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第4話 魔王様 VS 魔王様
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魔王の間とは、僕が最初に転送された場所だった。
赤い絨毯にロウソク、薄暗い通路を奥へ奥へと進んでいくと――広い空間があり、そこには玉座のような椅子が二つ並んでいた。
ニャンニャはそのうちの一つに腰掛けながら、
「牢屋にぶち込んでおきなさい」
僕の顔を見るや、強めの語気でそう言った。
まるで、生ごみを見るような絶対零度の眼差し――突き刺さる視線で怒り具合が痛いくらいに伝わる。先ほど、僕が抱き付いたことに相当ご立腹のようだ。
「ニャン、晴人は悪い人じゃないよ」
「ワン、私の言葉を覚えていますか? 治したら牢屋にぶち込んでおきなさいと言ったでしょう? 仮にも不法侵入者、なにしに来たかあとで拷問して吐かせますので」
「だ、ダメだよ! 拷問なんてしたらっ!」
「この魔王城に侵入するのは容易いことではありません。この男はなにを隠し持っているかわからないのですよ? 勇者の使いという可能性もあります」
「晴人は勇者の仲間なんかじゃないもんっ!」
「ワン、言うことを聞きなさい」
「いやだ」
「「……」」
無言で睨み合う二人。
というか、この世界に勇者っていたんだ。話の流れから察するに二人の敵なのだろう。魔王と勇者、わかりやすい敵対関係である。
……しかし、この不穏な状況――どうする?
ニャンニャに話をしようにも取り付く島もない。ここは一度、僕という人物をわかってもらうため応援団よろしく一か八かと声を張り上げ――、
「僕の名前は天音晴人、さみだれ大学二年生の二十歳です! 趣味はお絵描き、お菓子作り、お裁縫ぉおお! サークル『ラブリー卍』に所属しており、可愛いものが大好きですぅうっ!!」
「聞いてませんし黙りなさい。勝手に発言してよいと誰が許可しました? 空気を読むことすらできないお馬鹿なのですか? 私はワンワと話しています」
「すいませんでしたぁっ!」
――僕は即座にワンワの後ろに下がる。
「ニャン、お願い。晴人の話をちゃんと聞いてあげて」
「……わかりました。ワンがそこまで言うのであれば検討しましょう」
玉座から立ち上がり、ニャンニャが言う。
「ですが、ワン――あなたの言葉が本気だというところを見せてみなさい」
まず、僕の髪の毛が風圧で全て吹き飛んだ。
一瞬のことなのでなにが起こったか瞬時に理解できなかったが――涼やかな頭の感触に僕は全てを悟った。
「晴人、大丈夫?!」
傷だらけで僕の眼前に立つワンワ。
ワンワが守ってくれたおかげで軽傷と言いたいところだが、いきなりのスキンヘッドに心は致命傷である。
ニャンニャは鋭く長い爪をこちらに向けながら、
「そうですね、3分の間私の攻撃からそいつを守ってみせなさい。大事なものであれば、それくらい容易いことでしょう?」
「わかった。ニャンがそれで納得するのなら――受けて立つよ。ワンワが勝ったら、ワンワのお願いを聞いてもらう」
「ええ、約束は守りましょう」
最強最悪の姉妹喧嘩が開始された。
そして、その主な原因は僕の存在であるという。緊張感で髪の毛が抜け落ちそ――おっともうすでに失っておりました。
「ガ、アアアアアアアアアアアアアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァアッ!」
ワンワが声高らかに吠えた。
衝撃波とでもいおうか。ワンワを中心に大気が振動――スパァン! と、その余波により僕の衣服が木っ端微塵に吹き飛ぶ。
最早、僕を守るものはなに一つない――アダルトベイビーの爆誕である。
ニャンニャも僕と同じく直撃したのだろう、衣服はボロボロに衝撃によってか天高く打ち上げられていた。
「ワン! いい加減に――」
ニャンニャが大きく目を見開き、落下する勢いのまま、
「――しろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
爪を振り下ろした。
明らかに僕を巻き込んだであろう攻撃は――周囲に深い爪痕が刻まれるのみで僕に当たった形跡はない。
「……晴人、怪我はない?」
「僕は無傷だけど、ワンワが――」
「大丈夫、ワンワは強い子だから!」
えへへ、とワンワが言う。
だが、その笑顔とは裏腹に傷だらけ、血だらけとなったワンワの身体――僕に攻撃が届かなかったという結果が今のワンワの姿を物語っている。
僕はワンワの肩に手を置き、そっと後方へと引き寄せる。
「晴人? 前にでたら危な――ぎょぎょっ! は、晴人、ふ、服」
ワンワがなにか言ったが――それより大事なことがある。
僕はワンワの前へと躍り出て、ニャンニャと対峙する。
「――僕が原因でこうなってることは重々理解している。ただ、もう姉妹喧嘩なんて見たくないんだ。これ以上するというのなら僕が相手をする」
「にゃっ! ああ、あなた、私という存在の前で! な、なな、なんて格好で、やぁっ、近付いて来ないでえっ」
ふっ、見せてやるぜ――STR2の底力。
僕はファイティングポーズを取り、ボクサーばりの動きで左右小刻みに跳ね回る。その際ぽちんぽちんとよい具合に合いの手が入るが――今はそれどころではない。
……生死を賭けた闘いが始まる。
僕はニャンニャを真っ直ぐに視界から逸らさず――ワンワが後ろからなにか叫んでいるが集中力マックスの僕の耳には届かない。
さあ、来るなら来い! と、覚悟を決めた瞬間、
「……きゅうぅう」
ニャンニャが真っ赤な顔でその場に倒れた。
赤い絨毯にロウソク、薄暗い通路を奥へ奥へと進んでいくと――広い空間があり、そこには玉座のような椅子が二つ並んでいた。
ニャンニャはそのうちの一つに腰掛けながら、
「牢屋にぶち込んでおきなさい」
僕の顔を見るや、強めの語気でそう言った。
まるで、生ごみを見るような絶対零度の眼差し――突き刺さる視線で怒り具合が痛いくらいに伝わる。先ほど、僕が抱き付いたことに相当ご立腹のようだ。
「ニャン、晴人は悪い人じゃないよ」
「ワン、私の言葉を覚えていますか? 治したら牢屋にぶち込んでおきなさいと言ったでしょう? 仮にも不法侵入者、なにしに来たかあとで拷問して吐かせますので」
「だ、ダメだよ! 拷問なんてしたらっ!」
「この魔王城に侵入するのは容易いことではありません。この男はなにを隠し持っているかわからないのですよ? 勇者の使いという可能性もあります」
「晴人は勇者の仲間なんかじゃないもんっ!」
「ワン、言うことを聞きなさい」
「いやだ」
「「……」」
無言で睨み合う二人。
というか、この世界に勇者っていたんだ。話の流れから察するに二人の敵なのだろう。魔王と勇者、わかりやすい敵対関係である。
……しかし、この不穏な状況――どうする?
ニャンニャに話をしようにも取り付く島もない。ここは一度、僕という人物をわかってもらうため応援団よろしく一か八かと声を張り上げ――、
「僕の名前は天音晴人、さみだれ大学二年生の二十歳です! 趣味はお絵描き、お菓子作り、お裁縫ぉおお! サークル『ラブリー卍』に所属しており、可愛いものが大好きですぅうっ!!」
「聞いてませんし黙りなさい。勝手に発言してよいと誰が許可しました? 空気を読むことすらできないお馬鹿なのですか? 私はワンワと話しています」
「すいませんでしたぁっ!」
――僕は即座にワンワの後ろに下がる。
「ニャン、お願い。晴人の話をちゃんと聞いてあげて」
「……わかりました。ワンがそこまで言うのであれば検討しましょう」
玉座から立ち上がり、ニャンニャが言う。
「ですが、ワン――あなたの言葉が本気だというところを見せてみなさい」
まず、僕の髪の毛が風圧で全て吹き飛んだ。
一瞬のことなのでなにが起こったか瞬時に理解できなかったが――涼やかな頭の感触に僕は全てを悟った。
「晴人、大丈夫?!」
傷だらけで僕の眼前に立つワンワ。
ワンワが守ってくれたおかげで軽傷と言いたいところだが、いきなりのスキンヘッドに心は致命傷である。
ニャンニャは鋭く長い爪をこちらに向けながら、
「そうですね、3分の間私の攻撃からそいつを守ってみせなさい。大事なものであれば、それくらい容易いことでしょう?」
「わかった。ニャンがそれで納得するのなら――受けて立つよ。ワンワが勝ったら、ワンワのお願いを聞いてもらう」
「ええ、約束は守りましょう」
最強最悪の姉妹喧嘩が開始された。
そして、その主な原因は僕の存在であるという。緊張感で髪の毛が抜け落ちそ――おっともうすでに失っておりました。
「ガ、アアアアアアアアアアアアアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァアッ!」
ワンワが声高らかに吠えた。
衝撃波とでもいおうか。ワンワを中心に大気が振動――スパァン! と、その余波により僕の衣服が木っ端微塵に吹き飛ぶ。
最早、僕を守るものはなに一つない――アダルトベイビーの爆誕である。
ニャンニャも僕と同じく直撃したのだろう、衣服はボロボロに衝撃によってか天高く打ち上げられていた。
「ワン! いい加減に――」
ニャンニャが大きく目を見開き、落下する勢いのまま、
「――しろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
爪を振り下ろした。
明らかに僕を巻き込んだであろう攻撃は――周囲に深い爪痕が刻まれるのみで僕に当たった形跡はない。
「……晴人、怪我はない?」
「僕は無傷だけど、ワンワが――」
「大丈夫、ワンワは強い子だから!」
えへへ、とワンワが言う。
だが、その笑顔とは裏腹に傷だらけ、血だらけとなったワンワの身体――僕に攻撃が届かなかったという結果が今のワンワの姿を物語っている。
僕はワンワの肩に手を置き、そっと後方へと引き寄せる。
「晴人? 前にでたら危な――ぎょぎょっ! は、晴人、ふ、服」
ワンワがなにか言ったが――それより大事なことがある。
僕はワンワの前へと躍り出て、ニャンニャと対峙する。
「――僕が原因でこうなってることは重々理解している。ただ、もう姉妹喧嘩なんて見たくないんだ。これ以上するというのなら僕が相手をする」
「にゃっ! ああ、あなた、私という存在の前で! な、なな、なんて格好で、やぁっ、近付いて来ないでえっ」
ふっ、見せてやるぜ――STR2の底力。
僕はファイティングポーズを取り、ボクサーばりの動きで左右小刻みに跳ね回る。その際ぽちんぽちんとよい具合に合いの手が入るが――今はそれどころではない。
……生死を賭けた闘いが始まる。
僕はニャンニャを真っ直ぐに視界から逸らさず――ワンワが後ろからなにか叫んでいるが集中力マックスの僕の耳には届かない。
さあ、来るなら来い! と、覚悟を決めた瞬間、
「……きゅうぅう」
ニャンニャが真っ赤な顔でその場に倒れた。
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