい)が立って話し始めた。
「はじめましての方もいらっしゃると思いますので改めて自己紹介を致します。私はNHKを国民から守る会代表の学生ユーチューバー、橘孝之でございます。NHKを国民から守る会の目的はただ1つ。それはもちろん、『NHKを死守する』でございます。さあ皆さんもご一緒に。NHKを死守する! 『NHKを死守する』とは、NHKに受信料を支払わない方にはそれ相応の制裁を加えるということです。専門的な言葉を使うと国民の義務の遵守です。NHKを死守する!」
何だか、というより確実に雲行きが怪しくなってきた。
「なぜNHKを死守しないといけないのか。それは、NHKは毎日のように素晴らしい番組を放映しているのに少なからぬ国民がその価値を理解していないからです。皆さん、受信料を払わないのは違法行為ですよ。しかし民放各社はこの問題を見てみぬふりで、あまつさえNHKのスクランブル化すら主張しかねません。これ、明らかに営業妨害でもありますし、公益に反する行為ですよね。受信料未払いを民放各社はいまだに大きく報道せず、NHKを憎む視聴者を自局の番組に誘導しようとしています。よくもこんな重大な問題を放置して平気な顔をできますよね。違法行為ですよ。営業妨害ですよ。公益に反する行為ですよ。皆さん、許せますか。とにかくこのような国民からNHKを死守する」
隣に座っている羽賀さんを見ると騙されたという表情をしていた。
「今はまだNHKに受信料を支払っていないというあなたも遅くはありません。受信料を支払う方法をご紹介させていただきますね。まずNHKフリーダイヤルに電話して……」
(どうも怪しげな団体に騙されたようですけど、どうします?)
羽賀さんに小声で耳打ちすると、
(宗教とかじゃないみたいだから、もうちょっと様子を見ましょう)
と、こわばった声で返事を受けた。
「さて、NHKを国民から守る会に所属している約40名の大学生やNHKを国民から守る会を応援している27名の教職員はそのほとんどが公のために働く気概を持つ若い世代です。一方で今の日本の政治家は国民の堕落に無関心です。消費税を上げる上げないと不毛な議論をする前に、国会議員は国民に己の義務を守らせるべきでしょう。NHKの受信料未払いこそ厳しく取り締まられなければなりません。NHKを死守する!」
この団体とこれ以上関わると色々とやばいと直感し、僕は羽賀さんの腕をつかんで目配せすると立ち上がった。
「すみません、僕らは帰ります!」
「私も!」
羽賀さんと一緒に走り出し、テントの入り口の幕を越えて外に飛び出した。
「待ちなさい! あなたたちも受信料未払いを認めるのですか!!」
「いや払ってます! ってえええ!?」
不意を突いて2人で逃げられたと思いきや先ほどの女性が予想外のスピードで追いかけてきた。
僕は足が速い方だから何とかなりそうだが、羽賀さんは走りにくいヒールの靴を履いているからこれでは追いつかれてしまう。
「羽賀さん、ごめんなさい!」
「海江田君、何を……」
僕は走りながら、驚きの声を上げる羽賀さんを背中から抱き上げた。
いわゆるお姫様抱っこの姿勢で、羽賀さんを両腕に抱いて逃げ続ける。
「ボランティアの精神を見くびらないで!」
女性のスタミナは尋常ではなく、猛ダッシュを続けて追いすがってくる。
「やばいな……」
「海江田君、あなただけでも逃げて!」
「女の子を置いて逃げられませんよ!」
ここで羽賀さんを見捨てることは絶対にできないと決意して、僕はひたすら走り続けた。
僕と羽賀さんが座るとテントの入り口の幕は閉じられ、簡易的な教壇に会長(橘さんというらしい)が立って話し始めた。
「はじめましての方もいらっしゃると思いますので改めて自己紹介を致します。私はNHKを国民から守る会代表の学生ユーチューバー、橘孝之でございます。NHKを国民から守る会の目的はただ1つ。それはもちろん、『NHKを死守する』でございます。さあ皆さんもご一緒に。NHKを死守する! 『NHKを死守する』とは、NHKに受信料を支払わない方にはそれ相応の制裁を加えるということです。専門的な言葉を使うと国民の義務の遵守です。NHKを死守する!」
何だか、というより確実に雲行きが怪しくなってきた。
「なぜNHKを死守しないといけないのか。それは、NHKは毎日のように素晴らしい番組を放映しているのに少なからぬ国民がその価値を理解していないからです。皆さん、受信料を払わないのは違法行為ですよ。しかし民放各社はこの問題を見てみぬふりで、あまつさえNHKのスクランブル化すら主張しかねません。これ、明らかに営業妨害でもありますし、公益に反する行為ですよね。受信料未払いを民放各社はいまだに大きく報道せず、NHKを憎む視聴者を自局の番組に誘導しようとしています。よくもこんな重大な問題を放置して平気な顔をできますよね。違法行為ですよ。営業妨害ですよ。公益に反する行為ですよ。皆さん、許せますか。とにかくこのような国民からNHKを死守する」
隣に座っている羽賀さんを見ると騙されたという表情をしていた。
「今はまだNHKに受信料を支払っていないというあなたも遅くはありません。受信料を支払う方法をご紹介させていただきますね。まずNHKフリーダイヤルに電話して……」
(どうも怪しげな団体に騙されたようですけど、どうします?)
羽賀さんに小声で耳打ちすると、
(宗教とかじゃないみたいだから、もうちょっと様子を見ましょう)
と、こわばった声で返事を受けた。
「さて、NHKを国民から守る会に所属している約40名の大学生やNHKを国民から守る会を応援している27名の教職員はそのほとんどが公のために働く気概を持つ若い世代です。一方で今の日本の政治家は国民の堕落に無関心です。消費税を上げる上げないと不毛な議論をする前に、国会議員は国民に己の義務を守らせるべきでしょう。NHKの受信料未払いこそ厳しく取り締まられなければなりません。NHKを死守する!」
この団体とこれ以上関わると色々とやばいと直感し、僕は羽賀さんの腕をつかんで目配せすると立ち上がった。
「すみません、僕らは帰ります!」
「私も!」
羽賀さんと一緒に走り出し、テントの入り口の幕を越えて外に飛び出した。
「待ちなさい! あなたたちも受信料未払いを認めるのですか!!」
「いや払ってます! ってえええ!?」
不意を突いて2人で逃げられたと思いきや先ほどの女性が予想外のスピードで追いかけてきた。
僕は足が速い方だから何とかなりそうだが、羽賀さんは走りにくいヒールの靴を履いているからこれでは追いつかれてしまう。
「羽賀さん、ごめんなさい!」
「海江田君、何を……」
僕は走りながら、驚きの声を上げる羽賀さんを背中から抱き上げた。
いわゆるお姫様抱っこの姿勢で、羽賀さんを両腕に抱いて逃げ続ける。
「ボランティアの精神を見くびらないで!」
女性のスタミナは尋常ではなく、猛ダッシュを続けて追いすがってくる。
「やばいな……」
「海江田君、あなただけでも逃げて!」
「女の子を置いて逃げられませんよ!」
ここで羽賀さんを見捨てることは絶対にできないと決意して、僕はひたすら走り続けた。
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