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我儘だっていいじゃない⑦
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ヨシエが戻ってきてたので容態を説明した。
やはり相当心配していたのだろうか、これでもかと言うくらい感謝されてしまった。
気になる樽の液体は魔水と呼ばれる魔力が高濃度に含まれている水だった。
使用した魔法の補助的な役割をするらしい。
それとシリルの様子は11年の月日が経ったようには見えない。
樽の中は数日の時間経過といったところだろう。
今日までシリルの時間経過を最大限遅延させ命を繋いでくれたマレンには本当に感謝だ。テッテが悲しまなくて済んだ。
「お母様! お母様! テッテですわ。お分かりになりますか?」
「……ん? ん? んー?」
目覚めたが、半分夢の中のようなので、暫く待ってから話をする事にした。
「あなたが、わたくしの娘テッテなのですのね。大きくなりましたね」
「そうですわ。ずっと会いたかったですわ!!」
再会を喜び抱きしめ合う母と娘を見ていて、私まで嬉しくて涙が出そうになる。
ヨシエにいたっては涙は止めようがないぐらい流れている。
「こちらはわたしの専属のメイド、今はヨシエと呼んでいますわ。お母様が留守の間ずっとわたしの傍にいてくれましたの」
「お久しぶりでございます、王妃様。無事お戻りなっていただき嬉しく思います」
「あなたはヨー・シエヴィスですね。成長しましたね。この子と一緒にいてくれてありがとう。きっと私に似て我儘でしょ? 迷惑かけてしまったわね」
「お母様を助けてくれたケーナ姉様ですわ」
「初めまして」
「あれっ? 姉様? と言いますと?」
「姉のような存在といいますか、義理の姉といいますか」
「いいえ、お母様、ケーナ姉様はテッテの本当のお姉様ですわ」
「テッテがそういうのであれば間違いないのでしょうね。わたくしを目覚めさせていただき誠に感謝致します」
「無事目覚めてくれて本当に良かったです」
「そう言えばテッテは今いくつになりまして?」
「11歳ですけど、なにかありまして?」
「あれ?16ではないのですか? どおりで幼いと思っていましたの。16歳になったらお披露目があるではないですか。その日にあわせて目覚めさせてもらうはずでしたが。マレンは何も言ってませんでしたの?」
何か予定があったらしい。
詳しく聞くと、白石病を魔法で押さえ込んでいたが出産後、魔力が弱まり白石病の進行が早まってしまい、あと数日の命だったそうだ。
どうしても娘の16歳のお披露目だけでも見てから死にたいという、我儘を叶えるためマレンに頼み込んで延命措置のようなことを密かに実行したのだそうだ。
「その方がびっくりすると思いまして」
(あ、テッテの我儘は母親譲りなのか)
この我儘にマレンもよく11年も耐えたと思う。117歳でも勝手に大往生も許されない。生きる事に必死だったと思うと、あの横暴さも理解できる。
「あのですね。もう病気は治りましたのでこれからは白石病のことは気にしなくて大丈夫ですよ」
「言われてみれば、全く動かなかった指が自然と動きます。これはもう治せる病気になりましたのね」
「いいえ、特別な薬でとても貴重なものです。2つ目は作れません」
「それをわたくしに? 大切なものなのに使っていただき、重ねて感謝申し上げます。あとで褒美を用意しておきますね」
マレンを起こし、シリル自ら説明をしていた。
「よかったじゃ! よかったじゃ! これてあたしも心置きなく逝ける」
「何を仰っているのですか、死神など追い払ってしまいなさい。まだまだわたくしに使えてもらいますからね」
「またそんな無茶を、変わりませんなぁ」
魅了や魔法をかけたことを一緒に謝り、破天荒ぶりを笑われてしまった。
トットにシリルの復活を伝えたテッテだったが「冗談でも許さん」と激怒されたそうだ。それでもテッテが強引に王妃室まで引っ張り説明したそうだ。
家族が3人そろったのは11年ぶり。家族水入らずの時間を過ごしてもらうため部屋を出たが、トットの豪快な号泣は部屋の外まで響き渡った。
王妃の復活は極秘中の極秘となった。
遺体は無かったがもう葬儀もしてしまい、墓もあるからだ。
それに死者を蘇生させたとなれば禁忌に触れた事になる。
それはそれでややこしいことらしい。
今いるのは王妃様ではなく、王妃様のそっくりさんが城内いるいうことになった。
それでも、長く勤めているものはそれがそっくりさんではなく、昔と変わらない我儘っぷりから王妃様本人だと確信していた。
それでも、そっくりさんのシールという人物を演じていたので皆がそれに付き合ったのだ。
それから数日間お世話になり、カスケードに帰ることとなった。
私が魔王になるのは現魔王が崩御してからだそうだ。「まだ先の話」と言われ、早くて数年後、遅くても十数年後を想像していたのだが、魔族の尺度でまだ先の話となると寿命長さの違いから数百年後、もっと長くなれば1000年以上先の話らしい。
生きていられる自信がない。
今は形式だけの次期魔王ということ。それでも次の魔王が決まっているだけでも国は安定するらしい。魔王の座を争うことがないからだそうだ。
私の寿命が尽きるまで名前を貸すだけならいいかと思っていた。頑張ればマレンと同じくらいは生きてられるかもしれない。
お別れのとなり、テッテは迷っていた。
私に付いていくか、城に残って母親との暮らしを満喫するかだ。
テッテは冒険者というよりお姫様という方が似合っている。
これからは家族との思い出を作ってほしい。それに次期魔王の私であればいつでも城に入ることができるのだから正面から堂々と遊びに来れる。
だからテッテには城で暮らすよう促したのだ
「でしたらケーナ姉様、3ヶ月に1回は遊びに来てくださいまし」
「そんな、遠くの国に遠征とかしてたら無……理じゃないね」
空間転移でどうにでもなる。距離は問題にならない。
あとは時差があるぐらいだ。
「分かったなんとかする。妹のためだもんね」
「それでこそケーナ姉様ですわ!!」
最後は魔王、王妃、テッテそれぞれと抱擁を交わした。
そこで私が戸惑っていると
「家族が出かけて行くのですからこれくらい当然ですわ」
ここにも家族が出来てしまった。
帰る場所が増えるのは嬉しいことでしかない。
皆にお礼をしてお小遣いという名の褒美を受け取り、手配してもらった竜車でカスケードへ戻ったのだった。
やはり相当心配していたのだろうか、これでもかと言うくらい感謝されてしまった。
気になる樽の液体は魔水と呼ばれる魔力が高濃度に含まれている水だった。
使用した魔法の補助的な役割をするらしい。
それとシリルの様子は11年の月日が経ったようには見えない。
樽の中は数日の時間経過といったところだろう。
今日までシリルの時間経過を最大限遅延させ命を繋いでくれたマレンには本当に感謝だ。テッテが悲しまなくて済んだ。
「お母様! お母様! テッテですわ。お分かりになりますか?」
「……ん? ん? んー?」
目覚めたが、半分夢の中のようなので、暫く待ってから話をする事にした。
「あなたが、わたくしの娘テッテなのですのね。大きくなりましたね」
「そうですわ。ずっと会いたかったですわ!!」
再会を喜び抱きしめ合う母と娘を見ていて、私まで嬉しくて涙が出そうになる。
ヨシエにいたっては涙は止めようがないぐらい流れている。
「こちらはわたしの専属のメイド、今はヨシエと呼んでいますわ。お母様が留守の間ずっとわたしの傍にいてくれましたの」
「お久しぶりでございます、王妃様。無事お戻りなっていただき嬉しく思います」
「あなたはヨー・シエヴィスですね。成長しましたね。この子と一緒にいてくれてありがとう。きっと私に似て我儘でしょ? 迷惑かけてしまったわね」
「お母様を助けてくれたケーナ姉様ですわ」
「初めまして」
「あれっ? 姉様? と言いますと?」
「姉のような存在といいますか、義理の姉といいますか」
「いいえ、お母様、ケーナ姉様はテッテの本当のお姉様ですわ」
「テッテがそういうのであれば間違いないのでしょうね。わたくしを目覚めさせていただき誠に感謝致します」
「無事目覚めてくれて本当に良かったです」
「そう言えばテッテは今いくつになりまして?」
「11歳ですけど、なにかありまして?」
「あれ?16ではないのですか? どおりで幼いと思っていましたの。16歳になったらお披露目があるではないですか。その日にあわせて目覚めさせてもらうはずでしたが。マレンは何も言ってませんでしたの?」
何か予定があったらしい。
詳しく聞くと、白石病を魔法で押さえ込んでいたが出産後、魔力が弱まり白石病の進行が早まってしまい、あと数日の命だったそうだ。
どうしても娘の16歳のお披露目だけでも見てから死にたいという、我儘を叶えるためマレンに頼み込んで延命措置のようなことを密かに実行したのだそうだ。
「その方がびっくりすると思いまして」
(あ、テッテの我儘は母親譲りなのか)
この我儘にマレンもよく11年も耐えたと思う。117歳でも勝手に大往生も許されない。生きる事に必死だったと思うと、あの横暴さも理解できる。
「あのですね。もう病気は治りましたのでこれからは白石病のことは気にしなくて大丈夫ですよ」
「言われてみれば、全く動かなかった指が自然と動きます。これはもう治せる病気になりましたのね」
「いいえ、特別な薬でとても貴重なものです。2つ目は作れません」
「それをわたくしに? 大切なものなのに使っていただき、重ねて感謝申し上げます。あとで褒美を用意しておきますね」
マレンを起こし、シリル自ら説明をしていた。
「よかったじゃ! よかったじゃ! これてあたしも心置きなく逝ける」
「何を仰っているのですか、死神など追い払ってしまいなさい。まだまだわたくしに使えてもらいますからね」
「またそんな無茶を、変わりませんなぁ」
魅了や魔法をかけたことを一緒に謝り、破天荒ぶりを笑われてしまった。
トットにシリルの復活を伝えたテッテだったが「冗談でも許さん」と激怒されたそうだ。それでもテッテが強引に王妃室まで引っ張り説明したそうだ。
家族が3人そろったのは11年ぶり。家族水入らずの時間を過ごしてもらうため部屋を出たが、トットの豪快な号泣は部屋の外まで響き渡った。
王妃の復活は極秘中の極秘となった。
遺体は無かったがもう葬儀もしてしまい、墓もあるからだ。
それに死者を蘇生させたとなれば禁忌に触れた事になる。
それはそれでややこしいことらしい。
今いるのは王妃様ではなく、王妃様のそっくりさんが城内いるいうことになった。
それでも、長く勤めているものはそれがそっくりさんではなく、昔と変わらない我儘っぷりから王妃様本人だと確信していた。
それでも、そっくりさんのシールという人物を演じていたので皆がそれに付き合ったのだ。
それから数日間お世話になり、カスケードに帰ることとなった。
私が魔王になるのは現魔王が崩御してからだそうだ。「まだ先の話」と言われ、早くて数年後、遅くても十数年後を想像していたのだが、魔族の尺度でまだ先の話となると寿命長さの違いから数百年後、もっと長くなれば1000年以上先の話らしい。
生きていられる自信がない。
今は形式だけの次期魔王ということ。それでも次の魔王が決まっているだけでも国は安定するらしい。魔王の座を争うことがないからだそうだ。
私の寿命が尽きるまで名前を貸すだけならいいかと思っていた。頑張ればマレンと同じくらいは生きてられるかもしれない。
お別れのとなり、テッテは迷っていた。
私に付いていくか、城に残って母親との暮らしを満喫するかだ。
テッテは冒険者というよりお姫様という方が似合っている。
これからは家族との思い出を作ってほしい。それに次期魔王の私であればいつでも城に入ることができるのだから正面から堂々と遊びに来れる。
だからテッテには城で暮らすよう促したのだ
「でしたらケーナ姉様、3ヶ月に1回は遊びに来てくださいまし」
「そんな、遠くの国に遠征とかしてたら無……理じゃないね」
空間転移でどうにでもなる。距離は問題にならない。
あとは時差があるぐらいだ。
「分かったなんとかする。妹のためだもんね」
「それでこそケーナ姉様ですわ!!」
最後は魔王、王妃、テッテそれぞれと抱擁を交わした。
そこで私が戸惑っていると
「家族が出かけて行くのですからこれくらい当然ですわ」
ここにも家族が出来てしまった。
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皆にお礼をしてお小遣いという名の褒美を受け取り、手配してもらった竜車でカスケードへ戻ったのだった。
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