魔王城の面子、僕以外全員ステータスがカンストしている件について

ともQ

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第2話 魔王様は可愛い

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 幼さを感じる声だった。
 カツコツと、通路の奥から足音が徐々に近付いて来る。魔王、絶対に魔王って言ったよな? いやまさか、普通こんなことある? 魔王の消失がクリア条件、そしてその魔王が今僕の眼前にいるという状況――、

「そういえば、あなた不法侵入ですよね。強制的に人生共々ここから退去させることも可能ですが――さて、どうしましょうか」

 ――いきなり、ゲームオーバーなのか。
 僕の認識する世間一般でいう魔王ならば、とてつもなく恐ろしい力を秘めて、見るだけで失神ものの姿をしており、そのオーラだけで圧倒される。

「……僕を、殺すのか?」
「ふふ、冗談ですよ。そう怖がらないでください」

 くすりと笑い、姿を現した魔王は――、

「えっ? き、君が、魔王?」

 ――とても小さく、全てが可愛らしいの一言に尽きた。
 さらりと腰まで伸びた金色の髪、宝石のような金色の瞳、お姫様のような可憐な服装、なんと愛らしい容貌か――妖精かと思った。
 しかし、頭の左側に一本の大きな角。
 魔王らしく禍々しい――なんてとんでもない。そのアンバランスなギャップが、なんとも言えない胸キュンさをかもしだしている。

「初めまして。私の名前はニャンニャ、この魔王城の主の一人です」
「……」
「どうしました、人間? それにしても、ここに迷い込むなんて不運。あまりの恐ろしさに言葉を失って――」
「名前まで可愛い」
「えっ?」
「その容姿にその名前、いくらなんでも反則すぎる! あ、こちらの挨拶ってハグ式でしょうか? ハグ式ですよね」
「――は? ぇっ? ちょ、ちょっと待ってくだ」

 本能のまま、僕は魔王を勢いよく抱き締め、

「僕の名前は天音晴人! よろしくお願いしますっ!」
「◯×◇△××@@!?!?!」



 ――衝撃と共に、視界が真っ暗になった。



 目を覚ますと、見知らぬ天井が目に入る。

「ここ、は」
「魔王城の客室だよ」
「……客室? なんかよくわからないけど、僕は気を失っていたのかな?」
「うーん。気を失うというより、最早死んでたかな」
「……死?」
「ふふん、ワンワが復活させたんだよ。なでなでしてくれてもいいんだから」

 復活、させた? 
 意味はよくわからないが――とりあえず、僕は目の前の人物に言われるがままありがとうと頭をなでる。その都度、ゴツンゴツンと手に走る衝撃。
 ……OH、角だ。
 魔王と謳った彼女――ニャンニャに瓜二つの容姿である。唯一違う点といえば髪と瞳の色、角の位置が反対側にあるくらいだろうか。

「キレイな銀髪だね」
「え? キレイ、かな? そ、そんなこと初めて言われたかも」

 と、目を細めながら嬉しそうにはにかむ彼女。

「僕の名前は天音晴人。えっと、君は――ニャンニャのお姉さんか妹かな?」
「よろしく、晴人! ワンワの名前はワンワ、ニャンニャと双子のお姉さんだよ」

 にゃ、ニャンニャにワンワだと? 
 正直に言うと、僕は可愛いものには目がない。二人は容姿もさることながら、ワンちゃんと猫ちゃんを彷彿させる愛くるしい名前である。

「そういえば、そのニャンニャは?」

 僕の問いかけ、ワンワは笑いながら、

「さっきまでここにいたよ。いつも冷静なニャンが真っ赤な顔でボロボロになった晴人を抱えてやって来た時は驚いたなぁ。もう大変だったんだよ? 全身傷だらけの血だらけで治すのにすごい時間かかったんだからね」
「んんっ?!」
「あは。あのニャンがあそこまで取り乱すなんて中々ないよ」

 すごい状態になってたんだなぁ、僕。

「ニャンはね、『斬撃』が得意なんだ」
「『斬撃』?」
「この世界では誰もがスキルを一つ保有しているでしょ。ニャンは鋭利な爪でこの世の全てを引き裂く力を持っているんだよ」

 スキルの保有。
 そういえば、チュートリアルにも載っていたっけ。
 異世界に転移された後、個々にスキルが付与される。加えて、自身の体力や知識がもとの世界を基準に数値化すると――僕はデバイスを起動させ、自身のステータスを確認してみる。


 名前  天音晴人
 職業  大学二年生
 性能  HP 5(生命力) MP 6(魔力) 
     STR 2(攻撃) DEF 8(防御) INT 7(魔力) 


 マックス10だよね?
 そして、この世界で生き抜くための大事なスキルはといえば、

 スキル 天候操作(Lv.1)――天気を晴や雨にできる。
 SP  未取得

 なんだろう、めちゃくちゃしょぼそうなんですが。

「ふわー。これって機械? なんかすごいねっ!」

 ワンワが身を乗り出し、デバイスを覗き込む。
 ワンワの驚き方を見る限り、こちらの世界にはこういった文明機器はないのか、それとも魔王城だからないのか――まだいまいちこの世界の背景は見えてこない。
 そういえば、このデバイスを照射すれば色々なものが確認できるってあったな。今の僕みたいに表示されるのだろうか。

「ワンワ、ちょっとステータス見せてもらっても大丈夫かな?」

 念のために了承を得る。ワンワはスカートの裾を可憐に持ちながら――、

「どうぞ、好きにみていいよ」

 ――きゃわぃいいい!


 名前  ワンワ・キャドッグ
 職業  魔王
 性能  HP9999 MP0
     STR9999(攻撃) DEF9999(防御) INT0(魔力)
 スキル 究極破砕(Lv.10)――この世の全てを破壊する力。
 SP  ぺろぺろ(35/99)
     ここ掘れワンワ(30/30)
     くんくん(10/15)
     咆哮(5/5)
     金剛身(3/3)
     ユニオン(1/1)


「えへへ。ワンワのステータスはどうかな?」

 いやもう強すぎるだろ、一気に冷静になったわ。
 僕のステータスがゴミだよゴミ、せめて百の位がマックスだと思ってたのに千の位とかもう絶望を通り越して脱帽ですよ。
 ……加えて、ニャンニャも含め魔王が二人いるということか。
 マジで言うけど魔王を消失させるなんてできるわけないよね? 誰が考えたのこのハードなクリア条件? レベル1の勇者がいきなりラストダンジョンに飛ばされて世界救えると思う?
 いったん、魔王消失というクリア条件は後回しにしよう。なにより、このことが二人にバレるのは非常にまずい気がする。
 まずは、情報収集から始め――、

「魔王、消失? 晴人はワンワたちを倒しにきたの?」

 ――いつの間にか、ワンワが僕の横でデバイスをいじくり回していた。
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