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お手本のようなお誘い⑤
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部屋の窓に光が差し込み、遮光性の低いカーテンのおかげで部屋全体が明るくなる。日もそこそこ昇り始めた時間帯なのだが、相当熟睡していたのだろう。マトンに体を揺らされるまで朝が過ぎていることに気がつかなかった。
「あ、おはようぅ」
「良くお眠りになられていたみたいですね。お疲れでしたか?」
「たぶん、そうかも」
「起こしてしまい申し訳ないのですが、お伝えすることがございまして」
「何かあったの?」
「はい、この後ケーナ様を乗せルクセンブルグに向け出発する予定だったのですが、手配した竜車がまだこちらに到着しておりません。本日中に出発するのが難しくなっております」
「でもまだ余裕はあるのでしょ?」
「1、2日程度の遅れは想定内ですのでご安心ください。ですのでケーナ様には本日はご自由にお過ごしいただいて構いません」
「分かったわ、ドレスも返さないとだし、泊ってた宿とかの手続きとかしないとなと思っていたの」
「その程度言ってくださればこちらでお手伝いさせていただきます」
「え、いいの?」
「もちろんです。今はハイド様の婚約者なのですから」
「あーまぁ、それだったらお願いしちゃおうかな」
1日の自由時間ができてしまった。
(ん!)
テッテとの約束していたのを思い出したのだ。自由な時間ができて逆に助かった。
「やっぱり今日もドレスを貸してください」
「構いませんが、どちらに?」
「今日もカジノに行きます」
賭けに行くわけじゃなく、人に会に行くだけなのだが。
「さすがケーナ様ですね」
お褒めの言葉をいただいてしまった。
個人的には、昨日と同じドレスでよかったのけど、仮にもハイド様の婚約者であろう方が2日続けて同じ御召し物など言語道断らしく、また例のお着換えの館に案内されることになった。
そこに居合わせたメイド達も全員総入れ替えされていて、顔を見るなり「わー」「キャー」と駆け寄り
「この子が噂の子ね」
「かわいいーお姫様みたいじゃない」
「噂以上だわ」
噂になんかしないでくれ。と思いながら、されるがままに一連の作業に耐えるのだった。2回目なので羞恥心などもうない。
それでも、多くの耐性スキルを揃えステータスを上げ物理攻撃も魔法攻撃もスキルも効かないはずなのに何故だろう心が痛む。
「完成ですわ!!」
「「「「「わーーーーーー!」」」」」
と感嘆の響きがあがる。
「本日もお可愛く、お綺麗ですケーナ様」
マトンにまで褒められてさすがに照れてしまった。
「キャー!照れてる!」
「かわいいいいい」
「歩く宝石ね」
「堪゙ら゙な゙い゙わ゙ぁ゙!!」
もう姿見で確認するまでもない。
耐えた分だけ可愛くなれる。
かわいさ値の潜在能力を120%引き出してくれる。
それがこの館の凄いところ。
「「「「「「いってらっしゃいませ、ケーナお嬢様」」」」」」
解放され、やっとカジノに向かうことができたのだった。
マトンも一緒だが、傍から見ればどこか可愛い貴族令嬢とそのお付きの者だ。
怪しまれる事もなく、昨日初めて入店する時に慌てて止めたドアマンもほらこの通り、
ニッコリ
だ。中に入ってもやや注目を集めすぎているように思える。
声をかけてくる自称ダンディーなオジ様達が多いこと多いこと。
昨日も全くなかったわけでは無かったのだけど、比べると圧倒的に今日の方が多い。
自分の娘ぐらいの少女に
「僕は品のある胸が大好きだ」
とか
「その透き通った肌にずっと触れていたい」
とか
「君の囀りを一晩中聴いていたい」
などなど
下心全開でセクハラ紛いなことを言い放ってくる。女性特有の苦しさというものを味わうことになった。
マトンは敵性無しと見ているのだろうか全く私を庇うそぶりもない。
そこへ遠くから駆け寄るテッテの姿。
「やっと、見つけましたわ。ほらこんな有象無象に構っていないで行きますわよ」
会う約束はしたが詳細を決めてなかったので探すはずだったテッテが逆に探して来てくれた。
ぐっと腕を引っ張り救出してくれる。
「奥に部屋を用意しましたの。そちらに行きますわよ」
カジノルームの最奥にある 特別室 と書かれた部屋の扉は重く、ヨシエが体重をかけ両手でドアを引いてくれた。
ドアが閉まると外の音が一切入ってこなくなる。まるで防音扉。
部屋の中はホテルのスイートルームのように広々としている。
専用のカジノテーブルまであり、ディーラを呼べばここでもカジノができるようだ。
まさにVIP待遇。
「約束通り来てくれて感謝いたしますわ」
「ちょっと待たせてしまったみたいで」
「気になさらなくてもいいことよ。こちらがお願いしたのですから。さっ、座ってくださいませ」
ソファーに腰かけるとまずヨシエがすすすと隣まで寄ってきて深々と頭を下げる。
「昨日はケーナ様に大変ご迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした。更にはこの命救ってくださいまして誠にありがとうございます」
「その件わたしからも謝罪とお礼をさせてくださいませ。ヨシエの行動の原因となったのはわたしが癇癪を起こしたからですの。自身で分かっているのですが、ギャンブルの勝負となりますと時々周りがみえなくなってしまいますの。申し訳ございませんでしたわ」
向かいの椅子に座ったテッテも、そういうと頭を下げていた。
助けたお礼で何か奢ってもらおうなどと気楽に考えていたので言葉に詰まってしまった。
「え、あ、はい。そのー、まぁ今後は気をつけてくださいね」
一応謝罪を受け取った形にはなったと思う。
また、すすすとヨシエが離れていき定位置に戻る。
テッテもゆっくり頭を上げると、顔が既にちょっと赤らんでいた。
「あの……お礼について、お話させていただきたいのですけど」
急に歯切れ悪く話し始める。
「あの……その……こ……」
「こ?」
後半声が小さすぎて耳まで届かない。
「わたし……子供……」
「テッテは子供ですね……?」
やっぱり良く聞こえない。
「あ、そうじゃなくて、」
「子供がどうしました?」
顔の赤らみが最高潮になったところで声も大きくなった。
「わたしと子供をつくってくださいまし」
あれっ、デジャブかな。さっきまで自称ダンディーなオジ様達に似たような事を言われていたような。
理解できずにフリーズしていると、さっきは庇いもしなかったマトンが、私とテッテの間に割って入るように立ち殺気を込めて言い放つ。
「聞き捨てなりません! 恥を知りなさい、外道!」
(はっ!!! マトォォォォォン!!)
「あ、おはようぅ」
「良くお眠りになられていたみたいですね。お疲れでしたか?」
「たぶん、そうかも」
「起こしてしまい申し訳ないのですが、お伝えすることがございまして」
「何かあったの?」
「はい、この後ケーナ様を乗せルクセンブルグに向け出発する予定だったのですが、手配した竜車がまだこちらに到着しておりません。本日中に出発するのが難しくなっております」
「でもまだ余裕はあるのでしょ?」
「1、2日程度の遅れは想定内ですのでご安心ください。ですのでケーナ様には本日はご自由にお過ごしいただいて構いません」
「分かったわ、ドレスも返さないとだし、泊ってた宿とかの手続きとかしないとなと思っていたの」
「その程度言ってくださればこちらでお手伝いさせていただきます」
「え、いいの?」
「もちろんです。今はハイド様の婚約者なのですから」
「あーまぁ、それだったらお願いしちゃおうかな」
1日の自由時間ができてしまった。
(ん!)
テッテとの約束していたのを思い出したのだ。自由な時間ができて逆に助かった。
「やっぱり今日もドレスを貸してください」
「構いませんが、どちらに?」
「今日もカジノに行きます」
賭けに行くわけじゃなく、人に会に行くだけなのだが。
「さすがケーナ様ですね」
お褒めの言葉をいただいてしまった。
個人的には、昨日と同じドレスでよかったのけど、仮にもハイド様の婚約者であろう方が2日続けて同じ御召し物など言語道断らしく、また例のお着換えの館に案内されることになった。
そこに居合わせたメイド達も全員総入れ替えされていて、顔を見るなり「わー」「キャー」と駆け寄り
「この子が噂の子ね」
「かわいいーお姫様みたいじゃない」
「噂以上だわ」
噂になんかしないでくれ。と思いながら、されるがままに一連の作業に耐えるのだった。2回目なので羞恥心などもうない。
それでも、多くの耐性スキルを揃えステータスを上げ物理攻撃も魔法攻撃もスキルも効かないはずなのに何故だろう心が痛む。
「完成ですわ!!」
「「「「「わーーーーーー!」」」」」
と感嘆の響きがあがる。
「本日もお可愛く、お綺麗ですケーナ様」
マトンにまで褒められてさすがに照れてしまった。
「キャー!照れてる!」
「かわいいいいい」
「歩く宝石ね」
「堪゙ら゙な゙い゙わ゙ぁ゙!!」
もう姿見で確認するまでもない。
耐えた分だけ可愛くなれる。
かわいさ値の潜在能力を120%引き出してくれる。
それがこの館の凄いところ。
「「「「「「いってらっしゃいませ、ケーナお嬢様」」」」」」
解放され、やっとカジノに向かうことができたのだった。
マトンも一緒だが、傍から見ればどこか可愛い貴族令嬢とそのお付きの者だ。
怪しまれる事もなく、昨日初めて入店する時に慌てて止めたドアマンもほらこの通り、
ニッコリ
だ。中に入ってもやや注目を集めすぎているように思える。
声をかけてくる自称ダンディーなオジ様達が多いこと多いこと。
昨日も全くなかったわけでは無かったのだけど、比べると圧倒的に今日の方が多い。
自分の娘ぐらいの少女に
「僕は品のある胸が大好きだ」
とか
「その透き通った肌にずっと触れていたい」
とか
「君の囀りを一晩中聴いていたい」
などなど
下心全開でセクハラ紛いなことを言い放ってくる。女性特有の苦しさというものを味わうことになった。
マトンは敵性無しと見ているのだろうか全く私を庇うそぶりもない。
そこへ遠くから駆け寄るテッテの姿。
「やっと、見つけましたわ。ほらこんな有象無象に構っていないで行きますわよ」
会う約束はしたが詳細を決めてなかったので探すはずだったテッテが逆に探して来てくれた。
ぐっと腕を引っ張り救出してくれる。
「奥に部屋を用意しましたの。そちらに行きますわよ」
カジノルームの最奥にある 特別室 と書かれた部屋の扉は重く、ヨシエが体重をかけ両手でドアを引いてくれた。
ドアが閉まると外の音が一切入ってこなくなる。まるで防音扉。
部屋の中はホテルのスイートルームのように広々としている。
専用のカジノテーブルまであり、ディーラを呼べばここでもカジノができるようだ。
まさにVIP待遇。
「約束通り来てくれて感謝いたしますわ」
「ちょっと待たせてしまったみたいで」
「気になさらなくてもいいことよ。こちらがお願いしたのですから。さっ、座ってくださいませ」
ソファーに腰かけるとまずヨシエがすすすと隣まで寄ってきて深々と頭を下げる。
「昨日はケーナ様に大変ご迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした。更にはこの命救ってくださいまして誠にありがとうございます」
「その件わたしからも謝罪とお礼をさせてくださいませ。ヨシエの行動の原因となったのはわたしが癇癪を起こしたからですの。自身で分かっているのですが、ギャンブルの勝負となりますと時々周りがみえなくなってしまいますの。申し訳ございませんでしたわ」
向かいの椅子に座ったテッテも、そういうと頭を下げていた。
助けたお礼で何か奢ってもらおうなどと気楽に考えていたので言葉に詰まってしまった。
「え、あ、はい。そのー、まぁ今後は気をつけてくださいね」
一応謝罪を受け取った形にはなったと思う。
また、すすすとヨシエが離れていき定位置に戻る。
テッテもゆっくり頭を上げると、顔が既にちょっと赤らんでいた。
「あの……お礼について、お話させていただきたいのですけど」
急に歯切れ悪く話し始める。
「あの……その……こ……」
「こ?」
後半声が小さすぎて耳まで届かない。
「わたし……子供……」
「テッテは子供ですね……?」
やっぱり良く聞こえない。
「あ、そうじゃなくて、」
「子供がどうしました?」
顔の赤らみが最高潮になったところで声も大きくなった。
「わたしと子供をつくってくださいまし」
あれっ、デジャブかな。さっきまで自称ダンディーなオジ様達に似たような事を言われていたような。
理解できずにフリーズしていると、さっきは庇いもしなかったマトンが、私とテッテの間に割って入るように立ち殺気を込めて言い放つ。
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