冷遇された公爵子息に代わって自由に生きる

セイ

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冒険者

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さて、無事街の外まで来たけどどうしようか…?

「…ファイはさ、この街の人?何か用事があって居たんじゃないの?大丈夫?」
「俺は隣の国の出身だ。冒険者として護衛の依頼でここまで来てた。依頼も終わっていたしやる事も特に決まってないから大丈夫だ」
「護衛依頼ならパーティーで来てたんじゃないの?仲間は?」
「あ~…アイツらは街で遊んでんじゃねぇかな?この後は特に仕事入れてねぇから自由にさせてる」
「ふ~ん…。隣国か…じゃあファイの活動拠点の街に連れてって!!で、俺冒険者登録したいんだ!!」
「冒険者になりたいのか?俺の嫁でもいいぞ?」
「…何で嫁なの。婿でもいいじゃん」
「気になるのそこなの可愛いなぁ…。俺と一緒になる事には反対しないんだ?」
「うぇ!?あ…!!///」

俺は無意識のうちにもうファイとはずっと一緒だと決めていたのだろうか…。

ファイの触れる温もりが心地良いのはホント。
出会って間もないけど安心するのもホント。

普段なら警戒心ガチガチなはずなのにファイは最初からそんな事はなかった。

「とにかく!!隣国までお願い!!」
「嫁さんの仰せのままに」
「それやめて!!」
「恥ずかしがるナルも可愛い」

俺の頬にキスをするファイはとても嬉しそうに笑ってる。

「何でそんな嬉しそうなの?」
「番が俺の国に来てくれるんだ。嬉しいに決まってる」
「ふ~ん…そうなんだ…」

今までの反動なのか求められる事がこんなに嬉しいのだとしみじみ思った。
と、同時に俺ではなくて、本物のナサニエルがファイの番だったのだと思うと切なくもなる。
本当に愛されるべきなのは俺ではなくナサニエルなんじゃないかと…。
本当に俺なんかがファイの番でいいのかと不安にもなる。ファイに本当の事を言ったほうがいいんじゃないかと考えてしまう…。

「ナル…?」
「あ…何でもない」

既に本物のナサニエルは居ないのだから考えても仕方ないのだけど。
嬉しそうに番を想うファイを今更手放せないなと思うのはもう俺もファイに心掴まれているのだろう。
ナサニエルの分まで幸せになろうと改めて心に誓った。

「じゃ早速行こう!」
「ああ。仲間にちょっと連絡入れるから少し待ってて。カルラ」

ファイは魔力を込めたと思ったら掌サイズの赤い鳥を召喚した。

「ファイ何だ。今日はもう何もないって言ってただろ?ん…?このちんまいのは誰だ?」

鳥が喋った!!え?魔獣か喋るってことはかなり高位レベルの魔獣なんじゃ?高位魔獣って人に従わせるの難しいって本に書いてあったような気がするけど?ファイってそんな強いの?

「この子は俺の番のナルだ。覚えておけよ?」
「!?お前に番!?お前番諦めてなかったか?」
「この街で見つけた。ナルも一緒に帰る。俺とナルは先に帰るから仲間たちにこの事を伝えてきてくれ」
「了解。チビちゃん。我はカルラと言う。よろしくな」
「へぁ!?あ、はい!!ナルです!!よろしくお願いします!」
「ふむ…お前ファイよりも美味そうな魔力してんな…」
「カルラ…?俺の番に何しようとしてる?手ぇ出したら容赦しねぇよ?」
「お前の番になんか手ぇ出さねぇよ。お前に消されるのがオチだからな」
「…ファイって強いの…?ランクは?」
「…まぁ、そこそこ?Sランクだよ」

Sランクでそこそこって何?
最強旦那様GETしちゃった感じ?

今度魔法の練習に付き合ってもらおう。

「さて、伝言も伝えたし、出発するか…ナルの…転移は使うのに制限があるのか?」
「うん。見たことある場所しかダメだから知らない所は行けないんだよねぇ…」
「そうか。じゃのんびり行くか。街から初めて出たんだろ?ゆっくり観光気分で歩くのもいいだろ」
「うんうん!!」

ファイが差し出した手をとってゆっくり歩き出した。

ナサニエル…俺達は自由だよ。
あの狭い世界から広い世界に出たよ…。

沢山の幸せがきっと待ってるよ……











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