魔王城の面子、僕以外全員ステータスがカンストしている件について

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第10話 魔王様推奨の加護魔法

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「ここが研究所っす。では自分はこれにて退散しますね」
「ちょ、ちょっと待ってほしいのです。わぅ、私を一人にしないでほしいのです」
「コットン、あとはよろしく頼んだすよー」
「えっ、ゃ。リューナちゃん、待っ」

 ばたーん。
 無情に響き渡る扉の音、相手の訴えなどなんのその――なんともリューナらしい退場の仕方である。
 互い、リューナが去った後の扉をなんとなしに見つめていた。
 部屋に取り残される僕と小さな女の子、なんの説明もなしに置き去り状態――ふと、視線を戻すや否や女の子とバッチリと目が合い、

「う」
「う?」
「うぇん!」

 泣き出してしまった。

「ほーら、見てごらん。剥きたてのゆで卵ぉおおっ!」
「ぴょぇん!」

 親戚の子供をあやす勢いで一発芸をやってみたものの盛大に空振りする。
 とりあえず、これ以上なにかしても怖がらせてしまうと判断し、女の子が落ち着くまで待つことしばしの間――、

「ぐすん。ご、ごめんなさいです。わぅ、私、人見知りでして――天音様のことは、ニャン魔王様よりお話に聞いているのです。初め、まして、コート族のコットンと言います。よ、よろしく、お願いします」

 ――ゆっくりと言葉を紡いでいく。
 ピンク色のツインテールに同色の瞳、明るいカラーの目立つ外見とは裏腹に大人しい印象の女の子だった。とても幼く可愛らしい見た目でなんとも庇護欲が湧き立てられる。

「様付けなんていいよ。魔王城の先輩なんだから」
「せ、先輩だなんてそんなっ! わぅ、私には恐れ多いのです。普段通りの天音様で、接してください」
「いや、恐れ多いどころか――」
「き、聞いてくれませんと、ぴょぇんしちゃいます」
「――うぐっ」
「わぅ、私の方こそ、コットンと呼んでほしいのです」
「じゃあ、僕のことも晴人って呼んでほしいな」
「えっ? は、晴人、様? な、なんか、照れてしまいますね」

 パタパタと、コットンが両手を振る。
 一つ一つの動きが愛らしい――先輩、と言いつつも見た目の幼さからか、ついつい子供に話すような優しい口調になってしまう。あまりの可愛さに叫びたい衝動に駆られるが、また怖がらせても申しわけないので自重する。
 ああ、ぴょぇんするというのは反則だなぁ。

「にゃ、ニャン魔王様から、耐寒の加護を天音様に授けてほしいと言われていたのです」
「もしかして、加護魔法が得意っていう――」
「は、はい。コート族は耐性や防御、加護をメインとした魔法に生まれながらに恵まれた種族です。そ、その反面、攻撃魔法に関しては全くといっていいほど才はありませんが」
「――なるほど、RPGでいう僧侶みたいな感じかな」
「RPG、ですか?」
「僕の世界にあるゲームで色々な職業が――って、その話は語りだせば長くなりそうだから置いといて」

 首を傾げるコットン、僕は今の話を流すよう手を振り、

「加護魔法をお願いしてもいいかな?」
「しょ、承知しましたっ!」

 後ほど、ニャンニャにまた前回と同じ場所――城外に来るよう指示されている。
 コットンの加護魔法により、どれくらい寒さに強くなるかは不明だが――ニャンニャがわざわざ受けさせる限りはかなり効果があるに違いない。
 コットンは両手を僕に当て、ぽつりぽつりと呪文のようなものを呟きながら、

「ヒョウ・ララガード」

 僕の全身に、薄っすらとしたオレンジ色の光の膜が張られる。
 これが加護魔法――今は城内で実感はないけど、なんか見た目は強化された感がバリバリである。

「は、晴人様、お待たせ、しました。こ、これで、寒さに対して強い耐性が付きました。ついでに滑り止め、防御アップ、その他諸々と――今日一日は問題ないかと思います」
「なんかいっぱいありがとう。あの寒さだけは本気で参ってたんだ」
「わぅ、私は、特にお礼を言われるほどでは。だ、大それたことはしてませんから」
「僕にとっては十分大それたことだよ。それじゃ行ってくるね」
「は、はい。お仕事頑張ってください」

 会話を重ねるごとに少しは慣れてくれたのか、コットンは笑顔で見送ってくれた。
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