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しおりを挟む「よいっしょー!!
フゥーー、開いた...って何にも無いじゃない!?
それにお姉ちゃんどうしたのその顔!?」
ファ!?
ああ、訳が分からなくてパニックになっていた。
「まるでFXで全財産とかしたっていうか、虚無って感じの顔をしてるよ
一体どうしたの?」
フッカは今しがた私に起きた現象に気が付かなかった…いや、もしかしたら私の気のせいだったのかもしれない。
…いや、絶対気のせいだ。なんせラージットをテイムしようとして何度も失敗したんだこんな簡単にナニかをテイムできるとは考えられない。
私はメニュー画面を開くと『種とスキル』の項目に触れた。
この『種とスキル』とは他のゲームで言うところのスキルツリーのようなもので、自分が選んだ種の成長具合を見たり、それによって得たスキルを確認できる優れものである。
私の『使役系』の種はまだテイム出来ていないからまだ地面に埋まってて芽も出ていないはずである。
しかし不思議なことに私が確認するとそこには紫色の毒々しい葉をつけた苗木がチョコンと生えていた。そしてその苗木の上には『死霊術士』というアイコンが...
「ちょっと、お姉ちゃんどうしちゃったの!?」
遠くでフッカの声が聞こえた様な気がしたが私の目の前は真っ暗になった。
目を開けるとそこには雲ひとつない青い青い空が広がっていた。
視界の端で小鳥が飛んでる。テイマーになったらあの小鳥もテイム出来るのかな?
ああ、それはもう無理か。何せ私は死霊術士だものね...。
.................、殺したら仲間にできるかしら?
「あ、良かった....ってヤバイよお姉ちゃん!?
その顔はマズいよ!!」
さっきからなんだろうかこの妹は、私が何か考えればすぐ顔が顔がと、そんなに変な顔なら隠しますよ。
私は以前フッカに貰ったペストマスクを再び顔に付けると立ち上がって周囲を見回した。
うん?どうやらここはさっきまでいた館の庭のようだ。
TWOの設定が剣と魔法のファンタジーのせいかどうか分からないけど足元に敷かれているのはビニールでできたレジャーシートなどではなく小さな絨毯が地面に敷かれ、ファンタジーの世界の筈なのに何故か魔法瓶の様な入れ物にティーカップ、バスケット、少しヨレヨレになった本などピクニック?と言いたくなるような物が近くに転がっている。
「本当に大丈夫お姉ちゃん?
どこか身体は痛くない?」
「いや、別に何処も痛く無いけど
どうして?」
私の言葉にフッカはほっとため息をついた。
ゲームの世界だから痛くても現実に戻ればなんとも無いし気にしないけど
「うん?さっき気絶して倒れた拍子に思いっきり後頭部を強打していたから。コブになってるんじゃないかと思ってね。もしかして痛覚表現を0にしてるの?
アリサさんは依頼の完了を報告に斡旋所に一回戻ってるけどかなり心配してたよ。
どうして気絶しちゃったの?」
痛覚表現....。そんなのもあるのね。
ホント、芸が細かいねこのゲーム。
それよりも、私は気絶していたのか。
通りであの隠し部屋から外に出た記憶が無いわけだ。
気絶した理由は....。
うーん、どう説明したものか。
とりあえず私はフッカにことの子細を出来るだけ分かりやすく説明するのであった。
「なるほどそれで気絶したと。
なんというか....。ご愁傷さまです。」
途中で戻ってきたアリサさんにもことの顛末を話すととても可愛そうな物を見るような目でこっちを見てきた。
「うーん、でもなんというか。
昔から色んな動物に嫌われてたから薄々テイマーになるのは無理な気がしてたんですよね.....。」
「一応、ドウの街には種屋という才能を売っている施設があるのでまだ望みが絶たれた訳では無いと思います.....。ただ、辛いですよね.....。」
そう言うとアリサさんは私を抱きしめて頭を優しく撫でてくれた。
「モゴ、いえ。不思議とあまり悲しく無いんですよね。聞いたところによるとまだチャンスもあるっぽいですし、なんで大丈夫ですよ。」
「いえいえ、言葉ではそう言ってますが
心では悲しいはずです。だからおねえちゃ....私に任せてください。癒してあげますから......クンクン。」
そう言ってアリサさんは抱きしめる力を強めた。
ん?アリサさん、鼻息が荒いぞ?
「とっ、とりあえずお姉ちゃんは仲間を手に入れたけどちゃんとは見てないんだよね?
それじゃあ今、召喚してみたら?」
何故か頬を赤く染めているフッカはどうやら私が仲間にした屍人に興味があるらしい。
「それは良い考えですね。
実戦になってから召喚するよりもまずここで顔合わせをしておけば戦いやすいでしょうし。」
私の身体に抱きついたままのアリサさんもフッカの意見に賛成のようだ。
だが、果たして屍人と顔合わせをして一体なんの意味があるのだろうか?
私の勝手なイメージだがゾンビという生者を食べようと集団で襲ってくるTHE腐った死体。
それをこんな街中にしかも大きな屋敷が建ち並ぶこの通りにポーンと召喚して良いのだろうか?
まあ、なんとかなるだろうから取り敢えず召喚してみよう。
ええと、『種とスキル』から才能やスキルの詳細を見ることが出来るはずだから.....、これか
......どうやら召喚には一滴でも召喚主の血が必要らしい。なんとも黒魔術っぽくなってきた。
私はアリサさんの持っていた針(私のナイフでも良かったけど普段これでラージットと戦っていてなんとなく汚い気がしたのでやめた)で左手の人差し指の先っぽを軽く刺すと血が数滴ほど地面に落ちた。
痛みは…やはりない。どうやらフッカの言っていた通り痛覚表現が0になっているからだろう。
痛いのは好きじゃ無いけど気づかずダメージを負っていた!?ってことになりかねない(実際あった)し後で設定をいじっておこっと。
まあ、それはさておき
「じゃあ、呼んでみるね。
『召喚:アンとウン』!!」
私が地面に手を付いて『屍人召喚』のスキルを使用すると、地面に滴り落ちた私の血を中心に所謂魔法陣が赤黒い光を発しながら浮かび上がった。
そしてその中央から先ほど私の腕を掴んだ2組の手が這い上がろうとするかのように地面に手をつけると徐々に頭や身体も魔法陣から這い上がってきた。
魔法陣から現れたのは中性的な顔立ちをした14歳くらいの双子だった
「「・・・・・・・。」」
「うわ、屍人なんて言われなきゃ分かんないね。
この子たち絶対レアゾンビだよ。」
レアゾンビってなんだ。
だが、フッカの言う通りアンとウンは若干顔色は悪いが生身の人間のように見える。
「それにしてもどっちがアンさんでどっちがウンさんなんでしょう?
こんなにそっくりじゃあ見分けがつきませんね。」
アリサさんが困った様に言うのを聞いているのかは定かでは無いがアンとウンは魔法陣の上でただ不思議そうな顔をしている
うん?ああ、なるほど
「私たちから見て左にいるのがアンで右にいるのがウンね。」
「どうして分かるの!?」
「うーん、勘かな?」
死霊術士になったからかなんとなく、彼等の違いというか区別がつくようだ。
アンは少し目が鋭くあちこちを見回しているのに対してウンの方は私の顔をジッと見つめてくる。
「まあ、いいや。
取り敢えず二人ともよろしく。」
「ゔぁ?」
「ゔぉ?」
私がアンとウンに声をかけ頭をソッと撫でてみると2人は不思議そうに私の手を見つめていた。
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