67 / 221
妃の条件②
しおりを挟む
「ケーナ様! 探しましたよ。どちらへ行かれてたのですか?」
たぶん命をかけた激戦の後、次はマトンに呼び止められた。ハイドとの約束がまだ残っていたのでそのことだ。
改めて婚約を申し込むとの話になっていたが、また丁重にお断りすることには変わりない。
「ハイド様、ケーナ様をお連れしました」
「入れ」
扉を開けると、既に待っていたようだ。
「ごめんなさい。待たせてしまったようで」
「構わん。早速本題に入るぞ」
一応プロポーズというていなのにも関わらず、なんとも事務的な対応でいらっしゃる。
「昨晩、王を譲る予定の兄から相談されたのだが、もし俺が王位継承権を獲得した場合そのまま王を務める事になった。その代わりに兄が俺を支えてくる話になってな、本来の予定と変わったのだ」
「それは、おめでとうございます。王になられるのですね」
「それで、正式に王になったらケーナを王の側室に迎え入れたいと思っている。本音を言えば正妻として迎え入れたいのだが、王は平民とは結婚ができぬ。何かしらの上位称号を持っていれば別だが、今はそれはどうでもいい。側室にはそれらの制限がない。それに正妻と違い、側室に入った者もほとんど縛りが無い。結婚した後でも冒険者としての生活が送れる。それに側室に入った者には生活に困らぬように――」
「ハイド様。……話の途中でほんと申し訳ないのですが、それではダメです。私の心は動かせません。まだ最初の勢いのある言葉の方が良かったように思います」
【見破りをレジストしました】
この期におよんで、まだ本心を読もうとしている。
「どういうことだ、ケーナの考えは分からん」
「ハイド様が私に心遣いをしてくれているのは分かります。王の側室に入ることが、価値あるとこと考える者であればそれでもいいでしょう。でもハイド様が欲しいのは、そんな人ではないでしょう?」
「俺の欲しているもの?」
「ハイド様はこれまで人の心をスキルで見てきたので人一倍分かると思いますが、人の考えている事なんて言葉とは真逆の時もありますし表情とも真逆こともあります」
「ああその通りだ」
「そのことに違和感を感じてずっと過ごしてきたのではないのでしょうか?」
「もう慣れたが、違和感が無かったと言えば嘘になるな」
「ハイド様はご自身のことを心から愛する方、もしくは信頼してくれる方が欲しいのに見つけられずにいる。だから私のような心が読めない相手に惹かれているだけなのかもしれませんよ」
「本心が分からない方が、本当の愛があると思い込むことができる。それを無自覚に求めていたのか……」
「ハイド様のスキルは政治や外交ではほぼ無敵でしょう。相手は本心を読まれることほど痛いものはありません。ですが色恋に関しては相手の本心を読むと自分が痛手を負うことになりかねません。もしこの先、政略婚ではなく本当に妻にしたい人ができたら、スキルを一切使用しないことをオススメしますよ」
「まさか年下の娘に諭されてしまうとはな。俺もまだまだだな」
「改めて結婚の申し出はお断りさせていただきますね」
「わかった。だが、今回きりで諦めたわけではない。ケーナもまだ12歳だしな。今の心が無自覚からくるただの思い違いなのか、自分の本心なのかも見極めたらまた申し込むかもしれぬぞ」
「そのころには、誰かが隣にいるかもしれませんね」
「ケーナの心を動かした者であれば、是非一度見てみたいものだ。は! は! は!」
ふう……。
何とか乗り切った。
汗もじっとりかいた。
次期国王の二度目の申し出を「お断りします」一言で返す度胸など無かったので、あれやこれやと一生懸命言い訳を考えたのだ。
話の軸をずらしたり、あるのかないのかも分からない無自覚な面をだしたり、それっぽいことを兎に角並び並べて有耶無耶にしてやった。
余計な情報や感情が多くなればなるほど重要なことは見えなくなる。
なんといっても一番の理由としては
(背の低い男は嫌!)
これは昔のエーナの記憶にある言葉だ。継いだ体だから、エーナの想いもできる限り継いでやりたい。ハイドは15歳になるのに身長がエーナとほぼ一緒だからな。
あと転生してだいぶ体に馴染んできて、女としての自覚は多少なりとあるのだが、男の精神的な部分が完全に消えたわけでもないので、男と結婚することが今だに考えられないのも本音。
まだ12歳だし、猶予はあるかな。あってほしい。
それに側室ってのも、2番目感がして個人的には好きじゃない。王になるなら、そこは規律を変えてでも正妻に迎えるぐらいの気概が欲しいところ。
何か伝える事があった気がしたが、取りあえず婚約の話を早く一区切りさせたかったのでペコリとお辞儀をして部屋を出て行ったのである。
「セバステ」
「はっ、何でしょう坊ちゃま」
「心が読めぬというのはこんなにも大変で、もどかしく、じれったいものなのだな。久しく忘れていたぞ」
「坊ちゃま、それは相手の事を知りたいと思う気持ちが、最初に会ったときより大きくなっている証拠でございます」
「難儀だな。まだ政治の方が簡単に思える」
「政治を簡単と言えるのは、世界広しと言えども坊ちゃまくらいでしょう。だからこそ兄上様も託してくれたのかもしれません」
「そうか、そうかもな」
「ただ今回のケーナ様の心音は、ギャンブルの時より遥かに高鳴っていたのは確かでございます。全く心が動かなかったわけではない様ですよ」
「セバステに頼りすぎると、またケーナに何か言われそうだな。は! は! は!」
たぶん命をかけた激戦の後、次はマトンに呼び止められた。ハイドとの約束がまだ残っていたのでそのことだ。
改めて婚約を申し込むとの話になっていたが、また丁重にお断りすることには変わりない。
「ハイド様、ケーナ様をお連れしました」
「入れ」
扉を開けると、既に待っていたようだ。
「ごめんなさい。待たせてしまったようで」
「構わん。早速本題に入るぞ」
一応プロポーズというていなのにも関わらず、なんとも事務的な対応でいらっしゃる。
「昨晩、王を譲る予定の兄から相談されたのだが、もし俺が王位継承権を獲得した場合そのまま王を務める事になった。その代わりに兄が俺を支えてくる話になってな、本来の予定と変わったのだ」
「それは、おめでとうございます。王になられるのですね」
「それで、正式に王になったらケーナを王の側室に迎え入れたいと思っている。本音を言えば正妻として迎え入れたいのだが、王は平民とは結婚ができぬ。何かしらの上位称号を持っていれば別だが、今はそれはどうでもいい。側室にはそれらの制限がない。それに正妻と違い、側室に入った者もほとんど縛りが無い。結婚した後でも冒険者としての生活が送れる。それに側室に入った者には生活に困らぬように――」
「ハイド様。……話の途中でほんと申し訳ないのですが、それではダメです。私の心は動かせません。まだ最初の勢いのある言葉の方が良かったように思います」
【見破りをレジストしました】
この期におよんで、まだ本心を読もうとしている。
「どういうことだ、ケーナの考えは分からん」
「ハイド様が私に心遣いをしてくれているのは分かります。王の側室に入ることが、価値あるとこと考える者であればそれでもいいでしょう。でもハイド様が欲しいのは、そんな人ではないでしょう?」
「俺の欲しているもの?」
「ハイド様はこれまで人の心をスキルで見てきたので人一倍分かると思いますが、人の考えている事なんて言葉とは真逆の時もありますし表情とも真逆こともあります」
「ああその通りだ」
「そのことに違和感を感じてずっと過ごしてきたのではないのでしょうか?」
「もう慣れたが、違和感が無かったと言えば嘘になるな」
「ハイド様はご自身のことを心から愛する方、もしくは信頼してくれる方が欲しいのに見つけられずにいる。だから私のような心が読めない相手に惹かれているだけなのかもしれませんよ」
「本心が分からない方が、本当の愛があると思い込むことができる。それを無自覚に求めていたのか……」
「ハイド様のスキルは政治や外交ではほぼ無敵でしょう。相手は本心を読まれることほど痛いものはありません。ですが色恋に関しては相手の本心を読むと自分が痛手を負うことになりかねません。もしこの先、政略婚ではなく本当に妻にしたい人ができたら、スキルを一切使用しないことをオススメしますよ」
「まさか年下の娘に諭されてしまうとはな。俺もまだまだだな」
「改めて結婚の申し出はお断りさせていただきますね」
「わかった。だが、今回きりで諦めたわけではない。ケーナもまだ12歳だしな。今の心が無自覚からくるただの思い違いなのか、自分の本心なのかも見極めたらまた申し込むかもしれぬぞ」
「そのころには、誰かが隣にいるかもしれませんね」
「ケーナの心を動かした者であれば、是非一度見てみたいものだ。は! は! は!」
ふう……。
何とか乗り切った。
汗もじっとりかいた。
次期国王の二度目の申し出を「お断りします」一言で返す度胸など無かったので、あれやこれやと一生懸命言い訳を考えたのだ。
話の軸をずらしたり、あるのかないのかも分からない無自覚な面をだしたり、それっぽいことを兎に角並び並べて有耶無耶にしてやった。
余計な情報や感情が多くなればなるほど重要なことは見えなくなる。
なんといっても一番の理由としては
(背の低い男は嫌!)
これは昔のエーナの記憶にある言葉だ。継いだ体だから、エーナの想いもできる限り継いでやりたい。ハイドは15歳になるのに身長がエーナとほぼ一緒だからな。
あと転生してだいぶ体に馴染んできて、女としての自覚は多少なりとあるのだが、男の精神的な部分が完全に消えたわけでもないので、男と結婚することが今だに考えられないのも本音。
まだ12歳だし、猶予はあるかな。あってほしい。
それに側室ってのも、2番目感がして個人的には好きじゃない。王になるなら、そこは規律を変えてでも正妻に迎えるぐらいの気概が欲しいところ。
何か伝える事があった気がしたが、取りあえず婚約の話を早く一区切りさせたかったのでペコリとお辞儀をして部屋を出て行ったのである。
「セバステ」
「はっ、何でしょう坊ちゃま」
「心が読めぬというのはこんなにも大変で、もどかしく、じれったいものなのだな。久しく忘れていたぞ」
「坊ちゃま、それは相手の事を知りたいと思う気持ちが、最初に会ったときより大きくなっている証拠でございます」
「難儀だな。まだ政治の方が簡単に思える」
「政治を簡単と言えるのは、世界広しと言えども坊ちゃまくらいでしょう。だからこそ兄上様も託してくれたのかもしれません」
「そうか、そうかもな」
「ただ今回のケーナ様の心音は、ギャンブルの時より遥かに高鳴っていたのは確かでございます。全く心が動かなかったわけではない様ですよ」
「セバステに頼りすぎると、またケーナに何か言われそうだな。は! は! は!」
0
あなたにおすすめの小説
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
イジメられっ子世に憚る。
satomi
ファンタジー
主人公須藤正巳はぼんやりと教室で授業を受けていた。その時、突然教室中に物凄い量の光が…。 正巳が属する2-C全員が異世界転移することとなってしまった。 その世界では今まで正巳が陰キャとして読み漁ったラノベともゲームとも異なり、レベルがカウントダウン制。つまりレベル999よりレベル1の方が強い。という世界だった。 そんな中、クラスのリーダー的陽キャである神谷により全員で教室の外に出ることに。 いきなりドラゴンに出会い、クラスの全員がとった行動が『正巳を囮にして逃げること』だった。 なんとか生き延びた正巳は、まず逃げた連中へ復讐を誓う。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる