魔王城の面子、僕以外全員ステータスがカンストしている件について

ともQ

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第3話 魔王様は優しい

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 さて、速攻でバレてしまったわけだが――、

「実はワンワたちを倒さないと、僕はもとの世界に帰れないんだ」

 ――僕はもう素直に話すことにした。
 正直、年齢は僕より遥かに上かもしれないが――子供のように笑ったりするワンワを見て嘘を吐こうとは思わなかった。
 まあ、ハッキリとした敵宣言である。数秒後、僕はワンワに殺されて『リターン』となるかもしれない。
 こちらの世界では殺されても、実際に死ぬ可能性は最小限となっている。
 僕の住んでいる世界、フェルティフェアリという異世界――二つの世界を結ぶゲートを身体が通過する際、こちらに来る以前の状態を基準として一定の修復がなされるのだ。
 このリターンの措置はデバイスが持ち主の状態を死亡と判断した時のみ、強制的にもとの世界への転移を発動する。だが、あまりに甚大なダメージを受けてしまうと、修復にも限界があり無傷というわけにはいかないのだ。
 正直、あまりにグロテスクな死に方だと普通に死ぬこともある。
 そのために『異世界保険』なるものが存在し、異世界に関わる事故で死亡した際は保険が下りる仕組みとなっている。その額が非常に大金のため、親族もニッコリという寂しい世の中になりつつあった(自身加入済み)。
 保険云々の話はさておき、このリターンは避けたいのが本音である。
 何故なら、文字通りリターンの条件はこちらで死んでしまうこと。イコール失敗と同義だからだ。異世界の履修が当たり前となった世の中、履修の成否は今後の未来に多大な影響を与える。僕の場合は進級の条件がクリアできずとなり、再度二年生をやり直すという形になるだろう。
 覚悟を決めて話した僕、ワンワの反応はというと、

「晴人は本当にワンワたちの敵なの? だって、晴人はよい人だよね」

 予想外の答えだった。
 ワンワは僕の肩に頬擦りをし、くんくんと鼻を動かす。その姿はとても愛らしく僕は自然とワンワの頭をなでていた。

「えへへ。ワンワね、匂いでわかるんだよ。悪い人からはすごく気持ち悪くていやな匂いがして――でも、晴人からは朗らかで暖かな匂いがするもん」

 あかん、この子天使やで。

「僕もう魔王消失なんて放棄する。なんか違う形でクリアできるように考える」
「晴人、なんで泣いてるの?!」
「あまりに純粋な心に触れてしまってなんか自分がいやになってきた。ニャンニャにも素直に話してくる。ニャンニャのいる場所はわかるかな? あと、魔王城も一緒に案内してくれると嬉しい」
「うん! ワンワにお任せっ!」

 なんかいっぱいお願いしてしまったが――ワンワは笑顔で快諾してくれた。

「ここはねー、美味しいものを作る調理場! あそこのピンクの扉はねー、ワンワとニャンニャのお部屋があるところ。さらに向こうはねー、悪い人たちを閉じ込めちゃう牢獄! あっちはねー、頭を使う作戦会議室! そっちのあっちはねー、魔王の間だよっ!」

 ワンワが僕の手を握り、魔王城の中を先導する。
 最初こっちこっちと腕を引っ張られた際、あまりの勢いに肩の関節がはずれたのだが――ワンワがぺろりとひと舐めすると痛みは消し飛び完治していた。

「すごいな、もう痛くもかゆくもない」
「ワンワの持っているSP『ぺろぺろ』だよ。舐めた箇所を治癒することができるんだ」
「えっ? じゃあ、ニャンニャにやられた僕を治したのって――」

 想像をして、自然と喉が鳴った。

「ん、全身を舐めたけど――あ、なんか言葉にすると、恥ずか、しいね」

 真っ赤な顔付きでワンワがぺろっと舌をだす。

「――女神だ、もう大好きワンワ!」

 ありがとう、ワンワ!

「だ、大好き?!」
「あ」

 心の声と真逆になっていた。
 それにしても、全身を舐めたってどこまで舐めたんだ? 僕はズバッとズボンの中を凝視する。いやはや、さすがにこんなディープな場所まではないだろう――ないよね? そんな僕の突飛な行動にワンワは疑問そうに首を傾げていた。

「SPって、スキルとはまた別物なのかな?」
「別物、別物かぁ、そんな感じの認識で合ってるかも? SPっていうのはね、スペシャルスキルのことなんだ。普通のスキルとは違って使用回数に制限があってね、制限がある分特殊な効果のものが多いんだよ」

 スキルにSPか。
 確か、僕は『天候操作 Lv.1』にSPは未取得とあったはずだ。僕のSPについてはこれから取得できるのか否か現状不明である。
 スキルやSPについては――今は保留しておこう。

「くんくん。ニャンニャはこっちかな! 魔王の間にいるみたい!」

 まずは、僕の命を確保するところから始めようか。
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