159 / 221
水平線の向こうに③
しおりを挟む
「つけられてるね」
「へたくそな尾行なのじゃ」
「ハクレイもそう思います」
海から宿へ帰る途中でゴソゴソドタバタと背後から感じる気配。
それで本当に尾行なのかと問い詰めたくなるぐらいの主張の強い尾行。もちろん3人とも気づかないふりをして歩いてはいるが、私にいたってはその者の鑑定まで済ませている状態だ。
名はクライゼル・シュネッケ。服装は一般人、肩書は軍人で少佐のようだが、特段強くも弱くもなく普通の事務方軍人らしいステータス。尾行をするのであれば隠密系のスキルを持った者を人選すべきだろうとツッコミを入れたくてうずうずしていた。
「ケーナよ。このまま宿までついて来させるのか?」
「ただの監視役なのかなー? ちょっとだけお話してみようかな」
尾行させ監視するだけなら一般兵でことが足りる。それがわざわざ少佐が出向いているのだがら何か理由があるのかもしれないと思い、不意を突くように振り向いてみる。ハクレイもフランも合わせて振り向いてくれた。
「ひぃ!」
小さな悲鳴と引きつった顔。
逃げるのかと思いきやじわじわと近づいてきた。
「じ、自分はシュネッケ家三男、クライゼルと申します。こ、こんな格好ですが、じ、実は軍人でして、あ、あの、お嬢様方を護衛するようにと命ぜられてきましたしだいであります」
「一体誰にでしょうか?」
「グランキオ大佐であります。浜辺でお会いしたと聞いております」
「それはそれは、しかし本日はお忍びなので護衛がいては目立ってしまいます……」
「可愛いお嬢様方はそれだけで十分目立つので必ず護衛をしろとの事でした」
一応少佐で貴族の出身をまわしてきたのにはそれなりの配慮なのかもしれない。嬉しいことを言ってはくれているが、断られないように必死なのだろう。
「目立つのは百も承知じゃ。余らは可愛いからのぉ。だが足りておらぬ。余らは可愛いだけじゃなくての強いのじゃよ。なぁハクレイよ」
まるで打ち合わせでもしていたかのようにハクレイがするりと動く。
クライゼルの正面から眉間・喉・水月を狙った空を切る音と共にくりだされる高速3段突き、もちろん寸止めで。
あとから ぶわっ と吹き抜ける風がクライゼルの意識を飛ばしてしまう。
「はっ……」
何をされたかはギリギリ理解できていたようだが、瞬きすらできずに固まってしまっていた。もし寸止めじゃなければと脳裏によぎったなら恐怖でしかないだろう。
「一応このハクレイが護衛係じゃ。だがな、この中で一番弱いのもこのハクレイじゃ、次に余、あとは分かるじゃろ」
「……。」
「ごめんなさいねクライゼルさん、驚かさせてしまって。ほらハクレイも謝って」
「申し訳ございません」
「……はあ」
「しかしですねこの程度で固まっていては護衛もままならないでしょう。私たちに護衛は不要ですので本日はお引き取りください」
「……はい」
そしてまた3人でふり返り宿へと歩き出す。
ちょっとして後ろを見てみるとまだ固まっている。尾行は諦めてくれそうだ。
「それにしてもハクレイが前に出たから驚いたよ」
「フランさんが目配せするので、ここはハクレイの出番かと思いまして、取りあえず三段突きをしてみました」
「いい突きじゃったぞ。どうせなら当ててやってもよかったのにのぉ」
「しっかり鍛えてるって感じがしたよ」
「師匠なら更に人中と膻中と金的を加えた6段を同時に突きます」
「ゼンちゃんはスライムだからね。腕生やせるのは真似できないでしょ」
「師匠の突きは防御の隙間をぬい、追尾するので必中です。いかに衝撃を和らげるかを考えないと立てなくなりますね」
「あのピカピカスライムも意外とやるのぉ」
「ゼンちゃんに護衛してもらうかな」
「ピカピカだから目立つのじゃ」
「確かに……」
とりあえず、護衛は無しでこのまま3人で行動することにしたのだった。
「へたくそな尾行なのじゃ」
「ハクレイもそう思います」
海から宿へ帰る途中でゴソゴソドタバタと背後から感じる気配。
それで本当に尾行なのかと問い詰めたくなるぐらいの主張の強い尾行。もちろん3人とも気づかないふりをして歩いてはいるが、私にいたってはその者の鑑定まで済ませている状態だ。
名はクライゼル・シュネッケ。服装は一般人、肩書は軍人で少佐のようだが、特段強くも弱くもなく普通の事務方軍人らしいステータス。尾行をするのであれば隠密系のスキルを持った者を人選すべきだろうとツッコミを入れたくてうずうずしていた。
「ケーナよ。このまま宿までついて来させるのか?」
「ただの監視役なのかなー? ちょっとだけお話してみようかな」
尾行させ監視するだけなら一般兵でことが足りる。それがわざわざ少佐が出向いているのだがら何か理由があるのかもしれないと思い、不意を突くように振り向いてみる。ハクレイもフランも合わせて振り向いてくれた。
「ひぃ!」
小さな悲鳴と引きつった顔。
逃げるのかと思いきやじわじわと近づいてきた。
「じ、自分はシュネッケ家三男、クライゼルと申します。こ、こんな格好ですが、じ、実は軍人でして、あ、あの、お嬢様方を護衛するようにと命ぜられてきましたしだいであります」
「一体誰にでしょうか?」
「グランキオ大佐であります。浜辺でお会いしたと聞いております」
「それはそれは、しかし本日はお忍びなので護衛がいては目立ってしまいます……」
「可愛いお嬢様方はそれだけで十分目立つので必ず護衛をしろとの事でした」
一応少佐で貴族の出身をまわしてきたのにはそれなりの配慮なのかもしれない。嬉しいことを言ってはくれているが、断られないように必死なのだろう。
「目立つのは百も承知じゃ。余らは可愛いからのぉ。だが足りておらぬ。余らは可愛いだけじゃなくての強いのじゃよ。なぁハクレイよ」
まるで打ち合わせでもしていたかのようにハクレイがするりと動く。
クライゼルの正面から眉間・喉・水月を狙った空を切る音と共にくりだされる高速3段突き、もちろん寸止めで。
あとから ぶわっ と吹き抜ける風がクライゼルの意識を飛ばしてしまう。
「はっ……」
何をされたかはギリギリ理解できていたようだが、瞬きすらできずに固まってしまっていた。もし寸止めじゃなければと脳裏によぎったなら恐怖でしかないだろう。
「一応このハクレイが護衛係じゃ。だがな、この中で一番弱いのもこのハクレイじゃ、次に余、あとは分かるじゃろ」
「……。」
「ごめんなさいねクライゼルさん、驚かさせてしまって。ほらハクレイも謝って」
「申し訳ございません」
「……はあ」
「しかしですねこの程度で固まっていては護衛もままならないでしょう。私たちに護衛は不要ですので本日はお引き取りください」
「……はい」
そしてまた3人でふり返り宿へと歩き出す。
ちょっとして後ろを見てみるとまだ固まっている。尾行は諦めてくれそうだ。
「それにしてもハクレイが前に出たから驚いたよ」
「フランさんが目配せするので、ここはハクレイの出番かと思いまして、取りあえず三段突きをしてみました」
「いい突きじゃったぞ。どうせなら当ててやってもよかったのにのぉ」
「しっかり鍛えてるって感じがしたよ」
「師匠なら更に人中と膻中と金的を加えた6段を同時に突きます」
「ゼンちゃんはスライムだからね。腕生やせるのは真似できないでしょ」
「師匠の突きは防御の隙間をぬい、追尾するので必中です。いかに衝撃を和らげるかを考えないと立てなくなりますね」
「あのピカピカスライムも意外とやるのぉ」
「ゼンちゃんに護衛してもらうかな」
「ピカピカだから目立つのじゃ」
「確かに……」
とりあえず、護衛は無しでこのまま3人で行動することにしたのだった。
1
あなたにおすすめの小説
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
キモおじさんの正体は…
クラッベ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生し、ヒロインとなったナディア。
彼女はゲーム通りにいかない悪役令嬢のビビアンに濡れ衣を着せ、断罪イベントの発生を成功させる。
その後の悪役令嬢の末路は、ゲーム通りでは気持ち悪いおっさんに売られていくのを知っているナディアは、ざまぁみろと心の中で嘲笑っていた。
だけどこの時、この幸せが終わりを迎えることになるとは、ナディアは思っても見なかったのだ。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
イジメられっ子世に憚る。
satomi
ファンタジー
主人公須藤正巳はぼんやりと教室で授業を受けていた。その時、突然教室中に物凄い量の光が…。 正巳が属する2-C全員が異世界転移することとなってしまった。 その世界では今まで正巳が陰キャとして読み漁ったラノベともゲームとも異なり、レベルがカウントダウン制。つまりレベル999よりレベル1の方が強い。という世界だった。 そんな中、クラスのリーダー的陽キャである神谷により全員で教室の外に出ることに。 いきなりドラゴンに出会い、クラスの全員がとった行動が『正巳を囮にして逃げること』だった。 なんとか生き延びた正巳は、まず逃げた連中へ復讐を誓う。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる