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魔力量なんてただの飾りですよ②
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「はようじゃの」
「あ、おはようございます」
「ハクレイよ。まだ朝じゃというのに、なぜケーナは難しい顔をしとるんじゃ?」
「分かりません。ハクレイよりも先に起きてたみたいで、ソファーでずっとあのような感じです。悪い夢でも見たのでしょうか」
「余の声も聞こえてないようだったからの。そうとう考えこんどるのかの」
フランの言う通り、並列思考・思考加速をフルに使っているので周りの事は無視している。
考えていることはもちろんインテルシア魔導国のこと。
ずっと私が国家間の問題に割って入る上手い理由を考えているが肩書きが邪魔をする。
「あーやっぱり私魔王だし、戦争の間に入っちゃダメだよねー」
「やっと口を開いたと思えば、おかしな事をいいだすの」
「だって国と国との戦争を、私1人でどうにかなると思う? 無理だよー」
思わず愚痴をこぼしてしまった。
「なんじゃ戦争を終わらせる方法が知りたいのかの?」
「いや、まだ始まってないんだけどね」
「どちらにせよケーナなら簡単であろう」
「かん……たん……?」
「下から潰すか、上から潰すかじゃ。下というのは下っ端で最前線に出てくる奴らのことじゃ。この者たちをほとんど逃がさず潰しての、あっ、この、ほとんどというところがコツじゃぞ。全部殺しては前線の状況が伝わらんからの。そして後から来るもの来るものもどんどん潰していくのじゃ。ある程度潰すと諦めて誰も攻めてこなくなるの」
何度も経験済みの方法なのだろう、コツを知ってるあたりが恐ろしい。
フランがまだ森の奥で引き篭もっていた頃の話しなら仕方ない。
「一応聞くけど上からは?」
「周りを囲んでも攻めてこんときの話じゃ。放っておくと増えるからの、夜に潰しに行けばよい。だいたい人族をまとめてる奴はの屈強そうな奴か、派手で肥えてる奴かじゃ。そんな奴らの寝首を3、4人ちょいと刎ねればおしまいじゃ。次の日なっても状況が変わらんのであれば、また夜にでも3、4人似たような奴の首を刎ねに行く。繰り返してもだいたい20の首が切られる前に帰っていくの」
フラン対一般の軍隊では仕方ないのかもしれない。
「冒険者に捕らわれていたのが嘘みたいね」
「奴らは別じゃ、人族でありながら気配は獣に近いからの。それでいて狡猾。ほんの僅かな油断を突いてくるのじゃ。数週間かけて音もなくじっくり近づいて来る敵など想定しておらんのじゃ」
「それは、そうねよ……」
「どうじゃ? 参考になったかの」
「残念だけど、どちらも魅力的な作戦には見えないね」
なるべく殺さない事を前提に考えているのに、皆殺し作戦は当然却下だ。
血で血を洗う戦場になりかねない。
「ハクレイも1つ考えました」
「是非教えて」
「弱い者では戦争を止めることができませんが、戦争をしてたり、しようとしてたりする国と国が無視できないような強い者が現れたらどうでしょう」
「無視できないとなると……」
「ケーナではダメなのですよね。ならエンドさんはどうでしょうか? エンドさんがアヤフローラに来たときは騒ぎになりましたよね」
「そうね……その考え方ありね」
三人寄れば文殊の知恵とはよく言ったものだ。
「お役に立てて嬉しいです」
「でも、エンドでもまだ足りないかも、強さというか知名度がね。警戒されるとは思うけど、こちらが攻撃するわけじゃないから戦争を止めるまでは……」
「しかしじゃな、あのドラゴンよりもとなると……古の森に住むエルダーエルフのじじいかの。……あのじじい知っておるか?」
そのエルダーエルフのじじいとやらに私もハクレイも心当たりがない。人族からみた情報が古すぎるのかもしれない。
ここで私が求める強者には条件がある。ただ強いだけじゃなく、その恐ろしさを誰もが知っていることだ。でなければその存在が現れたところで意味がない。
となると、私が思い当たるのは1人だけ。
「噂になるぐらい強くて恐れられている人はあの人ぐらいかな」
「いったい誰のことじゃ?」
「魔王、クレアさん」
2人とも驚いている。勇者に討伐されたのは有名な話。
「死んだ魔王を復活でもさせるのか!? 禁忌の魔法じゃぞ」
「そんな事はしないよ。ここだけの話、クレアさんは生きてる可能性があって色々調べたんだよね」
2人の驚きに拍車がかかる。
「トット前魔王に名前を教えてもらったときはちょっと濁されたせいで気づかなかったけど、正確な名前はクレア・シエヴィス。同じ家名を持つ人を知ってるんだよ。きっとその人が何か手掛かりを持っていると思うんだよね」
クレアと同じ家名を持つのはヨー・シエヴィス。
テッテの専属メイド、ヨシエの本名だ。本名を言い当てられたときに驚いていた気持ちが今なら分かる。家名持ちがメイドをするなんて何かあるとはうすうす思っていたけど、まさか魔王クレアと同じ家系なことは予想外だった。
「クレアの名は知っておる。あやつ生きているかもしれんという情報だけでも戦争が止まりそうな気がするのじゃが……」
「ハクレイも勿論知っています。秘めた力は大地を消滅させるほどの力を持っているとか多くの勇者パーティーを追い詰めたとか、討伐の情報が出回ったときは世界中が安堵したそうですね」
それだけの知名度と恐怖を持つ者であるならこれ以上にない人選かもしれない。
「よし、そうと決まれば探しに行かなきゃ」
「良いのか? あの魔王クレアが相手だとケーナであっても危険かもしれんぞ」
「大丈夫そんなことにはならないよ。私は友達になることを提案しにいくだけなんだから」
「ともだち……魔王クレアと友達……? これからでしょうか? ハクレイもついていきます!」
ハクレイは覚悟を決めたような目で見つめてくる。まるで魔王クレアと一戦交えるような意気込みだ。
「えっとね、気持ちは嬉しいけど、最初に会いに行く人が魔王の家系であることを普段隠している人だから私1人で行くことにするよ」
「そうですか……」
しょんぼりハクレイ。私についていけないことを残念がっている様子。
突き放していると誤解されそうなので、お腹に手を当てて少し考える。
「……よし、ハクレイの朝食を食べてからいこう」
「余もそうした方がいいと思うのじゃ。いったん落ち着いた方がいいのじゃ」
「わかりました! ではすぐ用意いたしますね」
腹が減っては戦止めができぬ。ということにしておこう。
「あ、おはようございます」
「ハクレイよ。まだ朝じゃというのに、なぜケーナは難しい顔をしとるんじゃ?」
「分かりません。ハクレイよりも先に起きてたみたいで、ソファーでずっとあのような感じです。悪い夢でも見たのでしょうか」
「余の声も聞こえてないようだったからの。そうとう考えこんどるのかの」
フランの言う通り、並列思考・思考加速をフルに使っているので周りの事は無視している。
考えていることはもちろんインテルシア魔導国のこと。
ずっと私が国家間の問題に割って入る上手い理由を考えているが肩書きが邪魔をする。
「あーやっぱり私魔王だし、戦争の間に入っちゃダメだよねー」
「やっと口を開いたと思えば、おかしな事をいいだすの」
「だって国と国との戦争を、私1人でどうにかなると思う? 無理だよー」
思わず愚痴をこぼしてしまった。
「なんじゃ戦争を終わらせる方法が知りたいのかの?」
「いや、まだ始まってないんだけどね」
「どちらにせよケーナなら簡単であろう」
「かん……たん……?」
「下から潰すか、上から潰すかじゃ。下というのは下っ端で最前線に出てくる奴らのことじゃ。この者たちをほとんど逃がさず潰しての、あっ、この、ほとんどというところがコツじゃぞ。全部殺しては前線の状況が伝わらんからの。そして後から来るもの来るものもどんどん潰していくのじゃ。ある程度潰すと諦めて誰も攻めてこなくなるの」
何度も経験済みの方法なのだろう、コツを知ってるあたりが恐ろしい。
フランがまだ森の奥で引き篭もっていた頃の話しなら仕方ない。
「一応聞くけど上からは?」
「周りを囲んでも攻めてこんときの話じゃ。放っておくと増えるからの、夜に潰しに行けばよい。だいたい人族をまとめてる奴はの屈強そうな奴か、派手で肥えてる奴かじゃ。そんな奴らの寝首を3、4人ちょいと刎ねればおしまいじゃ。次の日なっても状況が変わらんのであれば、また夜にでも3、4人似たような奴の首を刎ねに行く。繰り返してもだいたい20の首が切られる前に帰っていくの」
フラン対一般の軍隊では仕方ないのかもしれない。
「冒険者に捕らわれていたのが嘘みたいね」
「奴らは別じゃ、人族でありながら気配は獣に近いからの。それでいて狡猾。ほんの僅かな油断を突いてくるのじゃ。数週間かけて音もなくじっくり近づいて来る敵など想定しておらんのじゃ」
「それは、そうねよ……」
「どうじゃ? 参考になったかの」
「残念だけど、どちらも魅力的な作戦には見えないね」
なるべく殺さない事を前提に考えているのに、皆殺し作戦は当然却下だ。
血で血を洗う戦場になりかねない。
「ハクレイも1つ考えました」
「是非教えて」
「弱い者では戦争を止めることができませんが、戦争をしてたり、しようとしてたりする国と国が無視できないような強い者が現れたらどうでしょう」
「無視できないとなると……」
「ケーナではダメなのですよね。ならエンドさんはどうでしょうか? エンドさんがアヤフローラに来たときは騒ぎになりましたよね」
「そうね……その考え方ありね」
三人寄れば文殊の知恵とはよく言ったものだ。
「お役に立てて嬉しいです」
「でも、エンドでもまだ足りないかも、強さというか知名度がね。警戒されるとは思うけど、こちらが攻撃するわけじゃないから戦争を止めるまでは……」
「しかしじゃな、あのドラゴンよりもとなると……古の森に住むエルダーエルフのじじいかの。……あのじじい知っておるか?」
そのエルダーエルフのじじいとやらに私もハクレイも心当たりがない。人族からみた情報が古すぎるのかもしれない。
ここで私が求める強者には条件がある。ただ強いだけじゃなく、その恐ろしさを誰もが知っていることだ。でなければその存在が現れたところで意味がない。
となると、私が思い当たるのは1人だけ。
「噂になるぐらい強くて恐れられている人はあの人ぐらいかな」
「いったい誰のことじゃ?」
「魔王、クレアさん」
2人とも驚いている。勇者に討伐されたのは有名な話。
「死んだ魔王を復活でもさせるのか!? 禁忌の魔法じゃぞ」
「そんな事はしないよ。ここだけの話、クレアさんは生きてる可能性があって色々調べたんだよね」
2人の驚きに拍車がかかる。
「トット前魔王に名前を教えてもらったときはちょっと濁されたせいで気づかなかったけど、正確な名前はクレア・シエヴィス。同じ家名を持つ人を知ってるんだよ。きっとその人が何か手掛かりを持っていると思うんだよね」
クレアと同じ家名を持つのはヨー・シエヴィス。
テッテの専属メイド、ヨシエの本名だ。本名を言い当てられたときに驚いていた気持ちが今なら分かる。家名持ちがメイドをするなんて何かあるとはうすうす思っていたけど、まさか魔王クレアと同じ家系なことは予想外だった。
「クレアの名は知っておる。あやつ生きているかもしれんという情報だけでも戦争が止まりそうな気がするのじゃが……」
「ハクレイも勿論知っています。秘めた力は大地を消滅させるほどの力を持っているとか多くの勇者パーティーを追い詰めたとか、討伐の情報が出回ったときは世界中が安堵したそうですね」
それだけの知名度と恐怖を持つ者であるならこれ以上にない人選かもしれない。
「よし、そうと決まれば探しに行かなきゃ」
「良いのか? あの魔王クレアが相手だとケーナであっても危険かもしれんぞ」
「大丈夫そんなことにはならないよ。私は友達になることを提案しにいくだけなんだから」
「ともだち……魔王クレアと友達……? これからでしょうか? ハクレイもついていきます!」
ハクレイは覚悟を決めたような目で見つめてくる。まるで魔王クレアと一戦交えるような意気込みだ。
「えっとね、気持ちは嬉しいけど、最初に会いに行く人が魔王の家系であることを普段隠している人だから私1人で行くことにするよ」
「そうですか……」
しょんぼりハクレイ。私についていけないことを残念がっている様子。
突き放していると誤解されそうなので、お腹に手を当てて少し考える。
「……よし、ハクレイの朝食を食べてからいこう」
「余もそうした方がいいと思うのじゃ。いったん落ち着いた方がいいのじゃ」
「わかりました! ではすぐ用意いたしますね」
腹が減っては戦止めができぬ。ということにしておこう。
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